遊戯王ではない!デュエルモンスターズだ!!   作:なにかの波動に目覚めたトマト

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目指せ、1ターンキル

「瑠璃がこの次元にいただと!?」

 

 遊矢が権現坂をぶっ倒したその日の夜。舞網市のレオ・コーポレーションの付近にあるビル街で2人の男、黒咲隼とユートが会合していた。

 この次元には赤馬零王の息子である赤馬零児を捕まえて戦争を終わらせるべくやって来たのだが、思ったよりも上手く進展はしていない。そもそもで赤馬零児を表に引きずり出さないとならず、その為にLDS狩りをしている。

 最初は普通の生徒や講師を狩っていて最近になって制服組と呼ばれるエリート達が出てきたのだが、未だに表に出てこない。

 

「ああ……どうやらオレ達を止めるために追いかけて来たらしい」

 

「本当に瑠璃なのか?この次元に瑠璃と瓜二つな子がいた。その子じゃないのか」

 

 そんな彼等は近況報告をしている。

 と言っても成果らしい成果はまだ出ていないのだが、それはさておいて黒咲は瑠璃がこのスタンダードと呼ばれる次元に居る事をユートに報告した。柚子と一度顔を合わせているので瑠璃と間違ってるんじゃないかと聞くが黒咲は首を横に振った。

 

LL(リリカル・ルスキニア)を使っていた。あのエクシーズはこの次元の住人には到底使いこなせないものだ」

 

「瑠璃が、この次元に」

 

「それよりも気になるのはあの男……お前と瓜二つなあの男だ」

 

 瑠璃はこの次元に来ている。それは疑いのない事実でそれ以上は言及せずに問題である遊矢を思い出す。

 

「奴め……よくも瑠璃を毒牙に」

 

「瑠璃になにかあったのか!?」

 

「ああ……赤馬零児もそうだが融合次元に出向く際に一度叩きのめさなければ」

 

 思い出すのは瑠璃が遊矢にキスをしようとした瞬間。

 大事な大事な箱入り妹が友人どころか友人と顔が似ている全くの別人とキスをしようとしていた。兄として認めた男ならまだしも、文字通り何処の馬の骨かも分からない奴とイチャイチャしているなど兄として絶対に許さない。殺す。

 

「瑠璃は今はどうしているんだ?」

 

「瑠璃は今、そいつの元にいる」

 

「……その男は悪い奴じゃないんじゃないか?」

 

 瑠璃が悪人と協力するなんてありえない。

 遊矢がどんな感じかは知らないが瑠璃が気を許している人間ならば信用に値する。

 

「ふざけるな!あんな男、お兄ちゃんは認めん」

 

「隼……」

 

 めんどくさいお兄ちゃんモードに入っちまったよ。

 

「第一、スタンダード次元の住人ならば何故瑠璃の事やアカデミアを熟知しているのかが説明がつかない……奴にはなにか後ろめたい事がある」

 

「スタンダードの住人か……隼、もうこんな事はやめにしないか?」

 

 スタンダードの住人であるLDSの生徒をユートは多く狩った。

 LDS狩りのデュエリストならばLDSの生徒としてかたきを討つと多くのデュエリストが言った。誰一人としてエクシーズ次元の住人やアカデミア、融合次元等の言葉を一切言わなかった。

 自分そっくりの男がどうして知っているかどうかは置いておいて、今まで倒してきたデュエリストはなにも知らない。ハートランドの現状とスタンダードの現状を照らし合わせてもこの次元は平和だ。自分達は異物でしかないと感じ始めている。

 

「ならば、今すぐにアカデミアがある融合次元に乗り込むか?」

 

 こんな方法はしたくないならば今すぐに融合次元に乗り込むしかない。熱くなったり頭が色々とおかしくはなっているが、冷静なところはちゃんと冷静だ。残されたレジスタンスと共に融合次元に乗り込むのは危険だと言うことは分かっている。

 ユートもその事は分かっており、黒咲にそう言われるとなにも言えない。

 

