Re:ゼロから始める魔王の異世界生活   作:きゃぷてん

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2019:俺の民と慟哭と未来

「リア。————君を世界で一番愛してる」

 

「パックの……お父さんの、嘘つきィ……っ」

 

◇◇◇◇

 

 ソウゴが試練を挑んだ後の、翌朝の聖域。

 

 人々が口々にエミリアを呼ぶ声が聞こえる。見れば、茂みの中を漁る人も見受けられる。

 

 現在聖域では、皆が突如失踪したエミリアを捜索していたのだ。どういう訳か、朝になっていた時にはいなくなっていたのである。

 

 ハーフエルフであり、試練をクリアしていない以上、聖域の外には出ていない。それだけは確定事項であり、同時に希望であった。

 

 必死に彼らがエミリアを探す中、一人の青年が歩いている。

 

 その足取りに一切迷いはなく、ある場所を目指して歩いていた。

 

 しばらく歩いて着いた先は、聖域だった。

 

 階段を登り、入り口から中へと入る。

 

 回廊を歩く道中で銀髪の少女が、ただ一人地面に膝を抱えて座り込んで蹲っていた。

 

「————エミリア」

 

 名前を呼ばれた少女は俯いていた顔を上げ、声の主を見た。

 

「そう、ご?」

 

 その声の主は、常磐ソウゴだった。

 


「やっぱりここだった。ここなら入れる人は限られるし、話をするにはちょうどいいかな」

 

 彼はそう言って、エミリアの視線に合わせるように隣に座り込む。

 

「どうして、ソウゴがここにいるの?」

 


「エミリアと話をするためだよ。エミリアがいなくなるのも、ここに隠れていることも、既に俺が見た未来だ」

 

 既に見た未来、その言葉が引っ掛かったが来た理由に一応は納得するエミリア。そして一つ疑問も浮かぶ。

 

「……そう、いえば……試練は?」

 


「試練なら、一応達成したよ。本当の事を言うと中でエキドナって魔女と話したら、君は試練を達成できて当然なんだから、無かったことにしようって言われたんだけどね」


 

 今のエミリアにその言葉は辛かった。達成できて当然、だから無かったことにしよう。それは事実上の試練達成。

試練をクリアできず、挙げ句の果てにこうして逃げ出したエミリアには、それが刃となって心に突き刺さる。

 

「ソウゴ……怒って……無いの?」

 


「怒ってなんかないよ。パックから話は聞いてるからさ。エミリアには失った記憶がある、パックが契約を解除しない限り試練は達成できないって。怒る理由がないでしょ?」

 

 ソウゴは不安げな顔をするエミリアに諭すように語る。

 

「…………そっか。私の事、怒ってないんだ。怒ってもくれないんだ…………」

 

「——————」

 

 しかし、返ってきたエミリアの声は震えていた。

 


「私……勝手なこと、したでしょ? 困らせること、したでしょ? 黙っていなくなって、心配かけて……逃げ出したんじゃないかって、不安にさせて……そういうこと、したの。そんなの、怒って当然でしょ?」

 

 軽く俯いたソウゴは黙って、エミリアの言葉を聞いていた。慟哭にも近い彼女の言葉を。

 


「……なにも言ってくれないのも……怒ってくれないのも……期待してないからじゃないの? うまく行くわけがないって、思ってるからじゃないの? スバルとレムだって、本当は……」

 

 それはまさしく、エミリアの心の闇だった。以前にスバルとレムが去り、今回の試練に何度も失敗して自身の不甲斐なさに挫け、失われていた記憶も戻りつつある。そんな不安な状態で試練を達成したソウゴは、彼女の劣等感と不安を爆発させるには十分すぎた。

 

 何度試練に失敗しても自身を支えてくれるソウゴの優しさにも、彼女は内心不安を抱いていたのだ。

 

 去っていた理由はエミリアとは別にある筈のスバルとレムにも、疑心を抱いてしまっている。

 エミリアの目は潤みを帯び始め、目元に雫を溜め始めた。



 

「————エミリアはさ、何のために王になりたいの?」

 

「えっ…………?」

 

 その中で、その問いはひどく唐突だった。場違いにも思われるかもしれない程に。

 

 エミリアも思わず戸惑いの声を上げるが、ソウゴは構わず続ける。いつの間にか俯いていた顔は上げられ、エミリアの方を向いていた。

 


