遊戯王ではない!デュエルモンスターズだ!!   作:なにかの波動に目覚めたトマト

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前回までのあらすじ

バスター・ドラゴン

「汝は竜なり!!」

バスター・ブレイダー

「ドラゴンだ!!ドラゴンだろう!?なあ、ドラゴンだろうお前!守備表示になれよ!!なあ!!!」

ドラグーン・オブ・レッドアイズ

(【∩ ∩】)< 死にたいらしいな?




隼の逆鱗(シスコン爆発)

 おじさんの行方とレオコーポレーションの株を賭けた予想外の4戦目。

 相手はジュニア、ジュニアユース、ユースを総なめし最年少でプロデュエリストになった赤馬零児。

 レオコーポレーション製のペンデュラムカードを搭載したデッキで挑み、最初のターンに融合、シンクロ、エクシーズの3つの召喚法を見せつけた……けど、あっさりと1ターンキルされて敗北した。

 

「デュエリストじゃない俺を侮ったな……4つの召喚法を使えるだけで息巻いているお前ごときが俺に勝てると思ったか?」

 

 まるで最低最悪の魔王の様に赤馬零児を見下す遊矢。

 

「零児さんが……」

 

 この場に居る誰よりも赤馬零児の強さを疑っていなかった赤馬理事長は震える。

 私自身、疑っている。天才デュエリストと言われる赤馬零児がこうもあっさりと負けるなんて……。

 

「皆、勝ったぞ」

 

 ……。

 

「え、柚子?」

 

「遊矢、よね?」

 

「どうしたんだよ、急に」

 

「さっきの怖かった」

 

 私はそう言うと遊矢の胸に倒れる。

 

「ドラグーン?」

 

「カード的な意味じゃなくて、遊矢の方よ」

 

 ドラグーンの方は確かに恐いけど、もっと怖いのは遊矢。

 赤馬零児を倒した後の遊矢は冷たく鋭くとても怖かった……。

 

「デュエルは楽しくて笑顔になるもの。何時もそう言っているのに、あれじゃあ皆が怯えるだけよ」

 

「そうか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「……結構、ノリノリで言ったんだけどな」

 

「遊矢にとっては極々普通のことでも見ている私が怖いのよ」

 

「じゃあ、柚子に笑顔になって貰おうか……」

 

 そう言うと遊矢は私を抱き締め、優しく撫でる。

 

「今回の1番の金星は柚子だ。

宿題の答えを一瞬で出して、アクションカードを相手に持たせなにも出来ない様にする高度なプレイを見せた。

今回の舞網チャンピオンシップ、お前ならきっと優勝できる……強敵は権現坂」

 

 甘く優しい言葉で私を褒める遊矢……ズルいな。

 なんでこんなズルい人を好きになっちゃったんだろ?幼馴染みだから?……う~ん……冷徹な鬼に見える時もあるけど、遊矢は本当に優しくて、本当は遥か先に居るのに後ろを振り返って私達を──

 

「オホン!二人とも、自分の世界に入っているが良いか」

 

「へ?」

 

「柚子お姉ちゃん、物凄く自分の世界に入っていたよ?」

 

 権現坂の咳払いで意識を現実に戻す……。

 

「アユちゃん、そのカメラは?」

 

「……!」

 

 何処からか持ってきたカメラでさっきまでの私達を撮影していたアユちゃん。

 無言でサムズアップしないで!

 

「アユ、後でオレにも写真をくれよ!」

 

「良いけど、コピー代は出してよ」

 

「遊矢兄ちゃんと柚子姉ちゃんの思い出の1ページが出来たね」

 

「3人とも!からかわないで!私と遊矢はまだ付き合ってないわ」

 

「……まだなんだね」

 

「今年の舞網チャンピオンシップに優勝したらと意気込んでおる。

友として応援をしてやりたいが、勝負は譲れん……なんとも歯痒い気持ちだ」

 

 素良、権現坂、なにをコソコソと話してるの!!

 

「付き合ってないなら、そこまでよ!!

