遊戯王ではない!デュエルモンスターズだ!!   作:なにかの波動に目覚めたトマト

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覇王の児

 舞網チャンピオンシップの今日の日程は終わった。

 終わったのだが、素良が帰ってこない。ハートランドがアクションフィールドになっているのを見て血相を変えてLDSに、レオ・コーポレーションに乗り込んで……あの素足マフラー辺りに返り討ちにあって次元転移装置が起動して融合次元に強制送還された、そんなところだろうか。

 明日はタツヤ達の2回戦のデュエルをするが俺達ジュニアユースクラスは無い……正確には権現坂も俺も柚子もデュエルが無いだけで、残りの1回戦は普通に続いている。

 

「監視カメラはあそこか」

 

 時刻は既に夜を回っている。素良が中々に帰ってこないのを理由に探してくると言って外に出た。

 素良は今頃は融合次元で色々と記憶を覗かれたりしている……冷静に考えれば他人の記憶を覗く装置ってオーバーテクノロジー、いや、そもそもで遊戯王世界の殆どがオーバーテクノロジーか。

 

「……来たか」

 

 俺は今、あえて監視カメラがある場所に仁王立ちしている。

 素良が戻ってこないという事は融合次元に、アカデミアに強制送還されたのだろう。次元を移動する事は出来なくもないけれども、アカデミアに単身で乗り込むのはハッキリと言って危険過ぎる。そもそもで素良はなにを思っているのか?この次元での日々を楽しんでいたみたいだが、彼奴はアカデミアの人間である事には変わりはない。心の何処かで一線を引いている、それはそれこれはこれと割り切っているところはある。

 

「よぅ……こうしてちゃんと会うのははじめてだな」

 

「……榊、遊矢」

 

 茄子の様な髪型をした男、ユートが現れた……俺自身が撒き餌になる事で呼び出したとも言える。

 黒咲辺りもセットでついてくると思ったが1人でやってきたか。

 

「お前がユートだな」

 

「ああ……瑠璃は、瑠璃は無事なのか?」

 

「瑠璃の事は安心しろ。遊勝塾で保護している。常在戦場なハートランド、エクシーズ次元よりも安全な場所だ」

 

「そう、か…………」

 

 瑠璃の身が無事な事を知るとホッとするユート。

 さて、どうしようか。何時かは顔を合わせるというのは分かりきった事だが、いざ顔を合わせてもなんの会話をすればいいのかがわからない。瑠璃に関して話題を出してみたものの、直ぐに話は終わる。向こうもあんまり語る事は無い……語る事は無いんだよな。

 

「お前があのクソマフラーを表に叩き出す為に暴れ回ったせいであらぬ疑いを俺にかけられたぞ」

 

「それは……すまない事をした」

 

「お前等が必死になっているのは理解している。だが、スタンダード……無関係なこの次元の住人を巻き込んでしまってどうする?」

 

「っ…………」

 

「あのクソ素足マフラーは何事もなかったかの様にしてるが瑠璃は許すつもりは無いみたいだぞ」

 

「瑠璃が……」

 

「まぁ、ここで起こした事件の罰は何れは受けてもらうとして……なんか用か?」

 

 俺と似ているから冤罪をかけられた件に関してグチグチと言ってやってもいいが、今はそれは置いておく。

 何れはこいつらにはこいつらが犯した罪を償ってもらうが、今はここにやってきた目的について語ってもらう。

 

「榊遊矢……お前はいったい何者なんだ?」

 

「俺は俺でそれ以上でもそれ以下でもない……時折自分が何者なのか分からなくなるがな」

 

 なんで転生したとかカードを沢山持っているとかホントに色々と謎だったりする。

 基本的には深く考えないようにしているが、前世の家族とか友達とか色々と思うところはある……考えれば考えるほど辛くなるだけの未来しかないので考えることはしないようにしているけれども。

 

「……どういう意味だ?」

 

「さて、それは俺にも分からない事だ……俺になにか用事があって来たんだろ?」

 

「……お前はアカデミアなのか?」

 

「いいや、違うな。俺は俺だ……ただアカデミアもハートランドの現状も色々と知ってる」

 

 知っているには知っているが自ら動くことは基本的にはしない。

 めんどうなのもあるし、全ての原因が俺の中にいるクソ野郎のせいでもあるからな。

 

「っ……何故」

 

