if~人生とは分岐点の連続だ   作:雪音

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もう少し出会い篇が続きます!!まぁ、とりあえず…銀時がある程度大きくなるまでは出会い篇です!!出会い篇は序章扱いなんですが……序章が序章じゃなくなって本編になる可能性も、あばば←

あと、若干土井先生の仕草やリアクションが子供っぽいですが…まぁ、現在の年齢設定が15歳なので昆奈門…じゃなかった、こんなもんかなと(笑)


02:銀色の時を刻む子

戦地から少し離れた村まで辿り着いたところで、一旦茶店に入った。一応半助と伝蔵は、授業の一環で戦地に来ている。当初の目的であった“屍を喰らう鬼”の調査もこの幼子だった為、もう調べる必要は無い。あとは、この子を安全な場所まで連れ帰るだけだった。4人で相談した結果…

 

「とりあえず、松陽殿はその子を連れて忍術学園へ」

「はい、分りました。学園長先生には私の方からお話ししましょう」

 

彼を忍術学園へ連れて行き、今後についてそこで改めて話し合うこととなった。この場で決めるにはあまりにも状況が複雑すぎる。大人2人が真剣に話している時、半助と子供は出された団子を頬張っていた。もっとも、子供は出されたそれが何なのか分らず、暫く団子と睨めっこをしていたが。

 

「どうした、食べないのか?」

 

半助が聞くと、子供は困ったように半助を見上げる。

 

「これ、たべる?おれ、しらない。たべれる?」

 

今までは握り飯など、戦場で兵士達が所持していた軽食しか食べた事が無かった。故に、彼にとって団子は未知なる食べ物だったのだ。食べられるものであれば、空腹を満たすために何でも食べる。が…しかし、桃色・緑色・白の三色団子は…子供にとって食べ物というにはあまりにも見慣れないものだった。

 

「ははっ、団子というんだよ。甘くて美味いぞ?」

「う…?だんご、あまい…?」

 

団子という単語も、甘いと言う単語も理解できない彼はただただ首を傾げるだけだ。それを微笑ましく見守っていた半助は、自分の皿に乗っていた団子を頬張る。それを見ていた彼も、同じように口に運んだ。

 

「……!!」

「どうだ、美味いだろ?」

「たべたことない!!これ…あじ、しらない…!!」

 

今まで食べてきた塩辛い握り飯とは違う、初めて食べるもの(それがのちに、彼を糖尿病予備軍に(いざな)うきっかけになる事は…まだ誰も知らない)。初めての甘味に歳相応の表情を見せた彼を見て、半助もつられて笑う。

 

「だったらこれもお食べなさいな」

 

そんな彼らを見ていた松陽が、余っていた自分の団子を彼に差し出す。それをじっと見ていた彼は、団子から松陽に視線を移す。まるで顔色を伺うようかのようなその仕草に、松陽はただ優しく微笑んでいた。

 

「……これ、たべる…いい?」

「ええ、どうぞ」

 

おずおずとそれを受け取ると、さっきと同じように団子を口に頬張った。そしてその甘みに幸せそうに微笑む。

 

「ははっ、何とも微笑ましい光景ですねぇ」

「全くですな。半助が兄、その子が弟のように見えるぞ?」

「わ、私が兄ですか…!?」

 

まさかそんな事を言われると思っていなかった半助は、恥ずかしそうに頬を赤く染める。

 

「ははっ、利吉も半助の事を兄のように慕っているからなぁ」

「……?」

「あぁ、利吉は私の息子ですよ。歳は今年で8つになります」

「おや、そうだったのですか。丁度その子と同じぐらいですかね…?」

 

口をもぐもぐと動かしている子供を見つめながら「そうですな」と伝蔵も笑った。

 

「恐らくこの子よりは下でしょう。…まあ、幼さで言えばこの子の方が幼く見えますがな」

 

今頃妻と共に、山奥の秘境の地で暮らしているであろう息子を思うと、自然と顔も綻ぶ。そこまで思い…ふと、伝蔵の脳裏にある事が過ぎった。

 

そう、思えばまだこの子供の名前を彼らは知らないのだ。

 

「美味そうに団子を頬張っているところすまんが…」

「ふえ?」

 

もぐもぐと口を動かしながら首を傾げる姿はあどけなく、とても先ほどまで尋常じゃない殺気をかもし出していた張本人とは思えない。その姿に伝蔵のみならず、松陽もまた顔を綻ばせた。

 

「急がなくていいのですよ?ゆっくりお食べなさいな。じゃないと、喉に詰まらせてしまいますからね」

 

