もしもお嬢様を1mmも理解してないゲーマーがセシリアに憑依したら 作:まみま
「しかし、中々の人ですわね」
「ああ、その通りだ。……この視線の中で踏まれたらと思うとゾクゾクするな……」
「わたくしも背筋が凍る思いですわよ……」
さて、彼女が
「ご主人様……間違えた。セシリア、幸運なことに織斑のペアとは初戦で当たるようだ。約束通り邪魔はしないでくれ」
「絶対その呼び方を漏らすんじゃないですわよ!? もしもぽろっと言ったりしたら両足を縛ってISで引き摺り回しますわよ!?」
「それも……いいな……」
「あああああぁぁぁぁこいつには逆効果なんでしたわ!」
成長したラウラさんは完全にわたくしのアンチピックに進化を遂げてしまいましたわ。今やわたくしの嫌いなものは投げキャラとラウラさんですわ。まさか彼女がここまで練度を高めるとはゆめゆめおもっていませんでしたわね……恐るべしドイツ軍人ですわ……
「さあ! 私達の試合だ! 行くぞご主人様!」
「あなた今絶対わざと言いましたわよね!? いいですわ、二度と言葉でも肉体でもいじめてあげませんわよ!」
「放置プレイもまた一興!」
「逃げ道がないですわ!?」
半ば彼女に引き摺られるようにピットへ向かいますわ。はぁ……こんなに気が進まない戦いは初めてかも知れませんわね……
「一戦目で当たるとは、待つ手間が省けたと言うものだ」
「それは何より。こっちも同じ気持ちだぜ」
ただまあ……試合が始まるとなれば真面目な顔に戻ってくれて幸いですわね……
さあ、5……4……3……2……1……
あれ? この子カウントダウン聞いて恍惚とした顔してませんこと? わたくしそんなプレイした覚えは……
『試合開始!』
っと! 試合開始と同時に突っ込んできた一夏さんをラウラさんが
「開幕突進とは、わかりやすいな」
「そりゃどうも。以心伝心で何よりだよ」
ラウラさんは一夏さんを絡めとったまま、レールキャノンの発射を開始しますわ。ハメとは卑怯ですね。ウチのシマじゃノーカンですことよ。しかしそれを一夏さんの上を飛び越えて現れたシャルロットさんの銃撃が阻止しますわ。
急後退をして距離を取るラウラさん。
「……援護は必要でして?」
「1分間だけ、デュノアを止めてくれ」
「お安い御用ですわ」
素直に人に頼れるようになったのは成長ですわね。あとで腹を抓るくらいのご褒美を差し上げましょう。ラウラさんへ追撃を喰らわせようと前へ出るデュノアさんを、BTで進路を遮るようにレーザーを撒きますわ。
「さて、1分間だけ遊びましょうか? なに、主人と従者の戯れの時間ですわよ」
「セシリアッ! 主人っていうのは私の……」
「あなたは黙って一夏さんとやりあってなさい!」
目敏く会話を聞きつけたラウラさんを叱り付けると、またもや嬉しそうな表情を。もうやだあのロリ、ヤー○ムとかで引き取ってくれないですかね?
「はは……セシリア、行くよ!」
「来なさい、シャルロット」
積極的に距離を詰めて弾幕を張ってくる彼女に対し、わたくしは全力で引き撃ちを始めますわ。やはり彼女は腕がいい。スレスレの位置を飛んでいく銃弾を見送りながら、反撃を続けますわ。
「なかなかの嫌がらせですわね? 人にやられたら嫌なことは自分もやっちゃいけないって習いませんでしたの?」
「自分がやられて平気なことなら嫌がらせにならないでしょ!」
「素晴らしい返答ですわね。くたばれ」
いつの間にやら性格の悪さを身につけていたとは、恐れ入りましたわね。さて、わたくしが動く時間は残り30秒。ラウラさんの方はどうやらワイヤーブレードで一夏さんを拘束したところのようですわね。羨ましそうな顔してますわねあいつ、自分がやった緊縛に自分が嫉妬してどうしますのよ。
「さて、30秒は確実に向こうにはいかせませんわよ」
BTによる全角度からの攻撃はひらりと躱される……が、前に回避軌道をとった彼女にたいしてこちらも急接近し、銃剣での突きを喰らわせますわ。回避狩りはお嬢様の嗜みですの。
「クッ!」
「ほら、抜け出してみなさい」
後ろにブーストをふかして距離を取ろうとする彼女を逃さず、銃剣による攻撃とBTによる牽制を絶え間なく行いますわ。よろけハメは基本ですわね。できない奴はレートマに来るなって感じですわ。
連撃を喰らわせて彼女を地面に押しつけ、残りの20秒を待つことにしましょう。
「言っておきますけれども、そんな苦し紛れの攻撃をくらうわたくしではありませんわよ? 引き金みてから反撃余裕でしたわ」
倒れた状態で尚こちらを狙ってくるアサルトライフルをBTで撃ち抜き、そのまま拘束を続けますわ。さて、残り10秒……5秒……3、2、1……
