全裸ハンター、靴を履く。

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全裸ハンター、靴を履く。

 OP『情熱新大陸♪』

 

 

「全裸ハンターの生態解明」

 

 

『月刊 狩りに生きる』の編集部記者の我々は現在巷で有名な『全裸ハンター』の称号を持つアベガーチ=モホ氏の独占取材に成功した。

 

 

 集会場から出てきたモホ氏に我ら取材陣は早速質疑応答を試みた。

 

 

 

 今日はよろしくお願いします。

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

 今日はこれからどちらに?

 

 

「今日は天気がいいので釣りのクエストを受注してきました。これから渓流へ向かうところです」

 

 

 全裸で?

 

 

「まあ、そうですね」

 

 

 お一人でですか?

 

 

「友人を誘ったのですが断られました。『常識と服を身に着けて来い』とただ一言で」

 

 

 やはり服を着る気は?

 

 

「よく質問の意味が分からないです」

 

 

 

 すみません。

 ありがとうございます。

 

 

 

 そう数回の応答を繰り返した我らは、モホ氏のクエストに特別な許可をいただき同行させてもらった。

 竜車内にてモホ氏にその特殊なハンターとしての姿勢について我々取材陣は早速投げかけることにした。

 

 

「『なぜ全裸で狩りをするのか?』ですか。きっと皆さんが期待するような答えは僕は持ち合わせてはいないと思います。言ってしまえば『なんとなく』です。本当にそれだけです」

 

 竜車から景色を眺め嘆息交じりに我らの質問にそう返すモホ氏。

 

 

 同業者のハンター達、民間人の方々から数々の苦情がギルドに寄せられているそうですがそれに関して何か言いたいことなどは?

 

 

「まあ、ハンターは基本自己責任な職業ですのでそのもろもろの苦情に関しても真摯に受け入れるつもりではあります。理解してもらおうなんてもあまり思ってないですね」

 

 

 全裸で狩りを行うことは単純に危険だと思うのですがなぜ理由もなくそんな危険な真似を?

 

 

「なんとなくです。本当にそれだけです」

 

 

 性癖だという噂がありますが?

 

 

「ノーコメントで」

 

 

 

***

 

我々「狩りに生きる」取材陣はモホ氏と親交深い人物たちにコンタクトを取ることに成功した。

 

 

モホ氏と親交のあるハンター「M氏(仮名)」はモホ氏のことをこう語る。

 

『あいつのことを知ったのは私がまだルーキーだった時です。噂くらいしか聞いたことは無かったですね。正直眉唾物の法螺話だとしか思ってなかったです。全裸で狩りをするとかどう考えても意味わからなかったですから』

 

『出会ったのはランポス狩猟の時です。普通のランポス狩猟依頼だったんですがまあよくあることではあるんですが運悪くドスランポスが率いるグループに手を出しちゃいまして。しかも2グループにです。当時、そんな統率されたランポスと小隊のランポスの違いなんて分かってなくて、本当に運がなかったんですよ私』

 

 

『あ、死んだ。って思う暇もなかったですね。本当に逃げるのに必死だった記憶しかなかったです。そんな時にあいつが現れました』

 

 

『はい、当然全裸です』

 

 

『そうです、全裸フル装備でした』

 

 

『あー。あいつの登場のインパクトが強すぎてそのあとのことは正直あんまり覚えていないんですよ。すみません。安堵するよりもちょっと現実味がなさ過ぎてわけわかんなくなってたんだと思います。だっていきなり現れた全裸が目の前で双剣を振り回している絵なんて下手するとそれはそれでトラウマ物でしたから』

 

『でもまあ、あの当時のことをこうして話せるのは間違いなくあいつのせいですね。あいつのせいで私の人生初のトラウマがこんな笑い話になっちゃったんですから』

 

『あいつがいたから私はあの日のことを気負うことなく話せるようになりました。でも、あいつと同族と思われたくないので防具には拘るようになりました。感謝は一応してますがあんな裸族と同類と思われたら末代までの恥なので。今も狩りに出る時はガチガチに着こんでいきますね』

 

『あいつに服を着せるのは諦めてます。装備贈って上げてもあいつ絶対に着ませんから。贈った装備全部あいつの部屋にインテリアとして飾られてるの見た時にもういろいろと諦めましたよ、ははは……』

 

 

 

 

 モホ氏行きつけの酒場のウエイター「H氏(仮名)」は彼の人柄に関してこう語る。

 

『モホがいると酒場は盛り上がりますよ。なんだかんだ彼は人気者ですから。酒場経営者としては大事なご常連様です。最近ですと一番盛り上がったのは彼主催で開かれた『全裸腕相撲大会』でしょうか。あれは盛り上がりました』

 

 

