ソウゴ達がガーフィールを撃破し、翌日にエミリアが改めて試練を受けることになるのだが、その前後で、ロズワールも動き出していた。自らの屋敷に刺客を送り込んだのだ、福音書の通りに。
「…………ハァ」
そんなことを知らないベアトリスは、禁書庫でため息をついていた。彼女の手には、胎動を続ける福音書と、ゲイツとツクヨミをつれて屋敷に戻ってきたときにソウゴからの預かりものとして渡されたオーマジオウライドウォッチ。
ゲイツとツクヨミから聞いた話は衝撃としか言いようがなかった。この世界とは違う別の世界、それだけでも驚きなのに、2068年という本来ソウゴ達がいた時代から50年先の未来からやってきたというゲイツとツクヨミ。
全ては、オーマジオウという、ソウゴのなれの果て、最低最悪の魔王の誕生を阻止するため。さまざまな戦いの末、ソウゴ達は真の黒幕であったクォーツァーと激突。統一感の無い、バラバラで醜い平成という時代を滅ぼすため。ベアトリスでさえ、身勝手極まりないと理解できてしまう敵。
絶体絶命の危機にたたされるも、ソウゴは、己が王になろうとした原点を思いだし、新たな力を手に入れた。それこそが、今ベアトリスが持っているオーマジオウライドウォッチ。
話を聞く限り、その力は嫉妬の魔女以上。恐らく剣聖でさえ、勝つのは不可能。オーマフォームとなり、歴代平成ライダーと共にクォーツァーを倒し平成を守り抜いた。
その後には、ソウゴを憎む宿敵の話も聞いたが、紛い物のオーマジオウとはいえ、歴史を改編する怪物。そして、本物のオーマジオウは、平成という時代を知るものがいる限り、消えることの無い不滅の存在。
ベアトリスとて、この話が全て理解できたわけではない。ただ分かったのは、ソウゴは、途方もない力を手にしていること、本来なら世界を破滅させる魔王となる運命を覆した、ということ。ここまで聞いたからこそ、ベアトリスは確信した。
彼の力が、私に干渉してきていること。彼こそが、その人なのかも知れない。不安は、それが違った場合、厳密に言えば、彼に拒絶された場合と言った方がいいのかもしれない。
ツクヨミは「そんな心配はいらない」と言っていた。しかしベアトリスにとってはスバルが消えた今、ソウゴが間違いなく最後の希望。故に不安を拭えなかったのだ。
「フレデリカさん、掃除終わりましたよ!」
「ありがとうございます、ツクヨミ様」
その一方でツクヨミは、フレデリカと友好な関係を築いていた。
ロズワールが雇った護衛、とウォズから聞かされたフレデリカ。屋敷の仕事も、可能な範囲ではあるが手伝っている。
屋敷の構造の把握という意味もあるが、ツクヨミが手伝いたいという意思でやっているのも事実である。迎えにきたウォズと共にゲイツが再び聖域に向かった後から、敵が来る可能性を踏まえて警戒をしていたが、それらしい存在は現れない。
(今日も警戒は無駄になるかな……)
掃除を終えて、そう思ったその時だった。屋敷正面から突如の破裂音。それに気づいたツクヨミとフレデリカは走っていく。辿り着いてそこにいたのは青髪少女と彼女が引き連れている犬や蛇、蝙蝠を思わせる魔獣達。
「魔獣……!? 貴方、魔獣使いですの!?」
フレデリカが少女に向けて問い詰める。
「正解。でも、そんな色気のない名前で呼ぶのはよしてほしいわあ。私はメィリィ・ポートルートって名前があるの」
「何しに……と聞くのは野暮な話ですわね」
フレデリカは両腕を獣化して構える。
「ツクヨミ様、ここは私にお任せを! このことをベアトリス様に!」
「分かった!」
ツクヨミは駆け出した。
「貴方一人で相手するつもり? 舐められたものねえ。いいわあ、沢山遊んであげる!」
そうして、戦闘が開始された。
◇
「ベアトリス!」
扉が勢いよく開けられ、ツクヨミが禁書庫に駆け込んできた。ベアトリスは見上げる。
「どうしたのよ、そんなに慌てて」
「屋敷に魔獣を連れた敵が現れたの!」
「!」
ツクヨミからの知らせに、間違いなくロズワールの送り込んだ刺客だと理解した。 禁書庫なら安全、といいたいがロズワールが送り込んだ刺客なら、ここの弱点も教えている可能性がある。
ジュースは既に別の部屋に移動させて、最高レベルの認識阻害と防御魔法を部屋に展開しているから心配はない。ならば外に出るべきかと思ったその時だ。
「! ミーニャッ!」
ベアトリスは紫色の結晶をツクヨミの後ろに向けて飛ばす。
そこには、くくりナイフを持った女が。
「オマエが噂の腸狩りとやらかしら?」
「あら、ご存知だったのね?」
二人の会話をよそに、ツクヨミはファイズフォンXを構えてエルザに向けて射撃した。
「んっ……せっかく精霊と対話しているというのに、水を差さないでもらえる?」
「私たちを殺しに来たんでしょう。水を差して当然よ」
