IS・LoB-Da:Re~パイロットの兄、メカニックの弟~   作:仮面肆

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学園での一部独自設定ありです。


3:会する代表候補生②

「それでは、資材はコチラで全てとなります」

 

「ありがとうございます」

 

……私は研究員の女性にお礼を言うが、女性は申し訳なさそうに訊いてきた。

 

「しかし、本当によろしいのですか?こう言っては何ですが、我が技研が責任を持って製作いたしますが……」

 

「結構です。そちらは政府の指示で男子専用ISを作らなければならないのでしょう?なら、私のより優先されるはずです」

 

……それに、これで姉さんに近付けるかもしれない。

 

「……分かりました。もしも不明な点があれば連絡をください。それでは……」

 

……そんな私の思いに気づいてない女性は頭を下げて、開発室から出ていった。

 

「……ふぅ」

 

IS学園が誇る開発棟。普段は整備科の生徒しか自由に入れないけど、専用機持ちなら自由に、他の人なら申請して許可を貰えば入れる学園でも重要度の高い施設。

 

そこの整備室の一室で私……更識簪(さらしき かんざし)は、フレームの所々しか装甲が付いていない未完成のIS……『打鉄弐式(うちがねにしき)』を見つめる。

 

日本の代表候補生となった私が操縦するISだったが、男性適合者が発覚したせいで人員が回された結果、私のIS開発が先送り。なら、私の手で作り上げないと、打鉄弐式(この子)がかわいそうだ。

 

(……それに、姉さんだってISを作り上げたんだ)

 

これは小さな対抗心。

 

物心ついた頃には自分と姉さんとの差を自覚していた。両親に期待されて、姉さんと比較されて、そのたびに心が鬱屈していくのを感じていた。

 

だから打鉄弐式を完成させれば、姉さんに追い付けると信じたい。自信を持ちたい。私は一人でも大丈夫って思いたい。

 

バシュッ──

 

ガラガラガラ──

 

「……?」

 

自動ドアが開いた音に、カートの音?研究員の人が何か持ってきたのかな?

 

そう思って私は振り向くと、ソレは現れた。

 

「……ふわぁ……!」

 

ソレはまさにレア物だった。恐らく整備科でないとなかなかお目にかからない物だった。

 

灰色の装甲を持った全身装甲(フル・スキン)タイプ。一見すればロボットと見間違うほどであり、私が見たことあるアニメに出そうな姿のIS。

 

(第一世代初の量産機……アーク・ファイター!)

 

多分、いや絶対に今の私の目は輝いてるんだろうなぁ……。まるで好きなアニメの声優さんを見て喜ぶファンのような心境だ。

 

『アーク・ファイター』。

 

第一回モンド・グロッソで好成績を残した雛型が正式量産されたと、資料で見たことがある。システム・各機構の簡略化などコストダウンをしたけど、今までより操作性がアップした万能に近いISと、当時は言われていたみたい。

 

だけど第二世代が主流となり、世代交代で次々と退役していったらしいけど、まさかIS学園で見られるなんて……!

 

「あれ、誰かいた?」

 

「っ!?」

 

突然のことだった。誰かの声が聞こえて私は驚くと、カートを押す人物と目が合った。

 

私より頭一つは高い黒髪の男の子。服装は学園の制服に似た柄の作業着のようで、銀色のアタッシュケースを持っていた。

 

そんな男の子を、私は知っている。少し前にテレビの記者会見で見た、織斑一夏の後に発覚した男性適合者。

 

「……あなたは、クロム・ボルン……くん?」

 

「ん?違うよ。それは兄さんさ」

 

「え」

 

「初めまして。僕はジャック・ボルン。兄さんとは双子の兄弟さ」

 

そう言って、私に人懐っこい笑顔を向けた。

 

この出会いが、私とジャックの馴れ初めでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが学園の開発棟か」

 

放課後。俺とジャックは早速総合事務受付へ向かい、IS委員会に発行させた開発棟の使用許可書と紐付き許可証、学園に保管されてる『アーク』*1の鍵を受け取り、開発棟の下見を兼ねて『アーク』の調整を行おうとして足を運ぼうとした。

 

