スバル「レム!!レム!!」
スバルが倒れているレムの元まで駆け寄り、体を抱きかかえる。
抱きかかえたその体はーーー
スバル「・・・・・冷たい。」
体温が感じられなかった。死体だから、当然だった。
スバルの目に溜まっていた涙がレムの元へ流れ落ちた。
スバルはレムの体を置き、せめてもと思い、体に刺さっているナイフを抜いた。
そして彼は、紫色の衣装を着ている人物達の死体がある道を通って、屋敷の中に向かう。
スバルは、屋敷の中に入ってエミリアを探し出す。
入り口、廊下、食堂、厨房・・・・・
他にも行ったが、エミリアは中々、見つからない。
スバルは、ある部屋のドアノブに手を掛ける。
扉を開こうとした時、何かが乗し掛かる感覚がした。
スバル「あ・・・・・」
扉から、ラムとペトラが倒れて出てきた。
ラムは頭から血を流して倒れている。ペトラを守ろうとしたのだろうか。
ふと、スバルはペトラがうつ伏せになって倒れていることに気付く。
スバルはペトラの体を起こそうと手を掛ける。
そしてその体が正面を向いてーーーーー
スバル「・・・・・ぁああああああああっ!?」
ペトラの目が、抉り取られていた。
スバルは絶叫の声を上げて、尻餅を着いた。
スバル「何で・・・・・何で・・・・・」
スバルは滝のように流れる涙を出しながら二人の死体を見てうわ言のように呟いた。
この状況を見て、もう彼女も無事ではないのだろうと思いながら、スバルはエミリアを探す。
歩いて歩いて歩いた。
そして彼は、ある物を見つけた。
それは、エミリアがいつも頭に着けている、白い花。
スバル「エミ、リア・・・・・」
スバルは彼女の名を呟く。
そして彼は、何故か自分の手で体を抱えていた。
ふと、左を見ると、本棚が扉のようになって奥に開いていた。
スバルは扉を押し開いた。
そこは辺り一面水色で、異様な寒さがあり、冷凍庫のようだった。
彼は階段を降りて、白い息を吐きながら道なりに進む。
進み続けて、扉が見えた。
もしかしたら、エミリアがいるかもしれないという藁にもすがる思いでドアノブに手を掛ける。
その時だった。
スバル「痛っ!!・・・・・っ!!」
彼の手に激痛が走った。
何事かと、手を見れば、人差し指と中指と薬指が、失われていた。
失われた三本の指は、ドアノブに取り付いていた。
スバル「・・・・・ああっ!?」
スバルは大きく後ずさって、足を取られたかのように尻餅をついた。
尻餅を着いた原因は、今、目の前にある体から外れてしまった右足だった。
彼の周りには、氷漬けになっている紫色の衣装を着ている人物達が居た。
『もう、遅すぎたんだよ。』
その声が聞こえると、いつの間にか氷漬けになっていたスバルの顔が、崩れた。
スバル「っ!!」
スバルは、目が覚めた。
スバル「ここ、は・・・・・・・え。」
スバルは周囲の状況を確認しようとした。
だが彼の目の前に、何か黄色い物が見えた。
いつの間にか持っていたガラケーのライトがそれを照らしていた。
「ーーーーーオオオオオオオオ!!」
そして大きな鳴き声がすると、とてつもない突風がスバルを襲う。
スバル「うっ!!うわあああああああああああ!?」
その余りにも強い風にスバルは吹っ飛ばされた。
「ーーーーースバル君!!」
スバル「!!」
飛ばされる中、声が聞こえた。
その声の主はーーー
スバル「・・・・・レム!?」
さっきまで目の前で死んでいたはずのレムだった。
レムがスバルの服を掴んで飛ぶ。
そしてそのまま、小さめの荷車のような所に飛び降りた。
レム「うっ!!」
スバル「うわあっ!!」
両者とも体が落ちた衝撃で転がる。
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
再び鳴き声がして、二人の目の前に走ってた竜車が風のような物に襲われる。
それを竜車を運転しているであろう主が避けようとしたのか、荷車が思いっきり揺れ、二人は体が倒れる。
スバル「・・・・・何なんだよこれ!?今度は一体・・・・・」
レム「スバル君立たないで!!」
スバルが立ち上がろうとするのをレムが手で制する。
レム「風除けの加護が切れています!!」
「分からないんですか!?霧の中、あんな巨体で空を泳ぐ存在なんて一つしか居ない!!」
竜車を運転している主が声を上げる。
声質からして若い男の声だ。
「ーーーーー白鯨です!!」
スバル「・・・・・白鯨!?ていうかそもそもお前誰だ!?」