「前に言ったよね、公平な国を作りたいって。それも本当だろうけれど、その願いって本当にエミリア自身が抱いた願い?」

 


 エミリアの表情は不安と困惑が混じっていた。
 が、その言葉にエミリアは涙ぐみながら話し始める。

 


「…………本当は助けたい人たちがいて……でも助けるには、王選で選ばれて王様になって、あるものを手に入れなきゃ行けなくて……でも、公平な国を作りたいって思いも嘘じゃなくて……」

 

「それが、エミリアの本当の理由なんだね」

 


「軽蔑、したでしょ? 自分勝手で、ソウゴみたいな、信念もなくて……」

 

 何処か諦観のある悲しげな声でそう言った。本人が言った通り、軽蔑されるだろうと思ってるからだ。

 

「軽蔑なんかしないよ。なりたい理由なんて人それぞれだから。そうなりたい、そうしたいと望んだのが、自分自身かどうかが大事なんだ。どっちもエミリアが望んだことだろ?」

 

「ソウゴ……」

 

「エミリア。記憶が戻ってきて、苦しいのは分かるよ。それが、辛い過去だったってのも見れば分かる。俺にもあったからさ、そういうのが」

 

「ソウゴにも……?」

 

 不安げな表情は変えていないが、エミリアは内心意外に思っていた。何処かでソウゴは最初から強い心を持っていたと考えていたからだ。

 


「俺の場合は過去じゃなくて未来だったけどね。でも俺はそんな未来も、自分の最悪な面の自分だって受け入れた。でないと望む未来何てやってくるわけないし何より、俺は夢を諦めきれなかったから。

 民のためなら命を懸けたって惜しくない、それも何一つ嘘はないから」

 

「未来を、最悪な面を……受け入れた……どうして? 私だって今こんなに苦しいのに、どうして受け入れられたの?」


 

 エミリアは問う。彼女は純粋に知りたかった。常磐ソウゴという男が如何にして苦しみを乗り越えたのかを。

 


「さっきも言ったけど、諦めきれなかったからね。それに、王様は綺麗なままじゃいられないもの。醜い部分も受け入れて、その力で俺は未来を切り開く。民の未来も、自分の未来も」

 



「…………!」

 

 エミリアには、今のソウゴは全く違って見えていた。今までの、まるで友達のようなものとは違う。まさしく王、そう言えるものに。


 覚悟の違い、それを思い知らされたエミリアの思いは、今にも崩れていきそうだった。

 

「————エミリア」

 

「ッ!?」

 


 突如として、エミリアはソウゴに身体を抱きしめられた。

 とても、温かった。その温かさに、エミリアは懐かしさを覚えた。ずっと前にも、こうして抱きしめてくれる人がいたからだ。

 エミリアを抱いて、ソウゴは告げた。

 

「俺は最高最善の魔王になる。エミリアが王様になれるかどうかは分からない。でも、王様になってもならなくても……エミリアは俺の『民』だ。
エミリアの未来も俺は必ず切り開く。だから、エミリアの願いを聞かせてほしい。もしかしたら……王様になる以外でも、何とかなるかもしれないから」

 

「——————!」



 

 その言葉に、エミリアの涙腺は決壊した。

 

 今まで背負っていた全てをぶつけるように、吐き出すように、エミリアはソウゴの胸で泣き続けた。

 

 ソウゴはただ、黙ってそれを受け止める。エミリアを抱きしめ続けながら。



 

「……大丈夫?」

 

「……ありがとう、もう大丈夫」

 

 しばらくして泣く声が止み、エミリアに声をかけるソウゴ。彼女は目元を拭い答えた。



 

「……エミリア、時計の針は未来にしか進まない。ぐるっと一周して元の時間に戻って来ても、未来に少しずつ進んでくんだ。
過去も今も、そうやって積み立てていって俺たちは未来へ進む。だからこれから見つければいいんだよ。エミリアが誰から受けたものでもない自分が望む未来と、そのための大事な気持ちを、さ」



 

「この記憶が全部戻ったら……あるのかな、望んでる未来と、大事な気持ちが」

 

 エミリアは自分の胸に手を当てる。その手に触れるのはひび割れたパックがいたはずの結晶だった。彼女はそれを握りしめる。

 

「きっとあるよ。俺も、いつまでこの世界にいられるか分からないけれど……いる限りは手伝うよ。そしてそれは俺がいなくなった後でも、きっと意味があるものになるはずだから。自分らしい、新しい強さになる」

