遊戯王ではない!デュエルモンスターズだ!! 作:なにかの波動に目覚めたトマト
1つ、遊矢は沢渡に借りたボッキンパラダイスVを返していた。
2つ、タツヤは幼馴染みのままで満足していると負けることを忠告する
3つ、レオコーポレーション、株価大暴落待ったなし!
はじめての授業中にまさかのアクシデント。
今日、来る予定が無かった人達がどんどんとやって来てしまう。どうしてこうなったのかしら……。
「ど、どうぞ」
「御気遣いはいりませんことよ」
如何にも高級車な白いリムジンに乗ってやって来たおばさんに柚子は緊張しながら茶菓子と紅茶を出してもてなすけれども、一触即発な空気で、おばさんの向かい側のソファーに座る塾長は真剣な顔をしている。
「ねぇ、遊矢。今日、デュエルできそうに無い感じかな?」
「権現坂との先約もあるし、凄く不穏な空気が流れてるんだから察してくれ」
なんでこうなると物凄く落ち込んでいる遊矢……と、小さな男の子、素良。
タツヤくん達が言うには私がこっちに来る少し前に遊矢にデュエルを挑みに来た凄腕のデュエリストらしく、遊矢に負けては挑むを繰り返してたみたいだけれど、ここ最近──具体的には私が遊勝塾に来てからは挑んでなかった。
「てか、柚子が増えてるんだけど?」
「あの子は瑠璃、柚子と間違えるなよ。塾長達がそれやらかして柚子を泣かせたから」
「滅茶苦茶柚子とそっくりなんだけど」
「世界には自分のそっくりさんが3人居るという。かくいう俺も既に2人ぐらいそっくりさんがいる……」
私と柚子の見た目がそっくりで驚いているけれども、余り気にしない方がいいわ。
世界には自分のそっくりさんが3人居るって言うのだから。それよりも、このおばさんはいったいなにをしに来たのかしら?塾長が言うには、この次元で最も大きなデュエルスクールの理事長らしいけどアポもとらずにどうしてうちに。
「赤馬理事長、本日はどういった御用でしょうか?
失礼ながら我が遊勝塾は次の舞網チャンピオンシップに向けて力を入れております。アポイントも無しに急な来訪は困ります」
普段とは異なる塾長。
なにをしにやって来たのかを分かっては居るが、言わない。けれども、少し怒っていることは分かる。
「おや、そうでしたか。それは大変失礼な事をしましたわ。
では、社交辞令等は省き本題に入らせていただきます。そちらの榊遊矢の身柄を引き渡していただきませんか?」
「いきなりやって来て遊矢を渡せとはどういった了見で?」
「御存知ありませんか?
最近、LDSの生徒を辻デュエルで狩っているデュエリストが居るという事を……それが榊遊矢だということを!!」
「っ!」
赤馬理事長の叫びに戦慄が走る。
「待ってください。
その件に関してはこちらでも色々と知っていますが、LDSに辻デュエルをしたのは遊矢ではありません!