「居たぞ!」

 

 黒咲を止めることが出来ずにいるとスーツを着た沢山のグラサン達がこちらに向かってくる。

 例によってLDSかとデュエルディスクを取り出して構えるのだがグラサン達はデュエルディスクを取り出さずに空を見上げるので、なにがあるのかと見上げるとそこにはLDSのロゴが書かれたヘリコプターがやってくる。

 

「……!」

 

「遂に出てきたか」

 

 ヘリコプターから降りてきた素足マフラーこと赤馬零児。

 目当てのデュエリストがやっと来たと黒咲はデュエルディスクを構えるのだが零児はデュエルディスクを構えない。

 

「私を人質にして赤馬零王に交渉をするつもりか?やめておけ」

 

「っ、貴様!」

 

 事情の説明を一切していないのに当てられた事に驚く。

 全ての事情を理解していると黒咲は警戒心を強めるのだが、零児は戦うつもりは毛頭無い。

 

「君達が異邦者なのは知っている……ついてきたまえ」

 

「何処に連れていくつもりだ!」

 

「我等が先兵の槍たる人物を選別する……君にはその手伝いをしてもらおう」

 

「どういう意味だ!」

 

 自分勝手に話を進めていく零児。デュエルをする姿勢はなく、言っていることが本当ならばここでデュエルをしても無駄になる。

 黒咲とユートは何時でもデュエルが可能な状態を保ちながらヘリコプターに乗り込んだ。

 

 

───────────────────────────────────────────────────────────

 

 素足マフラーとユート達が会合した。会話は丸聞こえであり今回の大会で好き勝手やろうとしている。

 ニコに「貴方はプロになるべきです!」と推されている身としてはふざけんなとしか言えない。あのおっさん、普通に俺ならプロになれるって推してくれての次元戦争なんだから笑えない。

 

「母さん、朝ごはんなに?」

 

 ユートたちの事はさておき食事フェイズ。

 デュエリストじゃないけど朝飯は食っておかなければならないのだが、母さんは朝ごはんに手間取っていた。

 

「ちょっと待ってて。今スペシャルサラダとミルフィーユカツを作っているから」

 

「朝っぱらからヘビーだなぁ」

 

「なに言ってるの。縁起を担ぐ為にも作らないと」

 

「って、時間が無い……ごめん、母さん」

 

「ちょ、待ちなさい」 

 

 ミルフィーユカツとスペシャルサラダには興味があるが、割と時間はない。

 一食ぐらいは抜いていても問題は無いと家を出ると、そこには素良がいた。

 

「やっほー、遊矢」

 

「素良か……悪いけど、今急いでる」

 

「急いでるって、今日なにかあるの?」

 

「プロモーターがやって来てるから返事をするんだ……舞網チャンピオンシップが掛かってるから遅刻は出来ない」

 

 何故かは知らないけども物凄い早い時間を指定してきている。

 急いで遊勝塾に向かって走っていくと、素良も後からついてくる。

 

「舞網チャンピオンシップって?」

 

「この街の一大イベントのデュエル大会……とはいえ、お前にとってはレベルが低いだろう」

 

「まぁ、この辺のデュエル塾ってどこもかしこも弱いからね。今更そんな大会に出るなんて意外だね」

 

「プロになってくれって推してくれたんだ……そういえばお前、このままでいいのか?」

 

 ふと気になった。

 素良はこの次元の先兵としてやってきており、俺が強いからとやって来てボコられ、柚子には負けないと挑んではボコられた。

 割とマジで悔しがっていて他のデュエル塾で腕試しをして自信を取り戻した……完全に遊んでるとしか思えない。スタンダードの情報収集とかちゃんとやっているらしいが……。

 

「……君には関係ない」

 

「関係無いか……言っておくが次元戦争的な話をすれば俺はお前の敵だ」

 

「……ああ、そうだね」

 

「大きく派手な戦いになったら俺は慈悲とかデュエリストのプライドとかそういったものを全て捨てたりしたデッキを使う……」

 

