鬼舞辻無惨との最終決戦で炭治郎が“鬼の王”になってしまった世界線。鬼と鬼殺隊の戦いが未来にまで続く中、悲劇を変えるために過去へ時間移動を行うのだった。

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鬼滅の刃が完結してインスピレーションが爆発したので。

※初っ端から本誌ネタバレです。単行本派の方はお気を付けください。
※いきなりシリアスです。


鬼滅の刃 ~再戻(さいれい)

 巨大な、酷く醜い赤子が叫び声を上げながら太陽に焼かれ消えていく。

 鬼の首魁、鬼舞辻(きぶつじ)無惨(むざん)の最期だ。

 残っている柱たちに五体満足な者などいないほどの死闘を繰り広げた、長い、長い夜は終わった。

 待ちに待った千年の夜明け。

 平安の世から続く人喰いの鬼との戦いはこうして幕を閉じた――

 

「えっ?」

 

 ――はずだった。

 

 隠の一人が状況を理解できず声を洩らす。

 目の前には、たった今滅ぼしたはずの鬼がいるのだ。

 先ほど無惨と相打ちになるようにして息を引き取ったはずの竈門(かまど)炭治郎(たんじろう)の姿で。

 

「離れろーッ!」

 

 唯一、動くことができた水柱・冨岡(とみおか)義勇(ぎゆう)が悲痛に叫ぶ。

 かつて己が助けた弟弟子を自らの手で殺さなければならない現実に心をきしませながらも、決定的な罪を犯さぬうちに人として終わらせようと体を必死に動かそうとする。

 

「ぐっ、くそ!」

 

 だが、激戦を終えたばかりの義勇にはもう力は残されていなかった。

 かろうじて膝をついて倒れないようにするだけで精一杯。

 彼がそうしているうちに鬼になった炭治郎は、弱点のはずの太陽すら克服して暴虐の限りを尽くし始めた。

 

 

「斬れねえ、だめだ炭治郎、斬れねえ!」

「お、まえ、禰豆子、ちゃんは、どうするん、だよ」

 

 肩を並べた友を斬り殺し。

 

「悔しいよお兄ちゃん、一緒に家に帰りたかった……」

 

 最愛の妹を喰い殺し。

 

「ごめんね、炭治郎。私、何も、返せなかったね」

 

 心を通わせた少女を刺し殺し。

 

「炭治郎、正気に戻れ!」

「くそ、どうしたらいいんだ!」

 

 共に戦った仲間を、支えてくれた仲間たちを惨殺してみせた。

 

 

「やめろ、炭治郎! やめるんだ!」

「それ以上は駄目だ、止まれ、止まってくれ!」

「や、やめろーっ! やめてくれ!! もう……頼むから、やめてくれ」

 

 一人動けない水柱・冨岡義勇を残して、その場にいた鬼殺隊は……全滅した。

 

「ああ、あああ、あああああああ!」

 

 

 鬼殺隊の歴史に刻まれた忌まわしき事件。

 “鬼の王”が生まれた日。

 そう、悲劇はまだ終わらなかったのだ。

 

 


 

 ――近未来

 

「ちくしょう! 鬼の王め! また仲間がやられた」

「どうやって倒せばいいんだ、あんな奴!」

 

 時代を超え、鬼と鬼殺隊の戦いは続いていた。

 しかし、鬼殺隊の状況は極めて悪いと言わざるを得ない。

 あの忌まわしき日以来、数多の血肉を喰らい続けた“鬼の王”は、科学技術が発達した現代においても討伐が困難となるほどに進化を遂げていたのだ。

 かつての鬼舞辻無惨以上の身体能力、血鬼術、そして不死性をそなえた奴に対して鬼殺隊は何ら有効な手段を持つことができなかった。

 “鬼の王”の殺害は現在では不可能である。

 そう彼らが判断するほどに絶望的な状況に追い込まれた現代の鬼殺隊。

 しかし、まだ希望は残っている。

 

「ひい爺ちゃんから受け継いできたコイツに希望を託すしかない」

 

 ひょっとこの仮面を被った隊員の一人が視線を向けた先にあるのは、巨大な機械の塊であった。

 重厚な駆動音を響かせるこの機会はいったい何だろうか?

 

「だけど、本当に出来るのか? タイムトラベルなんて」

「できるはずだ。いや、信じよう! 未来は、いいや、過去は変えられるって」

 

 不安を洩らす男が言った言葉から分かる通り、この機械は時間転送機――つまりタイムマシンであった。

 生物として不死身と呼べるほどに進化を遂げた“鬼の王”を倒すことを諦めた彼ら鬼殺隊は、過去に戦力を送り込み“鬼の王”の誕生を阻止して歴史からその存在を消してしまおうというのだ。

 彼らの希望を受けた機械は駆動音を響かせ、激しい光を放ちながら動き始める。

 そしてひと際大きな閃光を放ち、そして静かになった。

 

 実験は、成功したのだ!

 


 

 ――大正時代 西多摩 雲取山

 

「すみません、少しよろしいだろうか?」

 

 山で炭焼きをして生計をたてる竈門一家に一人の来客が訪れていた。

 着物に総髪姿に花札のような耳飾りを付け、しかも腰に刀を差した人物だ。

 

「はい、どのようなご用でしょうか?」

「竈門炭治郎君はいるだろうか? 話があるのだが」

「俺が炭治郎です! あなたは?」

 

 その人物が訪ねてきたのは奇しくも対応した少年、竈門炭治郎だった。

 自分も身に着けているものと似た耳飾りをした人物が自分を訪ねてきたことを訝しく思う炭治郎に、その人物は名乗りを上げる。

 

「私の名前は縁壱百式(よりいちひゃくしき)。君を守るために未来からやってきた絡繰人形だ」

「か、絡繰人形?」

 

 困惑する炭治郎をよそに真面目な顔で語る縁壱百式。

 そう、彼こそ未来の鬼殺隊が“鬼の王”を誕生させぬために送り込んだ刺客であった。

 戦国時代から残された“始まりの剣士”を模して造られた絡繰人形を現代の技術で復活・改造して完成したのが彼である。

 その性能は伝説に聞く“始まりの剣士”と遜色なく、しかしながら“鬼の王”を倒すには不足であったため、“鬼の王”になりうる素養をもった炭治郎を守り、全ての原因となった始まりの鬼、鬼舞辻無惨を倒すために過去に送り込まれたのである。

 

 これから、未来の悲劇を避けるための一体の絡繰人形と少年の戦いが始まるッ!

 

 

 

 

「あああ、あの男が何故、生きている!? 黒死牟、なんとかしろ黒死牟ッ!」

「縁壱、貴様は……今更になって……」

 

 なお、彼の姿を見ただけで無残と黒死牟は過去のトラウマを刺激された模様。




タイトルからお察しの通り、「I'll be back」って感じです。
鬼滅の刃完結の興奮のままに書きなぐりました。
やっつけ感と投げっぱなし感がすごいですが、思いついちゃったので。

未来技術によって作られた縁壱型高性能アンドロイドによって、無惨様たち鬼が次々とターミネートされていくのである。

書いた内容はシリアス多めだったけど、結果はギャグにしかならないというね。
とりあえず、上弦の鬼で居場所がバレている陸と弐は真っ先に死ぬでしょう。



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