遊矢の友人でそちらのLDSに所属している沢渡が遊矢に似たデュエリストとデュエルをしたと言っており遊矢でないことは確かで、他にも瑠璃──」
「塾長、ストップストップ」
「お父さん、落ち着いて」
遊矢は無実だと息をあらげて興奮する塾長。
ソファーから立ち上がったので柚子と遊矢が落ち着かせに入るとすまないと一言謝り、少しだけ冷静になりソファーに座った。
「天下のLDSがこの様な小さなデュエル塾の者に負けたとあってはならないのです」
「ですから、遊矢じゃないと」
「襲撃者が榊遊矢かどうかは関係ありません!!」
「「「ひっ!」」」
「このおばさん、怖いね」
「素良、煽るな」
遊矢じゃないと否定し続ける塾長。
赤馬理事長は短気なのかキレてヒステリックに叫び声を上げてしまい、タツヤくん達が怯えてしまう。
「襲撃者が榊遊矢かどうかは最早、関係ありません。
榊遊矢に負けたと言う噂がLDS外にまで広まっていると言う事実がありますもの」
「……大丈夫か、瑠璃?」
「……」
徐々に顔色が悪くなる私の顔をみて遊矢は心配してくれるけれど、その声に私は答えることは出来なかった。
赤馬理事長が何故この件に執着するかは分からない。でも、ハッキリと分かるのは今回の出来事の発端はユート。
ユートが辻デュエルをしなければこんなことにはならなかった。遊矢達は舞網チャンピオンシップに向けて毎日頑張っていた。
「LDSは業界大手No.1でプロ輩出数No.1、昨年はユース、ジュニアユース、ジュニアクラスの3つのコースを総なめにした最強最大のデュエルスクール!LDSの生徒同士ならばともかく他の塾の生徒に例え公式戦でなくとも負けることはあってはならないのです。大きく噂が広まってLDSの顔に泥が塗られました!」
「我々にどうしろと言うのですか!」
「デュエルで泥を塗ったのならば、デュエルで洗い流すのみ!
榊遊矢!我がLDSの融合、シンクロ、エクシーズのジュニアユースクラスの首席とデュエルをしなさい!!」
ビシッと指を遊矢にさす赤馬理事長。
「俺じゃないって言ってるだろう」
「先ほど言ったことをお忘れかしら?
榊遊矢にLDSの塾生が負けたと言う噂は広まっているの。それをどうにかして汚名を返上するにはただ1つ!貴方を倒し、LDSが最強であることを証明すること!!」
「ふざけないで!!」
遊矢を連れていく事は出来ないと分かると挑戦状を叩きつける赤馬理事長。
ずっと黙って話を聞いていた柚子は赤馬理事長の横暴を許せず、ついにキレてしまった。
「さっきから聞いてれば、最強だ汚名返上の為だ遊矢をなんだと思ってるの!!
沢渡は遊矢じゃないって否定しているし、LDSに辻デュエルをするデュエリストにデュエルを挑みなさいよ!!」
「っ……」
遊矢の事を思い、激しい怒りを赤馬理事長に向ける柚子。
言っていることはなにも間違いじゃない。そう、ユートと兄さんにデュエルを挑んで汚名返上すればいい……ただ、それだけなのに。
「何度も言わせないで貰えませんこと?
例え襲ったのが榊遊矢であろうがなかろうが榊遊矢が襲ったという噂は既に流れているのよ」
「だから、遊矢を倒そうと言うのか!?
ふざけるな!!この男権現坂、その様な理由で因縁をつけること断じて許さん!!」
「落ち着きなよ、権ちゃん」
「だから権ちゃんと言うでない!」
「どうせその首席とか言うのと遊矢がデュエルをしても遊矢が勝つんだから、慌てる必要なんて無いよ」
「あら、随分と大きな口を叩きますわね」
……
「大丈夫か、瑠璃。無理っぽいなら引いても──」
「ごめん、なさい……」
兄さん達を止めに追い掛けて、間に合わなかった結果、遊矢をくだらない目的の為に利用される羽目になった。
その為に柚子も権現坂も、タツヤくん、アユちゃん、フトシくん、塾長が怒っている……兄さん達のせいで、こんな事に!!
