少し遅れて生徒会室に入ると、どうやら藤原先輩が白銀先輩に心理テストをしているようだった。
藤原先輩は心理テストの本を図書館で借りてきたみたいである。
「あなたの前に動物用の檻があります。その中に猫は何匹入っていますか?」
「9匹くらいかな…」
「これはあなたの欲しい子供の数を表しています!」
ちょっと待って、白銀先輩、9人でドンピシャって言った⁉︎多すぎでしょう、それは。四宮先輩、顔を赤くしてないでツッコむべきですよ!
私が心の中でツッコミを入れている最中、藤原先輩は机の中に隠れていた?石上くんを引っ張り出し、みんなで心理テストをやることになった。
「あなたは今、薄暗い道を歩いています。後ろから肩をたたかれました、その人は誰ですか?」
「薄暗い道…一体何を暗示しているのでしょう…」
その心理テストに四宮先輩は「藤原さんです」、石上くんは「四宮先輩…でした…」と回答した。
「あずちゃんは?」
「…そうですね、い…」
藤原先輩にそう聞かれ、私はふと考えて、”石上くん”と答えそうになった。しかし、先輩がニヤニヤしていることに気づいた。…問題の答えがもし”好きな人”だったら…?いや、これはただの心理テスト…。というか”好きな人”っていうのは何も恋愛云々だけとは限らないし、石上くんのことは大切な仲間として好きだし…。
「い?」
”い”が聞かれてた!ちょっと待って、ほかに”い”から始まる人いたっけ⁉︎
「いえ、えっと…」
そうこうしているうちに白銀先輩が「うちの妹かな」という無難な回答を言った。
藤原先輩はがっかりした様子である。
「藤原先輩、これの答えって”好きな人”ですよね?」
「なーんだ、あずちゃん気づいてたんですかー?」
「はい、なんとなくですが。」
「えー、じゃあさっき言いかけたのって…」
「答えに気付いてから、何を言おうか迷ってしまって…。私この生徒会の皆さんのことが大好きですから。」
これはなかなか、うまい切り返し。藤原先輩も嬉しそうに私を抱きしめてくれた。……むねがとてもおおきい。
石上くんは恐怖のピークに達してしまい早退した。石上くんが何かに気づいた気配なし!よし!
〔本日の勝敗 東玉枝の勝利〕
おまけ
『東玉枝は気づかれたい』
ちょうど藤原先輩が石上くんの横を通りかかったときだ。
「藤原先輩、リンス変えましたね。」
石上くんの一言が衝撃的だった。
石上くんはさらに「いつもと臭い違うんで」「ムレる」「臭い方がかわいい」と細かい匂いの話をする。
藤原先輩は少し笑いながら「石上くんキモー」と言った。
先輩は、よくこれを「キモー」で済ませてくれたと思う。怒ったり泣いたりされる、セクハラの領域。女性の香りについて言及するのがどこからアウトかはわからないけれども、言葉のチョイスが悪い。たぶん石上くん自体は、悪気ないし褒めてるはずなんだけども。
石上くんは、この発言を受け涙を流しながら「死にたいので帰ります」と言って早退した。
……それはそれとして、どうして私には何も言ってくれないの‼︎⁉︎(←シャンプーを変えた東玉枝であった。)
私なら石上くんのさっきの言葉にありがとうと大人に対応で返します‼︎どうして…なの…?
「…白銀先輩。」
「なん…だ?」
おそらく今の私の目はすわっている。
「傷心したので帰ります。」
「お…う。よく分からんが、お疲れ様…?」
「はい…」
〔本日の勝敗 東玉枝の敗北〕