「うるさいよ……君こそ降伏した方がいい、理事長はとんでもなく強い」

 

「ふざけんな……止めるなら今の内だ」

 

 そう言うと素良は苦い顔をする。

 アカデミアがやっていることに対しての罪悪感……と言うよりはここでの日々が強く心に残っている。勝つ事が絶対なところがあるアカデミアと比べればヌルいが、負けても楽しく責められることはない環境……アカデミアを知っているからこそ、戦いたくないという情が出ている。

 今の内にこっちに寝返っておけばいいと一言だけ忠告はしてみるものの、素良ははいそうですかと裏切れない。

 

「まぁ、俺のデュエルを見ておけよ」

 

 ああだこうだ言っても人の決心を変えることは難しい。一先ずは俺を見ておいてほしい。

 素良と話をしているとあっという間に遊勝塾に辿り着いた。

 

「やぁやぁ、待っていましたよ。遊矢くん」

 

「待たせたな」

 

「それでどうしますか?」

 

「俺は……3試合をするよ。後でああだこうだ因縁をつけられるとめんどくさいしな」

 

 色々と考えた結果、特別枠での出場を諦めて普通に勝利して正式な方法での出場を決めた。

 こんなやり方でやったとしても外野は色々とうるさいんだろうが、やらないよりもやっておいた方が良い。

 

「貴方ならそう言ってくれると思いました」

 

「そりゃどうも」

 

「では、早速デュエルに向かいましょう」

 

「ええっ!?」

 

「なにを驚いているのですか。3戦デュエルをすると決めたのでしょう。今日はこのまま3試合、纏めてしますよ」

 

 嘘だろ、おい。

 一応はデュエルをすることが出来る様にしているがまさかのトリプルって……まぁ、身内同士のデュエルとかで3連戦とか普通にあるからいいけども。

 いきなりのデュエルには驚いたが、やるならば早いに越したことはないとニコに連れられて料理教室こと霧隠料理スクールにやってきた。

 

「最初の相手はミッチーか」

 

「流石は遊矢くん、対戦相手を瞬時に見抜くとは」

 

 原作通りの対戦相手かどうか心配だったが、杞憂だったようだ。

 美味しい匂いに釣られない様に耐えながら中に入ると巨大なクッキングスタジオがあり、フトシ、アユ、タツヤの3名がいた。

 

「遊矢兄ちゃん!」

 

「3人とも待たせたな」

 

「全然待ってないよ」

 

「そうか……柚子達は?」

 

「遊矢兄ちゃんなら絶対に勝ち進むから最後のデュエル塾で待ってるって……でも、オレ達は最初が気になったから」

 

「う〜ん、この程度のデュエル塾なら全勝しそうだよ」

 

「おや、随分と言うじゃないか」

 

 俺なら勝てると知っているから今回の相手に呆れる素良。

 ハッキリと言ってしまったのでそばかすの青年こと茂古田未知夫……ミッチーが出てくる。

 

「だって、料理を優先してるデュエル塾なんでしょう……こんなの遊矢の圧勝だよ」

 

 ハードル上げるな……それにしても腹が減ったな。

 

「どうやら肝心の彼はお腹を空かせてる様だね」

 

「朝飯を抜いてきたからな」

 

「だったら君に味あわせてあげるよ、僕の完璧なクッキングデュエルを!」

 

「ミッチー、未だに口と書いて味と読む。口に含んでいない未知の存在だから味なんだ……完璧なデュエルも料理も存在しないことをお前に見せてやる!」

 

 ミッチーの母親ことモンペがなんで俺とデュエルをするのかと苦情を言っているが気にしない。

 デュエルディスクを取り出してデッキをセットしアクションフィールド、アクション・キッチンにフィールドが様変わりすると例のデュエルの口上を言い終える。

 

「先攻は俺からだ!俺はフィールド魔法、死皇帝の陵墓を発動!更にエクストラデッキのサイバー・エンド・ドラゴンを除外しSinサイバー・エンド・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 Sin サイバー・エンド・ドラゴン

