もしもお嬢様を1mmも理解してないゲーマーがセシリアに憑依したら 作:まみま
お嬢様大地に立つ
IS学園。
その学園の校舎のその前に、誰よりも淑女らしい淑女が一人。
「今日も紅茶がクソ美味いでございますわね! やっぱリプ○ンは最高ですわ!」
他でもない、
思い返せば15年前、不意にちぎれた電線が降ってきて感電して雑に死んだわたくしは、気がついたら赤ん坊になっていました。それもイギリスの名家の生まれだと。つまりはお嬢様。それならば言動もお嬢様らしくなければならない!
だからわたくしはわたくしなりにお嬢様らしい言葉遣いや仕草を勉強して、そして15歳となった今、どこに出しても恥ずかしくない完璧なお嬢様へと進化を遂げたのでございます!
「えっと、わたくしのクラスは1-1でございましたわね」
それにしてもそこら中に咲いている桜が綺麗だこと。この体になる前は日本人だったわたくしは、イギリスで15年を過ごしても日本人の心は忘れてはいなかったようで、舞い散るピンクの花びらにノスタルジーを感じますわね。
日本人が桜に感じるものは、アメリカ人が自由の女神に抱く感情のようにそのルーツを持つ者にしかわからないものだと何かで読んだ覚えがありますわ。イギリス人で言ったらなんでしょう、スターゲイジーパイ?
おや、思考を巡らせているうちにわたくしのクラスについたようですわね。1-1の文字を見て、教室の戸をピシャリと開けますわ。
「皆さまご機嫌よう! 一年間、よろしくお願いいたしますわ!」
……おや、完璧なお嬢様・ファーストコンタクトの筈ですのに誰も挨拶を返してくださりませんね?
見てみると、どうやら一番前の席に座っている一人の少年を中心に、全員が距離をとって大きな輪を作っているようですわ。少年……つまり、女性にしか動かせないISを動かせる世界で一人の男子、織斑一夏さんですわね。
なるほど、みんな誰が彼に話しかけるかで牽制合戦が始まっているわけですわね。
「わたくしはセシリア・オルコット! なにか困っていることが有れば力になりますわ! よろしく!」
「え!? あ! おう! ありがとう!」
すぐに机の前まで行って硬く握手を交わしましたわ。誰が相手であろうと物怖じしない。これぞお嬢様メンタルですわね。文句を言ってくる奴がいれば酷ければケツの穴から手突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたることもいといませんわ。
席につくと、教室の前の扉を開けて緑髪の先生が入ってきましたわ。なッ!? あれはッ!? 身長は低く童顔でありながら……おっぱいがおデカ遊ばせてあらせられる!? ○ンギの判定ぐらいにはデカいですわね……
「はーい! 皆さん、着席してくださーい!」
流石に
「IS学園へようこそ! 私はこのクラスの副担任の山田真耶です!」
上から読んでも下から読んでもやまだまや先生ですわね。でもこのネタは散々擦られてそうだから今更触れようとは思いませんわね。
しかし、山田先生が入学説明をしている間もクラスの雰囲気はなんだか張り詰めている様子がいたしますわ。まさかそれほどまでに闇が深いとは思いもよりませんでしたわね。
ただ自己紹介が始まると、皆ちゃんとしていましたわね。むしろ面接の自己アピールくらいにちゃんとしてる人すらいらっしゃいますわ。
さて、自己紹介も進み、わたくしのひとつ前、つまり織斑一夏さんの番になりましたわね。
「……織斑くん? 織斑一夏くん? 今50音順で自己紹介してて織斑くんの番なんだけど、いいかな? 自己紹介してくれるかな?」
「あっ! はい!」
だいぶ遅れた返事をしましたわね。もしかして無線勢ですの? 日本国憲法にも無線勢コレ人権ヲ与エズってあるくらいですのに。
「織斑一夏です! ………………」
と、名前だけ言ってしばしの沈黙。愚○独歩かなにか? ところでヒ○マイが流行り始めた当初は、TwitterのTLに独歩の名前がいっぱい出てきて困惑いたしましたよね? あの空手家に限界化する人間がそんなにいるのかと世界の常識を疑ってしまいましたわね。
「……以上です!」
物思いにふけっていると、周りの子たちがズッコけていましたわ。古くありませんこと?
「自己紹介もロクに出来んのかお前は!」
おや、何やら黒スーツの女性が現れましたわね。彼女は間違いなく、世界一のIS操縦者にしてレジェンドである織斑千冬さんですわね。格ゲーでいうところの梅○名人みたいなとこですわ。
どうも彼女がうちのクラスの担任らしく、周りの生徒たちがずいぶん盛り上がっていらっしゃいますわね。ゲーセンのエ○バの周りにいるあいつらくらいの品性のなさを感じますわ。
いやしかし、戦士というのは品性を捨てたその日がスタートであるとも言います。実際、格ゲーもISも同じで多くを捨てた者だけが勝利を掴むことができるとはわたくしも確信しておりますし。
「では、これでHRを終了とする。残りの自己紹介は自分達でやっておいてくれ」
……おや? まさかわたくしのひとつ前で自己紹介終わりですの? わたくしのお嬢様っぷりをアピールできる最高のチャンスだと思いましたのに。コスト30の味方が2堕ちした時みたいな気持ちですわ。
まあ、かまいませんわ。お嬢様というのは行動についてくるもの、わたくしのこれからの行動を見ていれば周りの人達も"理解"してくれることでしょう。つまりはわからせですわね。
その後の授業では一夏さんの全くわからん発言はあったものの、特筆すべきこともなく一限目を終えましたわ。
続く二時間目、このクラスの代表を決めるという話になりましたわ。まあ、ここはこのわたくしが立候補してこのクラスを引っ張って差し上げましょう。
「はい! 私、織斑君を推薦します!」
「えぇ!?」
と、思っていると一夏さんが推薦されていましたわね。まあ担げる神輿は担ぐのが吉ですから、そりゃそうなりますわね。一夏さんは辞退を望んでいるようですが、織斑先生が許してくれないようですわ。
ふふ、お任せください。代わりにこのわたくしがお受けしましょう。
「はい、わたくしが立候補いたしますわ」
「うむ、オルコットだな。他には?」
しかし投票になればわたくしが彼に勝てるかは微妙なところですわね。わたくしはイギリスでも国家代表候補生という実力を保証された立場ではありますが、担ぐなら唯一の男の方でしょうし。
「では、他にいないなら投票で──」
「お待ち下さい!」
「──なんだオルコット」
「クラス代表になれば、代表として学内の試合に出ることもございます。でしたらまず、お互いの実力を見るべきでは?」
「ほう、つまりはお前の方が代表にふさわしいと?」
「滅相もございませんわ。つまり……ISの試合を以ってクラス代表を決めたいということですわ。文字通り、雌雄を決するというわけですわね。それに……」
「それに?」
「彼の操縦データが早くに手に入るのは、学園にとっても都合の良いことではなくって?」
「……いいだろう。では一週間後の放課後にアリーナを使えるようにしよう。各々準備をしておけ」
我ながら完璧な話術ですわね。さて、一週間後に決まった試合、素人である一夏さんを相手取るのは気が引けますが、実力を見るという意味合いでもある程度本気で相手取ってあげましょう。初心者の暴れは結構怖いですし。
さて、その日の授業は大した波乱もなくそのまま終わりましたわ。
一週間後の試合、楽しみにしておきましょう。