ほら、遊矢。居なくなったお父さんの居場所を聞き出すんでしょ?」

 

「ちょ、瑠璃」

 

 私を抱き締めていた腕を無理矢理引っ張り、赤馬零児の目の前に連れていく瑠璃……。

 

「やっぱり、瑠璃は遊矢の浮気相手なのね……」

 

「ゆ、柚子お姉ちゃん?」

 

 ええ、分かってるわ。まだ遊矢は私の物じゃない。

 けれど、何れは私の物になるのよ。遊矢だってこんな事をするってことは待ってるってことなんでしょ?私は遊矢の幼馴染みで遊矢のあんな事やこんな事まで知ってる。幼馴染みが負け犬属性なんて今時古いわ!

 でも、苛立つわね。自分と同じ顔が遊矢と仲良くしているからかしら?遠回しに見た目は美少女でもその性格は無理って言われてる気がするし……瑠璃より私の方が良い女だと教えないとダメかしら?それとも遊矢の方から好きだって言わせる様に仕向けないといけないかしら……。

 

「零児、デュエルは俺の勝ちだ。

約束通り父さんの居場所を教えて、父さんとストロング石島のスペシャルマッチを──」

 

 

──ピリリ

 

 

 赤馬零児におじさんについて聞くと、携帯が鳴った。

 私達の周りでなく、赤馬理事長への電話で今、良いところなのに電話が鳴ったので空気を読めよと周りは冷たい視線を送る。

 

「失礼。中島、なにかあり……なんですって!?」

 

 電話に出ると急変する赤馬理事長。

 何事かと思っていると、赤馬零児の元へと駆け寄り耳打ちをする……なにかしら?

 

「なに、マルコが?」

 

「マルコって、マルコ先生のこと!?」

 

 なにかを聞き驚き、言葉を溢す赤馬零児に反応する真澄。

 マルコ先生ってことはLDSの講師よね?その人がなにかあった……いえ、ちょっと待って。

 

「すまないが、その話はまた今度だ」

 

「お前、契約を踏み倒すのか!!」

 

「違う。知っての通りだが舞網チャンピオンシップはレオコーポレーションが運営だ。

榊遊勝の居場所についてもスペシャルマッチをするにしても、舞網チャンピオンシップを終えなければ話にならない」

 

「……上手いことを言いやがって」

 

「ふっ、デュエルには負けたものの交渉では私の方が上手だ」

 

「それはどうかな……さっさと帰れ!」

 

 嵐の様にやって来て、騒動を起こしたLDS。

 私達はLDSに全勝し、遊勝塾を守り抜く事に成功した。

 

「……ねぇ、遊矢」

 

「ん~……襲われたんだろうな」

 

「やっぱり」

 

「なにがやっぱりなの?」

 

 遊矢は分かっていたみたいだけれど、瑠璃は分かってはいない。

 言わないで……ううん、言った方が良いわね。

 

「LDSの襲撃犯はまだ捕まっていないわ。

さっきの赤馬理事長の電話で出たマルコってLDSの講師、襲われたんじゃないかって」

 

「!……」

 

 必死になってデュエルをしていたから忘れかけていたけれど、LDSを襲撃しているユートは捕まっていない。

 エクシーズ召喚を使いこなすユートはかなりの実力者で、真澄達3人のデュエリストよりもレベルは上でLDSの講師にも勝つことが出来る筈。

 ありえない話でなく、ここ最近の騒動と今の電話からしてそうである可能性は高く、瑠璃は一瞬にして落ち込み悲しそうな顔をする。

 

「早いところ見つけないとな。このままだと、俺はまた無実の罪で色々と言われるし……」

 

 最後の最後で悲報があったけれど、LDSとの対抗戦は終わった。

 遊矢は赤馬理事長が持っていたレオコーポレーションの株を入手し、一瞬にして億万長者にランクアップ。

 更におじさんの行方やおじさんとストロング石島のスペシャルマッチの開催を漕ぎ着け、遊勝塾を担保に色々なものを手に入れた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━数日後━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 社長が契約を踏み倒し(比喩)て数日後、LDS兼レオコーポレーション本社前へとやって来た俺……達。

 

「なんでお前まで来てるんだよ」

 

 スーツ姿のキャリアウーマンな格好の柚子がついてきた。

 今からやるのは株を貰うだけで、レオコーポレーションの仕事とかしないぞ。

 

「タイム」

 

「?」

 

