もしもお嬢様を1mmも理解してないゲーマーがセシリアに憑依したら 作:まみま
そういえば基本的に読みやすいように4000文字前後で書いているんですが、1話ごとの文字数はこれくらいでよろしいですかね?
結局、織斑組とデュノア組から溢れた可哀想な生徒達と実習を終えましたわ。その後皆さんと学食ではなくお弁当を屋上で食べました。箒さんも鈴さんも料理がお上手でしたわね。え? わたくし? 菓子パンとあとブルーベリーだけですわ。目はゲーマーの宝ですものね。
それよりも面白かったのがシャルルさんでしたわね。必死であることを隠している様が非常に愉快でしたわ。この観察も意外と楽しめそうな気がしますわね。同室になった一夏さんの前でいつボロを出すのかが楽しみですわ。生徒会長さんと賭けでもやろうかしら?
さて、そんな生活も五日ほど経ち、今はいつものメンツでアリーナを借りて訓練をしていますわ。しっかし、箒さんと鈴さんはバリバリの感覚派なので教えるのがヘッタクソですわねぇ。解説に擬音使うやつは大抵教えるの下手くそですわ。わたくしは格ゲー用語使いすぎてわからんって言われてしまいましたし。それに対してシャルルさんは教えるのが上手いですわね。一度模擬戦をやらせていただきましたが、中々高水準の中距離射撃型の操縦者でしたわ。
……と、皆さんでやいのやいのと練習をしていると黒い影が現れましたわ。言うまでもなくラウラさんですわね。なんの意外性もありませんわね、なんなら思ったより仕掛けてくるのが遅かったくらいですわ。早速彼女に通信を取りましょう。
「あら、どうしましたラウラさん? 寂しいから混ぜてもらいにきたんですの? 残念ながら筐体は空いてないので待機列に並んでくださる?」
『貴様は……オルコットか。邪魔をするな、私が用があるのはそこの織斑一夏だけだ』
「へえ? どう言う用事が? 告白でもしますの?」
『……面倒だ。仕掛ける方が早い』
やはり沸点がルンバの車高くらい低いご様子で、腹を立てた彼女はISの肩にマウントされたレールキャノンをこちらへ向けてきますわ。これだから野蛮な子は嫌いなんですの。ジャングルのみんなで育てましたって感じの性格してますわね?
「仕掛けるって言って仕掛けたら対策されるに決まってますわよねぇ? 格ゲーマー舐めてますの?」
「セッ、セシリア!?」
「一夏さん達は下がっててください。ちょっとあのロリをわからせてきますわ」
「でも、大丈夫なのセシリア?」
「あら、シャルルさんも心配してくださりますの? 彼女は多分わたくし一人で負かしてやらないと懲りないと思いますの。あなたも見ててくださいな」
彼女のレールガンが発射されるよりも前に、その銃口をレーザーが貫きますわ。武装を破壊してしまうのは心苦しいですが、ここでいくらか心を折っておきましょうか。
『貴様ッ!』
「おや、黒豚は随分と怒りっぽいようですわね? カルシウム足りてます? あなたの場合身長も伸びて性格も温厚になっていいこと尽くめですわよ?」
『減らず口を!』
「そう言う生き物ですからしょうがないですわよ」
今度は近接戦を仕掛けようとブーストをふかして肉薄してくるラウラさん。その背中を回り込ませておいたBTで集中砲火しますわ。全く、これだからクールさを保てない人は弱いのです。
「頭が温まってる人ほど狩りやすいものですわね。ISには折角360°の視界があると言うのに、前にしか意識がいってないとは宝の持ち腐れですわね? まずは視界を広く持つことをオススメしますわ。『神は視界あれと言われた。すると視界があった。そしてワードを刺した』と、よく言うでしょう?」
『ふざけるな! 聞いたこともない!』
「教養がないのね。MOBAでもやって見聞を広げたらいかがです?」
もうすっかりブチのギーレェですわね。次はスラスターを左右に、蛇行するような形で向かってくるラウラさん。今度は彼女が打撃を仕掛ける寸前に上空へと急加速し、レーザーライフルをお見舞い……しますが、空中でレーザーが止まってしまいますわ。
「あら、それがあなたの武装ですのね。ISに乗っても尚自分の殻に閉じこもっているわけですか、お似合いですわね?」
『すぐにそんな口を利けないようにしてやる!』
「どうやって?」
今度はレーザーライフルと同時にBTを連射。何発かは躱され、何発かは止められましたが、大部分は着弾しましたわね。わたくしの読み通りアレが弾を止められるのは彼女が集中を割く一面のみ。360°どこからでも攻撃ができるわたくしには最も噛み合わないわけですわね。ダイヤは10:0って感じですわね。
「あら、殻に籠もっているというのは訂正しますわ。正しくは孤立した状況でたった一枚の壁に頼る哀れな敗残兵って感じでしょうか? ああ、言葉にトゲがあったらごめんなさいね? わたくし、綺麗な薔薇なもので」
『貴様……! 絶対に殺す!』
『お前ら! 何をしている! 学年とクラスと出席番号を言え!』
と、アリーナの見張りの先生から注意がとびましたわ。全く無粋なものです。もう少しで彼女の肋骨をえぐれたというのに。
「あら、ゴングに救われましたわね? よかったでちゅねぇ、ここが学園で。ゲーセンだったらハゲ上がるまで煽り続けるところでしたのに」
『言ってろ! 次は負かしてやる!』
「そこのお前! 一敗ですり減るプライドは三勝分ですわよ!」
『クソがッ!』
まだ頭に冷静さが残っていたようで、そそくさと退散していきましたわ。もうちょっと煽って差し上げた方が良かったかしら? 地面まで降りると、ドン引きした様子の皆様が。
「なんていうかセシリア……噂通り本当に容赦ないんだね……」
「流石にビンタされかけた俺でも可哀想に思えた……」
「もしかしてスラム街育ちのお嬢様だったりする?」
「私もお前とだけは戦いたくないな……」
……テヘペロ!