「情報の出所については秘密だ……知らないほうがいいことだって世の中にはあるんだ。例えばこの次元戦争の発端とかな」

 

「なんだと……お前は知っているのか!この次元戦争の始まりを!!」

 

「ああ、知っているとも。赤馬零王のくだらない私情の為にアカデミアは全ての次元に迷惑行為を行っている」

 

 全ては自分の娘であるレイを復活させる為で、柚子や瑠璃がその娘を4分割した存在……なんて言っても意味は無い。

 瑠璃と柚子は守らなければならない。俺自身がそう思っているのでそれ以上は深く踏み込む真似はしない。

 

「お前の知っていること全てを教えろ!」

 

 物静かだったユートだったが、俺が全てを知っていることを知れば顔色を変える。

 そりゃそうだろうな。平穏な日常を破壊したアカデミアは全ての次元を統一するだなんだ崇高な目標を掲げているが、真の目的は愛娘の復活で……知れば全ての次元の住人は激怒するだろう。諸悪の根源みたいな存在である俺が言うのも何だけどな。

 

「嫌だね」

 

 ユートは俺の知っている事について全てを聞き出そうとする。

 しかし俺は教えない。教えると厄介な未来しか待ち受けていないし、教えたところでなにか出来るわけでもない。

 

「デュエルだ!オレが勝ったらお前の知っていること全てを教えろ!!」

 

決闘盤(デュエルディスク)とデッキは置いてきたからデュエルをする事は出来ない!!」

 

「なん……だと……お前はそれでもデュエリストか!」

 

「生憎、俺はデュエリストとは程遠い存在なんだよ」

 

 ユートや黒咲と遭遇すれば十中八九デュエルを挑まれると思っていた。

 こういう時を想定して決闘盤とデッキを置いてきた……こんな事をしているから俺はデュエリストとは程遠い存在なんだろうな。塾長やタツヤですらこんな時にでも決闘盤を持ち歩いている……デュエルモンスターズはeスポーツの一種程度の認識だからな、俺は。

 

「とにかくデュエルをするつもりは無い……仮にお前とデュエルをしたとしても十中八九俺が勝つしな」

 

 エクシーズに対して強いデッキを持ってくる事だって出来るんだ。

 これ以上は語り合う事は無いと思っているとユートの持っている決闘盤が、恐らくはエクストラデッキと思わしき場所が光り輝いたと思えばなにもない筈の場所が急に光り輝くと……Dホイーラーがいた

 

「おい」

 

『我が分身はまだ他にもいる、最後に貴様を取り込みさえすればいいだけの話よ』

 

 最近はやたらと静かになっていると思っていたズァークの意識は色々と企んでいたようだ。

 最後に俺を取り込むとはいい度胸だな。復活する意志を、心をデュエルで叩き折ったと思っていたが案外しぶとい存在である。

 

「なんだ、ここは!?って、オレ!?どうなってんだ!?」

 

「コレは次元転移……貴様、融合の手先か!!」

 

「オレは融合じゃねえ。ユーゴだよ!……あ、そうか。分かったぞ!お前、前にリンにちょっかいかけた奴だな!!」

 

 微妙に話が噛み合わないユートとユーゴ。俺の中にいるズァークの狙いはズァーク復活である。

 ユーゴは前にリンにちょっかいをかけた奴、つまりはユーリと勘違いをしておりユートは融合次元からの使者だと勘違いをしている。

 

「待て待て待て待て待て!お前等、絶妙なぐらいに話が噛み合ってねえぞ!!」

 

「邪魔をするな!」

 

「邪魔するわ!この野郎、こうなる事を分かってたから明らかに狙ってやりやがって……」

 

『っち、邪魔をしおって』

 

 デュエルの準備をしようとするユートとユーゴの間に入る。

 このまま行けばどちらかがどちらかを取り込むデュエルが開幕する。ズァークが復活するには俺がデュエルで負けなければ良いだけの話だが、この世界、ゲームバランスを無視したぶっ壊れカードが普通に存在しているので油断ならない。

 

「って、またオレ!?どうなってんだよ、いったい」

 

「お前のエースカードが導いたんだよ」

 

「エースカードって、エクストラデッキが光ってやがる!!コレは……クリアウィング・シンクロ・ドラゴン?」

 

 自分のエクストラデッキが光っていることにここでユーゴは気付く。クリアウィング・シンクロ・ドラゴンがこの次元に、スタンダードに導いた。正確にはズァークが導いたが……う〜ん……

