もしもお嬢様を1mmも理解してないゲーマーがセシリアに憑依したら 作:まみま
「俺……なんで勝てないんだろう……」
「そりゃ素人と代表候補生なんだから当たり前ですわよ。IS自体の技量は練習でしか身につきませんから、IS操縦の練習と同時に読み合いについても学んでみてはいかがです?」
何度か行った模擬戦に惨敗した2人と、見学していた箒さんと寮に帰る途中。ぽろっと漏らした一夏さんの言葉ですわ。実際ISの技量は搭乗時間に比例すると言われるほどISには時間というものが大切。幸いIS学園ならいくらでも乗れますので、並行して別のことを覚えるのが効率的ですわね。
「読み合い……」
「ええ、例えば一夏さん、攻めてる間は強いですが一度守りに入るとジリ貧になってしまっています。一撃必殺の武装持ってるんですからガードなんて擦らなくて良いんですのよ、暴れるか超暴れるかの二択で考えてください」
「そんな極端な……」
「実際ガードされるよりあの剣振り回される方が怖いもの! もっとチンパン性を身につけなさいチンパン性を!」
「ほら、チンパンの先輩もこうおっしゃっていますよ」
「誰がチンパンの先輩よ! 知性溢れる戦いしてるわ!」
「溢れてるのは脳味噌だけでは?」
「ムッキィィィィ! なんなのよこの煽りカス!」
鈴さんは元気ですわね。
箒さんは物静かな方なようで、わたくし達の様子を見てたまに笑いながらついてきますわ。
「あれだけ負けたのにまだ叫ぶ余力がありましたのね?」
「なによ! まだ煽ろうっての!?」
「いえ、素直に評価しているんですわ。あなたがたった半年ほどで代表候補生になれた理由、それは才能のみならずそのガッツと体力が大きいところです。何度打ちのめされても再び立ち上がれるというのは、ISや格ゲーだけでなく様々なことに役立つ才能ですわよ」
「い、いきなり褒めるじゃない……」
「まあ実力が伴わなければただの馬鹿なんですけれどもね」
「ぶっ殺すわよ! 余計な一言が多いわねほんと!」
本当に気持ちいい返しをしてくれる方ですわね。まあ彼女も煽られるのを楽しんでいる節がありますし、しばらくはサンドバッグにさせていただきましょう。
「あっ、じゃあ俺と箒はここの部屋だから! 今日はありがとうな!」
「……えっ? 一夏女の子と相部屋なの? 嘘でしょ……?」
「別に幼なじみなんだし問題ないだろ。なあ箒?」
「あ、ああ! そうだな!」
ゲッ……めんどくさそうな雰囲気がしますわね。君子危うきに近寄らずと言いますし、わたくしもササッと逃げてしまいましょう……l○lでクソみたいな編成になったらドッジするのと同じ理論ですわ。
「幼なじみなら問題ないのね!」
「え、ああ……まあそうだけど……」
「そう! 行くわよセシリア!」
「えっ、ちょっ、わたくしの部屋そっちじゃな……!」
退却が遅かったようで、鈴さんに手首引っ掴まれて連れ去られてしまいましたわ。活発なのも考えものですわね。廊下をBダッシュする鈴さんに引き摺られながらたどり着いたのは彼女の部屋でしたわ。
「なぜ鈴さんの部屋にわたくしも……?」
「いまから部屋を移るのよ! 荷造り手伝って!」
「えぇ……いろんな申請とかあると思うんですけれども……」
「ほら口より手を動かす!」
「もしかして人の話を聞いてらっしゃらない? 耳にジョイスティックでも詰まってますの?」
早く帰ってゲームやりたいんですけど……やらなきゃ帰してくれなさそうですわね。仕方がないから荷造りを手伝いますわ。幸運なことに彼女のルームメイトはまだ帰ってきていないようですので、事情の説明はしなくてすみましたわ。
「さあ行くわよ!」
「わたくしバ○オペの日替わり任務回収したいんですけれども……今日アッ○マー実装なんですわよ……」
またも鈴さんに引っ張られてやってきたのは一夏さん達の部屋。
彼女は部屋の扉を力強く開け、荷物を中に放り投げますわ。
「というわけで、部屋替わって?」
「ふ、ふざけるな! なぜ私が……?」
「篠ノ之さんも男と同室なんて嫌でしょう? ねえ、セシリアもそう思うわよね?」
なんで逃げようとしてるタイミングでわたくしに振ってくるねん背中に目でもついてんのか(キャラ放棄)。この状況をなんとかしないと帰らせてくれなさそうですわね……
「ま、まあ別に一夏さんと箒さんの問題ですし……わたくし達が口出しするようなことでは……」
「ほら! セシリアの言う通りだ!」
「別に私も幼なじみなんだから問題ないじゃないの。ねえ、一夏?」
「俺に振るなよ……」