「えっと、先ず私が来たのは遊矢を手伝うためよ。

レオコーポレーションの株を大量に持ってても仕方ないから、会社を動かせるレベルから株主優待が出来るレベルまで売って一部を遊勝塾に振り込んでくれるんでしょ?」

 

「まぁ、そりゃあな」

 

 赤馬婆が所有する株の量は凄まじく、持ってたらなんかややこしい仕事をしなければならない。

 ある程度は現金に変えて好き勝手出来るようにしようとは思ってはいる。

 

「私は遊勝塾の経理よ?」

 

 いや、お前は塾生だろ。

 

「お父さんに渡したところで基本的な使い道しか無いし、振り込めば色々とややこしいお金になるわ。こういうお金の管理は私がしないと」

 

「ん~まぁ、柚子なら絶対に大丈夫って安心感はあるな」

 

「ありがとう……それでね、遊矢」

 

「なんだ?」

 

「それを踏まえた上で……なんで瑠璃がOKで私は邪魔者扱いなの?」

 

 レオコーポレーションの本社に来たのは、俺と柚子と瑠璃。

 当初の予定では俺と瑠璃で……ぶっちゃければ柚子は邪魔者であった。

 

「なんで私を邪魔者扱いするのよ……瑠璃の方が貧乳なのに」

 

「なっ、なんで今そんな話をするの!?て言うか、貴女もそんなに大きくないじゃない!」

 

「だって、最近貴女の遊矢を見る目が変わってるじゃない!!

あのユートが原因で遊矢に冤罪を掛けられた時、自分のせいだって泣いて遊矢に励まして貰って……ズルい!!」

 

「ズルく無いわ!そういう貴女こそ、周りから遊矢のガールフレンド認定されてるじゃない!!」

 

「瑠璃のせいでそのポジションが危ういのよ!!タツヤくんがこのままだと本当に危ないよって言ってるし……」

 

「努力が足りないんじゃないかしら?」

 

「お前等、やめてくれ……」

 

 死ぬほど恥ずかしい。別次元に逃げたい気分だ。

 

「あんた達、なにやってんの?」

 

「あ、真澄ん」

 

「真澄ん!?馴れ馴れしいわよ、あんた!!」

 

 瑠璃と柚子の痴話喧嘩を白い目で見ていた真澄ん。

 今までの会話を聞かれていたと俺は真っ赤になった顔を両手で隠し、腰を降ろして縮こまってしまう。

 

「数日ぶりね、柊柚子」

 

「柚子はこっち、私は瑠璃よ」

 

「え、あ、嘘!?」

 

「嘘じゃないわ……なんで皆、間違うのかしら?」

 

 カッコつけて柚子に挨拶したと思ったら瑠璃でテンパる真澄ん、マジ真澄ん。

 大本を正せば同一人物だから間違うんだ。仕方ない。

 

「数日ぶり、元気にしてた……って、間柄じゃないわね」

 

「え?」

 

「なにを驚いてるの。私達はまだ知り合いレベルで、お互いの事をよく知らないのよ?」

 

 柚子、やめろ。そういうこと言うと真澄んマジで傷つく!

 

「そ、そうよね……まだ、お友だちじゃないわよね……グス……」

 

 もうちょっと泣いちゃってるじゃないか!!

 

「そ、それでなんの用なのよ?」

 

「ほら、この前の対抗戦で遊勝塾が勝ったでしょ?

私達が勝ったら赤馬理事長の持っているレオコーポレーションの株を遊矢が貰うって約束だから貰いに来たのよ」

 

「そ、そう」

 

 サラッと言ってるけど、かなりとんでもない事で引いている真澄ん。

 よくよく考えればあの3人に赤馬婆の運命を賭けてデュエルをして、悲惨な目に遭ったんだよな……かわいそうに。

 

「あ、そうだ。

株の引き渡しとかが終わったらデュエルをしない?

融合を覚えてから遊勝塾の子達としかデュエルをしていないから、他のデュエルスクールの人とデュエルしたいの」

 

 この前の北斗はノーカンか。

 

「だから私が相手をしろって?