「大丈夫だ──どうせ俺が勝つ」
「強いから問題ないのと心配しないのは話が別よ!」
きっと遊矢ならLDSの首席3人を軽々と倒すけれども、それとこれとは話が別なのよ。
「遊矢だけって、1対3なんて卑怯よ!!」
「では、3対3の団体戦は……おっと、失礼。
遊勝塾はジュニアユースクラスのデュエリストが2人しか居ませんでしたわね。
そちらの3人の誰かがデュエルをしてくださるのかしら?言っておきますが、手加減はしませんわよ?」
「だったら、僕が!!」
「いいや、オレが痺れさせてやる!!」
「私が戦うよ!!」
「否、ここはこの男権現坂が」
「いや、お前はうちの塾生じゃないからアウトだよ」
「け、けしからーん!!指を咥えてろと言うのか!?」
「だって、君、遊勝塾の生徒じゃないじゃん。ま、それを言うなら僕もだけど。出れるんだったら力を貸してあげたいけど無理っぽいよね」
「構わないわ!私と遊矢が2勝すれば3人目が誰であっても」
騒ぐ遊勝塾一同を一喝し、静かにさせる塾長。
さっきまで授業を受けていた人なのかと思うほどで、遊矢も予想外だったのか目を見開いていた。
「赤馬理事長、その様な理由でのデュエルは承知致しかねます。
私の先輩は見るものを笑顔にさせるエンターテイメントデュエルをしていました。
私事として残念な事に遊矢はそれを苦手としておりますが、デュエルは楽しくて面白くて笑顔になるものだと言う気持ちは受け継いでおります。そして我が遊勝塾の面々はそんな遊矢に影響されデュエルは笑顔になるものだと思っております」
「笑顔、ですか?
お笑い草ですね。人を笑顔にさせるエンタメデュエリストである貴方の先輩で榊遊矢の父は、貴方を含めて誰よりも多くの人を悲しませたじゃありませんか」
どういう、こと?
昔の事を掘り出されると気まずそうな顔をする塾長。
柚子も俯いて目を合わせない様にしており遊矢も嫌そうな顔をしている……よくよく考えてみれば、私は遊矢の事を良く知らない。力を貸してくれるこの次元の住人と言うだけで、他にはなにも知らない……でも、こんなに静まりかえるだなんてなにかがあったのよね。いったい、なにがあったの?
「それにこの勝負、貴殿方は受けなければなりません!」
「どういう意味でしょうか?」
「今はまだ、LDSの生徒しか辻デュエルの被害にあってません。
ですが、その内、LDS以外の生徒に被害が及べばどうなるのか?例えばそう、LDSに次ぐプロ輩出数No.2の梁山泊塾の生徒を襲ったとすれば……あそこは
「それ言ったら、ここで俺がデュエルしても真犯人を捕まえないとなにも変わらないだろう」
「ええ、ですので、もし遊勝塾が勝てば噂が榊遊矢ではないと此方側が否定いたします」
「……食えないBBAだこと」
絶対に断れない状況を作り出す赤馬理事長。
今はまだ、いえ、既に大変な事にはなっているけれどもハートランドよりはましなこの状況。
これより更に酷くなりたくなければデュエルに応じなければならない。
「そしてLDSが勝った場合はこの遊勝塾をLDSの物とさせていただきます」
「ちょっと待って、話が飛びすぎてるわよ!!
LDSの汚名返上の為に来ているのにどうしてうちを乗っ取る話になっているのよ!」
「柚子、落ち着け。
赤馬理事長、近年LDSは様々なデュエルスクールを買収していると噂を聞いております」
「御存知でしたか。
つい、先日まで海外の有名なデュエルスクールを買収しておりまして……帰国した際には驚きましたわ。まさか、ペンデュラムと言う新たなる召喚法が見つかったことを」
段々と本性を表していく赤馬理事長。
この人は最初から汚名返上の為でもなんでもない……遊矢が持つ、エクシーズでもシンクロでも融合でも儀式でもない、ペンデュラムモンスターが狙いだったのね。
「榊遊矢くん、ストロング石島との試合を見させていただきましたわ。
1ターンで複数のモンスターを同時に召喚するどころか、シンクロ、エクシーズ、融合まで行った……ペンデュラムの力は凄まじい。そしてLDSの生徒達はこう思ったでしょう。ペンデュラム召喚を使いたいと。
聞いた話によればストロング石島との試合の翌日、遊勝塾に入塾希望者が殺到したは良いもののペンデュラムカードが無いので教えることは出来ないと期待を裏切ったそうで」
「無いもんは仕方ないだろう」
「ええ、そうです。無い物は仕方ありません……ならば、作れば良い!!
