IS・LoB-Da:Re~パイロットの兄、メカニックの弟~ 作:仮面肆
2時間目の授業が終わり、俺……クロムとジャックの周りと言うか、クラスが騒がしかった。
「アタシ、
「
「あたしは
とにかくクラスの女子たちが男子三人に積極的に話しかけてくる。
廊下にいる他のクラスや上級生は羨ましそうに見ているが、どこか悔しさも見てとれる。恐らく最初の休み時間、織斑一夏と話せなかった事に何か切っ掛けがあったから、次から話しかけていこうと思ったんだろう。
しかし、俺とジャックの登場でクラスの密度が上がった。その結果、タイミングを逃してしまったと……。
(やれやれ。会話が切っ掛けで多くのコンタクトが取れるのが良いが、多過ぎだろ……)
内心呆れるが、ソレを表情に出さない。前世でも何かとインタビューや会見も経験したから、多くの質問を返していく。
「ボルンくんの誕生日と星座は?」
「3月7日の魚座。ジャックも同じだ」
「ご趣味はありますか?」
「スポーツを一通り」
「スリーサイズ教えて!」
「言ってどうする?」
「クロムくん。クロぽんってよんでいい~?」
「不快でないから別に良い」
「二人の制服のデザイン、織斑くんのと少し違うね。どうして?」
「俺は動きやすさ。ジャックは整備のしやすさで決めている」
「好きなタイプはありますか!」
「黙秘権を行使する」
「「「の、罵ってください」」」
「……………(冷たく蔑んだ視線)」
「「「あぁ^~!!」」」
……しかしなんだ。俺に話しかける女子が意外と癖があるな。特に最後、今何て言った?罵れって、
「に、睨みつけだけで、この威力……」
「千冬お姉さまと雰囲気が似てたからふざけて頼んでみたのに……」
「良いですわぁ~!」
「あー、ちょっとごめん。少し退いてくれるか?」
ん?女子が引いていくと、その間を通っては現れた。
『
「よっ、俺は織斑一夏。よろしくな」
礼儀正しく手を出してきた。なら礼には礼を、俺は席を立っては織斑の手を握った。
「あぁ。改めて、クロム・ボルンだ。よろしく、織斑一夏。……おーい、ジャック!お前も挨拶しな」
俺はジャックの方へと振り向くが、どうやら女子と話していた途中のようだ。しかし「ごめんね」と一言謝罪して、ジャックはやって来た。
「ごめん兄さん、話が弾んじゃってね」
「親交を築くのは良いことだ。ほら、こっちにも築いときな」
「わかってるよ。ニュースで知ったよ、織斑一夏くん。初めまして、クロム兄さんの双子の弟、ジャック・ボルンです。ジャックって呼んでいいよ」
「俺もクロムで良い」
「ありがとな二人とも。俺も一夏でいいぜ」
ジャックも織斑……いや、一夏と挨拶しては握手を交わすと、男子三人で会話を始めた。
「いやー助かった。クラスに男って俺だけだと思ったから、同じクラスに男が来て良かったぜ」
「そうだな。学園の配慮が行き届いてるのは、ありがたい」
「だねー。もしも兄さんと別クラスだったら、休み時間毎に足を運ばないといけないし。そこは楽だね」
「……それにしても、クロムとジャックは雰囲気が違うな。双子って言ったから同じだと思ったけど」
「「それは偏見じゃない?」」
「おぉ、息ぴったし」
「俺はお袋似。ジャックは親父似。表面は確かに似てるとよく言われたが、内面は違う」
「そうだね。兄さんは母さんの血が濃いのか、運動神経抜群だよ。運動会でも好成績だったし、羨ましい」
「お前は親父や爺さんの血が濃いだろ。それにテストの成績は俺より上だ。そこは俺が羨ましいさ」
「……んー、やっぱり似てるな。さすが双子」
「「ありがとう」」
「一夏も織斑先生に似てるね」
「お、俺が千冬姉に?いや全然似てないって」
「似てたぞ。特に俺とジャックがハモった時にキョトンとした顔がな」
話しながらで分かったが、やはり一夏は同年代の同性と話すと雰囲気が軽くなるのを感じた。まあ、初日から女子の中に男子が一人の状況だったから無理ないか。
「先程の授業で指摘されてたが、あの参考書を捨てたのか?」
「うぐっ」
「さすがに捨てるのはねぇ……。よかったら僕が教えようか?」
「俺も手元に参考書はある。今日だけ貸すから授業中でも読んどけ」
「まじか!それは助かる。ありがとうな、クロム、ジャック。あ、でもクロムは大丈夫なのか?」
「覚えてるから気にするな。まずは自分が叩かれないように頑張りな」
「あ、アザーっす、クロムさん!」
「ちょっと、よろしくて?」
そんな話が弾んでいく中、一人の女子が俺たちに近づいていた。
「へ?」
「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」
一夏はすっとんきょうな声を出したが、女子は気に入らないようでわざとらしく声をあげていた。
「……悪いな。俺、君が誰か知らないし」
そんな態度で接してるからか、一夏は表情になるべく出さないようだが声色に若干不機嫌が混ざっているな。
