ー数分前ー
クルシュ邸のある一室。
そこには窓越しに外を眺めているナツキ・スバルがいた。
スバル「・・・・・・・・・・」
カドモン『魔女の係累が王様になれるわけねえだろうが。』
エミリア『自分の為、でしょう?』
スバルは、2人の言葉を思い返していた。
スバル「・・・・・俺は、自分の為なんかじゃねえよ。君が、魔女の係累だとか言われるのが許せなくて・・・・・魔女なんかとは違うって証明したいだけなんだよ・・・・・」
スバルは一人、虚空に向かってエミリアへの思いを呟く。
スバル「・・・・・・・・・」
スバルは外を眺め続ける。
『いい加減うざったらしいんだよ。』
スバル「え・・・・・?」
スバルは何処からか聞こえた声に反応する。周りを見てみるが、自分以外誰も居ない。
スバル「幻聴、か・・・・・?」
『幻聴なんかじゃない。』
スバルは再び何処からかの声が聞こえた。
スバル「誰だ・・・・・?誰なんだ!?」
『俺か?俺は・・・・・』
そしてスバルはふと気付く。
窓に取り付けられているガラスに写っている自分の顔が
邪悪な笑みを浮かべていたことを。
スバル「まさ、か・・・・・」
鏡像のスバル『そうだ、俺はお前だ。鏡の中のな。』
スバル「鏡の中の、俺・・・・・」
鏡像のスバルは邪悪な笑みを浮かべ再び語りかける。
鏡像のスバル『お前はエミリアを助けたいなんてほざいていたな?・・・・・偽善者め。本当はエミリアの為なんかじゃなく、自分の為にやってるくせにな。聞いてて反吐が出る。』
スバル「違う・・・・・違う!!俺は本当にエミリアを助けてあげたいって思ってる!!あの子の為に何かしてあげたいって思ってる!!」
鏡像のスバル『エミリアの約束は破ったのにか?』
スバル「・・・・・っ!!」
スバルは自分にとって嫌な部分を抉られたような気分になる。
鏡像のスバル『エミリアの騎士になるなんて、お前には無理なんだよ。お前の言葉と心は裏腹なんだからな。』
スバル「違う・・・・・違う・・・・・違う!!」
鏡像のスバル『違わない!!!』
鏡像のスバルはスバルに否定の言葉を投げ続けた。
鏡像のスバル『認めろ・・・・俺はお前だ。』
スバル「あ・・・・・」
スバルは言葉にならない声を出す。
そして突如、鏡の中から腕が出てきて、スバルの首を掴む。
スバル「うわっ!?は、離せ!!」
スバルが首から掴んでいる手を離そうともがくが、そのまま鏡の中に引き摺り込まれてしまった。
スバルは引き摺り込まれる時、赤い龍のような仮面を持つ、恐ろしい異形を見たような気がした。
ソウゴ「ねえレム、スバルの魔女の匂いは?」
クルシュ邸では、ソウゴがスバルの行方を追う為にレムにスバルにある魔女の匂いを聞く。
レム「何故か部屋の中で途絶えてしまっています。屋敷の扉にも匂いの痕跡が無くて・・・・・」
ソウゴ「じゃあどうやって抜け出したんだ・・・・・」
ウォズ「彼は・・・・・」
ウォズは何処からかツクヨミが持っていたタブレットと同じ物を取り出し、起動する。
ウォズ「スバル君が持っている携帯の反応を見る限り、彼はリーファウス平原近くの森にいる。」
タブレットの画面にはルグニカの地図が映し出されており、森の箇所に赤のピンが立っている。
ソウゴ「森?何で・・・・・」
レム「分かりませんが、そこにスバル君がいるなら早く行きましょう!!」
ソウゴ「うん。」
三人が屋敷の扉に向かおうとしたその時。
クルシュ「何処に行くつもりだ?」
通りかかったクルシュが呼びかけ、一同はそれに反応して振り向く。
レム「クルシュ様・・・・・」
クルシュ「こんな夜遅くに一体どうした。」
レム「・・・・・実は、スバル君が居なくなったんです!!」
クルシュ「!!何、ナツキスバルが!?」
レム「森に居ることが分かりましたので、今から行ってきます!!」
クルシュ「下手に行っては駄目だ!!霧が出てるかさえも分からないのに・・・・・」
レム「申し訳ありません、それでも私達は行きます!!」
そして三人はそのまま扉から出るために去って行った。
クルシュ「・・・・・っ!!」
ある森にポツンと、小さな泉があった。
夜の空に浮かぶ月の光が泉を照らすその光景はなんとも幻想的な雰囲気を醸し出していた。
ふと、泉に波紋が生まれる。
そしてどんどん、波紋は広がってゆきーーーーー
スバル「うおあっ!!」
泉からスバルが出現した。
泉から吹っ飛んで出てきたスバルは地面に叩きつけられる。
スバル「いってぇ・・・・・どこだここ。森か?」