だがその直後に政府からの連絡がきた。内容は、滞在する筈のホテルから学園の寮へと場所が変わった……というものだった。

 

そして同時に山田先生がやって来ては寮部屋の鍵を受け取ると、ジャックを先に開発棟へ向かわせて、俺は荷物の受け取りに向かった。その後、寮部屋に荷物を置いてから開発棟へ向かって漸く到着したという訳だ。おかげで三十分以上は遅れてしまったが……。

 

「距離は本校舎からそこまで離れてないが、やっぱり広いな」

 

入口の案内板を見てから目的地へと向かっている。入学式の理由もあるのか、生徒も教師も誰も見かけていない。もし普段の時期なら、専用機を持つ生徒か、整備科の生徒を見かけることもあるだろう。

 

「おっと、ここだな」

 

首に紐かけた許可証と扉に描かれた番号が一致している。ここにジャックがいるはずだ。三十分遅れてしまったから、機体の状態チェックは済んでるだろう。

 

バシュッ

 

「おーいジャック、待たせ──」

 

「なるほど、日本じゃ朝に放送してるんだね」

 

「うん。私もその時は普段より早起きしないといけない」

 

「──ん?」

 

扉が開いてはジャックに声をかけたが、聞こえてきたのは返事じゃなく、楽しそうに男女が談笑している姿を目にした。

 

ジャックが楽しそうに話すのは珍しくない。俺よりコミュニケーション能力は高いから、性別関係なく大体の人と親交を持てる。

 

(あのメガネ少女、有望株リストに載ってたな。確か、日本の代表候補生で、更識簪だったか)

 

そういえば、現役のロシア代表と同じ名字だな。そんなことを思っているが、ジャックと更識の会話は続く。

 

「でも、私はあの展開はツラいと思う。いくら仲間のためでも、自分を犠牲にしてまで前に進むのは悲しいよ」

 

「それほど強大な敵だもんね、あの第8話。それで主人公も喪失感で仲間に八つ当たりしたりで壁にぶち当たって、挫折した。その結果があの姫様との出会いだったけど」

 

「谷底に捨てられた世間知らずのお姫様。ふわっとした天然だったけど、とても芯が強いよね」

 

「そうそう!特に敵幹部が拠点を襲撃してきた時に言ったセリフは心にきたね。それが主人公の心に変化をもたらしたのは明確だった。向こうでも放送された第11話は、僕も含めて多くのファンに人気だったよ」

 

「私もその話は好き!第10話で主人公が語ったアニキさんの印象と思いが、その話じゃあ主人公が助けたってアニキさんが言ってたよね。アニキさんはスゴいって主人公は言ってたけど、アニキさんは主人公がスゴいって!」

 

「そんな諦めない主人公が姫様を助けた後の戦いは燃えたねー!初めての挿入歌をバックに合体。その後の主人公の前口上は泣きそうになったよホント」

 

……IS関係の話をしてると思って少し黙って聞いてたが違うな。内容を聞くかぎり、ジャックと更識が話してるのは、どうやらジャックが見ている日本のアニメの話のようだ。

 

ああ見えて、ジャックは日本で言うオタクだ。特に日本のロボットアニメが好きで、通販でよく『ダンプラ』*2をポチっては専用ブースと機材で本格的に作るのを知っている。親父が好きだしな、その影響だろう。ちなみに俺はそれなりに好きだが、深いほどじゃない。

 

「……そろそろ話していいか、ジャック」

 

「っ!」

 

「あれ、兄さん。遅かったね」

 

「荷物が多かったからな。……それにしても楽しそうだったな」

 

声をかけたが、どうやら更識は驚きのあまり固まっている。次第に顔が赤くなっているが、放っておいて大丈夫だろう。

 

「兄さん、彼女は更識簪。ここで知り合ったんだけど、彼女も同士なんだ!」

 

「あー、何かアニメ話で盛り上がってたな。──初めまして、更識簪さん。俺はクロム・ボルン。ジャックと仲良くして、ありがとうな」

 

「……あっ、はい。どうも」

 

固まっていた更識が反応するが、まだ顔が赤いままだ。まあアニメのような趣味を知られたら、羞恥心が勝ることもあるしな。

 