 

 レベル10 闇属性 機械族 攻撃力4000

 

「更に死皇帝の陵墓の効果を発動!アドバンス召喚をする際に必要なモンスターの数×1000ポイントのライフを支払う事でモンスターをリリース無しで召喚できる。俺はライフを2000支払う」

 

 

 遊矢

 

 LP4000→2000

 

「黒金の暴竜よ、現世の狭間を閉ざす鎖錠を破り、我が敵に滅びをもたらせ!現れろ!破滅竜ガンドラX!」

 

 

 破滅竜ガンドラX

 

 レベル10 闇属性 ドラゴン族 攻撃力?

 

「破滅竜ガンドラXの効果を発動。このカードの召喚成功時、このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊してその中で一番攻撃力の高いモンスターの攻撃力分のダメージを与え、破滅竜ガンドラXは与えたダメージと同じ攻撃力になる」

 

「え……と言うことはSinサイバー・エンド・ドラゴンと同じ攻撃力のダメージを……」

 

「そういうことになる……はい、終わり!」

 

 ガンドラXの効果に固まるミッチー。

 アクションカードを拾いに行くかと思いきやそんな事は一切せずにガンドラXの体から放たれる光線が命中する。

 

 

 ミッチー

 

 LP4000→0

 

「……嘘、だろう」

 

「嘘じゃない……ガンドラワンキル(弱)だ」

 

 まだギリギリ禁止カードになっていないガンドラX。

 OCG次元じゃワンキルしすぎたせいで禁止という牢獄に閉じ込められてる……禁止カードは伊達じゃない。

 

「これがストロング石島を倒したデュエル……僕じゃ手も足も出ない……」

 

「悪いな、こっちも時間が押してるんで速攻で終わらせた」

 

 何時も通りのデュエルだったが、仕方がないことだ。

 

「僕のデュエルを味わわせるどころか、逆に味わわされて……これが未知の味……」

 

「遊矢兄ちゃん、先攻ワンキルなんてスゲえ痺れたぜ」

 

「この程度なら幾らでもっと、時間が押してる。お前等ついてくるなら来いよ」

 

「最後のデュエル塾に行くよ……次も絶対に勝ってね」

 

「ああ、任せろ」

 

「遊矢くん、早く行かないとバスに間に合いませんよ」

 

 くそ、やることが多い。

 霧隠料理スクールを急いで後にし、急いでバスに乗り込む。

 

「次に向かうは明晰塾、対戦相手はどなたか分かりますかね?」

 

「彼処でジュニアユースの選手と言えば九庵堂栄太か」

 

「正解です、流石ですね」

 

 原作知識のおかげとも言っておこう。

 移動の最中、次に向かう明晰塾についての説明をするニコ。明晰塾は様々な分野のエリートを排出している塾であり、とにかくインテリのエリートが多く九庵堂栄太は学生クイズの大会で優勝するほどの頭脳明晰とのこと。

 

「やぁ、君が榊遊矢だね」

 

 明晰塾の説明が終わる頃に塾に辿り着いた。

 塾の中に案内してもらうとそこかしこに眼鏡をかけたガリ勉がいて、なんだか辛気臭い感じだと思っていると九庵堂栄太が現れた。

 

「前にテレビで見たよ。九庵堂栄太だな……よろし──」

 

「さてここで問題です!」

 

「……」

 

「今日はよろしくお願いしますをフランス語でなんと言うでしょうか?」

 

「おいおい」

 

「解答は10秒だよ」

 

 いきなりの問題を出して知識のマウントを取ってこようとする九庵堂栄太

 残念ながら俺はそんなに頭がいい方じゃない……故に答えるべき答えは1つしかない。

 

「俺はそこまで教養がないから、その答えは知らないな!」

 

「ふぅん、ペンデュラム召喚を生み出したと言っても」

 

「だから逆にお前に問題を出す。俺が持っている知識で今一番役立つ物はなんでしょう?」

 

