御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中) 作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!
因みに、今の御坂は原作に限りなく近いですが、原作とは違う御坂です。
何が違うかと言うと、オリ御坂の影響を受けて、頭がバグっています。……えっ、知ってる?
「そいや!」
御坂が地面に向かって火花を散らす。
すると、そこが凄まじい閃光を放ち、周囲を光と炎で埋め尽くした。
「な――ッ⁉これは、事前に油を!?」
只の火花にしては規格が違いすぎる。それで、サフリーはこの部屋に何があったのか気づいた。
「もう、美琴お姉ちゃんはずるいよね。何でも知ってるんだもん」
「生憎、それが私のアドバンテージなのよッ!」
御坂が円周に電撃を放ち、円周はそれを回避する。
ずずっ、と。何か重たいものが滑る音が聞こえた。
音の発信源に視線を向けると、野菜工場のコンテナが、上から圧力を受けているにも拘らず、滑るように落ちてきていた。
「あー、そんなのもあったわね」
「スキーやスケートで上手く滑るのって、雪や氷じゃなくて、摩擦で溶けた水の力を借りている。……そうなんだよね、数多おじさん」
「退避ぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい――ッッッ!!!」
思いっきり後ろに下がる御坂達。それに対し、円周は二歩後ろに下がるだけだった。
数百トンもあるコンテナが、一斉に降り注ぐ。だが、判断が早かったためか、特に危なげなく回避できた。
「そんなわけでーえ!大興奮の視聴者参加型のアトラクションショーが始まりましたあ!果たして今回は優勝賞金を手に入れられる人は本当に出てくるんでしょーかあ!」
凄まじい音量の円周の声が、辺りに響き渡る。
「……まっ、このままグダグダしてたら、直ぐに第二波、第三波が来るけど?」
「なら、その前にあの『木原』を倒せばいい」
すると、走りだした雲川が、コンテナの上を軽やかに飛び越え、円周のもとへと走っていく。
「……どんな精神構造してるんだか。普通、コンテナが降り注ぐ激戦地に走りこむとかありえないんですけど」
「まっ、面白いじゃない。さて、私も行きますか」
雲川の行動に呆れるサフリー。
そして、御坂は雲川の後を追い、コンテナを駆け上る。
「数多おじさんを押し返したぐらいで、『木原』を圧倒できたとでも? 乱数おじさん、幻生おじいさん、病理おばさん、那由他ちゃん、唯一お姉ちゃん、蒸留お兄ちゃん、混晶お姉ちゃん、直流クン、導体おじさん、加群おじさん、分離お兄ちゃん、相殺ちゃん、顕微おばさん、分子お兄ちゃん、テレスティーナおばさん、公転お姉ちゃん」
両手を緩く広げ、宣言する木原円周。
「私は確かに『木原』が足りないかもしれないけど、そんな私は五〇〇〇人の『木原』の戦闘パターンによって支えられている!たかだか学園都市製の、『闇』にも踏み込めない程度の下草ごときに折られる巨木じゃない!」
「さて、それはどうかしらね」
御坂がそんなことを呟くのと、円周の顔に雲川の靴底がめり込むのは、ほぼ同時だった。
「ば……?……ばごヴぇるごぶちゃえ!?」
言語として成立していない奇声を上げ、鼻血や口から血を吐き、地面を転がっていく円周。
「あー、かわいい顔が台無しじゃん」
「この状況で敵にそんな配慮をするつもりはない」
残念そうにする御坂と、彼女の言葉をばっさり切り捨てる雲川。
「さて。君の敗因は二つ。五千人の『木原』だか何だか知らないが、君はどうやってその戦闘パターンを分析した? 心理テストでもしたのか、
「……っ!?」
「気に入らないって顔だな。だったら試しにやってみろ。私としても気になるんだ。君の口から、木原加群の名前が出てきた事がね。まあそれが本当なら、私は君の手で再現された木原加群に為す術もなくやられるしかない訳だが……。まぁ」
雲川は、円周にどこか、同情するような視線を向けた。
その視線を感じ、逆に困惑する円周。
「試すことも出来ず、君は敗北するんだがな」
「は……?」
ビリッ!、という音が聞こえた。
何が、という前に、円周の意識は暗転した。
「……全く、こいつの木原加群を、少し見てみたかったんだがね?」
「やめときなさい。どうせ見るに堪えない贋作が出てくるだけよ」
