Re:ゼロから始める魔王の異世界生活   作:きゃぷてん

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初めて予約投稿というものを使ってみた。


2019:始動

 ソウゴがロズワールに賭けを持ちかけた翌日。

 

「俺さ、夢を見たんだ」

 

 太陽が空に浮かんでいる中、外にいたソウゴが、ウォズに向かって告げる。

 

「エミリアが何度も墓所の試練に挑むけど失敗して、そのままエミリアが衰弱していく夢」

 

「……それは不味いね」

 

ソウゴが見た夢。それはこれから起こる未来でもあり、確定事項のことだ。

 

 試練の内容がどう言ったものかは分からないが、勝算が無いのでは、こちらの勝ち目が見えないとウォズは考えていた。

 

 だが、ソウゴにあせる様子はない。ウォズは問いかけた。

 


「いざとなったら、試練を受けるつもりかい、我が魔王」

 



「……行ってみようとは思うけど、俺が突破するんじゃ意味はないと思うよ。エミリアがやらないと意味はないんだからさ」



 

 何故、資格の無いソウゴが試練に行くという話になっているのか。

 

 時間を遡ること、昨日の夜の、ソウゴがロズワールに賭けを持ちかけた直後のこと。

 

 ロズワールは自身の福音書を開き、頁を見ていた。今も福音書は数多の未来を綴っている。

 

 そんな中、ロズワールは新たに現れた文章が目に止まり、その内容に驚愕の表情を浮かべた。

 

『常磐ソウゴを殺すな。彼に試練を受けさせろ』

 



 ロズワールは驚愕した。今までのような未來の啓示ではなく、直接的な指示。そんなこと今まで無かったし、それが出来る存在なんて一人しかいない。

 



「何故だ……何故なんだ、エキドナ……! 何故、彼を受け入れて、私には会おうとしないんだ……!」



 

 ロズワールの慟哭をソウゴとウォズには理解できなかった。だが、エキドナなる人物が、会いたいと伝えてきたのは事実。

 

 だが、すぐにというわけには行かなかった。試練に疲弊して眠っているエミリアを無視するわけには行かないし、ソウゴが試練を受けている間に、重傷の状態とはいえロズワールに行動されても面倒だからだ。

 

 

 彼は魔法で治癒を促進させているらしいが、それでも、あの傷ではすぐ動けないはず。

 


 お互い、今はある種の均衡状態にあるのだ。

 

「あまり悠長にしている時間はないと思うぞ、魔王」

 

 その時だった。2人の目の前に、大きな灰色のカーテンが現れ、そこから3人の人物が現れたのだ。

 

「門矢士」

 

「ジオウ!」

 

「ソウゴ!」

 

ソウゴが士の名前を呼んだ時、黒と白の人物がソウゴの前に駆け寄った。

 

「ゲイツ、ツクヨミ!」

 

「良かった、無事だったのね……」

 

 ソウゴは2人の名を呼び、ツクヨミは彼が無事だったことに安堵していた。

 

「それにしてもどうして……」

 

「オーマジオウにこの世界への道を開いてもらったんだ。そして門矢士と合流してこの世界を巡っていた…………だが、この世界はどうもきな臭い」

 

「それに、アナザーライダーがいるってことは、タイムジャッカーもいるってこと。かなり怪しい雰囲気がする……」

 

「更に、この世界の時空が徐々に歪みだしているときた。そしてその起点は、魔王。お前と、黒幕のタイムジャッカー」

 

 ゲイツ、ツクヨミ、士はどうもこの世界が奇妙なことを感じ取っているようだ。

 

「あまり悠長にしていると、時空の歪みは取り返しのつかない領域に達する。そうなった場合、俺の力で破壊するか、お前のオーマジオウの力以外ではどうにもならない。

そもそもここがライダーのいない世界なのだから、時空の歪みの影響は想像がつかない」

 

「とはいえ、黒幕であるタイムジャッカーのことについては何もわかっていないのが今の現状だ。どうも我が魔王を狙っているらしいけどね。

 我が魔王のオーマジオウの力を使えばすぐさま決戦や元の世界に帰ることも出来るが、敵の動きが読めない以上、容易に使うのも危険だ」

 

 士とウォズはお互いにそう告げる。かなり話は大きくなっている様子だ。

 

「…………色々気になることはあるけど、今は現状の問題を解決するのが先だ」

 

