IS・LoB-Da:Re~パイロットの兄、メカニックの弟~ 作:仮面肆
「ねぇ、アレって……」
「え!?始業式に見ないと思ったら……」
「織斑先生についてってる二人って、例の……!」
「どうしてこの神聖な学園に男なんて……!」
困惑、驚愕、好奇に侮辱、そして敵意。様々な感情が籠った視線が、廊下を歩く俺たちに向けられる。
「に、兄さん。ちょっと注目されすぎ……だよね?」
「気にするなジャック。今朝の騒動と、あの時の
「それを言えるのは兄さんくらいだよ……」
苦笑するジャックをよそに、俺は視線に気にせず、前方へ歩く担任の後をついて行く。まぁ──
ギロリ
「ヒェッ」
「ピッ」
ちょいと
(けど、前世の戦場に比べれば、生ぬるい視線だな……)
そう内心で思い、俺とジャックは担任の後を追った。
突然だが、俺……クロム・ボルンには前世の記憶と言うものがある。
ギリシャ出身の俺はそこに住み、両親と弟の四人家族で暮らしていた。二卵性双生児の最初に産まれた俺が長男となり、次に産まれたのがジャックと、俺の両親から聞いた。だけどそれだけでは俺が前世を思い出す切っ掛けにはならなかった。
切っ掛けとなったのは、祖父の研究所。実父である祖父の影響で育った親父は生粋の開発者となり、祖父の助手の一人として今でも働いている。そんな若い頃、当時軍の開発課で働いている時に軍人のお袋と出会い交際。結婚しては俺たち兄弟が産まれたんだ。
……話が逸れたな。前世の記憶が戻った切っ掛けなんだが、当時の祖父が研究・開発していた物が、回路の不具合が生じて爆発したんだ。その際、俺とジャックも祖父の研究物に興味があって、時々親父に連れてってもらったんだが、俺はその爆発事故に巻き込まれた。
幸い爆発も大規模なものじゃなかったが、その衝撃で飛んで来た工具が俺に直撃。意識不明となったんだが……それが切っ掛けとなった。
(思い……出した!俺の前世の名は、くろボン。ブルーソアラー太陽系、地球で生きていた……
当時五歳の俺、意識から目覚めては前世を思い出したが、無論多大な記憶情報により頭がキャパオーバーでごちゃごちゃしていた。前世と違う肉体の影響もあったが、その辺りの価値観は追々慣れさせるしかないだろう。
「……どうして俺が、別世界の地球で生きてるんだ?」
夜、個室の病室で私物のパソコンを動かしながら呟く。怪我はたいしたこと無いが、前世を思い出しては頭がキャパオーバーで意識を失い、心配した家族が検査入院も兼ねて数日の入院となった。その分、入院期間中お袋が有休を使って毎日会いに来てくれるから寂しくはなかった。尚その間、親父は祖父の研究仕事で稼ぎ、弟は幼稚園に通っているが、夕方頃は家族全員で面会してくれる。
「人目を気にしないで調べれるから親に感謝だな。軍人と技術者だからなのか、収入がスゴい桁だ」
そんな家庭の収入事情を呟き、調査を再開する。午前中だとお袋がいるから迂闊に調べられないし、夕方には親父とジャックがやって来る。消灯時間から調べるにも、肉体と精神年齢の大きな差のせいか、子供の体ではすぐに疲れてしまい、眠るのも早くなる。
つまり、調査時間が少ないから一気に調べることが出来ん。入院期間ももうすぐ終わるし、残りは自宅で調べないと……。
(だが、ほとんどの調査は終わるか)
まずは歴史や文明を学んだ。それらは前世と全く違うのは当たり前で仕方なく、調べるのもすぐに終わった。
だが宇宙関係の資料では、地球や火星といった前世にも同じ名称の惑星があったんだが、ほとんどの惑星が生物の住める星ではない所ばかりだ。挙げ句にブルーソアラー太陽系といった名称も無い。
次は生態系。分かっていたが、ビーダロンが存在しなかった。
この辺りは俺の前世であるビーダマンの存在すらなく、恐らくビーダマンと人間ではビーダマがあるか無いかだけで、生態系としては全く同じなんだろう。そうなると、ビーダロンもビーダマが無いだけの生物だから、特に違いが──
(……全然違うよな)
──天地の差で違っていた。
一部のビーダロンはビーダマンと意志疎通できたりして、良きパートナーとして共に生きている。そして今の生き物と意志疎通はほとんど不可能だ。余程、学習能力が高くなければ難しいだろう。
そして最後に調べた科学技術。車や飛行機といった大まかな乗り物は前世にも似た物があった。だが、決定的に違っていた技術があった。
それは兵器などの軍事技術。この技術力だけが、前世と今の差で大きく離れていた。
当時の軍事兵器の戦車や戦闘機は前世と変わらない。だが、前世でのそれら兵器は主力ではなく、ビーダマンが乗り込んで操縦する『ビーダアーマー』が主力だった。