「なんだいその問題は」

 

「答えはお前を倒す方法だ!この中で一番知っている!」

 

 今必要なのはフランス語の知識じゃない。デュエルの知識だ。

 人並み程度の知識しかないものの、それでもお前を倒すのには充分過ぎる知識量だ。

 

「言うじゃないか。なら、見せてもらうよその知識!」

 

「お前に見せてやろう!この問題の答えを!」

 

 くだらない前置きはそこまで必要じゃない。

 デュエルディスクを取り出してさっきとは違うデッキをセットするとアクションフィールド、クイズ・フロンティアが展開されていく。

 このアクションフィールド、セットされているアクションカードが全部クイズに答えることが出来たら効果発動系の効果ばっかでデュエルとは関係の無いクイズとか出されるんだよな……おい、デュエルしろ。

 

「先攻は俺からだ。フィールド魔法、チキンレースを発動!チキンレースの効果を発動!ライフを1000ポイント支払い、カードを1枚ドロー!更に魔法カード、テラフォーミングを発動!デッキよりフィールド魔法、チキンレースをサーチ」

 

 遊矢

 

 LP4000→3000

 

「サーチしたチキンレースを発動し、もう一度効果を発動!カードを1枚ドロー!」

 

 遊矢

 

 LP3000→2000

 

 

「おやおやおや、さっきからドローばっかりして手札が悪いようだね」

 

「言ってろ……フィールド魔法、擬似空間を発動!墓地にあるフィールド魔法を除外し、そのカードと同じ効果をこのターンの終わりまで得る。俺はチキンレースを除外し、チキンレースの効果を得て三度効果を発動!ライフを1000支払いカードを1枚ドロー!」

 

 遊矢

 

 LP2000→1000

 

「カードを2枚セットし、手札とフィールドのカードを全て墓地に送り、大逆転クイズを発動。自分のデッキの一番上にあるカードの種類を宣言。当てた場合、相手と自分のライフを入れ替える」

 

「さっきから何をやってるかと思ったら、そんな運に頼るなんて心外だな」

 

「それはどうかな?俺は一切運に頼っていない……何故ならこのデッキには魔法カードしか入っていないからだ。俺は魔法カードを宣言!ドロー……ドローしたカードは成金ゴブリン、よってお前と俺のライフは入れ替わる」

 

 遊矢

 

 LP1000→4000

 

 九庵堂栄太

 

 LP4000→1000

 

「ライフが……で、でもここまでだ!これ以上はライフを変えることは」

 

「言っただろう。俺はお前を倒すことだけは知っているって。セットしていた2枚の風魔手裏剣の効果を発動。このカードがフィールドから墓地に送られた時、相手には700ポイントのダメージを、合計1400ポイントのダメージを与える」

 

「ぎょ、ぎょえええええええ!」

 

 

 九庵堂栄太

 

 LP1000→0

 

「はい、終了!次に行くぞ、次ぃ!」

 

 もう一戦、デュエルが残っているんだ。遊んでいる暇は何処にもない。

 万が一九庵堂栄太と戦うときが来たとき用にと作っていたデッキは予想以上に効果を発揮したが今は感傷に浸ってる場合じゃない。急いで次に行かなければならないとミッチーの時よりも更に急ぎ足で明晰塾を後にし、バスに乗り込む。

 

「はぁ〜……」

 

「おや、随分とお疲れの様ですね」

 

「デュエルはともかくとしてこの移動が思ったよりも大変なんだよ」

 

 どっちも先攻ワンキルでよくあるデュエルだけで疲れはない。

 けど、デュエルをしてはバスを使っての移動なんて遠征とかしない遊勝塾じゃやらないことで見た目以上に疲れが出ている。

 

「この程度で根を上げてはいけませんよ。下積み生活のプロは地方営業と言った業務を欠かせません、こういった事には馴れなければ」

 

「まぁ……そうだな」

 