「問題?」

 

「うん、実は…………」

 

 ゲイツに問われ、ソウゴは自分達の現状を話し始める。

 エミリアのことを、ロズワールとの賭けのことを。

 

「黒幕のことを調べるにしても、まずは今の現状を解決したほうが良いと思う。だから、皆には協力してほしい」

 

 ソウゴはゲイツ、ツクヨミ、士に向かって告げる。

 

「……良いだろう、付き合ってやる」

 

「私も、力になるわ」

 

「たく、人使いの荒い後輩だ。まぁ良い、手は貸そう」

 

「ありがとう」

 

 自分の協力の申し出に了承する3人に感謝を告げるソウゴ。

 

「じゃあまず、ウォズはゲイツとツクヨミを連れて一旦屋敷に戻って。ベアトリスに2人を会わせておくのと、ベアトリスをこっち側に引き込む為に」

 

「承知した、我が魔王」

 

「あっ、それと」

 

ソウゴは懐からある物を取り出してそれをウォズに投げ渡す。

 

 ウォズがキャッチしたそれは黄金のウォッチ、オーマジオウライドウォッチだった。

 

「それ、ベアトリスに渡しといて」

 

「……理由は?」

 

「分かんない。でも、何か行ける気がする」

 

 その言葉に、ウォズは少々呆れたようにため息をつきながらウォッチを預かり、ストールを使ってゲイツ達と共に転移した。

 

 そしてソウゴは、門矢士を見る。

 

「門矢士、アンタがいるってことは海東大樹だっているはずだよね。今から伝えてほしいことは、海東大樹じゃなきゃ出来ないだろうから」

 

 そしてソウゴは、士に海東に伝えてほしいことを告げる。

 

 士は心底嫌そうだったが、言うだけは言っとくとして、オーロラカーテンを潜りその場を去った。

 

「やあ、ソウゴ」



 

 しばらくすると、一人になったソウゴのもとに今まで不在だったパックがやって来た。

 

「パック……今まで何処に」

 

「まぁ、ちょっと訳があって石から出られなくてね。今は少し無理してここにいるんだ」

 

「ふぅん……エミリアは?」

 

「リアはまだ眠っているよ」

 

「そう」

 


 そのように返すソウゴにパックは問いかける。



 

「ソウゴ、君ならわかっているんじゃないかい? 今のリアじゃ試練は突破できないこと」 

 



「何となくはね。でも、俺たちに今出来ることはないし、エミリアだって、譲らないだろうし」



 

「譲らない、ってことは、君にも資格が与えられたってことか。確かにリアはそう簡単には譲らないだろうけど、今のままじゃ何度やったって意味がない。僕と契約しているかぎりはね」



 

「どういうこと?」



 

「君を信じた上で、言うけれど、リアには7年前以前の記憶がないんだ。正確に言えば、ある理由で記憶を封じている。その鍵が僕なんだ。僕がリアとの契約を破棄すればリアは記憶を取り戻す。でも、今のリアじゃ、それを受けとめきれない」

 



「……」



 

「契約を破棄したら、僕はリアを助けることは出来なくなる。でも、リアが前に進むためには、契約を破棄する必要がある。
だからこそ頼みたいんだ、ソウゴ、リアのことを」

 



「いいの?」

 



「本当なら、スバルに頼みたかったけど、いなくなっちゃったからね。君が代わりだなんて言いたくはないけれど、君しか頼れる人もいないんだ、リアを助けて、導いてほしい」



 

「……わかった。引き受けるよ、その約束。王様として、エミリアを導いて見せるよ、最高最善の未来に」

 



「頼んだよ、最高最善の魔王君」

 



 そう言ってパックは、エミリアのもとに帰っていった。


 

 

 

 その日も、ベアトリスはロズワール邸の禁書庫の中にいた。

 

 取り除かれたとはいえ、魔女因子の影響が続いているのかジュース……ペテルギウスは未だに目を覚まさない。

 

 そして、福音書に現れていたカメンの紋章も、徐々に現れる時間が長くなりつつある。

 

「アイツら、どうしているかしら……」

 


 ベアトリスがそう呟いたそのとき、突如渦を巻くストールが現れると、ウォズと見知らぬ二人が現れた。

 



「いきなり禁書庫に現れるんじゃないかしら! スバル(アイツ)もオマエ達も、扉渡りをなんだと思っているのよ!」

 


