鬼ヲ狩ル者達之交差【休載中】   作:Luly

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第五十二話。今回は結構久しぶりに出るあの方が出ます。


第伍拾弐話 お前は、誰だ?

 

ズゥゥゥン…

 

そんな音が周囲に響きわたり、香のいた場所の周囲には土煙が上がっていた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

大丈夫か、仁。

 

「だまり……すまん、支えてくれ……」

 

うむ…わかった。

 

仁はだまりに支えられながら、何とか立っていた。

 

「……どうなった」

 

『分からないです……未来姉様とその主さんがあの砲撃?に飲み込まれる前、驚いていたのは分かりましたが……』

 

仁の思考の中に落ち着いたような声が響く。これこそが仁が持つ刀、黄泉の声だ。

 

「風は……俺は起こせないしな。」

 

『私も実際氷属性を多用するばかりですから……姉様のように完璧にすべての属性を扱えるわけではありませんね…』

 

そんなことを話していると、徐々に土煙が晴れてきた。

 

「…勝った、のか?」

 

「若旦那!」

 

「花…?」

 

土煙が完全に晴れたと同時に花が仁に駆け寄った。

 

「大丈夫ですか?お怪我などなありませんか?」

 

「身体が動かない以外は大丈夫だが……花の方は大丈夫なのか?」

 

仁がそう問うと、花は頷いて鈴たちの方を向いた。

 

「鈴さんたちが、私達を守ってくれたんです。」

 

「鈴たちが……?っ!そうだ、香は!?」

 

仁が香のいた方を見ると、そこには地面に倒れた香の姿があった。

 

「……すまない、花。俺よりも香の回復を優先してもらってもいいか?」

 

「は…はい。」

 

仁の指示で花が香に近づこうとした瞬間、香の手が微かに動いた。

 

(意識はあるのか……)

 

仁がそう思った直後、香が起き上がり、頭を押さえた。

 

「痛っててて……いい一撃をもらったみたいだな……」

 

(…ん?)

 

仁はその香の言葉に違和感を覚えた。

 

「香さん…回復します。」

 

「ん?…いや、いい。()は自分でも回復かけられっから仁の方にやってやんな。」

 

「は、はぁ……」

 

(……)

 

仁は香を見つめて…否、睨んでいた。香はその視線に気がついたのか仁の方を見た。

 

「……んだよ。」

 

「……おまえ……香じゃないな?何者だ。」

 

その言葉にその場がざわついた。

 

「………ま、当然何人かは気づくよな。…ご明察。俺は香じゃない。」

 

「…誰だ。何故香の姿をしている?」

 

「おっと、誤解がないように言っておくが俺が香の姿をしている、っていうのは違う。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「なら、なんだと?」

 

「この身体は正真正銘“錦糸 香”のもので間違いねぇ。だが()()()()()()()()()()()()()()()()、ってだけだ。」

 

「…答えろ。お前は、何者だ?」

 

「俺か。」

 

香?は仁から目線を外し、空を見た。

 

「……俺は、この世界を外から視ていたもんだ。」

 

「…この世界を…外から視ていた?」

 

「あぁ。この世界の外側から、お前たちのことを、ずっとな。」

 

「ずっと…か。なら、いままで何かで追い込まれた時、助けになっても良かったんじゃないか?」

 

その言葉に香?は首を横に振った。

 

「いや、それは出来ねぇ。何故ならこことの緊急回線が開いたのが丁度今だったからだ。いま、世界と世界の繋がりがぐちゃぐちゃになっててな…視る、ことはできても話すこともできなかった。そして、緊急回線は長く持たんし、最低レベルの回線すら今まで接続できてなかったんだ。俺は世界を視る能力を持っているから見えてはいたんだがな…」

 

香?はそう言ったあと、仁を見た。

 

「…って、そんなことを言いに来たんじゃないな。…仁、鈴、灯純、妹紅、耀哉…それから炭治郎。」

 

「「…なんだ。」」/「なにかな?」/「なんでしょうか…?」/「「…?」」

 

全員違った反応をしたのを見てから、香?は自分の胸元の方に手を当てた。

 

「どうか、こいつのことを頼む。」

 

「「…は?」」/「…うん?」/「はい…?」/「「??」」

 

「こいつ、よく一人で背負い込んで無理するからよ。何か無理しているような感じがあったら気にかけてやってくれ。」

 

「……はぁ?」

 

灯純が意味が分からない、というような声を上げた。

 

「今は意味が分からなくてもいい。…だが、じきにわかるだろう。…こいつが、どれだけ無理をしているのか。どれだけ、壊れる寸前で踏み留まっているのか。…もし、壊れてしまったら……そんな時は、お前たちが支えてやってほしい。」

 

そう言った香?の表情は何かを心配しているような表情だった。

 

(……身体は香で間違いない。あの表情は確かに香が俺が無理した時に向ける心配の表情と同じだ。…だが、あの香が壊れる寸前…?こいつの言葉……信じていいのか?)