まあ、ISが出てから
「兄さん、彼女ってもしかしてイギリスの……」
話を戻すが、俺とジャックはその女子を知っていた。無論、自己紹介時にクラスには俺たちはいないから、政府が送った有望株な生徒のリストで知っていた。
「あぁ……その
「……最後のは何か引っ掛かりますが、そちらの方たちは優秀ですわね。さすが『
若干引きつるも、俺たちに微笑むオルコット。まぁ、それはおいといて。
「ほぉ。爺さんのことを知っているのは嬉しいな」
「もちろんです。ギリシャ出身且つボルンと名乗られる方だと、欧州が誇るジーニアン・ボルン氏と関係が無いなどあり得ませんわ」
ジーニアン・ボルン。
ギリシャが誇る世界的に有名な科学者であり、軍事・医療・生活等々……多くの人々の手助けとなる発明を行い多大な特許権を所持している、俺の父方の爺さんだ。
「ジーニアン・ボルン!?それって、第一世代ISで初めて量産型を開発したギリシャの科学者だよね!」
「学園のパンフレットにも名前が掲載してたわ。多額の設立費用を出してるスポンサーの一人だとか……」
「ほぇ~。クロぽんとジャッくんのおじいさん、凄いな~」
相川、谷本、布仏を皮切りに教室が騒ぎ始めたが……それにしても布仏、『ジャッくん』ってジャックのことか?言い方は特に変ではないから俺は別に構わんが、肝心のジャック自身はどうなんだ?
「兄さんと同じ、のほほんさんにつけて貰ったんだ」
許可済みだった。
「それにしても凄すぎよね。このクラス有名になっちゃってるんじゃないの?」
「千冬お姉さまの
「このクラスに入れたことに、圧倒的感謝ッッッ!!」
(濃いなーこのクラス。個性的すぎて)
この休み時間だけでクラス女子が持つパワーを感じる俺だった。内心呆れるが表情に出さないようにしてると、オルコットが一夏を指差していた。
「ボルンさんたちはともかく、あなたISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。ニュースでも、男で初めてISを操縦できると聞いてましたのに、期待ハズレですわね」
「俺に何か期待されても困るんだが」
「まあでも?わたくしは優秀ですから、あなたのような人間でも優しくしてあげますわよ。何てったってエリート。ボルンさんも仰る通り、唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」
キーンコーンカーンコーン
オルコットが話し終えると、次の授業が始まるチャイムが鳴った。
「それでは、次の授業でも恥をかかないことですわね。では後程……」
そう言って、オルコットを皮切りに女子たちも自分の席に戻って行った。
「お疲れさま、一夏」
「授業が始まるから、戻っていた方が良いぞ」
「あぁ。ありがとな、参考書。今日だけしばらく借りるわ」
一夏も前にある席に戻ると、俺もジャックも自分の席に戻った。隣同士だからそこまで離れていないがな。
(『それにしても、一夏は災難だったね、兄さん』)
(『今時の女性の典型だしな。ジャックも気をつけろよ。このクラスはともかく、一部の女子はオルコットみたいなのがいるからな』)
俺たち兄弟の
(『でもリストによると、一夏も教官倒してるらしいよ。何で言わなかったんだろ?』)
(『言ったら言ったでオルコットがうるさくなるだろう。ちょうど授業だったから言う余裕もなかったかもしれないが、な。それに今回のような特殊ケースなら、入試の合否関係なく入学確定だろうしよ』)
(『なるほど。兄さんは入試しなかったしね』)
「では授業を始める」
それから織斑先生の声に反応した俺たちは会話を止め、授業を始めるのだった。
後のことだが、一夏は俺が貸した参考書を読みながらだが授業に難なくついていけたようで、織斑先生の出席簿も来なかった。
オルコットも授業が終わるたびに一夏や俺たちに近付こうとするも、今まで見ていただけの他のクラスの女子が周りを囲って話しかけてきたので、近付ける状況ではなかったようだ。
しかし、ホームルームが始まっては少しいざこざが発生するのを、今の俺は知らなかった。
「ではホームルームを始めますね。ですがその前に、織斑先生からお知らせがあります」
本日最後の授業が終わり、ホームルームが始まった。教壇に立っていた山田先生だったが、織斑先生が入れ替わり発言する。
「再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな。代表者をしたい者、自薦他薦は問わんぞ」
クラス代表者か。簡単に言えばクラス長。クラスの雑務やら出席やらしないといけないから面倒くさそうだが、対抗戦に出れるのは良い。戦闘データを取れる機会が多いしな。
「はい。織斑くんを推薦します!」
「私もそれが良いと思いますー」
「お、俺!?」
「席に着け、織斑」
立ち上がった一夏が驚いてる。まさか自分が推薦されるとは思ってなかったのか?