「はあ!?こんな時に何言ってるんですか!!オットーですよ!!オットー・スーウェン!!」
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
男はオットーと名乗るが、再び白鯨の鳴き声が聞こえる。
見ると、既に彼らの後ろに白鯨が口を開いてこちらに迫っていた。
スバル「うわあっ!!」
白鯨の口がスバル達を吸い込もうと風を発生させる。
スバルはそれに吸い込まれそうになるが、荷車に取り付けられていた綱に捕まる。
レム「はあああっ!!」
レムが頭に角を生やして白鯨に向かって飛び立つ。
持っているモーニングスターで白鯨に攻撃する。
その攻撃に大きい鳴き声を上げて白鯨は苦しむ。
レムはオットーの隣に着地する。
レム「左に走り抜けて!!」
オットー「っ!!左左左左左左左ィィィ!!」
オットーはレムの指示を受けて左に走ろうとする。
だがその時、接近してきた白鯨がぶつかった。
スバル「うわっ!!」
そしてその衝撃でスバルが持っていた綱が千切れてしまう。
スバルが放り投げられるが、レムのモーニングスターが彼を捕らえ、そのまま屋根のついた荷車に引き寄せられた。
レム「喰らええええええええええ!!!」
レムが小さめの荷車を白鯨に向かって投げつける。
その攻撃を喰らい、白鯨は再び苦しむ。
オットー「や、やりましたか!?」
オットーがそう聞くが、白鯨はそれでも追ってくる。
オットー「くっ!!どうして執拗に僕らを・・・・・竜車は他にもいるでしょうに!!」
スバル「・・・・・どうにか、どうにか出来ないのか!?」
スバルが頭を抱えてそう言う。
それを聞いたレムが、何かを決意したかのような顔になり、座っていたスバルに跪く。
レム「スバル君、これを受け取ってください。」
レムがスバルに袋を渡す。
スバル「!!何か思いついたのか!?」
レム「レムが竜車を降りて奴を迎撃します。その間にスバル君は霧を抜け出してください。」
スバル「なっ・・・・・」
レム「オットー様、スバル君をお願いします。約束の報酬はスバル君が確かに。」
オットー「ほ、報酬!?い、今はそれどころじゃありません!!命あっての物種ですよ!?」
レム「・・・・・スバル君、レムは頭が悪いのでこんな事しか思いつけません。だからどうか・・・・・」
スバル「・・・・・嫌だ。行かないでくれ!!そんなことをしなくてもどうにかなる方法がある筈だ!!お前が死ぬ姿なんて見たくな・・・・・わっ!!」
レム「っ!!」
その時、竜車の車輪が石にでもつまついたのか大きく揺れる。
レムはそれに一瞬目を閉じ、目を開けたときには、スバルがレムを抱きしめていた。
レム「・・・・・スバル君、ごめんなさい。」
スバル「うっ!?」
レムは、スバルに謝罪をして首に手刀を打つ。
スバル「何、を・・・・・」
レム「・・・・・大丈夫です。レムはずっと、スバル君の後ろで見守っていますから。」
スバル「やめ、ろ・・・・・行くな・・・・・!!」
スバルが朦朧とした意識の中で、レムに手を伸ばす。だが、彼の願いは虚しく、レムは霧の中に飛び込んでいった。
彼の意識は、途絶えた。
スバル「・・・・・・はっ!!レム!!レム!!」
オットー「ナツキさん・・・・・死んでください。」
スバル「・・・・・は?」
スバルは目覚めて第一声にレムの名を呼ぶ。
だが突如、オットーがスバルに死んでくれと言った。
オットー「うわああああああああああ!!」
スバル「うわっ!!があああああああああ!!」
オットーがスバルを突き飛ばす。
スバルは走っている竜車の勢いで、思いっきり転がっていく。
オットー「貴方が悪いんですよぉ!!あ、貴方のせいで追ってくるなら、責任取ってくださいよぉ!!死んで、死んで僕を助けて!!」
オットーの声が徐々に遠のいていく。
転がって地面に落ちたスバルは、それを見る事しか出来なかった。
そして、スバルの隣には、白鯨がいた。
スバル「・・・・・ただの、ただの夢だ・・・・・そうあってくれよ・・・・・!!」
スバルは、頭の中にアーラム村の人間やレム、ラムが死んでいた光景とレムが霧の中に飛び込んでいく姿を思い出す。
スバルが思い出している間にも、白鯨は口を開けてーーーーー
スバル「ーーーーーーえ?」
スバルの目の前で、白鯨が口を開けたまま止まった。
よく見ると、何かノイズのようなものが走っている。