レオコーポレーションの力ならば、榊遊矢のペンデュラムカードのデータを基にペンデュラムモンスターやそれらに関するカードを作ることができる!!融合、シンクロ、エクシーズに次ぐペンデュラムコースを作れる!」
「最初からそれが目的で……赤馬理事長、まさかこの噂は貴女が遊勝塾を乗っ取る為に」
「それは違います。ですが、チャンスとは捉えております。
ペンデュラムモンスターのオリジナルと4つの召喚を使いこなすデュエリストを手に入れるチャンスを逃す訳にはいきません」
「っ……遊矢を物みたいに」
「落ち着け、柚子」
「でも……」
「暴力沙汰はまずい」
遊矢を物みたいに扱う赤馬理事長にハリセンを手に取る柚子を抑える遊矢。
言葉にしていないけれどタツヤくん達も怒っている。
「この遊勝塾を渡すわけにはいきません。
そしてデュエルは喧嘩の道具じゃない。それでもしなければならないと言うのなら、遊矢達には戦わせられない!!私が相手になります!!」
「それは困りますわ。
買収が1番の目的ですが、汚名返上も目的の1つなのです。その為には必ず榊遊矢をデュエルで倒さなければなりません!!
榊遊矢が1人で融合、シンクロ、エクシーズの3コースの首席を倒すか、榊遊矢を含めた遊勝塾の3名が団体戦として相手をするのか、2つに1つ!!」
「なによ、それ……」
静かに怒る柚子。
前者は遊矢にかかる負担が大きい。後者は遊矢が勝てたとしても、他の誰かが負け続ければ勝った意味が無くなる。
遊勝塾側が圧倒的に不利な条件を突きつけてデュエルを挑んでくる赤馬理事長、いえ、LDS。応えなければ、遊勝塾が大変な事になる。
「遊矢……すまない。また、お前に色々と背負わせてしまって」
「謝らないでくれ、塾長。
遊勝塾を乗っ取られると1番困るのは塾長なんだし、このままだと折角作った教科書とか無駄になる。父さんが帰って来た際にお前の席無いからなと言えなくなる……ところで赤馬理事長」
「日を改めてデュエルならば構いませんわよ?」
「いや、そうじゃなくて……レートの調整をお願いしたい」
「レートの調整?」
戦う事を決めた遊矢。
塾長の隣に座り赤馬理事長に交渉をはじめる。
「俺達が負けた時のリスクとLDSが負けた時のリスクの差が違いすぎる」
「確かに、小さいとはいえデュエルスクール1つの運命と榊遊矢ではないと言うだけでは足りませんわね。
でしたら最新のリアルソリッドビジョンやデュエルディスク等はどうでしょうか?勿論、ここに居る皆様の分も」
「んな生易しいもんじゃなくてもっとエグいのくれよ。
あんたが所有するレオコーポレーションの株全部を乗せてくれねえと、デュエルには応じない」
「なっ!?」
遊矢、なにを要求しているの!?
どさくさ紛れにとんでもない事をさっき言っていたけれども、それをも上回るものを要求し周りを驚かせる。
「そんなふざけた事は出来るわけありません!!」
「なにを言い出すかと思えば、ふざけてるのはそっちだろう。
遊勝塾が乗っ取られれば塾長は塾長じゃなくなって今の生活が崩壊するんだ。だったら自分の生活を崩壊させるぐらいの物を賭けて貰わないと困る。それが出来ないならばデュエルには応じられない」
「応じられない、応じないといけない状況を理解して──」
「今までの様に立ちはだかるのならば全て薙ぎ倒せば良い。
なんならば舞網チャンピオンシップにでて汚名を雪げばいい。俺の公式戦は2戦2勝0敗で止まっている。
権現坂や権現坂道場のデュエリスト、柿本達にデュエルを挑めば無敗の6連勝であっという間に舞網チャンピオンシップに出場できる」
あ、あれ?