スバルが体に付いた土を払いながら周囲を見渡して状況を確認する。
スバル「何でこんな所に・・・・・道も分かんねえからどうやって戻りゃいいんだよ・・・・・」
スバルが今の現状に不満げに声を漏らす。
そんな時、ふと足音が聞こえた。
土を踏む音と枝を踏む音。
その二つが交わる様に同時に聞こえる。
スバル「まさか魔獣とかじゃねえよな・・・・・」
スバルがそう言って額に少し汗をかきながら、恐る恐る後ろを振り返る。
振り向いたその先にはーーーーー
スバル「・・・・・誰も、いない。」
誰も、いなかった。
スバル「んだよビビって損したぜ・・・・・鏡の中の俺、か。」
スバルはここに来る前に会った鏡の中の自分を思い出していた。
といっても、鏡の中の自分はスバルを全否定するかのような言葉を投げ続けてきたので、良い思い出など当然ない。
スバル「・・・・・・」
スバルは、俯いて鏡の中の自分の言葉を思い出す。
『偽善者め。本当はエミリアの為なんかじゃなく、自分の為にやってるくせにな。聞いてて反吐が出る。』
『エミリアの騎士になるなんて、お前には無理なんだよ。お前の言葉と心は裏腹なんだからな。』
スバル「・・・・・んな訳があるかよ。あんなのはただの、まやかしだ。」
スバルはそう呟いて前を向く。
スバル「とりあえず動くしかねえか。近所に村があったらそこに泊まらせてもらうとしますかね。それでレムと合流すっかなあ。」
そう言って彼は振り返って歩こうとする。
その時だった。
『よお。』
スバル「・・・・・ぁ」
振り返った先の目の前に、顔の見えない黒いフードを被った人物が語りかけてきた。
スバル「うわあああああああああああ!?」
スバルはその人物の突然の出現に驚き、大声をあげて大きく後ずさり、その勢いで尻餅をつく。
『おいおい、せっかく人が挨拶したのに酷い態度だな。』
声質からしてその人物は男だった。
スバル「だ・・・・・誰だお前!?」
『そんなことはどうでもいい。』
男はスバルの胸倉を掴んで無理矢理立たせる。
『お前には少し絶望してもらうぞ。』
スバル「離せ・・・・・っ!!何するきだ!!」
『ふんっ。』
男は手をスバルの頭にやると、紫色の謎のエネルギーのようなものを注ぐ。
スバル「ああああああああああああ!!!」
スバルはエネルギーを注がれ苦悶の表情を浮かべる。
途端スバルの目の前が徐々に白い光に包まれた。
スバル「!!」
スバルは目を覚ました。
スバル「ここは・・・・・アーラム村?」
スバルの目の前には、家が立ち並んでいる光景が見えた。
空も夜空ではなく、太陽が浮かんでいる朝だ。
スバル「・・・・・誰かに運ばれた、のか?それでも普通外に放置はしねえよな・・・・・」
スバルは村を見渡す。
スバル「・・・・・やけに静かだな。誰もいない。子供はまだしも大人まで・・・・・まあ朝だしな。」
スバルはそう考えて納得し、誰か一人でも見つけようと歩き出した。
スバル「・・・・・俺は夢を、見てるのか?」
スバルはアーラム村をしばらく歩いた。
しかし、どれだけ歩いても生きてる人は居なかった。
そう、生きてる人『は』。
スバル「何で、だよ・・・・・何で・・・・・」
今スバルの目の前にあるのは
スバル「何で皆・・・・・死んでるんだよ・・・・・!!」
アーラム村に住んでいた村人達の死体が、転がっていた。
死体から出ている血が土を赤黒く染めている。
ある死体からは焼かれたのか煙が出ており。
ある死体は凶器で体を貫かれていた。
奥には、死体が積まれていた。
スバル「・・・・・屋敷は、エミリアは・・・・・?」
スバルは、フラフラとした足取りでロズワール邸まで向かう。
木々が生茂る道を歩き抜くと、屋敷の門が見えた。
門が見えて、スバルは走り出す。
走り出して門の入り口まで来た時、ある見覚えのある物が地面に突き刺さっていた。
それは、レムが使っていた、刺の付いているモーニングスター。
スバル「まさ、か・・・・・」
モーニングスターに付いている鎖の取手が右を向いているのを確認して、スバルは右を向いた。
そこには、スバルの予想通り、最悪の光景があった。
スバル「あ・・・・・」
凶器を突き刺されていたレムが血を流して倒れていた。
スバル「れ、む・・・・・」
立ち止まって、呆然とレムの死体を見ていた。
そして
スバル「レムウウウウウウウウウ!!」
彼女の名を、叫んだ。
最後のシーンで前書きの伏線回収すんのやめろ
次回
#30 『2019:ぜつぼう・メモリー』