 

 ソウゴの目は真っ直ぐとエミリアを見据えていた。

 


「————うん!」


 

 その言葉と目を受けた彼女は、口を結びしっかりと頷いた。

 

◇◇◇◇

 

「情報は確かだったみてェだなァ。俺ッ様ァがいるとは知らずに、ノコノコと出てきてくれやがった」

 

 ソウゴとエミリアが聖域の入口から出た時、声がした。彼らの目の前には、獰猛な笑みを浮かべて腕を組んでいる金髪の青年————行方不明であったガーフィール・ティンゼルが居た。

 エミリアは思わず顔を顰めて構えるが、ソウゴは手で制する。



 

「話は聞いてるよ、ガーフィール。あんたは聖域を解放させたくないんでしょ。でも悪いけど、俺たちはあんたを越えていくよ」


 

 そう言ってソウゴはジクウドライバーを取り出す。

 

「へへ……良いぜ、受けて立ってやらァ」

 

両手の骨をポキポキと鳴らすガーフィール。

 

獰猛な笑みを浮かべているが、それは次の瞬間、崩れることになる。

 

「それに……アンタは内心焦ってるんだろ」

 

 ソウゴのその言葉に、ガーフィールは目を見開く。

 

「……俺様が、焦ってる?」

 

「さっきも言ったけど、話は色々聞いてるからね。アンタにはもう、後が無い筈だから」

 

「…………ッ!」

 

 ソウゴを睨みつけ、歯軋りをするガーフィール。

 

「アンタは少し前に————」

 

「黙れ!」

 

 ソウゴが何かを言おうとした瞬間、ガーフィールは大きな声でそれを遮った。彼は、ソウゴが何を言おうとしていたか分かってたからだ。

 

「…………これ以上、好き勝手される訳にはいかねェ…………そんなに死にてェんだったら、お望み通り殺してやるよ…………!」

 

「………………」

 

 先程までの余裕な表情は何処へやら、殺意の籠った怒りの表情でソウゴを睨みつけるガーフィール。

 それを何を思っているのか分からない、無表情の顔で見つめるソウゴ。

 

 改めて、彼は臨戦状態のガーフィールを前にドライバーを装着しようとするが————

 


「待て、ジオウ。そいつの相手をするのはお前じゃない」


 

 声がすると、何処からか黒い衣装を纏った青年が現れ、ガーフィールの前に立ち塞がった。

 


「ゲイツ……!」

 


「あァん? 誰だァ、てめぇは?」

 

 青年の、明光院ゲイツの出現に、ソウゴは名前を呼び、ガーフィールは怪訝そうな表情で彼を見る。

ゲイツはジクウドライバーを腰に当てる。ドライバーから帯が噴出し、一周して装着される。その後、左腕に装備していたライドウォッチホルダーからゲイツライドウォッチを取り外した。

 

『GEIZ!』

 

 前に翳したウォッチのベゼルを回し、リューズを押して起動。そのままベルトに装填して、リューザーを叩くように押してロックを解除。

 両腕を同時に突き出して大きく旋回させ、両手でベルトを抱え込む。

 

「変身!」

 

 両腕を広げると同時に、ベルトが回転した。

 

『ライダァー! タァーイム!』

 

 深紅のリングがゲイツを覆うように出現して回転。たちまち、彼の身体に赤いスーツが纏われ始める。

 

『仮・面・ラ・イ・ダァー! ゲイツ!』

 

 ゲイツの後ろに出現していたデジタル時計型のエフェクトから黄色い『らいだー』の文字が弾け飛び、それがゲイツのマスクへと収束。仮面ライダーゲイツへと変身が完了した。

 

「てめェは……! あん時の!」


 

 ガーフィールはゲイツを見て目を鋭くして彼を睨み、声を荒げる。

 


「しばらくぶりだな。だが、あの時と違って悠長に戦うつもりもない。決着をつけるぞ、ガーフィール!」

 

 仮面ライダーゲイツは、構えを取ってそう啖呵を切った。

 

 ガーフィールが雄叫びを上げてゲイツに向かって駆け出し、それを見たゲイツも駆け出す。

 

 お互い突き出した拳がぶつかり合い、大きな衝撃波が生み出された。




スバエミ派よ、すまん
とりあえず俺も完結という未来に進むために頑張るわ
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