 

『っく……ペンデュラムの我を支配下に置けない状態ではエクシーズとシンクロを操れぬか』

 

 ユートとユーゴを操り「今こそ1つに!」をしたかったみたいなズァーク。

 俺にボコボコにされた結果、この次元にまで連れてくる事は出来るが操る事が出来ない事を悔しがる。

 

「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンが……」

 

 ユーゴが取り出したクリアウィング・シンクロ・ドラゴンに共鳴するかの様にというか共鳴しているんだろう。

 ユートはエクストラデッキからダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを取り出すとカードが紫色に発光している……オカルトじみているな。

 

「ここはスタンダードと呼ばれる全ての召喚法を使う発展途上の次元だ」

 

「スタンダード?見たところトップスでもコモンズでもねえけど……」

 

「お前はシンクロ次元の住人だな?」

 

「シンクロ次元だと?」

 

「融合とエクシーズの次元があるんだ。シンクロ召喚の次元があってもなんらおかしくはねえだろう」

 

 今まで融合(アカデミア)とエクシーズ(ハートランド)しか知らなかったユート。

 シンクロ召喚という召喚方法があるのならばシンクロ次元が存在していても別におかしくはないと割とあっさりと受け入れる。

 

「なんかよく分かんねえけど、ここはオレが住んでた場所とは違うみてえだな」

 

「その認識で大体間違いはない……分かれてしまった4つの次元の内の1つがこの次元だ」

 

「分かれた?4つってまだ他にも次元があんのかよ!!」

 

「そこの俺達にそっくりな男がエクシーズ次元の住人で更にはもう一人俺達にそっくりな人間がいる。そいつが融合次元の手先だ」

 

「なんでそこまで知ってるんだ!?」

 

「遭遇したからデュエルでボコボコにした」

 

 リンにちょっかいをかけた奴がユーリとはあえて言わないでおく……言うとややこしくなるからな。

 ユートとユーゴはデュエルをする流れだったものの、俺が横槍を入れたおかげでデュエルをする空気は無くなった

 

『っち』

 

 ズァークはその事に関して舌打ちしている。ホントにロクでもねえ存在だな。

 

「ここがコモンズでもトップスでもねえ場所だって言うし、ここ以外にも別の世界があるとか言うし、本当にどうなってるんだ……」

 

「ユート、1から説明してやれ」

 

「ああ……」

 

 俺が説明をすれば言ってはいけない事を言ってしまいそうなので言わないでおく。

 ユートはユーゴにエクシーズ次元、ハートランドで起きた出来事や襲ってきた集団であるアカデミアの存在について語る。

 

「オレの知らねえところでそんな事が……」

 

「俄には信じ難い話だろうが、事実なんだ。信じろとは言わないけど」

 

「いや、信じるぜお前達の話を!……デュエルを戦争に使うなんて許せねえぜ、アカデミアはよ!」

 

 っく、真っ直ぐすぎる。ユーゴは真っ直ぐすぎる。眩しいくらいに真っ直ぐすぎる。

 

「今直ぐにでも融合次元に乗り込みたいところだがとにかく敵は数が多い。このスタンダード──っ」

 

「うぉ、消え──っ!?」

 

「このタイミングでか」

 

 なにか言おうとしているユートだったが突如として姿を消した。ユーゴはその事について驚いているのだがユーゴもユーゴで光を放って消えた。

 

『っち、歌氷麗月め……』

 

「遊矢!!」

 

 ユートとユーゴが消えたのかと思えば柚子が現れた。

 

「柚子か……素良は見つかったか?」

 

「ううん、何処にも居ないわ……ねぇ、遊矢」

 

「なんだ?」

 

「素良は…………アカデミアなの?」

 

「ああ、そうだ」

 

 流石に気付くよな。柚子は恐る恐る俺に素良の正体について尋ねるので正直に答える。

 柚子は驚いた顔をしてはいるが何処か納得した顔をしている。

 

「驚かないのか?」

 

「あんなに強くて融合を使える何処のデュエル塾にも通っていない子が居るなんて無いし……遊勝塾に来たとき遊矢が目当てでやってきたから」

 

 心の何処かでもしかしたらと柚子は思っていたのか。だったらそのもしかしたらは当たっている。素良は融合次元の、アカデミアからの尖兵だ。

 