舐めないで、確かに榊遊矢には負けたけれど融合を覚えたての貴女になんか負けないわ!」

 

 デュエルはしてくれるのか。

 真澄んはマジで真澄んだなと生暖かい目で見守っていると、視線を感じたのか俺を見てゾクリとする真澄ん。

 直ぐに浮かない顔をし、俯いてしまう。

 

「どうしたの?」

 

「……別に」

 

「別にじゃないわ、今にでも泣きそうな顔をしているじゃない。辛いことがあったのなら私で良ければ相談に乗るわ」

 

「……マルコ先生が数日前から行方不明なのよ」

 

「マルコ先生?」

 

「私の先生で、融合コースの講師よ」

 

 グイグイと聞いてくる柚子に根負けし、話し出す真澄ん……あれ、そういえば

 

「行方不明って、またどうして」

 

「知らないわよ!!……この前の最後のデュエルが終わった後に掛かってきた電話はマルコ先生が襲われたって内容で、あの日から授業も無くて音信不通で」

 

「待って、今なんて言ったの?」

 

「だから、襲われたのよ!榊遊矢、じゃなかった。LDS狩りのデュエリストに」

 

「そん、な……」

 

 真澄んからのマルコ先生行方不明の話を聞き、膝をついてorzの姿勢になる瑠璃。

 どうしてマルコ先生が居なくなったのかを直ぐに理解し、体が小刻みに震えており冷や汗を流している。

 

「行くぞ、瑠璃、柚子」

 

「……」

 

「瑠璃……」

 

 レオコーポレーションの株を貰うのは中止。

 俺は瑠璃を起こして手を握り、レオコーポレーションを離れていき人気のない路地裏のベンチに座らせる。

 

「大丈夫なんて言わせないぞ、お前はもう大丈夫じゃないんだから」

 

 瑠璃の隣に座り、肩を抱き寄せる。

 

「ねぇ、遊矢。

そのマルコ先生が行方不明な原因を瑠璃は知っている──違うわね。そろそろ隠していることを教えてくれないかしら?」

 

「教えるにしても瑠璃の口からだ」

 

 素良と瑠璃はデュエルをするところを互いに見ていないが、もう限界だ。

 柚子に教えなければならないが、それは俺からじゃなく瑠璃の口から語って貰いたい。

 

「私、なにか飲み物を買ってくるわ」

 

「この辺に自販機は無いぞ?」

 

「ちょっと歩けばコンビニがあるわ。瑠璃、飲み物以外で欲しい物はない?なんでも買うわ」

 

「……好きにして……」

 

「キャラメルでも買っておいてくれ、あ、俺はトマトジュースで代金を」

 

「多くない?」

 

「全員分だ」

 

 柚子にお金を渡し、コンビニまでダッシュしにいってもらった。

 

「俺は口下手のクサレDTだから、こういう事しか出来ない」

 

 曲がり角を曲がり、柚子が見えなくなると瑠璃の頭に手を置いて撫でる。

 こういう事をしていると本当に刺されそうだが、こういう事を今の瑠璃にしないと鬱より酷い精神病になるかもしれない。

 

「……分かってた」

 

 頭を撫でて落ち着かせると、語りはじめる瑠璃。

 

「兄さんのデュエルディスクには人をカードにする機能が入っている。

それを持ってこの次元に来て、プロフェッサーの息子である赤馬零児を人質にしようとしていたのだから、カードにするつもりなのは分かっていたわ。この次元に来て直ぐに、ユートが無関係な人達を傷つけていた事も知って……理解してた、覚悟は決めていたつもりだったのに……」

 

 黒咲とユートが色々とやらかしている。

 それを理解し、その上で止めようとしているが、いざ現実を突きつけられて苦しむ。

 

 そういや、なんやかんやと言うかご都合主義と言うか謎パワーでカード化された人達は元に戻ったが……ちゃんと元に戻したと言う描写、あったっけ?

 千年アイテムとか精霊の力とか赤き竜とかルーンの瞳とかNo.とかの遊戯王お馴染みのオカルト的な力だったら、人をカードにしている奴をデュエルで叩きのめせば大体はどうにかなる。

 でもこれ、オカルト染みた物じゃなく科学技術でカードにしていて、デュエルディスクにその機能をダウンロードさえすればそれこそ塾長でもデュエルで負けた相手をカードにする事は出来る。まぁ、塾長は絶対にそんな事はしないけど。

 オカルトの力だったらオカルトパワーの発生源を叩けばどうにでもなるが、そうじゃないとなれば俺はどうにもならん……多分だけど。

 科学の力で冥界に行く事が出来るのが遊戯王の世界。オカルト染みた力を使えば元に戻るのは最終回で判明している……これは、アレか?俺がズァークになって、柚子や瑠璃がズァークになった俺を消さないと世界を救えないのか?