『名前の通りです。全裸で腕相撲するだけです。力自慢な男が集まりそこに酒とつまみと賭け事、そして埒外な馬鹿が混ざれば概ねそんな頓智機騒ぎが起きるものです。皆、彼に前に習いして全裸、全裸、全裸。大ダルを囲んで大の大人が一糸まとわぬ姿で一歩間違えば酷い営業妨害ですがね』

 

『ハンターなんて生き物は良くも悪くも今を生きていますから。そんなバカ騒ぎも時には大事なんですよ。女性ハンターからの苦情がひどいですが。それだけが悩みの種です。売り上げは本当にいいのでこちらとしても痛しかゆしではあるのですが』

 

 

『彼がいなくなると多分少し寂しくなるかもしれません。私としても全裸で狩りなんてせずもっと安全に狩りをしてほしいと思ってますよ。モホは大事なご常連様ですので』

 

 

 

 モホ氏を良く知るアイルー「XX氏(仮名)」はモホ氏の日常についてこう語る。

 

『オフの日は大体、うちにいるブーギーを撫でてるにゃ。何かにとりつかれたように、よっぽどブーギーが好きにゃんだと思うにゃ。趣味もブーギーの服集めらしいにゃ』

 

『にゃ、ブーギーには服を着せてるにゃ。一応あれの中に服は着るものと言う概念があったみたいで驚かされたにゃ。本人に聞いても「服と言う物を考えた先人は偉大だ」と光悦な表情でブーギーの服を集めてたにゃ。最近は自分でブーギー服を作り始めたにゃ』

 

 

『当然、本人は服を一向に着ようとはしないけどにゃ。一体彼の何がそこまで全裸を拘らせるのか全くの謎にゃ』

 

 

『服に限らず装備はマイハウスに大量にあるにゃよ。いろんにゃ人からお礼に贈られてくるからにゃ。どこで知り合ったのかとかどうやって知り合ったとかは全然教えてくれにゃいけど、全部嬉しそうに大事に飾っているにゃ』

 

 

『まあ、そりゃ服を着て欲しいとは思うにゃよ。普通に考えて狩りに全裸で行くのは自殺行為みたいなものだしにゃ。モホが帰ってこなければ悲しむ人が多いのはあれだけの贈り物を見ればわかるにゃ。ブーギーも悲しむと思うしにゃ。当然オイラもきっと悲しいにゃ』

 

 

『全裸で鏖魔を狩りに行くのももうあれ一度きりにして欲しいにゃ』

 

 

 

***

 

 我ら取材陣は釣り糸を垂らすモホ氏に再び質疑応答を続けた。

 

 釣りの依頼はよく頻繁に受けるのですか?

 

 

「時々です。今日は魚を食べたいと思ったのでついでに釣って帰ろうかと。基本的には納品依頼しか受けませんので。薬草採取の時もあります」

 

 

 

 狩猟依頼はしないという事ですか?

 

 

「そうですね。ほぼ受注することは無いです」

 

 

 全裸だからですか?

 

 

「いやー、あまり関係ないですかね」 

 

 

 今日の武器は?

 

 

「これですか? この間、偶然太古の塊を掘り当てまして。素材はあったので適当に造ってもらった大剣です。ついでだったので今日持ってきました。なんか爆発するらしいです」

 

 

 

 今までの狩猟経験は?

 

 

 

「特に大きい功績は残してないです」

 

 

 鏖魔を狩猟したという噂がありますが。

 

 

「その時は流石に全裸じゃないです」

 

 

 全裸じゃなかったんですか?

 

「パンツは履きました」

 

 

 何故そこまで裸に拘るのですか?

 

 

「なんとなくです。それ以外理由はないです」

 

 

 装備を何故家に飾っているのですか?

 

 

「大事なものですから」

 

 

 新大陸へ行かれるそうですが。

 

 

「はい、近々。僕で第五期になるそうです」

 

 

 やはり全裸で?

 

 

 そう記者が質問するとモホ氏は恥ずかしそうにはにかんだ。

 

 

 いなくなると寂しいと言う声もありますが。

 

 

「有難いことです」

 

 

 ありがとうございます。

 最後になりますが読者に何か一言ありますか?

 

 

 ……――!!

 

 

 この質問のあと取材陣は渓流に響く悲鳴を耳にした。

 この悲鳴を聞いたモホ氏は大剣を背負いなおしゆっくりと立ち上がった。

 

 

 記者が「行くのですか?」と質問するとモホ氏は「はい」と短く返した。

 

「全裸で?」と問えば「全裸で」と返すモホ氏。

 

 

 そして我々取材陣に一言「記事には『靴が欲しい』と書いてください」と答えた。

 

 

「何故ですか?」と取材陣の中の一人がモホ氏に質問した。

 

 

 

 

 全裸ハンター『アベガーチ=モホ』は答える。

 

 

 

 ――素足は痛いので。

 

 

 

 そう言い残し、履き古した靴で駆ける全裸のハンターの後姿はどこからどう見ても只の……。

 

 

 

――変態だった。

 

 


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