その時彼が思い出したのは、2人の生徒。どちらもやんちゃだが、とても仲がいい2人。そんな仲の良い2人の片方が団子を喉に詰まらせ、もう片方が慌てながら「先生、ヅラが死んじまう!!どうしよう!!」と泣き付いてきたのは…まだ新しい記憶だ。

 

「丁度、小太郎や晋助と同い年ぐらいですかねぇ…」

 

この子供の姿が、そんな彼らと重なった。歳もあまり変わらないだろう。もっとも、伝蔵の言う通り…精神的な年齢は幼いが実年齢は恐らく自分の教え子たちと同じぐらいだろう。

 

「松陽殿の教え子ですかな?」

 

どうやら伝蔵には松陽の言葉が聞こえていたらしい。その問いに、松陽は微笑む。

 

「はい、どちらも剣の才に長けている子で、塾生の中でもこの2人は飛びぬけて強いんですよ?」

「ははっ、まるで我が子の事を自慢しているようですなぁ!!」

「子供達からも“親バカ”だとよく言われます」

 

自分の塾生達を我が子のように可愛がっていることは、塾生達のみならず塾生達の親も知っている。だからこそ、松陽になら預けられるという親御も多いのだ。これも松陽の人徳だろうと伝蔵は思った。

 

「………こた…、しん…?」

 

松陽が口にした2人の塾生の名前を、子供が復唱する。すると、「あぁ」と松陽が微笑んだ。

 

「私の教え子達です。私は塾の先生をしているので」

「せんせ…?」

「えぇ、そうです。小太郎と晋助はちょうど君と同じくらいの歳だから…もしかしたら、君と仲良くなれるかもしれませんね」

 

そっとその銀色の頭を撫でると、少しだけ身体を強張らせたが…すぐに気持ちよさそうにフニャリと笑う。こうしていると、本当に年相応の子供だと…そこにいた3人が思った。

 

「っと、そうだった。まだ君の名前を聞いていなかったことを思い出してな。自分の名前は分かるかな?」

 

忘れるところだったと付け加えて聞けば…

 

「……、おに、しね……、…?」

 

彼は首を傾げながらそう答える。

 

「…それは、名前ではないよ…」

「おれ…ずっと、そういわれた。……けど、ちがう?」

「うん、違う…それは名前ではない…」

 

半助が首を横に振ってそれをやんわりと否定すると、子供はコテンと首を傾げる。

 

「松陽殿、山田先生…この子はもしや…」

「名前を与えられなかった、か…」

「……君のご両親は…お父上とお母上は…?」

 

両親の事を聞かれると、子供は目いっぱいに目を開く。その反応にいち早く気付いたのは松陽だった。

 

「どうしました?」

「……しんだ……」

「え…?」

 

まっすぐと見上げる紅い瞳が一瞬、揺れる。そこで初めて、伝蔵と半助も子供の異変に気付いた。その瞳が…不安からか、ユラユラと揺れているのだ。聞いてはならないことを聞いてしまったと、松陽は自己嫌悪しながら…あえて両親の死因には触れず、子供を安心させるように微笑みながら続けた。

 

「では…君のご両親がまだ元気だったころ…両親は、君のことを何と呼んでいましたか?」

 

問われ、子供は黙る。

 

やはり、この子供に名前は無いのだろうか?

 

そう思ったが…

 

「ぎんいろが、たくさんのひとに、やさしさを…あたえられるように。ぎんいろが、きざむときが…えがおであふれるように…」

「それは…?」

「ははうえ、おれに…いつもいってたこと。ちちうえ、ははうえ…おれのこと、“ぎんとき”…いった」

 

その心配は杞憂に終わった。この子の両親は、ちゃんと子供に意味のある名前を与えていた。それだけが恐らく、この子の救いであり心の支えだったに違いない。

 

「…この子の言葉…恐らくは、“銀色が沢山の人に優しさを与えられるように。銀色の刻む時が笑顔で溢れるように”でしょう。それで両親が“ぎんとき”と呼んでいたのであれば……」

 

松陽は懐から紙と筆を出し、すらすらと紙に文字を書く。

 

「“銀”色の“時”と書いて…“銀時”……」

 

これが子供の名前なのだろうか?否、子供自身がそう言ったのだからそうに違いない。

 

「本当は名字の方も分かるとこの子の住んでいた場所など分かるのかもしれませんが…」

「まぁ、この様子では…住んでいた村にこの子を帰すのは得策ではないでしょう」

「ですな」

 

