更新頻度は不定期です。申し訳ありません。
白坂小梅という少女は、アイドルである。
小柄な体格。シルエットとしてのショートカットとは対照的に、右目を覆い隠すほど伸ばされた前髪。そして、この年代では珍しいであろう金髪とイヤーカフ。とても特徴的な容姿は、人を惹きつける。彼女のファンは、一目でわかる魅力的な容姿を好んでいたが、最も彼らを惹きつけていたのは、彼女の中で形成された感性だった。
彼女は少しだけ、一般的とは異なる感性を持っている。
ゴア表現、G指定作品。酷く生物的な、いわゆるグロテスクなものに対しての耐性を強く持ち、嬉々としてそのカテゴリの映像作品の鑑賞を繰り返している。幽霊などのホラー作品も同様であり、その独特の感性は、彼女の新たな側面の魅力として輝いていた。
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時刻は午後7時を廻っていた。今日開催されたライブは無事に成功を収め、今はプロダクションが管理している寮へ帰る途中だった。食事も済ませた後であり、あとは寮に帰り寝支度を済ませるだけ。ぼーっと、流れる景色を見ては、運転をしているプロデューサーへ視線を移す。プロデューサーが運転している車に乗せてもらい、何気ないような会話をしながら帰るこの時間が、小梅は好きだった。
「今日のライブすごい良かったぞ」
「!……っ、ほ、ほんと?」
「ああ。ファンの皆も盛り上がってたし、ライブ自体も練習の成果がよく表れてた」
「そ、そっか……。よかった……」
「ああ」
沈黙。しばらくして。
「眠くないか?」
「う、ううん。まだ大丈夫」
「眠たくなったら無理せずに寝ていいからな」
「うん。わかった」
再び沈黙。
彼女の目下の課題が決まった瞬間だった。
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寮に到着し、入浴、歯磨きなどの寝支度を整え、テレビ前のソファに座る。わざと勢いをつけて腰掛け、期待通り、体が数回弾む。思わず口角が上がるのを感じながら、横に置いてあったクッションを抱えた。小梅は、夜寝る前にはホラー映画を一本見るのが日課になっており、今日も例に漏れず鑑賞をするつもりだった。DVDは既にセットしてあり、後はリモコンで操作をすれば今すぐにでも見る事ができる。今夜観るのは、映像作品自体の評判は余り良くない物だ。しかし、今回の作品に限って、内容の良し悪しは関係ない。このDVDの本質は外側、つまりは実際に起こる霊障にあった。大体のホラー作品を既に観終わっていた彼女は、画面の中だけでは飽き足らず、実際の世界でのホラーを体験したいと思うようになっていった。本当に危険なものであれば、既に彼女に憑いている[あの子]と呼んでいる霊が警告してくれているので、大事に至ることは今まで無かった。[あの子]が居るだけで、相当なホラー体験をしていると思うのだが、彼女にとっては最早日常になってしまっており、刺激とは程遠い存在になってしまっている。
リモコンのスタートボタンを押し、鑑賞を始める。何が起こるか期待しながら鑑賞をするも、通常通りで。鑑賞前にあった高揚感も、中盤を過ぎた頃にはすっかり収まってしまう。終盤に至っては眠気との格闘の方に意識が集中し、作品鑑賞どころでは無くなってしまった。
「ふぁぁ……」
眠気との格闘も限界に近くなり、意識も曖昧になり始める。期待していた霊障の類も無し。映画は既にエンドロール。しかし、彼女は今だに画面を見ていた。エンドロールを見終えるまで鑑賞するのが、彼女なりのホラー映画に対するリスペクトの姿勢だった。流れるエンドロールを寝ぼけ眼で見て居ると、ふと不思議な感覚が彼女を襲った。隠れて居るはずの右目に強い光を感じたのだ。基本的に右目は髪で隠れており、光を感じ難い。そもそも、そのような強い光を発するような物など、この部屋には置いていないのだ。テレビからの光かと思い確認するも、エンドロールの文字以外にそれらしい光はない。
「っ……!」
これは瞳の中で光って居るのだ。彼女は直感的に理解した。その白んだ緑色の光は、あちらこちらと漂い、いたずらに瞬き舞う。初めての体験に大きな動揺を隠せずに居ると、[あの子]が彼女の様子を伺うように視線を向ける。
『___?』
「ごめん……大丈夫だよ。ちょっとびっくりしちゃっただけ」
不安そうな[あの子]の言葉を聞き、心配させまいと気丈に振る舞う。しばらくすると光は収まり、以前と同じような視界に戻った。明日の予定を考えると、もう就寝しなければいけない時間。映画を止め、テレビを消す。不安は残るものの、彼女はベッドに横になり、その日を終えた。