驚きながらもウォズに怒鳴るベアトリス。



 

「すまないね、だがこちらにも事情があるんだ、君も関わる重要な、ね」



 

「とりあえずそれはあとで聞くとして、コイツらは誰かしら」

 


「あぁ、彼らは、我が魔王の臣下だ」

 


「誰が臣下だ。仲間であるのは事実だが、さすがに臣下は言いすぎだ」

 


「君が言ったんじゃないか、『俺たちの王に続くんだ』と。実質臣下と認めたようなものだろう?」

 


「その言い争いはあとにしましょ? 今は自己紹介と事情説明でしょ?」



 

 ウォズが連れてきた謎の女が呆れた様にそう言うと、改めて二人が自己紹介をしてきた。男はゲイツ、女はツクヨミというらしい。

 


 そして、聖域での事情も理解できた。

 



 ソウゴ達のことを記していなかったロズワールの福音書、そして、決闘からのロズワールとの賭けと福音書を通じてのお母様の指示。

 


 正面から迎撃したソウゴ達もおかしいが、その賭けもまた十分おかしい。福音書に誰が記されるかも分からなければ、そもそも、見せてもらえるわけでもないのだから。



 

「それで、ベティーに一体なんの用かしら」

 

 ベアトリスは改めてウォズに問いただす。

 


「一つ確認したい。福音書は未来を記すものらしいが、具体的にはどう示されるかわかるかい?」



 

「……ロズワールの福音書はある人物の復活のために必要な順序が記されるかしら。その過程で殺す必要があるなら、単純にその人の名前が記されるだけかしら」



 

「エキドナ、かな?」

 


「……!」

 


「その様子だと君にも関係がある人物と見たが、どうだい?」

 



「エキドナは……ベティーのお母様。今から400年前に亡くなったけど、遺体と魂は聖域に封印されている。ロズワールはお母様の復活を一族の悲願としているのよ」

 



「悪趣味な話だ。とはいえ、その話が事実なら、福音書に記される人物が、全く無関係な人物を狙うということはないと見ていいかな? 復活に関係しない人物の命を狙っても、意味はないだろうしね」

 



「恐らくはそうなのよ。だとすれば、狙われるのは聖域の人間か、王選関係者か、私を含めた屋敷の人間か……それでも幅は広いかしら」

 



「我が魔王を試したいという意味でなら、それだけ幅を広げる可能性はあるだろうが、実行するのはロズワールだ。なら逆に絞って、確実にやるだろう。その方が我が魔王を打ち負かしたという実績になるのだから」



 

「で、それを聞きに来ただけかしら?」

「いや、もうひとつある。とりあえずは……ツクヨミ君をここにおいてほしい。君を含めた屋敷の護衛として」

 



「禁書庫を隠れ家代わりにする気かしら?」 

 



「福音書に私たちの事が記されていないのならなおのことゲイツ君とツクヨミ君のことだって記されていないはずだ。それこそ、付け入る隙になる。
 あぁ、強さに関しては心配要らないよ。何せ、『我が女王』だからね」

 



「意味がわからないのかしら」



 

「心配は無用、ということさ。君としても、護衛がつくことはいいことだろう?」



 

「……分かったのよ。ただ一つ聞いていいかしら」



 

「何かな?」

 



「オマエ達って本当になんなのよ? それだけの力を持っていて、扉渡りのように移動できて……そこのニンゲン達も、オマエ達に負けない力を持っている。本当に何者なのかしら?」

 

 

ウォズはニヤリと笑いながら返す。

「全ての時代をしろしめす時の大魔王一行、とでも言っておこうか。では行こうか、ゲイツ君」

 


「待つかしら、オマエ達の要望を聞いたのよ、こっちにも要望を言う権利はあるかしら」

 



「要望か。何かな?」

 



「そこにいる男も明日まではここにいてもらいたいのよ。聞きたいことがあるかしら」



 

「なら明日、迎えに来るとしよう。では、失礼」

 


 そういうとウォズは、ストールを使い、去っていった。

 



 ベアトリスは、自分の福音書を取ると、ゲイツとツクヨミに向き合った。

 


「オマエ達に聞きたいことがある。けど、その前にこれをみるかしら」

 


 ベアトリスが福音書を開いて見せる。そこには点滅するカメンの紋章が。

 ゲイツもツクヨミも、当然驚いている。



 

