TS美少女は双子の妹と幼馴染の勇者を溺愛したい ~甘やかすのは姉の特権なのです~   作:こびとのまち

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1話から嬉しい反応をいただき、感激の極みです。

さて、冒険の物語を進める前に、まずはロルフくんのお話をしておかねばなりません。



イケメン勇者は今日も決意を改める

 14歳の誕生日に勇者として選ばれる少年ロルフには、海より深い悩みがあった。その悩みが頭の中をぐるぐると渦巻き、思わず大きなため息が漏れる。

 

「ため息ついたら幸せが逃げちゃうのですよ? 何か悩みがあるのなら、この姉を頼るといいのです」

「いや、気持ちだけ受け取っておくよ、シーア……」

 

 ロルフと同じ日に生まれ、家族同然に育ってきた幼馴染が、心配そうに顔を覗く。

 双子の妹にそっくりなシーアは、同い年には見えないほど幼い体型であるものの、それ以上に誰もを魅了するほどの可愛らしさがあった。白く輝くシルクのような銀髪、どこか眠たげで穏やかな印象を与える目元、きめ細かく透き通った肌。人形のようでありながら、それでいて愛くるしく動く彼女は、シンイット村の皆に愛されていた。

 

 しかしながら、ロルフの悩みの原因は、まさにこの美少女シーアこの人なのである。

 ことあるごとに弟として扱おうとするシーアに対し、今度は心の中でため息をつくしかなかった。

 

 

 

 

 ロルフには前世の記憶がある。初めて自分の前世に気がついたのは7歳の頃。唐突に、彼は彼女として過ごした17年のほとんどを思い出した。

 

 生まれ変わってロルフとなる前、彼……いや、彼女は夏見麻耶というひとりの女子高生として、何気ない日常を過ごしていた。

 そんな彼女は年相応に、しかしながら実る気配のない恋をしていた。実る気配がない恋とは、つまるところ片思いの恋である。

 

「おはよう。ここ最近、毎日浮かない顔をしているね」

 

 学校へ通う道中で麻耶の隣を歩く彼は、ともすれば少女のようにも見える中性的な顔立ちをしていた。彼は10年以上の付き合いとなる幼馴染だが、麻耶は初めて出会ったとき、あまりの可愛らしさから同性と勘違いしてしまった経験がある。麻耶はあの時の自分を、そしてそのあと妹か弟のように認識して接してしまった自分を、恨めしく思わずにはいられない。

 

「麻耶姉には明るい笑顔でいてほしいな。何か悩みがあるなら、この僕を頼るといいよ」

 

 長女として育った麻耶は、とにかく面倒見が良かった。その性格も災いし、いつからか幼馴染は麻耶を姉と呼ぶようになっていた。麻耶自身がそのような関係性で接し続けていたのだから、当然と言えば当然である。後悔先に立たず。麻耶が幼馴染に対しての恋心を自覚したときには、すっかり姉としての立場が定着してしまっていた。

 今日こそは姉としての立場を脱し、この幼馴染に異性として意識させてみせる。そう決意した麻耶の人生は、しかしその決意が実行に移される暇なく幕を下ろすことになる。それも、好きで好きで堪らない幼馴染を巻き込むという最悪の形によって。

 

 麻耶の短い人生は、幼馴染の存在によって概ね幸せであったが、同時にあまりにも多くの後悔を残すものであった。

 死してなお、麻耶の後悔の念は止まらない。そんな麻耶を見兼ねたのか、神は彼女に転生を持ちかける。

 

 ――こんな私を救おうとし、結果として巻き込まれる形で命を落とした幼馴染。彼とともに生まれ変わり、今度こそ幸せにしてあげられるのなら。

 

 麻耶は、神の持ちかけた提案を受け入れた。

 

 

 

 

 前世の記憶を、そして麻耶としての後悔を思い出したロルフは、今世の幼馴染が前世でも幼馴染だったことを瞬時に理解する。姿が変わり、喋り方が変わり、性別まで変わってしまった幼馴染だが、ロルフは間違いないと確信していた。あれほど想った相手なのだ。一度や二度生まれ変わった程度で、分からなくなることなどあり得ない。

 

「ふふ、ロルフは本当に可愛い子なのです」

 

 幼いロルフを愛おしそうに見つめるシーアは、どうやら前世の記憶を覚えていないらしい。そう気づいたロルフは、今世でこそ彼女を幸せにしてみせると、心の中で決意した。

 同時に、今度は異性として、恋愛対象として自分を見てほしいとも強く思った。前世の後悔は繰り返すまいと誓ったロルフは、7歳のその日まで「姉さん」と呼んで慕っていたシーアに対し、接し方を変える。もっとも、突然甘えてこなくなったロルフに不満を抱いたシーアは、それからロルフに姉扱いされようと躍起になるのだが……

 

 

 

 

「絶対幸せにしてみせるから」

「姉の頭を撫でちゃダメなのですよぉ……ふわぁぁぁあ」

 

 前世の癖で無意識的に頭を撫でながら、ロルフは今日も静かに決意を改める。




一方のシーア「何としても姉さんと呼ばせてみせるのです!」


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