 

「別に俺の言葉が信じられないならそれで、いい。今はまだその時期じゃないからな。だが少しでも心にとめておいてくれ。いつの日か、香という存在が壊れる日は必ず来る。…それだけは、絶対に覚えておいてくれ。」

 

そういった後、香?は目線を下に向けた。

 

「…今は姉さんにしか頼れないし…」

 

かなり小さく呟いたが、仁にはその言葉がなぜか聞こえていた。

 

「…姉さん?」

 

…どうした、仁?何か聞こえたのか?

 

「…聞き間違いか。」

 

仁は聞き間違いということにして次の言葉を待った。

 

「……ん、そろそろ時間か。じゃ、さっき言ったこと、頼むぞ。」

 

そう言って香?は仁に背を向けた。

 

「待て!!」

 

仁がそう叫ぶと香?が首だけを仁に向けた。

 

「…なんだ。」

 

「ここからいなくなる前にいくつか答えろ。」

 

「…」

 

「一つ。お前は歪みを使う鬼を知っているか?」

 

「…歪みを使う鬼、か。知ってはいるが今どこにいるかは知らん。俺が視れるのはこの世界の過去と本来この世界にいるはずがなかった香の周囲で起こることだけだからな。」

 

「…そうか。二つ。俺と香の母がどうなっているかを知っているか?」

 

「……安心しな。まだ鬼にはなってねぇよ。…それでも、かなり危ない状態だがな。」

 

「…どういうことだ。」

 

「そのままの意味だ。いつお前たちの母親が抵抗できなくなるかが読めねぇ。助けるなら早くした方がいいだろうな。…心配するな、俺の見立てではまだ2週間は猶予がある。」

 

その言葉に仁、佐吉、灯純が息を吐いた。

 

「…三つ。お前は香とどんな関係だ?」

 

「……ただの知り合い。……それ以上でも以下でもねぇよ。」

 

香?は無表情でそう言った。

 

「…四つ。お前は、誰だ?…お前の、名は何だ。」

 

「……」

 

香?は仁から目線を外した。

 

「………………“語り部”。」

 

「語り部?」

 

仁が聞き返すと香?は完全に振り向いた。

 

「語り部───“記録の語り部”。俺のことをよく知らない奴はそう呼ぶ奴が多い。」

 

「……そうか。」

 

「……おぉ、そうだ。三つ、忘れるところだった。」

 

香?はそう言って灯純の方を向いた。

 

「灯純。お前の娘から伝言。“香ちゃんを、どうかよろしくね。わたしはもうお母さんとお父さんに会えないけど、だからって香ちゃんにひどいことはしないでね?”…だとさ。」

 

「……それは?」

 

「言っただろ。()()()()()()()……“錦糸(きんし) (かおる)”からの伝言だ。」

 

「……なんで、その名を知っている。」

 

錦糸 薫。その名を聞いた時、灯純の顔が困惑に変わった。

 

「お前の娘の魂が俺のいる場所に来てたのさ。俺は香の中に入る前に、その伝言を依頼されただけ。ただそれだけだ。」

 

「……証拠はあるのか?それを薫から言われたという証拠が!!」

 

灯純はそう叫んだ。

 

…鬼がいる夜 鬼退治

きらきら光り 導くぞ

されど鬼とは 悪だけならず

鬼は鬼でも 善のもの

そんな鬼は どうするか

捕まえ 従え 助け合え

鬼導術は 導くぞ

鬼の在り方 導く光…

 

香?は謎の歌を歌った。それを聞いた灯純の表情が凍った。

 

「……なんで、その歌を?」

 

「……灯純さん、何か知っているのです?」

 

「……俺が、薫に聞かせてた子守唄みたいなものだ。香には聞かせてないし、知ってるのは薫か結だけなはずだ……!!」

 

「…言っただろ。これはお前の娘から聞いたものだ。“もし、お父さんが信用しなかったら、この歌を聞かせてみて。”って言ってたんだ。信じるかどうかはお前次第だがな。」

 

「……」

 

灯純が黙ったのを確認すると香?は仁に向き直った。

 

「仁、花、だまり。お前たちに予言だ。」

 

「……なんだ」/「あぁ?」/「…?」

 