 

 たった一人の命を犠牲に世界を救えるアレだな……うん。

 

「お前はどうしたいんだ、瑠璃?」

 

「……兄さんやユートを止めたい」

 

 意識を現実に戻し、瑠璃になにをしたいか聞く。

 

「それだけか?」

 

 それだけだったらもうすぐ終わるぞ?

 

「……楽しくて嬉しくて笑顔になりたい。

柚子とアユちゃん、フトシくん、タツヤくんと塾長と笑って過ごしたい……もう、こんな思いをしたくない。あの頃よりも笑顔になって、鳥の様に自由に飛び回りたい」

 

 崩壊したハートランドからの平和でしかないスタンダードでの日々。

 短いながらも精神的に色々と疲れている瑠璃にとっては安らぎ手放したくはないもの……株を売れば、瑠璃一人が暮らしていける金ぐらいは入るな、うん。

 

「鳥の様に自由に飛び回りたいと思っているのなら、飛び回れば良い。

もし余計な障害があるなら俺が取っ払ってやる……だから、自分の思う様にすればいい」

 

 俺に出来ることがなんなのかは深くは考えたくないが、少なくとも瑠璃には生きていて欲しい。

 その為の1番の敵は……黒咲だな。あいつが居るだけで、色々と瑠璃の未来が危うくなる。

 

「……私、遊矢に貰ってばかりだわ」

 

「そうか?」

 

「ええ。楽しい笑顔になれるデュエルを思い出させてもらった。貴方の置いていったカードで命を助けてもらった。兄さんより弱い私が兄さんやユートと戦う為のアドバイスやカードをもらった。行く宛の無い私に住む場所を提供してくれて、楽しい時間をもらった……本当に、貰ってばかり」

 

 最後のは柚子じゃないのか?

 

 雰囲気をぶち壊す一言なので俺は言わない。

 

「そんな風に感じなくて良いぞ。俺は瑠璃の笑顔を見れるだけで満足しているんだ……」

 

 もう二度と元の自分に戻れないと諦めてこの人生を頑張ろうとしても、デュエル世界が合わなかったりして心が荒んでたり、嫌になることも多くある。けど、瑠璃や柚子の尊い純粋な笑顔を見るだけで頑張ろうと思える。

 女っ気の無い人生で種の繁栄を捨てた奴等(生涯独身貴族)と一緒になってた時と比べるのは難しいけど、それでも今の人生にそれなりに満足している。

 

「……」

 

 ボフンと顔を真っ赤にして煙を上げる瑠璃。

 こういう反応は本当にふつくしい(尊い)……。

 

「貰ってばかりの私が貴方に渡せるものを渡したいの」

 

「え、ちょ」

 

 首裏に手を置く瑠璃。

 自分の顔を近付けていきゆっくりと目を閉じていく。

 

 

 

 逃げて良いですか?

 

 

 

 ……いやいやいやいや、無理無理無理無理。

 いや、嬉しい、嬉しいよ。瑠璃はアイドルだって言われてもおかしくないぐらいに美少女だよ……ダメだ。

 柚子が優勝したら言うというフラグ的なものを建ててたよ。その前に瑠璃が襲来って、予想できないよ……どうしろって言うんだ。ダメだ。

 女性に関するトラウマらしいトラウマなんて特にはないのだが、俺の中のなにかが逃げたいと訴えている。

 それと同時に逃げればどうなるのかという恐怖心が俺を支配して硬直している……柚子の事をチキってるだなんだと思ってるが俺も大概だ。

 

「私もはじめてだから、舌は無しで……」

 

 なにエロい事を言ってんだ!清楚系ビッチ(矛盾)か!ありがとうございます!!

 

 

『花鳥風月を手中に納めれば、我を邪魔立てする存在は居なくなる……いけぃ、我が分身!!』

 

 

 ズァーク、ちょっと黙ってろ!!つーか、頭の中で語りかけてくるな!!