 これからもっと辛い目に遭うのがわかっていると胃が痛い。

 とりあえず市販の胃薬とか正露丸的なの買っておこう……うん、そうじゃないとホントにキツイなこれは。デュエルで勝利しとけばある程度は問題解決出来るけど……ああくそ、平和なデュエルはここまでなんだよな。

 

「よくこんなのを建てれたよな」

 

 胃がキリキリしつつも辿り着いたのは海野占い塾。

 ホーンデット・マンションだかタワー・オブ・テラーだか分かんない見た目をしている……占いの館よりもお化け屋敷感が強いな。ニコもローブを被ってそれらしい演出をしている。

 

「遊矢兄ちゃん」

 

「お前等、待たせたな」

 

「ううん、そんなに待ってないよ。遊矢お兄ちゃん、一時間しか経ってないし」

 

「痺れるデュエルしてくれよな!」

 

「いやぁ、どうだろうな」

 

 俺のデュエルは普通のデュエルでありエンタメデュエルじゃないんだよな。

 

「遊矢、待ってたわ」

 

「その様子だと連勝したみたいね」

 

「待たせたな、柚子、瑠璃」

 

 タツヤ達に軽く声をかけると柚子と瑠璃が出てくる。最初からここにいた二人に声をかける……こういう日常での一時がホッとする。

 このデュエルがある意味最後の普通のデュエルの可能性がある……よし、ワンキルするか。

 

「待っていたわよ!ミエルの運命の人!」

 

 あ、死んだかも。

 

 デュエルディスクにデッキをセットし直していると対戦相手の方中ミエルがテンションを爆上げしながらやって来た。

 ビシリと俺を指さしてとんでもない事を言い出す……ヤバい、後ろを見ることが出来ない。

 

「嘘……こんなのがミエルの運命の人なの!?マッチョなダンディズムでもクールなエリートデュエリストでも家庭的な一面を持ってるんでもないじゃないの!?」

 

「悪かったな」

 

 権現坂みたいな漢と書いて(おとこ)じゃないし沢渡みたいな切れる3枚目じゃない。

 人間として種の繁栄を捨てて衰退の一途を辿っていた割と何処にでもいる感じで一時期遊戯王じゃなくてポケモンカードやってたぐらいだ。

 

「……ええ、そうよ」

 

「ん?」

 

「遊矢はマッチョなダンディズムでもクールなエリートデュエリストでも家庭的な面を持つ男でもないわ……ミエル、貴方の運命の人なんかじゃないわ」

 

「でも、ミエルの占いは外れた試しがないのよ」

 

「貴方の占いだとこのデュエルの結果はどう見えてるの?」

 

「そりゃ勿論、ミエルの勝利に決まってるわ!」

 

「残念よ、ミエル……このデュエルは遊矢の勝ちで終わる。貴方の占いは外れてるのよ」

 

 ハリセンを取り出して襲い掛かってくるのか心配だったが珍しく静かな柚子……いや、違う。

 

「貴女の運命の相手が遊矢なわけないじゃない」

 

 目が全然笑ってない。

 柚子、ミエルが違うんじゃないかと疑問を持たせて強く否定したり露骨な反応を見せたりしない。あえて肯定したりすることで俺からミエルを遠ざける……ツンデレのツンを出したままにしてデレる事なく終わらせるつもりだ。ストロングすぎるぞ、柚子。

 

「遊矢、ち、違うわよね……」

 

「違うと思うぞ」

 

「思うじゃなくてハッキリと言って!ほら、早く!」

 

 おっと、瑠璃もストロングだった。

 シュラバラートな空気を生み出しており今からデュエルする空気じゃねえよ。

 

「遊矢兄ちゃん、ここ占い塾も兼ねてるから後で恋愛運を占ってもらったら?」

 

「多分死相か女難の相が出てるぜ」

 

「どっちかハッキリと選べばいいのにね」

 

 タツヤとフトシとアユの言葉が本当に痛い。

 それはともかく後でマジで一回占ってもらおう。ズァークの影響でマジの占いが出来ないとか言われそうだけど。

 