「これだけ探しても見つからないとなると……融合次元に強制送還されたんだろう」

 

「……これからどうなるのかしら?」

 

「それは俺にも分からない……でも、楽しいデュエルをする事が出来なくなりそうだ」

 

 

 

 

─────────────────────────────

 

 

 

 素良は融合次元に、正確には融合次元のアカデミアに送り返されていた。

 ユートとのデュエルで傷ついた素良は医療班により怪我の状態をチェック及び治療等を受けるのだが素良はVRゴーグルの様な物を装着させられている。

 

「スタンダードでなにがあった?」

 

 VRゴーグルの様な物は素良の記憶を読み取るというオーバーテクノロジーにも程がある技術だ。

 スタンダードの実態の調査、スタンダードのデュエリストのデュエルの腕前がどれぐらいの物なのか調べるのが素良の仕事だ。その素良が怪我をして帰って来た。赤馬零王はスタンダードで起きた異変について医療班に尋ねる。

 

「どうやらデュエルで敗北したそうです」

 

『漆黒の闇より愚鈍なる力に歯向かいし』

 

「!……」

 

 決闘盤の記録(ログ)と素良の記憶からユートとのデュエルが流れ出る。

 ユートを見た赤馬零王は僅かに表情を変える。分裂したズァークの1人と遭遇して負けてしまったのかとユートとのデュエルを凝視する。

 

「アカデミアの精鋭である素良を1ターンキル……悪魔め……」

 

 分裂したとはいえズァークの一部である事には変わりはない。

 悪魔の様なデュエルをしているなと思っていると記憶の映像にノイズが走る。

 

「プロフェッサー、スタンダードに送り込んだ兵士がやられて帰ったんだよね?」

 

「……ユーリか」

 

 それと同じタイミングでユーリが医務室に入ってきた。

 素良が強制送還されたと話を聞いてきたのでとある事を調べる為にやってきたのだ。

 

「榊遊矢には会ったの?」

 

 瑠璃とリンを攫うという重要な任務を邪魔し、2度も1ターンキルでぶっ倒してきた遊矢の事をユーリは知りたがっている。

 スタンダードに居るのは知っているが、普段は何をしている等の情報は特になかった。素良の記憶からそれは読み取る事が出来ないかと調べに来て、ついでに遊矢との対戦データが記録に無いのかと調べると、あった。1つや2つだけじゃない十数回もデュエルをしている。

 

『シンクロ召喚!混沌魔龍カオスルーラー!』

 

 レベル8のヤベえシンクロモンスターを平然な顔で召喚する。

 

『竜皇神話!対象のドラゴン族の攻撃力を倍にする!』

 

 エクシーズモンスターで攻撃力10000近くを叩き出す。

 

『ペンデュラム召喚!現われろ我が下僕のモンスター達!』

 

 ペンデュラム召喚という聞いたことのない未知の召喚方法を操る。

 

「っ……」

 

 榊遊矢はスタンダードの住人だ。スタンダードは融合、シンクロ、エクシーズの全てがあるが、発展途上に近い。それなのに本場のデュエリスト並、いや、それ以上に扱いこなしている。コレもまた覇王龍ズァークの片割れの片鱗だが、異常な迄に強すぎる。素良のデュエルの記録を調べてみれば全戦全敗、殆どが1ターンキルである。

 

「スタンダードが1番の悪魔なのか」

 

「まだこんなに手札を隠し持っているんだね……面白いね」

 

 ユーリは潰しがいがあるデュエリストを見つけたと笑みを浮かび上げるが、プロフェッサーは笑えない。

 アカデミアの中でも精鋭と呼ぶに相応しい素良が手も足も出ない。悪魔の片鱗を見せている。

 

「オベリスクフォースを総動員しろ……悪魔は潰す」




 嵐の様な一騒動があったものの平穏な大会は続く

 舞網チャンピオンシップは1回戦が全て終了し続くは2回戦

 OCG次元産のトマトが相手をするのは前回準優勝者の勝鬨(ヤムチャ)

 相手が誰であろうとも今日も今日とてトマトは圧倒的なまでのチートなデュエルをする。

 次回遊戯王ARC-V【トリプルフィーバー】にガッチャビングデュエルアクセラレーション!

 お前ならばそのカードを発動する、俺はそう信じていたんだよ!

 ば、バカなぁああああ!!

モコミチ達とデュエル

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