 

 

 これは男として覚悟を決めるしかないのかと瑠璃のキス顔が目に入り、柚子と瑠璃は同一人物だという謎理論が脳裏を走ったその瞬間だった。

 

 

 

──シュ、サクッ

 

 

 

 俺の頬をカードが切り裂き、カードはベンチに突き刺さる。

 

「っ、ぎゃああああ!?」

 

「え!?そんなに私の──血!?」

 

 頬骨のところをスパッとやられた。

 傷の度合いを具体的に言えばブリーチの序盤の方にあった母親の墓参りに行って虚との戦いの傷を完全に治せずにそのまんまだった一護の頬の辺りの傷と同じぐらいのレベル。

 肋が2、3本折れたとか漫画で言ったりするけど、現実だとすごく痛い。ていうか、血がダラダラと流れてやがる!!

 

「なんでカードで頬を切れるんだって」

 

「ライズ・ファルコン!?」

 

 俺の頬を切ったのはRR━ライズ・ファルコン

 この次元では売られていないRRのエクシーズモンスターで、アニメ版の効果は洒落にならないぐらいエグい。しかし、目の前にあるのはOCG版……いや、その辺りは気にしてはいけない。

 このRRを使うデュエリストはただ1人。

 

「ユート、貴様ぁ!!」

 

 瑠璃の兄である黒咲隼。

 目を血走らせ、俺を鋭い眼光で睨み付けるその目は隼どころの騒ぎではない。さ、流石はレジスタンス。カードで人を傷付ける事が出来るのか。

 

「前々から瑠璃と一緒にいる時が多いと思っていたら、そういう事だったのか!!」

 

 俺をユートだと勘違いをしている黒咲。

 手をポキポキと鳴らしており、明らかにデュエルで解決をする動きではない。

 

「瑠璃、何故お前が……いや、皆まで言うな。

ハートランドの何処に居てもアカデミアの兵士達と遭遇する。瑠璃を安全な場所に避難させると言う点ではこのスタンダードが最適だ……だが、何故オレに相談しない!!お兄ちゃんに相談しないんだ、瑠璃ぃいいいいい!!」

 

 おい、なんかコイツ原作以上に面倒臭い事になってんぞ。

 瑠璃が居ない方がシリアスなキャラになれてんのか?どうなってんの?

 

「兄さん、私は守られるだけの存在じゃない!!私は兄さんの物じゃないわ!」

 

「オレはお前を物扱いした覚えは無い!!

ただ、お前がまだ未熟なデュエリストでありオレが兄として先導してやろうと言う兄としての優しさだ!!」

 

「それは優しさとは言わないわ!!柊塾長を見習いなさい!!暑苦しいけど大人として最低限の一線は守ってるわ!!」

 

「誰だ、そいつは!!」

 

 あの人と柚子の関係は色々と深いから、お前達と違う!!

 

「ちょ、血が、絆創膏かなにか持ってないか?」

 

「そんな物は必要ない。デュエリストならばそれぐらいの傷、唾でもつけておけば治る!!」

 

 俺、デュエリストじゃないからその定義には反する……いかん、興奮するな。血圧が上がる。

 

「そう……じゃあ、唾をつけないと」

 

 瑠璃はそういうと俺の顔を掴み、頬の傷口をペロリと一舐めした……エロい。

 

「っ──」

 

 音はしていない。

 だが、ハッキリと聞こえた。黒咲の中のなにかがキレた音を。

 

「貴様ぁああああ!!懺悔の時間すら与えん!!

お前を友と思っていたオレが大バカだった。ユート、お前は瑠璃に悪影響を及ぼすオレの敵だ!」

 

「いい加減にして!!彼はユートじゃなくて遊矢よ!!」

 

「遊矢?……ユートでなかろうと関係無い!!オレにとっての敵であることには、変わりは無い!!」

 

 いってーよ、マジでいってーよ、頬。

 この場から逃げてコンビニに行った柚子を追い掛けて、ガーゼとかを買った方がいいんじゃないか?

 

「だったら……だったら、兄さんは私の敵よ!!」

 

「なに!?」

 

「兄さん、貴方はどうしてこの次元に来たの!?