「それもそうか」
雲川の挑発で、円周の意識は完全に彼女に向いていた。
よって、簡単に円周の背後に回ることのできた御坂は、首筋に電撃を流し、彼女を気絶させたのだ。
「あら?もう終わってたの?残念」
コンテナをよじ登ってきたサフリーが、残念そうに呟いた。
「あっ、それじゃあ、私行くとこあるんで。この娘殺したら駄目よ?」
「え⁉おい、ちょっと!?」
すると、突然御坂は、二人の前から去っていった。
「……結局、あの子は何者だったの?」
「さぁ……?」
そんな疑問だけが、二人に残ったのだった。
「さて、あの『木原』どもは一体どこにいるのか……」
御坂は、まだ積み重なっている状態のコンテナをよじ登り、とある人物たちを探していた。
木原加群と木原病理。
熾烈な戦いの末に、共倒れとなる二人だ。
これを止める……というより、この戦いで、自分が知る限りの悲劇を食い止める。
それが、彼女が今ここで戦う理由だ。
「ぶっちゃけ、只の傲慢、我が儘だって分かってるけど……、単純な話、良心が痛むのよね。まっ、人間だし?これくらいの好き勝手は別にいいでしょ」
そして、周囲をくまなく探していると
「あっ、見つけた……ってあの様子、もうすぐ戦闘終わりかけじゃない。どうしよ……」
このままでは間に合わない。なにか、間に合わせる方法は……
「……
発動の感覚は分かる。その知識は、
雷神モードは飛行をも可能にしている。ぶっちゃけ、どういう原理で、どんな法則が働いているかも分からないが、使えるなら使うべきだ。
そう思い、彼女は雷神モードを発動し
「えっ……?」
直後に、その意識は暗転した。
ドカァァァァァァァアアアアアアアン!!!と、凄まじい衝撃とともに、何かが飛来した。
「何……?」
思わず、戦闘を行っていた木原加群と木原病理が、その場所に視線を向ける。
そこには、全身真っ白で、青い瞳の、天使のような姿をした人型がいた。
「……まさか、御坂美琴?全く、いい加減そう言う邪魔は諦めてもらいた――」
ガッッッ!!!と、白い翼のようなもので、木原病理が吹き飛ばされる。
突然の事態に、木原加群の思考がフリーズ仕掛けるが、なんとか理性を押しとどめ、状況を把握した。
「あれは……御坂美琴の切り札?だが……」
「――」
御坂が加群に右腕を向け、凄まじいを通り越す、ビルを覆いかねないほどの落雷を落とした。
まともな存在なら、これで灰も残らないだろう。
「生憎だったな。私には効かない」
木原加群は魔術師である。彼は科学サイドの人間でありながら、『グレムリン』のメンバーとして活動し、自分がかつて殺めた少年の為の、復讐のための機会をうかがっていた。
そして、機は訪れた。そう思い、木原病理を襲撃した彼だが、どうやら失敗らしい。
「にしても、彼女が私まで攻撃する意味は何だ?」
そこだけが、木原加群の腑に落ちない点だった。彼女の目的が木原の殲滅だというなら、自分を殺そうというのも納得できる。
だが、彼女にはそこまでする理由がない。ましてや、彼女は木原とそこまで深いかかわりではない。
あるとすれば、木原幻生に実験に使われたくらいで、それ以外は特に恨むことなどないはず。
「ふふふ、これは、面白いですねぇ」
いつの間にか復活していた木原病理が、そんなことを呟く。
「……何がだ?」
「彼女、
「……なんだと?」
それはおかしい。何故なら、彼女は幾度となくあの力を使っていた。だが、一度も暴走するなどということはなかったはずだ。
今更暴走するというのは、些か不自然だ。
「……円周ちゃんの言ってた『あれ』が関わっているのでしょうか?」
「……何か知ってるのか?」
「いいえ?ただ、今分かっているのは……このままでは、お互いが望まない結末になる。……それだけですね」
「違いない」
木原加群には、救いたいものがある。復讐したい女がいる。
木原病理には、諦めさせたいものがある。諦めさせたい男がいる。
どちらも、お互いにとって譲れない思いだ。
だから、その思いの為
「諦めて、協力します?」
「不本意だが、このままでは何も為せないままあれに潰される」
目の前の災害に対処すべく、絶対に相容れないもの同士が、手を組んだ瞬間だった。
そして、二人の『木原』と、一人の怪物が、衝突する。
四巻って難しい。変なところあったら指摘してください。
御坂が暴走したのにはちゃんと理由が……まぁ、ちゃんとじゃないけどあります。
それはまた次回。