エルザは光線を防いでいた。そして彼女に答えていたツクヨミも、戦闘をするにもここじゃ狭いと内心考えていた。
「シャマク」
と、ベアトリスが呪文を唱えて黒い霧を発生させた。そのままツクヨミの手を引いて禁書庫のドアを開けて出た。ドアの先は既に変更済みで、玄関近くの扉にしたので、そのまま外へ。
「あそこじゃ狭い。外でやり合うのよ」
どうやらベアトリスも同じようなことを考えていたらしい。外では、フレデリカが魔獣達と戦闘中だった。
「フレデリカさん……!」
「! 来たのよ!」
ツクヨミが青髪の少女の方は何処に行ったのかと考えている内に、エルザが来た。
『ツクヨミ!』
「変身!」『ライダーァ! ターァイム! ツ・ク・ヨ・ミィ!』
ツクヨミはライダーツクヨミに変身して、駆け出してきたエルザの攻撃を光のシールドを生成して受け止めた。光剣"ルミナスフラクター"のように生体エナジーを収束させることで作ったのだ。
エルザを弾いた後、両腕に生体エナジーによって円型の回転鋸を生成。それをエルザに向けて投げ飛ばす。
それをどうにか弾くが、直後にエルザの動きが停止。本人も戸惑ってる間に、ツクヨミがキックを放つ。
動きが停止したのは時間停止能力の影響だった。それもあり、戦闘はツクヨミ有利に進む。
「さ〜てと……えいっ」
しかし、戦いに集中していて気づかなかった。いつの間にか抜けていたメィリィが屋敷に近づいて炎の魔鉱石を使って放火したのだ。
いざという時のために持っていた魔鉱石を戦場の混乱を狙って使ったのである。
「ッ! 屋敷がっ」
フレデリカは驚いて屋敷の方を見る。
「しまった!」
ツクヨミは屋敷の燃焼を阻止するべく燃え出した部分を時間停止。しかし、その隙をつき、エルザがベアトリスに迫る。間に合わない、誰もが、そしてベアトリス自身もそう思ったその時、福音書とオーマジオウライドウォッチが突如輝きだし、凄まじい剣撃音と共にエルザが弾き飛ばされていた。
「ッ!?」
そこにいたのは、紫色の鎧を纏った剣士。剣士は、チラリと首をベアトリスに向け、彼女が無事であることを確認すると、そのままエルザに突進する。
「誰だか知らないけれど……面白そうね……!」
始まるエルザと剣士の剣劇。ツクヨミは燃焼を防ぐべく、ルミナスフラクターで時間停止させていない、火元付近を破壊し、燃焼を阻止。メィリィを押さえにかかった。剣士はエルザを圧倒していた。エルザはさらに興奮して突撃するが、剣士は動じることなく、腰のホルダーに剣を納刀し、剣のトリガーを引いた。
『月闇居合! 読後一閃!』
放たれる闇の斬撃。その一撃に吹き飛ばされるエルザ。剣士こと仮面ライダーカリバーはベルトに装備していた本を引き抜き、闇黒剣月闇にリードする。
『必殺リード! ジャアクドラゴン! 月闇必殺撃、習得一閃!』
「ッ!」
放たれた闇の必殺技をもろに食らったエルザ。吹き飛ばされるが彼女はこの程度の傷なら……と思ったが突如異変が起こった。闇のオーラらしきものが、エルザの腕を覆いだしたのだ。
「無駄だ、お前はもう助からない。闇の力の侵食を受けたものは存在そのものが消える。お前は程なくして闇に消えるだろう」
「!」
カリバーの言葉を聞いて眉を顰め、口を歪ませていたエルザ。メィリィはツクヨミに時間を止められ、ロープで縛られて動けない状態だった。助けに行こうにも剣士が邪魔をしてくるだろうし、完全に自身が不利な状況だとエルザは悟った。
「……一度体勢を立て直す他ないわね……」
エルザは地面を切りつけて飛ばした土の塊で目眩しをしてその場から撤退した。
フレデリカは加勢したツクヨミと共に魔物を倒し終えていた。カリバーはベアトリスの元に戻ってくると彼女に告げた。
「分かっているはずだ、お前が進むべき道はもうひとつしか残っていないと。それ以外の道は全て破滅に至る道しかないと」
「……分かってはいたのよ、でも……それでも……」
煮えきらない彼女にカリバーは月闇を抜き、彼女の前に突き立てて、無理矢理に柄を握らせた。その瞬間、ベアトリスが見たのは世界が滅び行く光景。それ以外にも自分やエミリア達が何度も死ぬ光景が現れる。その光景に気を失いそうになるが、その前に現実に戻された。既にカリバーは月闇を納刀している。
「これでお前は逃れられない。進むか死ぬか、お前に残された選択肢はそれだけだ。だが……」
カリバーは、ベアトリスを見つめて宣言した。
「お前が全てを受け入れ進むならば……
そういうと、カリバーは金色の粒子になって消えていき、彼女の福音書に吸い込まれていく。彼女は福音書を見て驚愕した。なぜならば、彼女の抱えていた本はもう福音書ではなかったからだ。本は緑色に変わり、表紙には新たな題名が刻まれていた。
「Re:仮面英雄暦」、と。
次回 2020:信じられる、最高の友。