「お前たちは、いずれ()()()()()()()()()()()()()。…必ず、な。」

 

「…どういうことだ。」

 

「今は意味が分からなくてもいいさ。…その時こそ、今は話せないことを話してやるよ。」

 

香?はそう言って空を見上げた。

 

「…今は、私も話せないことはあるから。その時が来たら……総て、話すことになるかもしれない。」

 

そう、香?は呟いた。その後、仁をもう一度見つめた。

 

「…さて、最後。仁、これはお前に頼む。」

 

「……なんだ。」

 

「…香に伝えてくれ。“もしも、お前だけの力ではどうしようもなくなった時。その時は、星虚(せいきょ)の歌達を歌え。”」

 

「“星虚の歌達”?」

 

「そうだ。歌えば何かが起こる。もしも、どうしようもなくなった時には……それを使え、と。」

 

「……分かった」

 

「……私達には、それくらいしかできない。この世界は、歪んでるから。」

 

その小さなつぶやきも、仁は聞き逃さなかった。

 

(歪んでる?いや…それよりも少し気になることができた。)

 

「…じゃ、俺は失礼するぞ。」

 

「…待て、最後に聞かせろ。」

 

「…なんだ。」

 

「……お前…男か?女か?」

 

「はぁ?」

 

香?がわけがわからないというような顔をした。次いで、微笑んで人差し指を口の近くで立てた。

 

「……もし、女だって言ったら……どうする?」

 

香?はそう言って目を閉じ、それと同時に香の身体から力が抜けて崩れ落ちた。

 

「お、おい!?」

 

仁は香に駆け寄ろうとしたが、力が入らず、崩れ落ちた。その代わり、鈴が香に駆け寄っていた。

 

 

 

───この世界に存在するかも定かではない赤い揺らめく光が点在している場所。

 

 

 

たった一つだけあった青い光の一つから一人の人間が出てきた。

 

「帰った帰った、っと。」

 

「お疲れさま。」

 

男性に見える人間の前に、黒い髪のツインテールの髪型の少女が立っていた。

 

「…あぁ、悪い、“月の娘”か。」

 

月の娘、と呼ばれた少女は小さく頷いた。

 

「あなたのお姉さんたちはここに来れないから。私がお迎え。」

 

「そうか……姉さんたちの方も大変なんだろ……っというかあんたたちの方が大変なんじゃないのか?」

 

「……そうだね……でも、一番大変なのはあなたのお姉さん……Lulunaさんだから。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「……そうか。ったく、姉さんも本当に色々と巻き込まれるだろうな…」

 

その言葉を聞いて月の娘がくすっと笑った。

 

「…なんだ?」

 

「妹ちゃんとしては、お姉ちゃんが心配?」

 

「……まぁ、な。」

 

男性に見えた人間…もとい少女は照れたようにそう言った。それを見て月の娘は少し考えこむような顔になった。

 

「……大丈夫、って言葉にするのは簡単だけど……ほんとに簡単なわけじゃない。でも……今の状態じゃ、こっちからはほとんど何もできないから、貴女のお姉ちゃんに任せることしかできない…」

 

「歪み、っていうのはそんなに面倒なものなのか。」

 

その問いに月の娘は困ったように笑った。

 

「そうなんだよね……普通の歪みだったら一度矯正してしまえば何とかなることの方が多いんだけど……()()()()()()()()()()()()()()()()んだよね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。貴方のお姉ちゃん───Lulunaさんじゃない方ね───達にも手伝ってもらっているけど、それでも回線を保つのがすごく難しい。流石にこんな難しい回線接続作業は初めてかな…しかも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からもっと性質が悪い。おかげで転送が全く効かないのなんのって。私もこの世界から出れないし貴方のお姉ちゃん達もあっちの世界に取り残されたまま。まだあっちの世界とこの世界、あと私ともう一人の子供達の住んでいる世界とはかなり近い位置に存在するから音声通話と文書通信くらいならできるんだけどね…」

 

「他の世界はそうもいかないと。」

 

「うん……私の娘からの報告によると自分たちの世界群にある各世界に移動するのも困難、特に二次創作世界と一次創作世界は完全に遮断されてるって……」

 

「遮断、か……観測は出来てるのか?」

 

その問いに月の娘は首を横に振る。

 

「観測もギリギリ。世界群間の移動はほぼ完全に遮断、世界間の移動も困難。観測自体もかなりギリギリ。ノイズがすごすぎてまともに観測できないみたい。」

 

「そうか…じゃ、何かあったら呼んでくれ。俺はGW03の記録書庫にいる。」

 