名字は身分と出身の土地を示すものだ。もちろん、名字だけで分からない場合もあるが大抵は分かる。だが…分かったとしても、この子…銀時の場合は彼の村に帰すべきでなはいと、そう松陽達は判断した。

 

「あとは学園長先生の判断を仰ぎますか…」

「それがよいでしょうな」

 

松陽と伝蔵がそう結論を出した頃、半助は銀時と話をしていた。

 

「銀時か…いい名だな!!」

「……?いい…?」

「ああ、とてもいい名だ!!」

 

こういうとき、どういう反応をしてどういう言葉を返したらよいのか分からない銀時はただ首を傾げるだけだった。

 

「改めて…私の名は半助というんだ」

「……はんすけ……」

「そう、半助だ…覚えたか?」

「はんすけ、おぼえた!!」

「ははっ、偉いぞー!!」

 

初めて覚えた言葉を褒められて、よほど嬉しかったのだろう。銀時は笑いながら半助に飛び付く。その光景は、先ほど伝蔵が言った通り…まるで兄弟のようだった。

 

 

 

「それでは、私と銀時は先に学園の方へ戻ります」

「はい、道中お気を付けて。松陽殿も幕府より狙われている身と学園長よりお聞きましたので…」

「ありがとうございます。なぁに大丈夫。こちらはこちらで何とかしますよ。この子1人護るくらい造作もありません」

 

やがて、伝蔵達はもう一つの目的である実践授業を行うために再び攘夷戦争の戦地へと戻ることとなった。そして、松陽は銀時を連れて一足先に学園へ戻ることとなる。

 

「……はんすけと、やまだせんせ……いない?いっしょ、ちがう…?」

「えぇ、あの2人は少し用事があるので一緒には帰れませんが…しばらくすればまた、学園で会えますよ」

 

半助や伝蔵との別れを惜しんでいるのか、銀時が寂しそうな表情を見せる。もしかしたら、この子はもう一生会えないとか…そういうレベルで2人を見ているのかもしれないと思い、松陽はやんわりと再会できることを伝えた。すると、暗かったその表情はパッと明るくなった。

 

「ははっ、私のことも覚えてくれたのか。いやはや、嬉しいなぁ」

「銀時、大丈夫だ!!私も山田先生も、用事を終えたらすぐに戻る!!」

 

別れが名残惜しくもあったが、授業の一環で来ている以上、何もしないで学園に戻るわけにもいかない。後ろ髪を引かれる思いではあったが、伝蔵と半助は松陽に一礼して再び戦地へと戻っていった。残された松陽と銀時は…

 

「では、私達も行きましょうか。まだまだ学園までは道のりが長いですから…そうですねぇ…」

「………?」

「ほら、銀時…私の背中におぶさりなさい。今日は色々あって疲れたでしょう?」

 

銀時に背中を向けておぶさるように促す。銀時は少し戸惑っていたが、やがて松陽の背中にトンと重心が掛った。

 

「では、行きましょうか」

「せんせ、いく、どこ?」

「忍術学園という場所です」

「…にん…?」

 

そして2人は忍術学園へと向かう。道中、2人は色々な話をした。もっとも、銀時は言葉がうまく使えないため…会話もたどたどしかったが、それでも松陽は銀時との会話を絶やさなかった。

 

この子が少しでも言葉を覚えるように…

 

そう願いながら、松陽はいろんなことを銀時に話して聞かせた。

 

「せんせのなまえ、しょうよう…」

「はい、よくできましたね」

「はんすけ、やまだせんせ、しょうようせんせ…」

「そうです、銀時は覚えるのが早いですねぇ」

 

幼い子供に言葉を教えるように、ひとつできればその度に褒めながら…

 

2人は忍術学園へと足を進めた。




今回はちょっと短めにまとめました^^

ちょっとちっさい銀時の言葉にいろいろムラがあるような気もしますが……まぁ気にしない、気にしない…!!←

現在、こちらの小説で万事屋の子供達と真選組の面々をどのようにして絡めるか考え中です(笑)真選組の面々は何となく浮かんだけど、万事屋の子供達が…^^;万事屋を営んでこそのあの3人って感じもするので…む、難しい(=∀=;)新八を「剣術の腕を上達させるため」という理由で忍術学園に…って思ったけど、それだと金吾とかぶるなーとか思ったり、その前に志村家にそんな金がないだろ、とか思ったり…(笑)まぁ、その辺りは何とか考えます^^やっぱり、新八や神楽、真選組が出てこその銀魂ですからね!!忍たま寄りのクロスオーバー小説と言っても、銀魂メインメンバーはやっぱり出したいです♪

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