スバル「何が、起こって・・・・・」
『夢ねえ。本当にそう思うか?』
スバルの後ろから、声がした。
スバルは起き上がって振り向くとそこには
スバル「てめえは・・・・・あん時の!!」
スバルが森で会ったフードの男だった。
スバル「てめえ、俺にあん時何をしやがったんだ!?まさか、レムやアーラム村の人達を殺したのは・・・・・」
『あいつらを殺したのは俺じゃないが、お前に何かはしたさ。』
スバルからの質問攻めに男は冷静に答える。
『お前はこれを夢だとか言っていたな。・・・・・まあ、ある意味じゃ夢だな。だがこれは夢であって夢ではない。』
スバル「んだよそれ・・・・・どいうことだ!?」
『今お前には平行世界の記憶を見せてるんだよ。お前、覚えがあるんじゃないか?自身が知らない記憶を。』
スバル「・・・・・!!」
スバルは思い出した。
以前、子供達を救出するために森に行った時、大勢のウルガルムに噛まれて知らない記憶が流れてきたことを。
『覚えがあるという顔をしているな。そして、お前がさっきまで見ていた光景も、平行世界の記憶の一部に過ぎない。』
そう言って男はフィンガースナップをすると、世界がガラスのように崩れ、辺り一面が黒い空間となった。
『・・・・・さて、まだ二つしか見せていないが、あの平行世界にはある共通点がある。それは何か分かるか?」
スバル「・・・・・共通点?」
『ーーーーー常磐ソウゴが居なかった。』
スバル「………確かに。でもそれがどうしたってんだ。平行世界は可能性によって幾らでも出来るもんだろ。ソウゴが居ない世界だってあってもおかしくはーーーーー」
『あいつがあの場にいたらどうにかなるって、思わないか?』
そう言って男は手に何か青いビー玉のような物を浮かせる。
そして空中へ投げた。
それがパキン、と砕けたかと思うと灰色のオーロラのような物が出現し、ある光景を写し出す。
『オールトゥエンティ!!ターイムブレーク!!』
『ファイナリー!!ビヨンド・ザ・タイム!!超ギンガエクスプロージョン!!』
ジオウ「でやああああああああああああ!!」
ウォズ「はあああああああああああああ!!」
黄金の姿となっているジオウと顔に『ギンガ』と書かれているマントを付けているウォズが白鯨に向かってキックを放っていた。
そのキックが白鯨を貫いた。
「オオオオオオオオオオオオオ!!!」
白鯨は苦しみ悶えながら鳴き声を上げて、爆発四散した。
二人はそのまま着地した。
オットー「やりましたねソウゴさん!!」
竜車に乗っていたオットーが二人の元に駆けつけた。
後ろには、スバルとレムが乗っている。
その光景を見せて、男はもう一つ青いビー玉のような物を浮かべ、投げる。
そしてそれが砕けると、灰色のオーロラが現れ風景を写し出す。
『キングギリギリスラッシュ!!』
ジオウ「はあああっ・・・・・でやぁっ!!」
黄金の姿のジオウがサイキョージカンギレードを使い、回転切りで紫色の衣装の者達を倒していく。
『ファイナリー!!ビヨンド・ザ・タイム!!バーニングサンエクスプロージョン !!』
ウォズ「はあっ!!」
顔に『タイヨウ』と書かれたウォズが巨大な火球で敵を焼き尽くしていく。
『・・・・・奴らがいれば、最悪の事態は免れる。分かっただろう。』
スバル「・・・・・てめえは何が言いたいんだ。」
『ふっ・・・・・・・お前があの場にいても、何も解決しないって事だよ。無力なお前がいても、な。』
スバル「・・・・・っ!!」
スバルはその言葉に歯を食いしばった。
『お前が何をやろうが、全部裏目に出るんだよ。』
スバル「・・・・・うるせえ。」
『お前よりアイツの方がエミリアの側にいた方が良いと思うな俺は。お前は騎士とか言っていたらしいが、弱いお前はアイツを守る事だって碌に出来ないだろうからな。お前なんか必要ない』
スバル「うるせえつってんだよ!!」
『図星を突かれて動揺してるってとこか?ふんっ、無様だな。お前の唯一の能力も死ぬ事でしか時間を巻き戻せないからな。欠点だらけの能力でしかない。』
スバル「!!お前、何で俺の死に戻りを・・・・・」
『おっと、お喋りが過ぎたようだな。ふんっ!!』
スバル「ぐあっ!?ああああああああああ!!」
男がスバルに再びエネルギーのような物を送り込む。
スバルはそれに悶え苦しむ。
『ふふ・・・・・ふははははははははは!!』
男の高らかな笑いが暗闇に響いた。
追記
次回怠惰の人出ます