優位だった筈の赤馬理事長が何時の間にか不利になってる。
「勿論、そんな事をさせるのだからこっちのレートも引き上げる。俺の持つこんなカードも差し出そう」
複数のデッキケースからカードを取り出し、伏せた状態で並べる遊矢。
オープンしてみろと言う意味合いだと理解して赤馬理事長が1枚カードをオープンした。
「これは、シンクロモンスターのペンデュラムモンスター!?」
赤馬理事長がオープンしたカードはクリアウィング・ファスト・ドラゴンというペンデュラムとシンクロの2つを併せ持つモンスター。
「驚くのはまだ早い。エクシーズペンデュラム、融合ペンデュラムモンスターもある」
2枚目、3枚目と未知のカードを見せる遊矢。
エクシーズペンデュラムは何処となくユートのダーク・リベリオンに、融合ペンデュラムは遊矢とユートに瓜二つなアカデミアの使っていたスターヴ・ヴェノムにそっくりだった。
「残りの3枚は」
「ここから先は見せられないな。見たければ遊勝塾を買収してからじゃないと」
6枚のカードを1つのデッキケースに戻す遊矢。
「この条件ならばデュエルをしてやる」
デッキケースをテーブルの上に置く遊矢。
カードのテキストがよく見えなかったものの、デッキには融合、シンクロ、エクシーズのペンデュラムモンスターが入っている。ペンデュラムモンスターが目的の赤馬理事長の視線は自然とデッキケースに向いている。
「……いいでしょう。ただ、こちらが勝てばそのカードだけでなく貴方の持つカードを全ていただきます」
「構わない」
交渉は成立し、ジュニアユースクラスのデュエリストを連れてくる為に一度、出ていく赤馬理事長。
「ふぅ……俺、こういうの得意じゃないんだからもうちょっと頑張ってくれよ、塾長」
出ていった事により肩から力が抜けたのか、ソファーにもたれかかる遊矢。
腕で目元を覆い翳し、塾長に対して小言を飛ばす。
「つーことだ。今から遊勝塾の命運を賭けるマッチ戦がはじまるから今日の授業はここまでで明日以降に持ち越し。権現坂、デュエルが出来なくなったから帰っても良いんだぞ?」
「戯け!!
遊勝塾の命運を友が背負い戦っているのだぞ!例え、戦うことは出来なくとも応援をすることはできる。全力をもって応援をさせてもらおう!!」
「素良は?」
「僕も応援させてもらうよ。
遊勝塾が無くなると遊矢と面白いデュエルができなくなるからね」
「そうか」
一丸となる遊勝塾の面々……。
「……ちょっと外の風に当たってくる。さっきの交渉、マジでキツかった」
その光景を見た遊矢は外に出ていった……。
「遊矢にばかり頼っていられないわ。
団体戦のメンバーは3人で向こうはジュニアユースクラスの首席達。一人は私として、もう一人を選ばないと」
「権現坂と素良はうちの塾生じゃないし、俺達3人の中で1番強いのはタツヤだよな」
「うん。だけど、僕じゃなくて瑠璃姉ちゃんが良いんじゃないかな?」
「そうか!瑠璃は塾生ではないが遊勝塾の一員!ならば、ルール上はなにも問題は……瑠璃は?」
私はなにも言わず、応接室を出ていく。
「おい、大丈夫か?泣きたい時は泣いて良いんだぞ?」
向かった先は外で風に当たり、涼んでいる遊矢。
私を見て大慌てするけれど、それでも優しい言葉を掛けてくれて駆け寄ってくれる。
「……私達は、来なければよかった」
こんなことになったのは私達がこの次元にやって来たせい。
ユートと兄さんがこの次元で暴れてしまったせいで、無関係な遊勝塾がこんな事になってしまった……私達は疫病神よ。
「瑠璃は関係無いだろう」
「関係、あるわ……こんな過激な事を発案するのは兄さん。
兄さんは過保護だったけれど、あの日から兄さんは過激さが増して、それで」
こうなったのはユートが原因で、ユートにこんな事をさせたりしているのは兄さん。兄さんがそんな過激なことをするようになったのは拐われそうになった私のせい。
「今回は俺の問題じゃなくて遊勝塾の問題だ。だから、3対3の団体戦だ。こっちは俺と柚子……後、一人必要だ」
「遊矢?」
「自分を責めるぐらいなら、自分に出来ることを探せよ」
怒られても仕方ない、遊勝塾に不幸を呼び込んだのに怒らない。それどころかチャンスをくれた
「ありがとう……ありがとう、遊矢……」
絶対に、絶対に勝ってみせるわ!
