架空の地方でジムリーダーを務める青年、トワとその相棒、ニャオニクスのお話です。

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永遠の相棒

 「ニャオニクス、サイコキネシスっ!!」

「ニャンッ!」

 僕はニャオニクスに叫ぶ。ニャオニクスが応える。

 最高のパートナーだ。

 「ドククラゲ!!」

「ドックラ…」

 ジムチャレンジャーが自分のパートナーに駆け寄る。

 …あれは戦闘不能だな。

 

 「あの…トワさん、凄く強かったです…僕のジムチャレンジは終わっちゃいましたけど、またいつか、ドククラゲを鍛え直してリベンジしにきます!」

「あぁ。頑張ってね、再チャレンジは大歓迎だ」

 僕、トワは二年前からこの町でエスパータイプのジムリーダーを務めている。僕のジムは6番目のジムリーダーになる。

 「ニャオニクス、今日もありがとうな」

「ニャイ」

「お前は俺の永遠の相棒だよ」

「ニャイ」

 ニャオニクスは、あまり感情を表に出さないポケモンだ。

 ただ、僕はこのニャオニクスと十数年一緒に暮らしているから、ある程度は気持ちがわかる。

 そういや、ニャオニクスとはじめて会った時って……。

 

   ☆

 

 「きみ、だあれ?なんていうぽけもんなの?」

「ニャ」

 僕がたしか…5…もしくは6歳のときに出会ったと思う。

 ニャスパーが、畑の隅に立っていた。

 見慣れないポケモンだったから、声をかけたりもしたけれど、あまり反応はなかった。

 僕は、農家の息子として生まれた。

 僕の生まれた町では農業が盛んで、父は農業犬としてワンパチを飼っていた。だからポケモンと触れ合うことはしばしばあった。

 でも、僕は飽きっぽかったから、すぐにニャスパーを無視して、家に帰ってしまった。

 

 その夜。

 庭の方で、いきなり「ガチャン!」という音が聞こえた。

 様子を見に行こうと、父親の後ろに隠れて庭の方へと向かった。

 そこにいたのはあのニャスパーだった。

 どうやらニャスパーのサイコパワーが暴走したために、庭に置いてあった農業用のクワなどが倒れてしまったらしい。

 その時父親が言ったことは、

 「ニャスパーはたしか、この小柄な体に莫大なエスパーの力を携えているんだ。だからその力が暴発しないようにいつも必死で抑えていると聞いたことがあるな…しかしこの有様…ということは……力を抑えるための力も無いということかな……?とりあえず、ポケフードをあげよう。ワンパチ用の物だが、無いよりはマシだろう」

みたいな感じだったと思う。

 

 その後、ニャスパーは順調に回復した。

 農業犬として飼っていた、父親のワンパチとも上手くやっていた。

 とりわけ、なぜかニャスパーは僕の側にいるようになった。いつでも僕の側に寄ってきて、「ニャンッ」と鳴く。

 可愛いなー、とは思っていたけど、何しろ無表情だから感情がよく分からなかった。

 

 10歳くらいの時。

 僕は同年代の子供からいじめを受けていた。

 理由は今でもよくわからないけど、みんなよりも背が低くて鈍臭かったのが理由じゃないか、と思っている。

 毎日、とても辛かった。

 生きているのが辛い、と思うこともあった。

 早めの思春期ということもあって、親にも相談できなかった。

 でも、ニャスパーだけは違った。

 いつも僕の愚痴を聞いてくれて、僕の話が終わると「ニャンッ」と鳴いて僕の膝にのる。そして寝る。

 僕はそんなニャスパーを抱きしめて一緒に寝た。

 あの時は、ニャスパーだけが僕の支えだった。

 

 いじめは、せいぜい二年も続かなかった。いじめっ子グループのボスが引っ越してしまったからだ。

 ボスを失った組織ほど脆いものはない。すぐにそのグループは自然消滅した。

 