「この本はベティーに与えられた福音書。とはいえ、400年もの間なにも記されなかったのよ。なのに、数日前から、突如こうなったのよ。
 これが何を意味するか、私にはわからないのよ。でも、だからこそ、知っておいた方がいいと感じたのよ、アイツを、トキワ・ソウゴのことを。だから、教えてもらえるかしら、あの男のことを」

 



「……わかったわ、話しましょう、ソウゴのことを————」

 


 二人は、彼との出会いから語りだした。普通の高校生が、最低最悪の未来から、最高最善の大魔王に至る物語を————。

 

 

 



 屋敷とも聖域とも別のとある場所。

 

 そこは砂漠だったのかもしれないし、森林だったのかもしれないし、街の中だったのかもしれない。

 

 門矢士はオーロラカーテンを使いそこに来た。

 

 彼の目の前には、金髪の白いコートの男が。



 

「ようやく見つけたぞ、海東」

 

 名を呼ばれ、振り返る男は振り返る。

 

 その手にはシアンで彩られた銃が握られている。



 

「やぁ士、君から来るなんて、珍しいじゃないか」

 



「俺は来たくなかったがな。だが、魔王からお前に伝言を頼まれたんだから仕方がない」



 

「伝言?」

 



「『未来を記す福音書を盗んでみないか?』だとさ。確かに伝えたぞ」



 

「現物を見てみないことにはなんとも言えないけど、お宝としての価値はともかく、あまり気乗りしないね」



 

「ほう、珍しいな。お前がお宝に気乗りしないとは」



 

「僕の旅の行き先は僕だけが決める。未来を記すなんて、僕の旅の行き先を勝手に決められたくはないからね。それなら、こっちの方がお宝の価値は遥かに上だ」

 



 そういうと海東は一冊のノートを取り出す。それは、かつて海東が白ウォズから手に入れた未来ノートだ。

 



「……でもまぁ、その話、乗ってあげようじゃないか」

 



「気乗りしないんじゃなかったのか?」

 



「気乗りはしないよ。でも、お宝は見ておきたいし、価値があるなら盗むさ。でも、それ以前に、これは事実上の魔王の僕への挑戦状だ。さすがに無視は出来ないさ。僕にもプライドがあるんでね」

 



「何でもいいさ。とりあえず行くぞ」

 


そういうと二人はオーロラカーテンに覆われ、姿を消した。

 

 

 その頃聖域。



 

 ソウゴはとある家屋の扉を開け、中にはいる。

 

 そこには、ベットで眠っているエミリアが居た。

 

「…………っ、ぅぅ、ぁ。はあっ!」

 

悪い夢をみていたのか、苦しみながら目を覚まし飛び起きるエミリア。

 

 彼女は荒んでいた息を整えると、いつの間にか傍にいたソウゴに気付く。

 

「あっ…………ソウゴ」

 


「エミリア、大丈夫? 苦しそうだったよ」

 

 ソウゴは傍にあった椅子に腰掛け、エミリアに問う。

 



「う、うん大丈夫。ちょっと怖い夢を見ただけだから」

 


 しかし、そういいながら、エミリアの手は無意識的にソウゴの手を握っていた。

 


 気づいているのか、一瞬視線を落とすソウゴだが、すぐに戻し、エミリアに告げた。

 



「エミリア、大事な話があるんだ」



 

「大事な、話?」

 



「ロズワールから聞いたんだけど、どうやら俺も試練を受ける資格を得たみたい。
でもね、俺はこの試練は、エミリアが突破しないと行けないと思っているし、同時に、俺も一度は、試練を受ける必要があると思ってる。
 エミリアとしても、まだ諦めてないんでしょ?」



 

「……うん、これだけはソウゴの言うとおり私がやらなくちゃ行けないことだとおもうから」



 

「だからこうしよう。もう一回試練をエミリアが受けて、ダメだったらその次は俺が行く。
 その結果がどうなっても、あとはエミリアが好きにすればいい。どう?」

 



「……分かった、出来れば次で終わるよう頑張るから」



 

 そんな彼女の返事は、空元気でしかなく。そして、心配を掛けたくなくて、それを隠そうと。

 

 だが魔王は、それさえも見透かす。

 

 

 





 とある家屋の中。

 


 ロズワールはある人物と会ってこう告げた。

 