「うん、お願いね。“記録を紡ぎ語り継ぐ者”───記録の管理者“魂込(たまごめ) 彼方(かなた)”さん。」

 

“魂込 彼方”。それが今、月の娘と会話していた少女の名である。

 

「“レコーダリス”、世界群間移動術式展開、“GW00”から“GW03”へ移動、移動先の世界コードは“record index”だ。」

 

彼方の背負っていた杖が光り、彼方の身体を青い光が包んだ。

 

「…月の娘さんよ。」

 

「うん?」

 

「…俺だけとはいえ、こっちの世界への移動手段を貰ってもよかったのか?」

 

「…まぁ、それ使えるの一回だけだから。歪みがひどすぎて一回の移動で回線が崩壊しちゃうんだよね。だからそこまで問題はないよ。一方通行だし。」

 

「そうか……すまない。」

 

「謝らなくていいよ~…無理して術式積んだからその子の人格止めちゃったし…」

 

そう言っているうちに青い光が一瞬だけ強まり、その場から彼方の姿が消えた。

 

「……さてと、回線修復作業行かなきゃ。ポータルは歪みのせいで全部停止してるし、そもそもこの世界には私達が許可しないとは入れない仕様になってるからあまり気にする必要はないかな…」

 

そう呟きながら月の娘もポータルというものがある部屋の外に出た。

 

「…うん?音声通話?…はい、もしもし。あ~……ほんと?あ~……わかった、塞ぎに行ってくる。場所はどのへん?…うん。…うん。え~……ポータルルームから思いっきり遠い場所……いや、嫌だなんて言ってないけど…うん。じゃあ、回線の接続作業に戻るの少し遅くなるからね?うん……ごめんねって伝えておいて?うん…はぁい……あ、お昼ご飯とかどうする?……ん、私のお任せでいいの?…はぁい。じゃあ今の材料と相談して決めるね?うん。じゃあ先に空間の穴塞ぎに行ってきちゃうから、電話切るよ?…うん、またあとで。」

 

月の娘は手元で何かを操作して左手を振った。

 

「さ、行くよ、ルナリア!早く空間の穴をふさいでお昼ご飯作りに行こっ!」

 

「はい、マスター!」

 

いつの間にか月の娘の近くにいた少女がそう言うと月の娘と少女が宙に浮き、そのまま飛んで行った。扉は自動ドアだったようで、月の娘と少女がある程度離れたと同時に閉まった。

 




新キャラ…みたいなの出てますけど、実は彼方の方は新キャラじゃありません。みなさんは“謎の空間(壱の始)”という話を覚えているでしょうか?この作品で一番最初に投稿された話です。あの時にいた“男”と地の文で呼ばれていた人、あの人こそが彼方さんです。私が投稿している“亡霊のお話”の方にも出てきているのですが、そちらでは名前が出ていますし、そちらを読んでいる方は気がついたのではないでしょうか?彼方さんの役割は“世界の記憶・記録を管理し、閲覧申請者がいた場合は該当する記録へと導き、記録に名がない場合は名を授ける”こと。つまり彼女は様々な物語への案内人で、記録書庫とは様々な世界の歴史や記録、起こったことなどが保管されている大規模な記録保管庫……メモリーストレージなのです。まぁ、言ってしまえばそこに保管されているのは私の記憶……私が読んだことのある原作の内容や他の方の二次創作、そして私が考えた二次創作の情報なんですけどね…
それで、月の娘に関してはあれが本名ではありません。ちゃんとあの子にも本名はあります。“亡霊のお話”の方で出てくる予定ですけど、彼女はこの作品では完全にゲスト出演ということで。…あ、ちなみに“亡霊のお話”は彼女が少し関係して、そしてこの“鬼ヲ狩ル者達之交差”よりも前のお話なんですね。それから鬼ヲ狩ル者達之交差は今現在起こっていること、と考えましょう。
…はい、長く喋りすぎました。申し訳ありません……ちなみに星虚の歌達というのは誤字じゃないです。
それでは感想その他お待ちしております。

追記:知っている方も多いと思いますが裏話集として“鬼ヲ狩ル者達之交差之カクシ部屋”というのを作成しました。後書きで紹介したものへの参照URLはこの後置いておきます。


参照先URL

謎の空間(壱の始)↓
https://syosetu.org/novel/225682/2.html

“亡霊のお話”↓
https://syosetu.org/novel/229649/

“鬼ヲ狩ル者達之交差之カクシ部屋”↓
https://syosetu.org/novel/239827/

香の秘密を話す時期はいつがいいですか?

  • 無限列車直後
  • 遊郭前
  • 刀鍛冶の里前
  • 刀鍛冶の里直後
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