 さて、12歳くらいのときだったと思う。

 ニャスパーと一緒に、ボンヤリ近くの海を眺めていた。多分親と喧嘩でもして、一時的に家出でもしていたんだろう。

 その時、とある男性に見かけた。

 彼は…多分30代で、白衣を羽織っていた。

 見慣れない人だな…と思ったけど、この周辺の町は観光業がそこそこ盛んだから、観光客はそれなりにいる。

 男性は僕にこう言った。

「Hey guy!君はこの町の子かな?」

 やけにテンションが高いな…と思った。

「…はい」

「そっか。…ごめんね、テンションが高くて。若きポケモントレーナーに会えたのが嬉しくてさ。ここはいい町だね。静かで、自然が豊かだ。ポケモンも沢山いる」

「はあ…」

 その男性は褒めてくれたけど、自分が生まれ育った町は、子供の頃はあまり好きになれないものだ。

「そのニャスパーは、きみのポケモンかな?よく懐いているね」

「え、あ、いや…」

 正直、このニャスパーは僕に着いてきているだけで、正式に僕のポケモン、というわけじゃない。ゲットしたわけじゃない、ってことだ。

「ひょっとして、モンスターボールを持っていなくて、正確にはきみのポケモンじゃ無いとか?」

「は、はい」

 モンスターボールなんて、触ったこともなかった。父親はモンスターボールの管理が厳しくて、とても気軽に触らせてはくれなかったから。

「そっか。それじゃあ、いくつかきみにプレゼントしよう。なに、気難しいポケモン代表とも言われるニャスパーを懐かせることができるトレーナーなんて、そうはいないからね」

 そう言って、彼は僕にモンスターボールを5つもくれた。

「えっ!?いや、そんな……」

 僕は困惑した。当たり前だ。触ったこともないのに、いきなり5つも貰ったのだから。

「大丈夫。仲間にしたいポケモンと向き合って、ボールを投げるんだ。おっと、大切に扱ってくれよ。きみにとっては凄く貴重なものだろう?」

「仲間にしたいポケモンと向き合う…」

「にゃあっ」

 僕はニャスパーに言った。

「ニャスパー!僕のポケモンになってくれないか?…ずっと。ずっと僕と一緒にいてくれ!!!」

「にゃあっ!」

 ……そのときのニャスパーの返事は、僕のニャスパーが唯一感情を露わにしたものだったのかもしれない。

「モンスターボールっ!」

 僕はニャスパーに向かってモンスターボールを投げた。

 ……カチッ。

 ボールは何度か揺れた後、確かに、確実に、「カチッ」と言った。

「…やるじゃん?」

 白衣の男性はニヤリと笑った。

 

 それから、色々なポケモンを捕まえるようになって、ついにはこの地方で行われている「ジムチャレンジ」に参加するようになった。

 各町にいるジムリーダーを倒し、バッヂをもらう。

 バッヂを8つ手に入れたものだけが参加できる「ポケモンリーグ」を目指そうと思った。

 でんき、ゴースト、フェアリー、むし、みず、エスパー、ひこう、はがね……。

 決して楽なチャレンジじゃなかったけど、僕たちは着実にクリアしていった。

 そしてたどり着いたポケモンリーグ。そこでは、バッヂを8つ手にしたチャレンジャー同士でトーナメントを行う。そのトーナメントで優勝したものが、チャンピオンと戦える、というルール。

 結果から言おう。僕の成績は準々決勝敗退。ベスト8。

 理由は、多分手持ちポケモンのタイプの偏りだ。

 僕のポケモンにはエスパータイプのポケモンが多すぎた。

 イオルブ、エーフィ、ランクルス、エルレイド、フーディン……そして、ニャオニクス。

 別に狙っていたわけじゃないけど、これじゃあ苦戦するのは当たり前だ。

 落ち込んでいた時、当時エスパータイプのジムリーダーだったバイカモさんに声をかけられた。

 「私さ、そろそろジムリーダーを降りようかと思ってるんだよね…。君からエスパータイプのポケモンへの愛を感じるし、私の後を継いでくれないかな…?」

 …断る理由がなかった。

 もちろん楽な仕事じゃない。負ければマスコミが騒いでファンが減るし、勝ってもチャレンジャーの辛い表情を見ないといけない。

 それでも、僕はこの仕事に誇りを持っている。

 

 たまに辛いことがあって、ニャオニクスに愚痴を言うこともある。でも、ニャオニクスは僕の話を聞き終わった後、僕の膝の上で寝る。そう、あの時のように。




読んでくださりありがとうございました。

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