「貴方がミエルの運命の相手かどうか見てあげるわ!」

 

「俺は恋愛相談に来たんじゃない」

 

 そういうのはオカマバーでやるべきことだ。

 本日3度目となるアクションデュエルの前口上を言い終えるとアクションフィールドが展開される。

 

「先攻は俺だ!俺のターン、俺は強欲で金満な壺を発動!エクストラデッキのカードを6枚裏側表示で除外し2枚ドロー!更にカード・アドバンスを発動!デッキトップ5枚を確認し好きな順番で……お楽しみはここまでだ!」

 

「あれは……遊矢の1ターンキル宣言!」

 

「デッキトップ5枚を見ただけなのに、もう1ターンキル宣言ですって!?」

 

 ミエル、見せてやろう。圧倒的な力というのを。

 

「俺は魔法カード、真実の名を発動。デッキトップのカードを宣言し手札に加える。宣言した通りのカードならばある属性のモンスターを特殊召喚できる!」

 

「ある属性?」

 

「タツヤ、デュエルモンスターズの種族と属性、全部言えるか?」

 

「えっと、獣戦士族、海竜族、岩石族、植物族、幻竜族、アンデット族、恐竜族、爬虫類族、魚族、天使族、悪魔族、サイキック族、ドラゴン族

、魔法使い族、戦士族、鳥獣族、炎族、獣族、機械族、昆虫族、雷族、水族で地属性、水属性、火属性、風属性、闇属性、光属性だよね」

 

「違うな!」

 

「ええっ、違うの!」

 

「見せてやろう!7番目の属性、神属性を……俺が宣言するカードは光の創造神ホルアクティ!手札に加えたカードは光の創造神ホルアクティ!よってデッキよりオシリスの天空竜を呼び出す。冥王オシリスよ我が絶対の力となりて我が領域に降臨せよ!冥府を揺るがせる全知たる力で俺に勝利をもたらすのだ!現れるがいいオシリスの天空竜!」

 

 オシリスの天空竜

 

 レベル10 神属性 幻神獣族 攻撃力?

 

「なに……これ……」

 

 神の降臨を見て固まるミエル。

 それもそのはず、このカードは俺しか持っていないとんでもないOCG仕様のカード……。

 

「オシリスの天空竜の攻撃力は手札の枚数により決まる。俺の手札は5枚、よって攻撃力は5000」

 

 オシリスの天空竜

 

 攻撃力?→5000

 

「攻撃力5000……でも、これは先攻よ!どれだけ攻撃力に優れていても攻撃出来なければ意味はないわ!」

 

「相手のライフを0にするだけがデュエルの勝利じゃない。俺は愚かな埋葬を発動し、デッキよりオベリスクの巨神兵を墓地に送って魔法カード死者蘇生を発動!オベリスクの巨神兵を蘇らせる!破壊神オベリスク!我が絶対の神となりて我が領域に降臨せよ!天地を揺るがす全能たる力によって俺に勝利をもたらすのだ! オベリスクの巨神兵!」

 

 次に現れるは青き巨神兵、オベリスク

 

 

 オベリスクの巨神兵

 

 レベル10 神属性 幻神獣族 攻撃力4000

 

「攻撃力が4000……」

 

 オベリスクの原作効果はモンスターを2体生贄にしてオベリスクの攻撃力分のダメージを与える。

 コストは重いもののその効果は絶大で相手のターンでも使えるフリーチェーンのインチキ効果……残念だが、このオベリスクはOCGオベリスクだから使えないんだよな。

 

「更に手札のラーの翼神竜を墓地に送り、千年の啓示を発動!墓地より死者蘇生を手札に加え、発動!ラーの翼神竜よ降臨せよ!」

 

 本来ならば特殊召喚することが出来ないラーの翼神竜。

 千年の啓示の効果で召喚条件を無視して特殊召喚をする事ができる……

 

「いくぞ!オシリスの天空竜、オベリスクの巨神兵、ラーの翼神竜をリリースし……光の創造神ホルアクティを特殊召喚!そしてこの瞬間、光の創造神ホルアクティの効果。このデュエルに俺は勝利する!」

 

 光の創造神ホルアクティ

 

 レベル12 神属性 創造神族 攻撃力?