とりあえず、俺も準備をしてはジャックに聞こう。

 

「それでジャック。学園のアークはどうだった?」

 

「結果は問題無し。よく整備科の授業で使われてる分、いろいろ弄っては戻してと繰り返されてたけど、先輩たちの腕も良いみたいだから、修繕は今日で済みそうだね。ただ兄さんに合わせるとなると、ブースターの出力調整、反応速度対応、各センサーを後日改修しないとかな?」

 

「クラス代表戦までには?」

 

「改修で三日。兄さんが操縦しながらの微調整で一日だよ。間に合わせる」

 

「心強いな」

 

ジャックの持つパソコンからのデータを見ては感心する。

 

「……………」

 

ふと、俺は更識の視線に気付くと顔を向けた。

 

「何だ?」

 

「……ボルンさんは」

 

「クロムでいい」

 

「……クロムさんは、ISを作れるんですか?」

 

「整備程度なら出来るが、製作となると出来ないな。そこらの分類はジャックが詳しいが……何かあるのか?」

 

「い、いえ……」

 

「そんなに畏まらなくてもいい。同じ一年同士、仲良くしてくれ」

 

「……………」

 

そう言ったが、更識の表情は浮かないようだ。先程の視線は何か、羨ましそうな感情が込もっていたが……。

 

「……あの、それじゃあ私は帰ります」

 

「え、もう?」

 

「……うん。今日は使用場所の下見と準備だけだったから」

 

「そっか。僕と兄さんはアークの修繕が済んだら寮に戻るよ」

 

「また寮か、学園で会おう。更識」

 

「またね簪。アニメで面白いのあれば教えてね」

 

「……うん」

 

そう言って更識は開発室を後にして、俺たちは黙々とアークの修繕を行うのであった。

 

尚、戻ってきた頃には一夏が寮の廊下で正座をさせられていた。頭のコブと何か関係があるのか、俺には分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~~!!」

 

学園の学生寮。二人部屋の片方のベットで、私は羞恥で真っ赤な顔を枕に埋もれさせて隠していた。

 

同室の本音がシャワーでいないからまし。もし初対面なら、こんな奇行見せられない。

 

別にアニメの話だったら恥ずかしくない。同じアニメ好きと話してる時でも恥ずかしくないはず。

 

(でも、見られたのは恥ずかしい!?)

 

ジャックと話してる時は、何だか心地良かったんだけど、その、クロム……さんが話しかけた際、何だか年上のような落ち着いた雰囲気があったから、逆に恥ずかしくなっちゃって……。

 

「……どうしよう」

 

小さな呟き。使用許可も貰ってあるし、今さら場所を変更したいなんて言えないし……。

 

(でも、一人でもやらないと……)

 

姉さんに到底追い付けない。その事を思い出して、私は仰向けになって天井を見つめる。

 

「ボルン兄弟、か……」

 

そう呟くけど、顔を思い浮かべたのはジャックの顔だけだった。

 

「また、話せるかな……?」

 

暫くは開発室にいるらしいから、話せる機会は十分にありそうだ。次会った時のために、何かアニメの話題を作っておこうかな?

 

「かんちゃーん。あがったから交代だよー」

 

「……もうすぐ行く」

 

本音の言葉に気付き、私もシャワーの準備をした。

*1
アーク・ファイターの通称

*2
機動兵器ダンガムのプラモデル




原作で簪とのほほんさんは同じ部屋だったか忘れたけど同じ部屋にしました。






※一部の情報が公開されました

正式名称:アーク・ファイター type-E

ギリシャ製作の第一世代初量産型として開発されたIS。雛型として作成されたISよりコストダウンさせては操縦性を簡易的にし、誰でもそつなく扱えるように設計された。type-Eとはeasyの略称。
尚、学園にあるモノは整備科の授業で使う資料であり、スポンサーであったジーニアン・ボルンの贈呈品でもある。

モデル:名称はノルアーク帝国とボンバーファイターから。全体像は「ボンバーファイター」をリアル等身にして「30MM アルト」の装甲をくっつけたモノをイメージ。ビー玉発射機構は無しです。
リアル等身版のイラストは画像検索すれば見つかりますので、それ参考にしてください。
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