無論ビーダアーマーが初めから主力になった訳ではない。ダークビーダ一族との戦いが終わるも、新たな敵勢力が地球を侵略・破壊などの理由で、地球やビーダシティを何度も脅かしてきた。その結果、ビーダシティ以外の首都や国家が手を繋ぎ、軍事機関を通してビーダアーマーを配備した。それは『
「……ふぅ。今日はこれくらいでいいか」
前世を懐かしみながら調べたが、そろそろ眠気で意識が朦朧としてきた。精神が前世の知識を身に付けた結果、頭の知識に肉体が追いつけない。入院が終えたら、お袋に遊びと称した訓練をたまにしてもらおう。
そう考えながら、俺は眠りに入った。
(あれからの
それから入院生活が終わり、多くの知識を身に付けた俺は鍛えた。ジャックとキャッチボールをしたり、お袋の職場に連れられては訓練を観察したり、とにかく小さいながらも遊びを通して体を鍛えた。
そんな充実した生活。生前叶うことの無かった家族団欒な中、全世界で信じられない事件が起こった──
「お前たち、着いたぞ」
──っと、どうやら教室に到着したようだ。授業開始のチャイムと同時に多くの女子生徒が自分の教室に戻る中、担任である
「今から2時限目になる。最初にお前たちの自己紹介から始めるから、私が呼ぶまでお前たちは廊下で待ってもらう」
「「分かりました、織斑先生」」
「……」
ジャックと言葉が重なり、一瞬だが織斑先生はきょとんとしたが、すぐに表情を戻して教室に入っていった。
「そ、それじゃあボルンくんたち、待っててくださいね」
山田先生も織斑先生の後を追いかけ、廊下には俺とジャックだけになった。
「どんな人たちがいるんだろね、兄さん」
「有力な新入生のリストは知っているが、どのクラスなのかは分からん。だが、確実に第一の男子
「へぇ。兄さんが言うならそうだろうけど、その理由は織斑先生?」
「血縁者だからだろうが、それは些事なことだ。一つのクラスに保護観察対象を押し込めて、監視の人手を少なくしてる。何かしら起こっても対象出来るように、学園でも最強の人物を使って、な……」
「あー、ブリュンヒルデだもんね。先生って母さんと面識あるんだっけ?」
「さあな」
『お前たち、入ってこい』
どうやら呼ばれたようだ。それじゃあ、挨拶を始めようとしよう。
◆
(あー、2時間目始まったよ……)
俺……
本来なら俺は私立
何故かIS学園と同じ試験会場。その試験会場にあったIS……正式名称『インフィニット・ストラトス』を、本来女性にしか動かせなかったソレを起動してしまった。男の俺が、だ。
その結果、試験会場に居合わせたIS学園の教師や政府の役員に発覚。当時、世界中に俺の存在が知られては自宅にマスコミだの各国大使だの怪しい研究員までやって来た。あー、おかげで俺の生活滅茶苦茶だよ。
そして現在、俺はIS学園に入学させられている。
入学式が終わって即授業。担任が千冬姉で驚いては
まあ、同じクラスにいた幼馴染の
「お前たち、すでに授業は始まった。さっさと自分の席に着け」
そんな言葉と共に千冬姉がやって来て、続いて副担任の山田先生も教室に入ってきた。どうやら廊下の女子は、千冬姉に反応したんだろう。
そんな中、千冬姉が教壇前に立って発言した。
「授業を始める前に連絡がある。先程、このクラスに所属する生徒が到着した」
ざわ……
ざわ……
千冬姉の一言はクラスをざわつかせた。確かに教室の後ろの席が何席か空いてたけど、まさかこのクラスにまだ生徒が入るなんて思わなかった。
「諸事情で入学式には間に合わなかったようなので、先に彼らの自己紹介をさせる。お前たち、入ってこい」
(ん?彼ら?千冬姉、
それってつまり、女子ではない。
確かに入学式には見かけなかった。俺がISを動かしたことで全世界政府が行った、男性IS適合者一斉調査で見つかった、一人の男子が……。
「失礼します」
「失礼しまーす」
千冬姉に呼ばれて教室に現れた瞬間、教室のざわめきが消えたのも納得した。俺も含めて驚いてる。
だってそうだろ。まさか二人も男子が現れるなんて思いもよらないさ。
その中の一人は、恐らく教室にいる全員は知ってるだろう。調査で見つかった俺以外の男性適合者。ニュースの生放送で記者会見が行われて、俺以上に見事な対応をしていたのが今でも忘れられない。
そして雰囲気が、凛として刀のような鋭い雰囲気が、どことなく千冬姉に似ているから印象に残っていた。
「初めまして。今日から皆と勉学を共にするクロム・ボルンだ。ジャック共々、よろしく頼む」
必要なだけの挨拶だった。だがその佇まいと合わさって似合っていた。俺の時は挨拶も満足にできないのかって千冬姉に辛辣な扱いだったが、雰囲気だけでこうも違うなんて……。
(それじゃあ、もう一人は誰だ?)