「礼を言うのはまだ早いぞ。デュエルで勝たな──」
「遊矢、3人目なんだけど瑠璃に……なにをしてるの?」
「なんでこうなるんだろ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━1時間後━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「あら、3対3の勝負でよろしいのですか?」
1時間後、赤馬理事長はLDSのジュニアユースクラスの融合、シンクロ、エクシーズコースの首席の3人を引き連れて私達と対峙をする。
「これは遊矢一人の問題でなく遊勝塾の問題です。遊矢だけでなく、遊勝塾で戦います」
「もしかしたら勝てる可能性を捨てて……まぁ、よろしいですわ」
「赤馬理事長、さっきの約束を忘れてないだろうな?」
「勿論です。ただし、貴方達が勝てれば、ですけど……ところで何故二人は正座をしているのですか?」
「ToLOVEるがあったんだ、気にしないでくれ」
正座をする私と遊矢。
暖かい言葉をくれて思わず遊矢に抱きついてしまったけれども、今はそんな事をしている暇は何処にもなかった。
私を3人目として迎え入れようと遊矢に相談に来た柚子にハリセンで叩かれて、怒られてしまい私達は正座をしている。
「正座で足が痺れたからアクションカードが取れなかったなどの言い訳は通用しませんが……向こうから弱くなってくれる事はこちらにとっては喜ばしい事です」
「ナメるな、権現坂と共に座禅の修行もしているんだ。正座ごときで痺れるほどの俺じゃない」
ごめんなさい、私は痺れてるわ……。
「それではまずは最初のデュエルを。
此方はLDSのエクシーズコースの首席である志島北斗を出します」
星座を模した独特の髪型の男子が一歩前に出る。
エクシーズコース、ということは相手はエクシーズ召喚を使うのね。
「ならば、先手必勝!!遊矢、お前の──」
「「待って、私が相手をするわ!!」」
塾長が遊矢を指名するけれど、私と柚子が声を遮った。
まさか柚子も同じ事を言うとは思わず、柚子も私が同じ事を言うと思っておらず互いの顔を見合う。
「瑠璃、遊勝塾の為に立ち上がってくれたのは嬉しいわ。
でも、ここは私に任せてくれないかしら?今まで遊矢に無茶をさせていたの。でも、今回は違う」
「柚子、気持ちは分かるけれど私に譲ってくれないかしら?
相手がエクシーズ召喚を使うのなら、私の方が圧倒的に分があるわ」
この次元じゃエクシーズ召喚を教えだしたのはつい最近でレベルが低い。
エクシーズ召喚が出来ればスゴいと尊敬の眼差しを受けるけれど、ハートランドではエクシーズ召喚ができて当たり前。相手がなにをしてくるか大体分かるし、私なら確実に勝つことが出来るわ。
「それを言うなら、これはアクションデュエルよ。
瑠璃の住んでたところは普通のデュエルをしてアクションデュエルをしたことは無いでしょ?」
っ、確かにここのデュエルはハートランドのデュエルと大分異なるアクションデュエルだ。
柚子はそんなアクションデュエルの大会で準優勝をするほどの実力を持っている。
「柚子、彼のデッキとの相性は大丈夫なの?