「はい終わり、行ってどうぞ?」
「本当に1分経ったらやめるんだね……!」
「彼女とはそういう約束ですもの」
向こうへ真っ直ぐに飛んでいくシャルロットさん。おかげで一夏さんは落とされずに済んだみたいですわね。そのあとはひどいものでしたわね。一夏さんとデュノアさんのコンビネーションによって瞬く間にラウラさんは追い詰められてしまいましたわ。そしてシャルロットさんのパイルバンカーによる連撃を受け……ちょっと気持ち良さそうな顔してますわね。負けすぎてレートを溶かすことに快楽を覚え始めた頃のわたくしと同じ顔ですわ。そしてISが強制解除される……その瞬間、異変が起こりましたわ。
《side ラウラ》
気づけば、私は真っ暗な空間にいた。見渡す限りなにもない空間……放置プレイだろうか? 何にせよ、私は早く帰ってセシリアにご褒美を……
『──願うか……? 汝、自らの改変を望むか……? より強い力を欲するか……? 』
……闇の向こうから聞こえてきた禍々しい声。力、力、か……今の私は力というよりは……
「痛みが欲しい」
『…………えっ? 』
「厳密に言えばご主人様からの痛みが欲しい」
『……まあいいや』
まあいいやとは何だ! 大事なことだ! ……と言い返す前に、私の意識は更なる深みへと沈んでいった……
《side セシリア》
「で、アレは一体何事ですの?」
「僕もわからない! エネルギーを削り切ったと思ったらいきなり黒いのが溢れてきてああなったんだ!」
「とりあえず消耗している二人は下がって様子を見ていてくださいませ。暴れ出すようならわたくしが取り押さえますわ」
会場は混乱していますわね。まあ、無理もないでしょう。目の前でISがあんなことになったのですから……彼女とISを覆った黒いヘドロは、まるで泥人形を作るように巨大な人形を形成していきますわ。メタ○ンか何かでしょうか?
「あの刀は雪片だ……アレは……千冬姉を模しているんだ……!」
わたくしの真横を通り、雪片弐型を構えた一夏さんが奴に吶喊しましたわ。血気盛んなことですわね全く。しかし……アレは何でしょうか? ワザップとかみたら書いてないですかね? もしかして第二形態があるタイプのクソISだったんでしょうか? ダ○ソ3のボス? ああ、そう言われるとエ○ドリッチに見えなくもないですわね、あいつ第二形態ないけど。
「とりあえず一夏さんを援護しましょうか。あのままでは死にそうですわ」
「うんっ!」
レーザーライフルとBTで援護を始めるわたくし達……ですが、あんまり効いてる気がしませんわね。物理無効でしょうか? クソにも程があるのではなくって? 良識を弁えたクソボスをやって欲しいものですわね。
援護を続けていると、相手の刀に弾き飛ばされた一夏さんがこちらまで転がってきますわ。
「くそっ! まだだっ!!」
「一夏さん、一旦落ち着いてください」
「落ち着いていられるか! あいつは……あいつは千冬姉の剣を……!」
肩を掴んで止めますが、そのまま振り払っていきそうな雰囲気ですわね。彼の地雷は織斑先生にある、というわけでしょうか?
「だから落ち着くのですわ。あったまったやつから負けていくのがこの世の摂理。最後まで小足暴れを潰すような冷静なプレイングをしてこそようやく勝利があるのです。堅実に立ち回りなさい」
「……わかった……随分落ち着いた……」
「だ、大丈夫なの一夏!?」
「大丈夫、大丈夫だ。キレすぎてむしろ冷静になってきた……セシリア、シャル、協力してくれ。アレの中からラウラを引き摺り出す」
ようやく冷静さを取り戻したようで幸いですわね。平静を失ったゲーマーが辿るのは敗北の道ですわ。感情があるせいで日和って焦って負けるのです。戦いに心はいらないのですわ。
「言われずとも援護しますわよ。シャルロットさん、準備はよろしい?」
「うん! 任せて!」
「行くぞ!」
刀を構える一夏さんを先頭に、ジェットストリー○アタックを仕掛けますわ。シリアスな場面なのにちょっと笑いそうになっちゃいましたわ。危ない危ない。
彼女が振り下ろさんとする雪片をわたくしが近距離ブレードで受け止め、ガードに回ったもう一つの腕をシャルロットさんがパイルバンカーで弾き飛ばしますわ。
「うおおおおお!!」
雄叫びと共に振り下ろされた一夏さんの雪片弐型が泥の腹を捌き、その中からラウラさんが倒れ込むようにでてきましたわ。
「とりあえず一件落着……ですわね?」
まさかクラス代表戦のみならず学年別トーナメントまでお釈迦になるとは……どこかでフラグ管理を間違えでもしたかしら……