アカデミアとの戦争を終わらせる為にこの次元に来たのに、どうして兄さん達が戦争の火種になっているの!!」

 

「甘いぞ瑠璃!!

赤馬零王はアカデミアのトップではあるものの元はこの次元の住人、既にこの次元も手遅れの可能性も大いに有り得る。

もしプロフェッサーの息子がアカデミアと同じ思想を持ちLDSをアカデミアの戦士養成所としているのならば、その可能性が僅かでもあるならば、オレは出る杭を全て打つ!!なによりもアカデミアとの戦いは既に話し合いで済む次元ではない!!相手を問答無用で黙らせるカードがオレ達には必要だ!!」

 

 

 LDSが戦士養成所というのも、話し合いで済む段階じゃないのも言っている事に一応の一理はある。

 でもぶっちゃければ零児連れてっても無駄だしな……。

 

「そんな物は必要無いわ!!

私は少しの間、この次元のデュエルスクールでお世話になったわ!!

そこにはハートランドの皆が失った笑顔が溢れていた。ここの人達は次元戦争を知らない無関係な人達よ!!

ユートと兄さんの噂は聞いたわ……無差別に人を襲って、一部の人をカードにしている、それじゃあアカデミアと一緒じゃない!!」

 

「だったら、そいつは何者だ!!」

 

「彼は……私を幸せにしてくれる人よ!!」

 

 火に油を注ぐんじゃねえ!!

 

「ふざけるな!!彼氏なんてお兄ちゃんは断じて認めん!!

瑠璃はお兄ちゃんのお嫁さんになると昔、言っただろう!!あれは嘘だったのか!!」

 

「子どもの時の事を掘り返さないで!!」

 

「オレからすればまだまだお前は子どもだ!!

瑠璃、そいつがユートで無いと言うのならば、そいつはいったいなんなんだ!!

オレとユートはスペード校からの付き合いがあり、レジスタンスとして共に戦い抜いた!オレは知っている。ユートに兄弟は居ない!!

そいつがどうしてユートとそっくりなのかは知らんが、ユートでもなければ兄弟でもない赤の他人でこの次元の住人と言うのならば何故そいつは他の次元について知っている!?」

 

「そ、それは……」

 

 だから、なんで俺に飛び火するんだ……。

 

「瑠璃、お前が答えられないのならばオレが答えてやろう!

そいつはスタンダードの住人でありアカデミアの人間だ!!瑠璃、お前は騙されているんだ!」

 

「っ、違うわ!!遊矢はアカデミアから私を守ってくれた!!」

 

「奴等は人をカードにする極悪人だ!!使えない兵士を捨て駒にだってする、自作自演の可能性もある」

 

 お前が言うな。

 

「遊矢、違うわよね?貴方はアカデミアの人間じゃないわよね?」

 

「アカデミアの人間なわけないだろうが」

 

「ならば、何故お前は色々と知っている!?」

 

「……言わないとダメなのか?」

 

 ズァークのせいにすれば大体どうにでもなる。

 だが、そうなると戦争の原因はズァークとレイになり……ややこしくなるなぁ……。

 

「やはりなにか後ろめたい理由が、アカデミアに関するなにかがあるんだな!!アカデミアは瑠璃を誑かす男はオレの敵だ!デュエルだ!!」

 

「デュエルディスクは家に置いてきた!!なのでデュエルは出来ない!」

 

「なん、だと……貴様、それでもデュエリストか!」

 

「るせーよ、実体化したモンスターに殴られたくねえんだよ」

 

 今日、こんな事になるとは全く思っていなかった。

 デッキは念のためと持っているがデュエルディスクは普段から持ち歩いていない!!

