TS美少女は双子の妹と幼馴染の勇者を溺愛したい ~甘やかすのは姉の特権なのです~   作:こびとのまち

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今回は少し短め、前話で書き切れなかった分です。



TS美少女は天使たちに驚愕する

 風読みによって周囲を把握できるリアが眠っているこの状況、本来であれば、ボクとロルフは警戒心を強めておくべきだった。

 しかし、初日二日目と特に何もトラブルなく過ごしていたボクたちには、正直に言って油断があった。野営をする旅人として、不覚極まりない。

 

「ロルフ。この状況は、少しマズいのですよ……」

 

 ボクたちが過ちに気がついたときには、野獣の群れはほんの目と鼻の先にまで迫っていた。

 奴らの跳躍力であれば、一飛びでボクらの喉元に到達することができるのではないか、そう予感できてしまうほどの間合いだ。

 

「シーア、何も心配はいらないぞ」

 

 奴らが飛び掛かってくる直前に状況を把握して振り向いたロルフのおかげで、野獣の群と威嚇し合う膠着状態になっていたが、彼の頬には汗がツウっと流れている。

 心配しなくていいという発言も、きっとボクを落ち着かせるための強がりなんだろう。

 

「……ん。おはようお姉ちゃん」

「おはようなのです、リア。とりあえず、落ち着いてゆっくりと周りを見渡すのですよ」

 

 張り詰めた空気に刺激されたのか、ボクを膝に乗せたまま眠っていたリアが目を覚ます。

 驚かせてしまわないよう、ボクはできるだけ平常心を意識して返事した。

 リアは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに表情を引き締めて前に歩み出ると、そのまま臨戦態勢へ移る。

 

「わかっているよ、お姉ちゃん。前からも群れが来ているね」

「……えっ?」

 

 愛しい妹の口から、衝撃の発言が飛び出す。

 その直後、ロルフが対峙している後方とは反対側から、ジリジリと野獣の群れが近づいてきた。

 

 前と後ろの両方から野獣の群れに襲われている。それは、これまで敵と対峙してこなかったボクたちにとって、非常に危険な状況だ。

 いくら勇者に選ばれたロルフとはいえ、現状では訓練も実践も、まだまだ不足しているはずである。まして、数日前までただの村娘だったはずのリアは、怖くて仕方ないだろう。

 そう思ってリアを庇うべく前に進み出ようとしたが、彼女の左腕かそれを遮る。

 

「大丈夫。お姉ちゃんは私が守るから」

 

 リアが取った予想外の反応にボクが驚いたその時、前後の野獣が一斉に飛び掛かってきた。

 これはヤバいかもしれない。そう思った直後、リアの詠唱により目の前に閃光が走る。

 あまりの眩しさに一瞬目を閉じてしまい、やってしまった、と後悔した。野獣が襲い掛かってきたタイミングで目を閉じるなど、自殺行為にも等しい。

 だが、ボクの首元に野獣たちの牙が食い込むことはなかった。

 

 恐る恐る、ボクは目を開く。

 そこに広がっていたのは、思わず目を疑うような光景だった。

 

「リアッ! ロルフッ! そんな、まさか。そんなことって……」

 

 その衝撃に、ボクは続けて声を漏らす。

 生まれてからずっと一緒に育ってきて、ボクは二人のことをよく理解しているはずなのだ。だからこそ、目の前の光景が信じられない。

 こんな……こんなことってあるのだろうか。

 

「瞬……殺、なのです!?」

 

 目の前の木々が吹き飛び、周辺の地面は抉れていた。その周辺で山のように倒れているのは、ボクたちの数倍は大きな身体を持つ、野獣の大群だ。

 そして、それぞれの群れと対峙していたはずの二人は、傷ひとつ負わず、むしろ涼しげな表情を浮かべている。

 

 誰も傷つかなかった。まずはその事実にホッとして息を吐く半面、ボクの内心はざわつきが止まらなくなっていた。

 

 いつの間にこんなに強くなったのだろうか。

 あんなに可愛かった妹と幼馴染が……ボクの天使たちが……

 守るのはお姉ちゃんの役目なのに。まるで遠くに行ってしまったようだ。

 

「これじゃあ、ボクっていらない子なのでは……」

 

 残念すぎるその現実に気がついたボクは、呆然としたまま声を漏らす。

 姉であることが自分の存在意義なのに。それなのにボクは……

 あまりにも無力な自分に対し、思わず絶望してしまう。

 

 そんなボクから少し離れたところで、リアとロルフは満足げな表情を浮かべ、笑顔で互いの手を握り合っていた。




「シーアは俺が守るっ!!」(ズバーーン)
「お姉ちゃんは私が守るっ!!」(ドッカーン)
「ボクっていらない子なのでは????」

二人の強さの原因については、ある程度はお察しいただいているかもしれません。その辺りも追々に語っていければと。
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