淡い光となりて、消えていくはずだった。
ただ切りあいを求めた。
たまさか燕を切ろうと思いついて、それを求めて得た一つの境地。
その剣技を用いての切りあい。
それを求めて果たされた。
確かに強引に負かされたといえなくもない。
だがそれとこれとは別なのだ。
純粋に互いが互いを、憎むのではなく、ただ斬るべき相手として切り結んだ。
その結果ならば受け入れるのが妥当だった。
■■に?
そんな声が、どこからか聞こえた気がした。
それを意識したその時……肌に触れる風を感じて、それは目を開けた。
「……これは?」
思わず疑問が口に出てしまったことに誰が文句を言えようか……。
そばに誰もいないのだから、誰からも文句が来るはずはないのだが。
目に着いたのは目の前に広がる小さな泉。周りには木々が生い茂り、その根元には複数のキノコが生えている。
その木の根もとに胡坐をかいて、背中を預けるように座っていた。
「……ここは?」
淡い光がさす森の中だった。
その光の淡さと気候から……夜だというのはなんとなく想像ができた。
「私は……確かに……」
薄暗い洞窟の中で、互いに長尺の刀を振るって斬りあったあの後。
両断されたことで、仮初の生が確かに終えたはずだった。
黒き泥に汚されてなお、それでも諦めきれなかった好感の持てた相棒とも呼ぶことのでき素、男との斬りあい。
確かに黒き泥に汚染されたことで変わったこともあった。
仮初とはいえ強靭な肉体を得たこと。
そして……その泥に汚染されたことで、自らが持つ得物、五尺の備中青江の野太刀が歪むこともなく耐えてくれたこと。
……得物は
そうして背に下げている刀を抜いて……その姿を見て違和感を覚えた。
……普通の刀身になっている?
泥にのまれたために、肉体も得物も黒く染まった。
どう見ても黒い異質な得物だったはずだったものが、刀へと戻っていると一瞬思ったが……それにも違和感を覚える。
……何か違う
以前、仮初の生にて朝仕合った時とは明らかに刀が違うものだと確信にも似た何かかがあった。
それを確認するために軽く振って……さらに別の違和感を覚えてしまった。
……肉体は洞窟の時と少し違う?
四肢に力を込めて、違和感を覚える。
確かに己がもっとも誇れるものは巧さであると……自身がよくわかっていた。
ゆえに、刀を力で振っているわけではない。
それでも……今までとは刀も体も違うのだと……わかってしまった。
この体は間違いなく、泥にのまれた後の肉体であることを。
自身が切られて死んだはずだというのに、この場に立っていることが、不思議でならなかった。
……水鏡で見れるか?
そばの泉はかなりの広さゆえに、月夜に照らされて光っているようだった。
ゆえに……水面に映った自分を見ようと歩を進めて、それを見た。
「……ふむ」
そこに映っていたのは……間違いなく、あの男と切り結んだ、佐々木小次郎であって佐々木小次郎ではない己。
それは、あの男とともに過ごした、若かりし自分が、薄墨のような暗さに染められたかのような青紫の袴と陣羽織をまとって立っている姿だった。