そう考えては初めて見かける男子を見ると、容姿はクロムとほとんど同じだった。唯一違っているのは、クロムの目が鋭く凛とした佇まいに対して、優しい目でほわほわした雰囲気が特徴的だった。
「えーっと、皆さん初めまして。クロム兄さんの双子の弟、ジャック・ボルンです。IS適合は無いんだけど、家族の心遣いと政府の計らいで、この学園にやって来ることが出来ました。将来は技術課志望。好きなものは甘いモノ。みんなよろしくね♪」
そして挨拶もクロムと正反対だ。愛嬌と言うか、とても親しみやすい挨拶で、自分のことを知ってほしいとアピールしていた。
「お、男……?」
誰かが呟いた。
「きゃ……」
「「?」」
『きゃあああああーー!!』
ソニックウェーブと言うやつか。クラスの中心を起点に歓喜の叫びが伝播する……って、ホントにうるせぇ!?
「男子!しかも二人で双子!」
「カッコいいとかわいい!同じ顔だけど、凛々しさと癒し系の別ジャンル!嫌いじゃないわ!」
「それがうちのクラスになんて!もしかして、今年の運使い切っちゃった!?でも構わない!」
「この学園に入学できたのもお母さんのおかげ!ありがと~~!!」
初日なのに元気だな、うちのクラスの女子一同。千冬姉が担任と知った時と同じような興奮だぞこれ。
パンッ!!
だけど、その騒動は直ぐに静まりかえった。歓喜の叫びをも凌ぐ打撃音に、俺も含むクラス一同の視線が探し当てた。
「……盛大な声援は感謝するが、今は授業中だ。静かに、な」
その正体はクロムだった。両手を合わせていたクロムは周りを見てから感謝と注意を促すと、何人か女子が顔を赤くしていた。
それにしても、たった一回の拍手で全員の意識を向けさせるなんて凄いな。もしかして、これがカリスマってものか?
「やっと静かになったか……。ではボルンたちの席は一番後ろだ。席に着いたら授業を開始する」
「……」
そして千冬姉に言われたクロムたちが移動を始めた一瞬だけ、クロムの視線が俺に向いてはすぐに視線を外した。
(何だったんだ、今の……?)
そう思いながら、授業が始まるのだった。
・『
ダークビーダ一族襲来以降、数ヶ月の平和期間と言う名の小休止を挟んでは立て続けに起きた、宇宙~時空規模に及ぶ事件の総称。終息するのに約6年4ヶ月は経過した。
以下、大まかな事件の名称と内容である。
巨大な宇宙船とその下に侵略した星々の欠片を繋げた要塞基地をも支配する、虹の宮殿の支配者との壮絶な戦い『レインボーウォーズ』。
伝説の時空の騎士たちを洗脳した、全宇宙征服を企む秘密結社との宇宙を守るための戦い『宇宙創世戦記』。
別宇宙から現れた執事と共に、惑星侵略を開始する帝国から逃れた王女を救うため時空を股にかけた冒険『王女救出冒険譚』。
尚、レインボーウォーズが特に期間が長かったとか。
※元ネタはニンテンドー64ソフトです。今でも初代爆ボンの難易度はヤヴァイ。