 

「兄さん、兄さんの相手は私よ!」

 

 俺の代わりにデュエルディスクを構える瑠璃。

 黒咲は一瞬だけ戸惑うのだが、直ぐに全ての原因は俺だと睨み付ける。

 

「これ以上、罪を増やさない為にも兄さんを今ここで倒す!」

 

「その男に騙されているのならば、お前を倒してその男の本性を暴く!!」

 

 

 ……逃げたい。

 

 

 なんでこんな事になったかと聞かれれば……大体、ハゲが悪い。頬の傷、物凄く痛い。病院に行って、カードでこうなったって言ったら信じてくれるか……遊戯王世界ならば普通に信じてくれるか。

 余りにも予想外の時に兄妹喧嘩(デュエル)が今、はじまる。




OMKフェイズ

塾長「遊矢、デュエルを教えるのは構わないが些か花が無いんじゃないのか?」

遊矢「そう言われても、これとこれ組み合わせたら強いとかこういうデュエルがあるとか普通の事しか教えてないんだけど?」

塾長「た、確かにそう言われればそうだがこのままだと遊勝塾のエンタメデュエルがだな」

沢渡「聞いたぜ、柊塾長!!」

塾長「さ、沢渡、どうしてここに!?」

沢渡「ここはOMK時空、謎ギャグ時空だ。細かいことを気にしちゃいけねえな。
それよりもエンタメデュエルが無くなっていくことを気にしてるんだろ?それならこの、てんっさいデュエリスト、沢渡様に良い案があるぜ!!」

遊矢「ほぉ、オレ様が輝くとか言わずに良い案と来たか」

沢渡「エンタメデュエルショーには主役を引き立てる数々の名脇役が必要なんだよ。主役のオレ様だけだと眩しすぎる」

塾長「そ、それでどうすれば良いんだ?」

沢渡「そりゃやっぱり顔だろう。
エンタメデュエリストの榊遊勝が居なくなってから、コイツがって言う遊勝塾の代表的存在が遊矢、お前になっちまった。ま、ペンデュラム召喚を生み出しんだから仕方ねえけどな」

遊矢「恐ろしく真面目な事を言うな。お前、本当に沢渡か?」

沢渡「お前、オレをなんだと思ってんだ!
とにかく今の遊勝塾にはアイドルとも呼べる広告塔的な顔が無い!」

遊矢「俺は?」

沢渡「お前は顔としては汚すぎるだろうが!!」

遊矢「誰が汚いだと!今年のバレンタインデーで女装してチョコ渡して実は榊遊矢でしたドッキリすんぞ!」

沢渡「おい、それマジでやめろ。それオレが人間不信になるだけだ」

塾長「成る程、顔の様なアイドル的存在か。
思えば遊勝塾は先輩である榊遊勝が象徴の様な存在で、他の代表的な人と言ってもピンと来ないな」

遊矢「いや、塾長元とは言えプロだろう」

塾長「プロと言っても榊遊勝と違ってエンタメデュエルの顔の様な存在じゃないさ。よし、此処は世界一可愛い愛娘の柚子をアイドル化させて華やかしいプロの道を──」

黒咲「待てぇい!!世界一可愛いのは柊柚子ではない……オレの妹の瑠璃だ!!」

遊矢「お前、時系列が謎でギャグだから大体許されるOMK次元とは言え本編で色々と面倒な事になってんのに出てくんなよ」

黒咲「瑠璃こそが世界一可愛いんだ!!」

塾長「なにを言う、柚子こそが1番可愛いんだ!!」

黒咲「どうやら話は平行線の様だ。かくなる上はデュエルで」

遊矢「おい、話聞けよ」

沢渡「身内贔屓は良くねえな」

黒咲「なに!?貴様、瑠璃が可愛くないとでも言うのか!!」

塾長「そうだ!!柚子は遊勝塾の看板娘なんだぞ!!」

沢渡「馬鹿野郎、アイドルは皆のアイドルなんだ。
ただ1人のファンをつけたからって、真のアイドルとは言えねえ……ここはデュエットにして、大勢のファンの人達に決めて貰おうじゃねえか!!」

黒咲・塾長「成る程、その手があったか!!」

遊矢「……これ、他の2人も呼んでカルテットにしないとダメなんじゃないのか?」



次回予告


瑠璃、なんだそのカードは!!そんなカード、お前のデッキには無かった筈だ!


遊矢から貰ったカードよ!!このデッキは、今までの私のデッキとは違う。私と遊矢が作り上げたデッキよ!!


もうちょっと言い方をどうにか出来ないか……。


2人で作り上げただけだと!?許さん、許さんぞ貴様ぁ!!オレですらそんな事はしていないと言うのに!


おい、本音が出てんぞ。


次回、遊戯王ARC-V 【羽ばたく小鳥?】にガッチャビングデュエルアクセラレーション!!
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