少なくとも私のデッキなら相性関係無しに先攻1ターンキルで終われるわ」
柚子のデッキはモンスターを並べて攻撃して相手のライフを0にするデッキ。
弱点は攻撃力が低いことで簡単に召喚できるエクシーズモンスターならあっという間に越えられる。効果ダメージも与える事の出来る私のデッキならば例え相手のデッキがなんであれ勝てる。
「相手はエクシーズコースの首席なのよ?
それはつまり他のエクシーズコースの人達とデュエルをしているということ、エクシーズの対策の1つや2つしているはず。私のデッキは融合
ああ言えばこう言い、こう言えばああ言う柚子と私。
このまま言い合っていても埒が明かず、デュエルで決着をつける時間は何処にもない。見た目も同じだけでなく考えることも同じなのか対戦相手の北斗を見る。
「「私達のどっちとデュエルをするの!!」」
譲り合うつもりは私にも柚子にも無い。
だったら、対戦相手を選んでもらうわ!!
「あの……榊遊矢とデュエルをしたいんだ──」
「「は?」」
「ひぃ!?」
この人は話を聞いていなかったの?
私か柚子のどちらかを選ばなければならないのに、なんでよりによって遊矢を選ぶの?
「お父さん、私と瑠璃、どっちが良いの!!」
「え、えっと……俺は遊矢を指名したんだが」
北斗が無理なら塾長にと聞くけれども、塾長も遊矢を推す。
チラリと遊矢を見てみるとコロンビアポーズを取っておりドヤ顔になっている。その姿は柚子を苛立たせたのかハリセンで叩かれる。
「あ、俺は2番手にデュエルをするつもりだから1番手に出ないぞ」
「なんで2番手なの?」
「三本勝負で2勝しないといけない。
勝とうが負けようがどっちでも試合が続く1番手で勝ったとしても、後の二人が負けたら話にならない。
最初のデュエルで勝ったら俺がとどめをさす。負けたら俺が巻き返す。だから、俺は2番手。本当なら3番手にいきたいけど、万が一の2連敗はちょっとな」
遊矢の言葉に成る程と納得をする。
3本勝負は3本勝負でも、1人が3回戦うのでなく3人で1回ずつ戦う。遊矢が絶対に負けないのは分かっているから、どちらかが勝てば良い……だったら、尚更出ないと。
さっき色々と言ったけれども柚子は強い。何度かデュエルをして勝ったり負けたりを繰り返して連勝数では私の方が上だけれど総合的に見れば柚子の勝った回数の方が多い。柚子ならば絶対に勝ち、遊矢が勝ってこの戦いは終わる。
それに越したことは無いけれども、迷惑をかけた遊勝塾に償うことができない。
「遊矢、私と瑠璃、どっちが良い」
「じゃあ、柚子で」
「っしゃあ!!」
「っ……そんな……」
最終的に遊矢に指名権を与えると、遊矢は迷うことなくあっさりと柚子を指名した。
柚子なら北斗を倒すことが出来る。次の遊矢のデュエルで二本先取してしまい、遊矢や遊勝塾の皆に──
「瑠璃、万が一の時は頼んだぞ」
「……」
「柚子は無敗でも無敵でもない、負ける時は負けるんだ。
もしそうなったら俺一人が強くてもどうにもならない……もう一勝はお前が──」
「ウソつき」
そんな事を言って、誤魔化そうたって無駄なのよ?
