IS・LoB-Da:Re~パイロットの兄、メカニックの弟~ 作:仮面肆
ppppp……!!
ガチャン!!
「……………あさ、か」
「おはよう、兄さん。はいこれ目覚めの一杯」
「……………」
──ゴクリ
「……おはよう、ジャック。今朝のコーヒーは美味いな。日本のどこ産地だ?」
「まだ寝ぼけてるの?ただのインスタントだよ」
苦笑して答えるジャック。毎朝の日課であるコーヒーをベットで飲んで、頭もスッキリしてきた。俺はアラームが鳴れば起きれるが、直ぐに目覚めることが出来ないからコーヒーに頼っている。家なら自分で淹れて飲むが、寮生活だから俺より早いジャックに次いでに淹れて貰っている。
昨日からIS学園の寮生活が始まった。
修繕作業が終わってからは、学生寮の部屋に戻ってシャワーを浴び、寮の食堂で夕食を取った。その時は深く考えなかったが、料理の種類が豊富だった。生徒の国籍は様々だから、食堂の料理も似合った物を選べられるように配慮した結果だろう。
その後は部屋でくつろぎながら、アークの改修案をジャックと共に話し合った。実家兼研究所に置いてある訓練用アークをベースに改修すれば問題無いが、今回のクラス代表決定戦は異なる二人との連戦になる。各案を出していれば、ジャックもいろいろ考えて腕を振るってくれるだろう。
そして話し合いの結果、オルコット戦用、一夏戦用との改修案と武装選出をすることに、最終調整を決定戦前日に合わせようと暫定して終了。その日の長旅もあって早めに就寝し、今の時間に起床した。
(時間は……7時20分頃か。時差ボケの心配はなさそうか)
目覚まし時計を見て、俺の体内時計は正確なままだと確信した。それじゃあ、身支度していかないと。
「兄さんは食堂の朝ごはんどうするの?」
「普段、家で食ってるモノでいいだろ。しっかり食べとかないと頭が働かん。食後にギリシャヨーグルトのフレークがあれば尚良いがな」
「せっかく日本に来たから、僕は和食の朝食にしてみようかな?昨日の晩ごはんのサバミソ定食は美味しかったし、期待できそう」
「……美味かったのは認めるぞ。だけどナットウは癖が強すぎだ。毎回食べたいモノじゃないぞ」
「僕は美味しいと思うよ?一口二口と食べ進めてたら、意外と癖になる味だったし」
そんな会話をしながらだったが、俺たちは同時に身支度を終わらせ、食堂へと向かうのだった。
「……昨日みたいにラフな格好の女子っていないよね?」
「……思い出させるなジャック。あれは俺も恥ずかしかったから」
例え前世を思い出しても、肉体は年相応なんだよ。
「ん?おー、クロムにジャック。おはよう」
「一夏か。おはよう」
「やあ、一夏。おはよう」
学生寮の食堂。俺とジャックがテーブル席で朝食を取っていると、一夏が声をかけてきた。手には朝食のトレーを持っているようで、一夏は今から食事のようだ。
因みに俺の朝食はトースト二枚に目玉焼き、ウインナー、サラダ、コーヒーのモーニングセット。〆のデザートとしてギリシャヨーグルトにフレークと数種のドライフルーツを混ぜたモノだ。特にデザートのヨーグルトが置いてあったのは重畳だ。フレークとフルーツの種類を変えれば何通りも試せる。因みにジャックは朝に言った通り、和食セットを頼んでいる。
「一夏も朝飯か。相席出来るぞ」
「サンキュー。食堂までの道のり、いろんな女子に話しかけられたからな。同じ男子がいるだけで安心するぜ」
「朝からお疲れ。ん?僕と同じメニューだね、ソレ。このシャケ美味しいよ」
「お、そうなのか。そいつは楽しみだな」
一夏が空いた席に着く。ジャックの向かい側だ。
「……………」
そんな中、一夏と一緒にいた女子がトレーを持って立ち、こちらを見つめていた。
長い髪をリボンで結んだポニーテール女子。不機嫌そうな目付きで近寄り難い印象だが、俺が感じる雰囲気には不機嫌さがない。生まれつきか?
「箒。クロムたちが良いって言ってくれたんだ。早く座ろうぜ」
「……分かっている」
そう言って彼女は俺の向かい側に座った。
「ねえ一夏。彼女って一夏と知り合いかい?」
「ああ、幼馴染の
「……篠ノ之箒だ」
一夏の紹介に彼女……篠ノ之が俺たちに頭を下げる。
……篠ノ之だって?