「彼らは聖域を解放しようとしているよ。君の思い等関係なく、ねーぇ。さて、君はどうするのかーぁな、ガーフィール?」


 

 彼の目の前には、額の傷が目立つ、金髪の少年がいた。

 

 

 

 

 

 

 翌日の夜。

 

 ソウゴは墓所の前に居た。試練を受ける為。

 

 だから、前日のエミリアの試練の結果はもう分かるだろう。

 

 ソウゴは、前日のパックの言葉が脳裏を過ぎる。

 


『ソウゴが試練を受けて、どういう結果になっても、リアとの契約を破棄するから、後は頼むよ』

 

 その決断は、彼の覚悟故だった。

 

 ソウゴは墓所に向かって歩き出した。

 

 彼が近づくと、墓所はターコイズブルーの淡い光を放つ。試練を受ける資格がある証拠だ。

 

 墓所の中に入り、しばらく続く通路を歩いていると、扉が見えた。

 

 その扉を押し開き、ソウゴは部屋の中へと入る。

 

『まずは、己の過去と向き合え』

 

 ソウゴは自分の声を聞いた。

 

 そして彼は、そのまま倒れた。

 

 

 

 

 目を開けたソウゴが見たのは、とあるバス停留所に停まっているバスと、それに集まっている人々であった。

 

「ソウゴ、待ちなさい!」

 

 ソウゴはその声の主を見た。彼の父、常磐宗太郎だった。

 

「だって、もう急がないと、ほらもう出ちゃうよ?」

 

 幼き日の常磐ソウゴは宗太郎を急かす。

 

「ソウゴはせっかちなんだから!」

 

 せっかちな我が子を宗太郎と共に微笑む常磐ソウゴの母、常磐奈美恵。

 

 近くにあった看板には、『なのはな湖イチゴ狩りバスツアー2009』と書かれている。

 

 幼き日のソウゴは、「早く早く!」と両親の手を繋いで駆け出し、バスへと乗り込む。

 

 ソウゴはただ、無言でそれを見つめている。

 

 この時までは、王を選ぶ為の悲劇が起きるなんて、誰も知りはしなかった。

 

 ソウゴはジクウドライバーを装着し、ジオウライドウォッチを起動する。

 

『Zi-O!』

 

 そのまま、仮面ライダージオウに変身。

 

 ジオウは、ジカンギレードのスロットに、オーズライドウォッチを装填。

 

『フィニッシュタイム! オーズ! ギリギリスラッシュ!』

 

 装填した後、すぐにトリガーを引く。

 

 オーズの武器であるメダジャリバーの能力が刀身に宿り、ジオウが剣を振ると、文字通り空間が切り裂かれた。

 

 瞬間、流れていた風景にはノイズが走り、バグを起こした映像の如く停止をした。

 

「小細工はもう止めたら? いるんでしょ、そこに」

 

 ジオウがそう言って周囲を見渡す。すると周りの風景にジャミングが走る。

 

 ジャミングが晴れると、周囲の光景は、快晴の空が広がる草原であった。

 

「———— これは驚いた。まさかそんな方法で試練を突破するとはね。空間を切り裂くだなんてさすがに想定外だよ」

 

 後ろから声が聞こえて、振り向くジオウ。

 

 そこには小高い丘があった。

 

 丘には、日除けのパラソルが立ち、日陰には白いテーブルと白い椅子。そして、椅子に座った少女の姿があった。

 

 それは真白の、まるで色だけがすっぽりと抜け落ちた様に白い印象の常だった。

 

 背中にかかるほどの長い髪も、露出の少ない肌も目を奪われる程に白く、細い肢体を包む喪服のような漆黒のドレスと、高い知性を窺わせる黒瞳が、幻のような少女の存在証明となる。

 

 白と黒のツートーンカラー。二色だけで、ひどく端的な美貌を形作っていた。

 

 お茶を飲んでいたのか、その手にはティーカップが持たれていた。

 

「アンタが、エキドナ?」

 

「僕の名前を知っていると言うことは、ロズワールが口走ったかな? まぁ、それはいいか。


 その通り、ボクの名前はエキドナ。強欲の魔女さ。待っていたよ———— トキワ・ソウゴ」


 

 それは邂逅への喜びか、到来への歓迎か。

 

 エキドナは、強欲の魔女は、その唇を緩めて薄く微笑んだ。

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