その考えは甘いな。俺とお前はIS適合者。云わば珍しい分類だ。奇異な意味でも、何とかしてくれると思われているしな。
でもまぁ、手助けはしてやるか。俺は手を上げた。
「どうした、ボルン兄」
「クロムで結構です。俺が立候補して良いですか、織斑先生」
「兄さんクラス代表になるの?なら僕も兄さんを推薦します!中学でも経験あったしね、クラス長」
「「「「「おぉー!」」」」」
「ねぇねぇ。ジャッくんはしないの~?」
「ただのクラス長なら出来そうだけど、ISに乗れないから無理だよ。対抗戦とかだとなおさら、ね」
ジャックの発言も効いたのか、一夏に向けられた視線が俺に変わった。先程の無責任且つ勝手な期待を込めた眼差しから、自信を確信した勇敢な者を期待する眼差しとなった。これで一夏が諦めれば、俺がクラス代表になれるだろう。
「では候補者は織斑一夏にクロム・ボルン。他には──」
バンッ!
「待ってください!納得がいきませんわ!」
しかし、机を叩いて立ち上がったオルコットが待ったをかけた。
「そのような選出は認められません!男がクラス代表だなんて、いい恥さらしですわ!わたくしに……このセシリア・オルコットにそのような屈辱を味わえと仰るのですか!?」
「先生が自薦他薦問わないて言ってたよ?」
「弟さんは黙ってください!」
「あっはい」
ジャックの呟きに過剰反応したオルコットは止まらない。
「実力から行けば、わたくしがクラス代表になるのは必然。それ物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
(さすがに言い過ぎだぞ、オルコット)
「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとって──」
ガタッ
「イギリスだって大してお国自慢無いだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」
「なっ……!?あ、あなたねぇ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「「あーあぁ……」」
「どうする兄さん?」
「……止めるしかないだろ」
とうとう一夏も頭にきたようだ。立ち上がってオルコットに文句と言うか何と言うか、余計なことを言ったようだ。その結果、オルコットの顔が真っ赤になって怒りを示している。
俺とジャックは諦めたように言うが、これ以上はいろいろとまずい。だから──
パンッパンッパンッ!!
全ての視線をこちらに向けるように、俺は大きめの拍手をした。
「喧嘩するなら廊下でやっとけ。ホームルームだからってまだ学業の時間だぞ」
「だけどクロム!」
「ですがボルンさん!」
ギロリ
「「っ!」」
横暴だが、今は反論は許さん。
「オルコット。同じ欧州出身だから言っておく。一夏の発言が侮辱だと言い張るのなら、オルコットのは侮辱に入らないのか?」
「う、それは……」
「それによ……日本人を極東の猿と表現したが、ISも元はその極東の猿が作ったものだ。それに──」
そう言って織斑先生に視線を向け、俺は続ける。
「そこに立つ
「そ、それとこれとは別ですわ!!」
「……ふぅ……」
(『兄さん怒ってる?』)
(『怒ってない。ただムカついてる』)
前世でも、国や各惑星の国家問題にも顔を出してきた。オルコットのような人種もいたが、これで国家代表として勤まるのかね?
「オルコット。お前はイギリスの代表候補生であり、イギリスの名を背負っているのだろう?だったら、その国の代表のお前が、日本を一方的に貶したと理解できてるのか?」
「っ!?」
「その発言は、イギリスが日本を貶めてるのとなんら変わりないんだぞ」
その事実に気付いたようで、オルコットは顔を青くする。俺としてはもう少し言ってやりたいが、ホームルームも限られてるから、オルコットにはこれで終わりにしよう。
「一夏、お前もだ。代表候補生でないにしろ、同じ欧州として侮辱は見過ごせないぞ」
「うっ……悪かった」
「俺に謝るな。オルコットに謝っとけ」
「……………」
苦虫を潰したような顔をする一夏。相当苦手意識を持ってしまったようだな。
「と、とりあえず、話を進めましょう。候補者は三人……それでいいですか?」
教室の重たい空気を打開しようとしたのか、山田先生が場を仕切り始めた。さて、どうやって決めようか……。
「手頃よく、ジャンケンかくじ引きで決めたらいいんじゃないの?」
ジャックは提案を出すが、織斑先生が発言した。楽しそうに笑顔で。
「実力が認められたらいいのだろう?戦ってみたらどうだ?」
「戦い……つまりISでの模擬戦ですか?」
ジャックの問いに無言で肯定する織斑先生。まぁ、あの表情をしたら断固として反対させられないだろう。
「……いいでしょう!言われっぱなしというのも癪です。決闘ですわ!」
「おう、いいぜ。四の五の言うより分かりやすい」
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い……いえ、奴隷にしますわよ」
「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
「そう?何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
先程までの重い空気はどこにやら。一夏とオルコットはにらみ合いながらも、模擬戦の提案を受け入れた。
「兄さん模擬戦だよ。データが取れるチャンスだね」
「一夏は分からんが、オルコットは確実に専用機だ。データと
「オッケー。それに今日の放課後から
なるべく目立たないように、俺とジャックは話していると、織斑先生が口を開く。
「それでは勝負は次の日曜。時間は午前中に行うので、織斑、オルコット、ボルンはそれぞれ用意をするように。以上、解散」
こうして、俺とジャックの一日目の授業が終わったのであった。