柚子が遊矢の事を信頼している様に、遊矢が柚子を信じているのは言わなくても分かるわ。だから、安心して柚子の背中を後押しして見送る事が出来るのよね。
「ウソつき」
遊矢が嘘をついている。
大事な事なので2回言った。
「ああ、俺はウソつきだ」
遊矢はウソつきを否定せず、認めた。
「私のこと、信頼してくれないの?」
「今ここで信頼や信用を使う場じゃないとだけは言える……お前はなんでここに居る?」
「……ズルい」
私がスタンダードに来たのは遊勝塾でエクシーズを教えるためでも遊矢と再会するためでもない。ユートと兄さんを止めるために追いかけてやって来た。ここでエクシーズ召喚を教えているのは遊矢達へのお礼の様なもの。
遊矢は兄さん達と対峙した時に私を選んでくれると言ったので私はこれ以上はなにも言わない。ただ言えることは、遊矢はズルくてウソつきな男だったってこと。
「対戦カードが決まったから、外野となる俺達は出るぞ……瑠璃?」
「ご、ごめんなさい、足が痺れたわ」
さっきの正座の影響が今になって襲ってきた。
両足に刺激を与える度に物凄く痺れるこの感覚、デュエルフィールドの外まで歩き抜く事ができるかしら
「全く、いくぞ」
「きゃっ──ゆ、遊矢?」
歩けない私を抱き抱えてくれる遊矢。
私を軽々しく持ち上げるなんて……体が細いけれど、筋肉はかなりあって……暖かい。
「試合に勝って勝負に負けた……っ」
「あの、そろそろデュエルをしたいんだけど」
試合には負けたけれど、勝負には勝った様な気がするわ。
こうして遊勝塾の命運を賭けたデュエルの幕が開けた。
OMKフェイズ
権現坂「ううむ……世界には自分と同じ顔が3人居ると言うが、柚子と瑠璃は本当に瓜二つだな」
遊矢「よく見ろよ、大分違うぞ?」
権現坂「違うと言われても、何処が違うのか俺にはさっぱりだ」
遊矢「髪の長さとか目の色とか身長とかおしとやかさとか」
権現坂「確かに言われてみれば、瑠璃からは柚子のストロングさが感じれず、代わりにおしとやかさが感じれる」
遊矢「後、おっぱい」
権現坂「け、けしからーーん!!遊矢よ、幼馴染みと瓜二つの女性をなんという目で見ておるか!!」
遊矢「幼馴染みのそっくりさんだ。
まぁ、とにかく似ているだけで完全な別人で髪型を変えてもバレバレなんだから見間違うなよ。
あんま言わないけど、全員から一回は間違われてしまったのを瑠璃は気にしているんだから」
権現坂「話をそらすな!まったく……そういえばLDSに辻デュエルをしている者が遊矢のそっくりさんなのだろう?」
遊矢「そうだけど、どうした?」
権現坂「赤の他人の筈なのに同じ顔の人間が近くに二人もいる。
となれば、もしかすれば俺にそっくりなデュエリストが舞網市の何処かに居るのかもしれん!!他にも沢渡のそっくりさんに塾長のそっくりさん、フトシのそっくりさんも居るやもしれん!!」
遊矢「一応聞いておくが、権現坂のそっくりってどんな感じだ?」
権現坂「モヒカンヘアーでメインデッキにモンスターを入れず、罠と魔法だけで戦うデュエリストだ!!」
遊矢「精神操作とか超融合でカードをパクるデュエルをしてくるのか……」
次回予告
やめて!プレアデスの効果を今ここで発動したら、プレアデスを戻すしかなく、北斗のフィールドががら空きになっちゃう!
お願い、負けないで北斗!
あんたが今ここで倒れたら、赤馬理事長の持つレオコーポレーションの株が全て奪われるのよ!
デュエルは終わっていない、ここを乗り切れば柚子に勝てる可能性があるんだから!
次回、遊戯王ARC-V【ワンキル!宿題の答え合わせ】にデュエルスタンバイ!