と、ラウラさんを可哀想なくらいに痛めつけたその日の夜、格ゲーに興じていたときに携帯がなりましたわ。そこには一夏さんの文字が、電話を取ると……
『もしもし、セシリアか? 実はちょっと困ったことがあって……できれば俺の部屋に来てくれないか?』
「ええ、構いませんわよ。すぐに向かいますので待っててください」
ああ、これはバレましたわね。しかしそうなってすぐにわたくしに頼るとは……随分信頼を勝ち取ったものですわね。わたくし煽りしかしてた記憶ないんですけれども。何はともあれ、面白そうな予感がしますので、わたくしも一時的にゲームから離れる価値はありそうですわね。
一夏さんの部屋の扉をノックすると、すぐに一夏さんが出迎えてくれましたわ。
「で、困ったことはシャルルさんの件ですわね?」
「よ、よくわかったな……」
「言うまでもありませんわ」
彼に促されて部屋に入ると、そこにはたわわな当たり判定を胸に携えたシャルルさんがいらっしゃいましたわ。どこか所在なくベッドの上に座っていて、まるで致命的ミスでゲージを無駄に溶かしたゲーマーみたいですわね。
「こんばんは、シャルルさん。えっと……シャルルは男性名ですし、本名はシャルロットさん、ですかね?」
「! ……よくわかったねセシリア。そうだよ、僕の名前はシャルロット・デュノア。本当は僕……」
「言わなくてもわかりますわよ。そもそもわたくしは生徒会長に言われてあなたを観察していましたから、事情も大体は読めていますわ」
と言っても、彼女の実家である会社の大まかな状況のみですが。例えば社長であるデュノア氏に息子なんていないこと、経営が傾いていること、それくらいのことでしたわね。そうなったら考えることは危険な手を使ってでも一発逆転、って感じでしょうかね? 娘である彼女を彼として学園に潜り込ませ、一夏さんの機体データを盗む……ここまでがわたくしの推理ですが、多分当たってましたわね。
「えっ、セシリア最初から知ってたのか!?」
「……知ってて黙って見てたの?」
「その通りですわよ。それともわたくしの口からバラした方が良かったでしょうか? あなたが自己紹介をしたあの時点で口を滑らせても、別にわたくしは構わなかったですわ」
別に責める気もありませんが、そう言うと彼女は口を噤んでしまいましたわ。
「それで、わたくしをここに呼んだのは彼女の今後の処遇について聞きたいから、ですわよね? 最善は言うまでもなく織斑先生を頼ることですが、それができない。あるいはしたくないからわたくしが選ばれた」
「ああ、その通りだ。やっぱりセシリアを呼んで正解だったな! ……それで、どうしたらいいと思う? 意見を聞きたいんだ」
「……あくまでも彼女の処遇を先送りにするには、というなら3年間知らんぷりすればいいだけですけれど、3年間ミッションを達成出来なかったらどうなるかなんて容易に想像がつきますわね」
俯いたままのシャルロットさん。足や手が震えているようにも見えますわね。まあそりゃ一世一代のスパイ作戦で失敗したらこうもなるものですわ。
「なら、イギリスへ亡命すればいいんですのよ。もっとISの腕を上げればわたくしのスパーリング相手兼メイドとして雇いますわよ」
やっぱり先立つものは財力ですわね。このセシリア、伊達に名家の生まれではありませんもの。両親なき今はわたくしがオルコット家の主人、主人の手にかかれば使用人を一人雇うくらいお安いものですわ。ついでに格ゲーの相手もしてくれたら文句なしですわね。
「……いいの? こんな僕を雇うなんて……」
「やむにやまれぬ事情があったのでしょう。それにわたくし、お人好しですもの。一度友達になれば煽りはしても見捨てたりなんか出来ませんわ」
「お人好しかどうかは微妙なとこだけど……本当に助かったよセシリア! やっぱりセシリアを頼って良かった!」
「構いませんわ。わたくしも、こんな状況で1番に頼られて友達冥利に尽きるというものです。では、わたくしは格ゲーに戻りますわね」
さて、いいことをした後はいい気持ちでゲームに挑めるというものです。今日のわたくしは一味違いましてよ?
「クソわよ! おクソですわね! お排泄物ですわ! そんな弱に反応できる人間がいまして!? あっ! お前毒で削り切って勝った気になってんじゃねえですわよ! スイーツみたいな防具しやがって! 頭からバリバリいきますわよ!? お! きた! よし! はいせーの! 回避狩りィ! 天に滅せい!」
「さっきまで機嫌良さそうだったのにもういつもの調子に……」