 

 

「嘘……特殊勝利」

 

「そう……そしてホルアクティの特殊召喚は何人たりとも無効に出来ない……闇を討ち祓え!ジェセル」

 

「そんなミエルの占いが……ハズレた」

 

 榊遊矢

 

 光の創造神ホルアクティの効果により勝利

 

 

 俺の宣言した通り1ターンキルでデュエルは終わりを告げる。

 3つのデュエル塾、異なる先攻1ターンキルで終わらせることが出来た。

 

「お前の占いじゃ俺の負けだったがハズレ」

 

「ダァアアリイイイン!」

 

「ゔぇっ!?」

 

 お前の占いは間違っていたと教えて終わらせようとすると目を輝かせて飛び込んでくるミエル。

 

「今、確信したわ!貴方は間違いなくミエルの運命の人よ」

 

「っち、違う……ッハ!」

 

 この状況は非常にまずい。

 後ろを振り向くと柚子はハリセンを構えており、フトシ達はなんまいだ〜なんまいだ〜と念仏を唱えている。

 

「遊矢……違うわよね」

 

「え?」

 

「ミエルは貴方の運命の人じゃない、そうよね」

 

「は、はい……」

 

「だったら、はい……退治して」

 

 ハリセンを俺に託す柚子……え、つまりはアレか?

 ミエルを自分の手でぶっ倒す(物理)をやって貴方は私のものだと証明しろって言うのか……ミエルの事はちゃんと断らないといけないし、これはあり

 

「騙されないで、遊矢。それを振るったら最後、貴方は柚子を認めた事になるわ!」

 

「……っは、確かに」

 

「何を言ってるのよ……事実でしょ」

 

 うわ、遂にとんでもない事を言い出したよ……あれでも、これって告白になるのか?

 柚子との付き合いはそれはそれは長いけれど、まともな告白的な事はされた覚えはない……それだとちょっと嬉しい。

 

「遊矢お兄ちゃん、なにニヤけてるの。修羅場だよ」

 

「癪に障るけど柚子、ここは一時休戦よ。今はまずミエルを倒すわ」

 

「仕方ないわね……足を引っ張らないでよ」

 

「遊矢兄ちゃん逃げるなら早いところ逃げた方がいいぜ……多分、どんな結果でも痺れるぐらい地獄だから」

 

 わー……逃げちゃ駄目だって言わなきゃいけない気もするけど、逃げの一択しかない。

 タツヤがいつの間にか逃走経路を用意してくれる。やだ、この子達優秀過ぎる……いや、ホント優秀で助かる。

 

「あ、占い塾の塾長、俺の運勢を見てほしい」

 

「死相と女難の相がくっきりと出てます……諦めて腹を括ってください」

 

 かーなーしーみのーはまだ迎えたくない。

 柚子と瑠璃がミエルと変則タッグデュエルをしている横で俺はタツヤ達と共に海野占い塾を出た。

 

「遊矢くん、プロになる上ではある程度は清らかでなくてはなりません……怖いので早く決着をつけてください」

 

 





遂にはじまった舞網ジュニアユース選手権

宣誓……めんどくさいから省略、優勝するのは俺だ。何処からでもかかってこいや

遊矢、それは大胆すぎるぞ!

綺麗な言葉を見繕っても全員腹の中じゃ俺が1番だと思ってるんだからやるっきゃない。

それでも限度ってものがあるでしょう、もう……でも、私負けないわよ

ハッハッハ、かかってこいや


次回、、遊戯王ARC-V 【開幕 舞網チャンピオンシップ】にガッチャビングデュエルアクセラレーション!!


っち、あのクロワッサン、出場してやがる

瑠璃、何故瑠璃が大会に出場を!

モコミチ達とデュエル

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