「へぇ、幼馴染かー。僕はジャック・ボルン。よろしくね篠ノ之さん」
(『兄さん。篠ノ之さんってもしかして』)
「昨日も紹介したが、クロム・ボルンだ。ジャック共々よろしく」
(『間違いない。
会話と共に短めの
篠ノ之と訊けば、殆どの者から有名な人物だ。何せ、ISを開発した人物の名字がソレだからだ。
その人物とは
その後、日本政府は篠ノ之博士の血縁者を監視、聴取。重要人物保護プログラムにより多くの引っ越しを繰り返し、家族も離れ離れで暮らすはめになった……と、俺の家で長いこと贔屓している探偵の資料から。
その資料に、目の前の篠ノ之が載っていた。入学の理由までは資料に載って無く、何故この学園に入学したのだろうか……。
(妹と接触する確率が高いから、動向を注視しろとIS委員会は騒いではいたな。別にしないし、むしろ普通に接した方が篠ノ之も安堵するだろ)
確かにISを開発した篠ノ之博士はスゴいだろう。だが家族を無下にした結果が、被害者である血縁者の幸せを奪っている。俺の爺さんとはえらい違いだ。
「よろしく頼む、ボルン」
「クロムでいい。名字だと分かりにくいだろう」
「僕もジャックでいいよ。よろしく箒さん」
「そ、そうか……。なら、改めてよろしく頼む、クロム、ジャック」
俺たちの挨拶に篠ノ之が返事をした。つい先程の一夏とのやり取りで近寄り難い印象だと思ったが、その微笑みは意外とかわいいじゃないか。
それから暫く、俺たちは朝食を取りながら会話を弾ませた。時々、噂の男性
「ごちそうさま……。それじゃあ一夏、箒、また教室で会おう」
「そんじゃねー」
結果として、篠ノ之を名前で呼ぶくらいの距離が得られた。
「ああ、後でな!」
「また、な……」
そして俺とジャックは朝食を終わらせては一夏たちと別れて、本日の授業の準備をするために部屋へ戻るのだった。
◆
「──という訳で、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、
本日の授業二時限目。副担任の山田先生が立体映像を用いた授業を聞きながら、私……篠ノ之箒は今朝の食堂でのことを思い出していた。
(ボルン兄弟、か……)
一夏に遅れて、IS適合を持つことが発覚した兄のクロム。そして特別枠で入学を果たした弟のジャック。
異性の存在ではあったが、彼らと初めて話しては打ち解けるのが早い気がした。多分だが、兄弟のコミュニケーション能力が高いのだろう。昨日も彼らの周りの女子は仲良くなれていたようだった。
『ほお、箒はケンドーの優勝者か。スゴいじゃないか』
『ねえ、箒さんの好きな和菓子ってある?食堂で和菓子が売ってあるらしいから、参考にしたいんだよ』
私も、まあ名前を許すほど仲良くなれたようだ。
だけど、私がボルン兄弟を見て感じたのは──
(仲が良かったな……)
──小さな嫉妬だった。
私にも家族はいる。だけど姉さんの開発したISが、私を……家族を引き裂いた結果、私が中学の頃には一人で暮らしていた。
そして頻繁に現れる政府の人間やIS委員会の役員による尋問。心が荒んでいくのを感じた。剣道も相手を八つ当たりにすることが多くなっていた。
だから、こんなことになった原因のISが嫌いだった。
でも、ニュースで一夏が初めてISを動かした男だと発覚した時、私の中の何かが薄れては決断した。
一夏に会いたい。その思いが強くて、元々入学予定した高校をIS学園に変更した。手続きは政府が行ったようだったが、その頃にクロムが第二の男性IS適合者とニュースで騒がれていた。
その時は一夏のことで頭が一杯で、そこまで詳しく見ていなかった。姉さんがISを発表する前から、様々な分野の発明をした天才科学者の孫と、ニュースや特番で知ったくらいだ。
そして昨日のボルンたちの行動で、何か既視感を感じた。小学生の頃、一夏と千冬さんのような、姉弟の繋がり。
(飢えているのだろうか?)
家族愛に……。兄弟愛に……。
キーンコーンカーンコーン
「あ」
授業が終わってしまった。まあ、内容は中学で習った復習みたいであったし、そこそこ理解すればいいか。
一夏と出会えて、さらに同じ部屋で暮らしているんだ。ISよりも一夏との生活が優先だ。うむ。
しかし、後に一夏が専用機を持つことになるのを、今の私は知らなかった。これではISをもう少し学ばないといけないではないか……。