わたくしはともかくお前は当事者なんだからこの状況をなんとかしてくださいませ一夏さん。わたくしフォーオ○ーのスティールも回収したいんですけれども。
「とにかく! 部屋は替わらない! お前はお前の部屋に帰れ!」
「……ねぇ一夏、約束覚えてる? 小学校の時にぃ」
「無視をするな! こうなったら!」
「あぁ! 馬鹿!」
机に立てかけてあった竹刀をとって振り下ろさんとする箒さん。それを部分展開された甲龍とブルー・ティアーズの腕が受け止めますわ。それにしても危ないことをするものですわね。
「今の、生身の人間相手だったら本気で危なかったよ」
「これだけは鈴さんに同意ですわ。いくら人間性を捨てても暴力に訴えては最低のクズに成り下がってしまいますわ」
「煽ってる時点であなたも最低のクズよ」
「カァ〜ッ、百理ある! 死んでくださいませ!」
「ほんとに死ぬとこだったわよ今……まあ別にいいけどね」
少し冷静さを取り戻して竹刀を置く箒さん。彼女を煽るのは試合中だけにしときましょう……
「鈴、約束とか言ってたけどなんの話だ?」
「そう! 覚えてるよね?」
「えっとぉ……あれか? 鈴の料理の腕が上がったら、毎日酢豚を……」
「そうっ! そう!」
「毎日飯を奢ってくれるって約束だろ?」
「……はい?」
「いやぁ……一人暮らしの身にはありがたい……」
ピシャリ、鈴さんが一夏さんにビンタを食らわせた音だ。ああ……大体把握しましたわこれは……めんどくさい男と女ですわね……めんどくさいのは○ンギと○蛇とスト○スだけで十分ですわ……
「さいってい! 女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて!」
「えっ!? ちゃんと覚えてただろ!?」
「約束の意味が違うのよ意味が!」
まあ……責任のダイヤグラムは5:5ってとこでしょうか……わかってやれない一夏さんも一夏さんですが、わかりづらい告白をする鈴さんも鈴さんってわけですわね。
「じゃあこうしましょう! 来週のクラス代表戦で負けた方は勝った方の言うことをなんだって聞く!」
「あ、ああいいぜ!」
「決まりだからね! 後で吠えづらかいたって知らないんだから!」
そう言って荷物を背負ってまたわたくしの腕を掴んで走っていく鈴さん。この人移動方法がダッシュしかないんですの? ソ○ックかなにか?
そうして行き着いたのは人気のない外のベンチ……早く部屋に帰りたいですわ……
「うう……一夏の馬鹿ァ……」
「まあ大体状況は飲み込めましたわ……」
「ねえセシリア! 一夏が悪いわよね! そうよね!」
「そこはわたくしには言い切れませんわね……まあ、約束を取り付けたんですしクラス代表戦で勝てばいいのでは……?」
「そ、そうよ! あの鈍感馬鹿をボコボコに負かしてやればいいのよ! セシリア! 明日も模擬戦付き合いなさい! あの馬鹿と同じでブレードでね!」
「はぁ……わかりましたわ」
しばらくは面倒事が続きそうですわね……
「で、あいつに確実に勝つにはどうしたらいいと思う!?」
「そうですね……同じ近接戦同士で向こうは10割持ち、ヒットアンドアウェイで完封が丸いところだと思いますわ」
「やっぱりそうよね! 指先一つ触れさせずにぶっ倒してやるわ!」
「あと暴れの対策もした方がいいですわね。彼は素直な人ですから、昨日のわたくしの助言を聞き入れて攻められたら暴れるか超暴れてくると思いますので、それを的確にガードして攻撃を差し込むのが有効だと思いますわ」
「なるほど! じゃああんた! 相手しなさい!」
「はい……」
鈴さんの熱量に押し切られ、早速翌日から対一夏さん特訓が始まりましたわ。わたくしは一夏さんと同様にブレード一本で何戦も何戦も……はっきり言ってキツイですわね。
「ほら! もっとIQを高めて! 一夏さんはチンパンで攻めてきますから鈴さんはIQで押さえ込まなきゃダメですわよ! そんなグランバニアの橋より無駄なコンボは通りませんわ!」
「うおおおおお! IQ龍砲! IQ龍砲!」
「いい! その龍砲はIQ高めですわ! もっと剣を回避したら当たるいやらしい位置に龍砲を巻いて! そう! そのIQです!」
「チンパンを捨てて! IQを手に入れる!」
「よし! 今多分250くらいありますわ! アインシュタイン超えの戦い方ですわそれは! よし! その回避と距離感を忘れずに! あなたは今や世界最高の頭脳を持っていますわ!」
そうして試合までの約一週間、ひたすらにわたくし達はIQを磨き続けましたわ。