IS・LoB-Da:Re~パイロットの兄、メカニックの弟~   作:仮面肆

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視点変更時には◆を付けてます。最初はクロム視点です。


4:篠ノ之

ppppp……!!

 

ガチャン!!

 

「……………あさ、か」(ぽけ~)

 

「おはよう、兄さん。はいこれ目覚めの一杯」

 

「……………」(ぽけ~)

 

──ゴクリ

 

「……おはよう、ジャック。今朝のコーヒーは美味いな。日本のどこ産地だ?」(ぽけ~)

 

「まだ寝ぼけてるの?ただのインスタントだよ」

 

苦笑して答えるジャック。毎朝の日課であるコーヒーをベットで飲んで、頭もスッキリしてきた。俺はアラームが鳴れば起きれるが、直ぐに目覚めることが出来ないからコーヒーに頼っている。家なら自分で淹れて飲むが、寮生活だから俺より早いジャックに次いでに淹れて貰っている。

 

昨日からIS学園の寮生活が始まった。

 

修繕作業が終わってからは、学生寮の部屋に戻ってシャワーを浴び、寮の食堂で夕食を取った。その時は深く考えなかったが、料理の種類が豊富だった。生徒の国籍は様々だから、食堂の料理も似合った物を選べられるように配慮した結果だろう。

 

その後は部屋でくつろぎながら、アークの改修案をジャックと共に話し合った。実家兼研究所に置いてある訓練用アークをベースに改修すれば問題無いが、今回のクラス代表決定戦は異なる二人との連戦になる。各案を出していれば、ジャックもいろいろ考えて腕を振るってくれるだろう。

 

そして話し合いの結果、オルコット戦用、一夏戦用との改修案と武装選出をすることに、最終調整を決定戦前日に合わせようと暫定して終了。その日の長旅もあって早めに就寝し、今の時間に起床した。

 

(時間は……7時20分頃か。時差ボケの心配はなさそうか)

 

目覚まし時計を見て、俺の体内時計は正確なままだと確信した。それじゃあ、身支度していかないと。

 

「兄さんは食堂の朝ごはんどうするの?」

 

「普段、家で食ってるモノでいいだろ。しっかり食べとかないと頭が働かん。食後にギリシャヨーグルトのフレークがあれば尚良いがな」

 

「せっかく日本に来たから、僕は和食の朝食にしてみようかな?昨日の晩ごはんのサバミソ定食は美味しかったし、期待できそう」

 

「……美味かったのは認めるぞ。だけどナットウは癖が強すぎだ。毎回食べたいモノじゃないぞ」

 

「僕は美味しいと思うよ?一口二口と食べ進めてたら、意外と癖になる味だったし」

 

そんな会話をしながらだったが、俺たちは同時に身支度を終わらせ、食堂へと向かうのだった。

 

「……昨日みたいにラフな格好の女子っていないよね?」

 

「……思い出させるなジャック。あれは俺も恥ずかしかったから」

 

例え前世を思い出しても、肉体は年相応なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?おー、クロムにジャック。おはよう」

 

「一夏か。おはよう」

 

「やあ、一夏。おはよう」

 

学生寮の食堂。俺とジャックがテーブル席で朝食を取っていると、一夏が声をかけてきた。手には朝食のトレーを持っているようで、一夏は今から食事のようだ。

 

因みに俺の朝食はトースト二枚に目玉焼き、ウインナー、サラダ、コーヒーのモーニングセット。〆のデザートとしてギリシャヨーグルトにフレークと数種のドライフルーツを混ぜたモノだ。特にデザートのヨーグルトが置いてあったのは重畳だ。フレークとフルーツの種類を変えれば何通りも試せる。因みにジャックは朝に言った通り、和食セットを頼んでいる。

 

「一夏も朝飯か。相席出来るぞ」

 

「サンキュー。食堂までの道のり、いろんな女子に話しかけられたからな。同じ男子がいるだけで安心するぜ」

 

「朝からお疲れ。ん?僕と同じメニューだね、ソレ。このシャケ美味しいよ」

 

「お、そうなのか。そいつは楽しみだな」

 

一夏が空いた席に着く。ジャックの向かい側だ。

 

「……………」

 

そんな中、一夏と一緒にいた女子がトレーを持って立ち、こちらを見つめていた。

 

長い髪をリボンで結んだポニーテール女子。不機嫌そうな目付きで近寄り難い印象だが、俺が感じる雰囲気には不機嫌さがない。生まれつきか?

 

「箒。クロムたちが良いって言ってくれたんだ。早く座ろうぜ」

 

「……分かっている」

 

そう言って彼女は俺の向かい側に座った。

 

「ねえ一夏。彼女って一夏と知り合いかい?」

 

「ああ、幼馴染の篠ノ之箒(しののの ほうき)。俺と同じ部屋なんだ」

 

「……篠ノ之箒だ」

 

一夏の紹介に彼女……篠ノ之が俺たちに頭を下げる。

 

……篠ノ之だって?

 

「へぇ、幼馴染かー。僕はジャック・ボルン。よろしくね篠ノ之さん」

 

(『兄さん。篠ノ之さんってもしかして』)

 

「昨日も紹介したが、クロム・ボルンだ。ジャック共々よろしく」

 

(『間違いない。最重要人物リスト(調査資料)に載ってた一人だ』)

 

会話と共に短めの以心伝心(アイコンタクト)をして、目の前の篠ノ之に挨拶する俺たち。

 

篠ノ之と訊けば、殆どの者から有名な人物だ。何せ、ISを開発した人物の名字がソレだからだ。

 

その人物とは篠ノ之束(しのののたばね)。人類が見果てぬ宇宙を目指すために作られたマルチフォーム・スーツ『インフィニット・ストラトス』を開発した天才科学者だが、現在進行形で行方不明。467個目のコアを残して行方を眩ましたらしいが、詳細は誰も知らない。

 

その後、日本政府は篠ノ之博士の血縁者を監視、聴取。重要人物保護プログラムにより多くの引っ越しを繰り返し、家族も離れ離れで暮らすはめになった……と、俺の家で長いこと贔屓している探偵の資料から。

 

その資料に、目の前の篠ノ之が載っていた。入学の理由までは資料に載って無く、何故この学園に入学したのだろうか……。

 

(妹と接触する確率が高いから、動向を注視しろとIS委員会は騒いではいたな。別にしないし、むしろ普通に接した方が篠ノ之も安堵するだろ)

 

確かにISを開発した篠ノ之博士はスゴいだろう。だが家族を無下にした結果が、被害者である血縁者の幸せを奪っている。俺の爺さんとはえらい違いだ。

 

「よろしく頼む、ボルン」

 

「クロムでいい。名字だと分かりにくいだろう」

 

「僕もジャックでいいよ。よろしく箒さん」

 

「そ、そうか……。なら、改めてよろしく頼む、クロム、ジャック」

 

俺たちの挨拶に篠ノ之が返事をした。つい先程の一夏とのやり取りで近寄り難い印象だと思ったが、その微笑みは意外とかわいいじゃないか。

 

それから暫く、俺たちは朝食を取りながら会話を弾ませた。時々、噂の男性操縦者(パイロット)を見たかったと多くの女子に声をかけられたが、特に問題も起きず、朝食の時間は過ぎていった。

 

「ごちそうさま……。それじゃあ一夏、箒、また教室で会おう」

 

「そんじゃねー」

 

結果として、篠ノ之を名前で呼ぶくらいの距離が得られた。

 

「ああ、後でな!」

 

「また、な……」

 

そして俺とジャックは朝食を終わらせては一夏たちと別れて、本日の授業の準備をするために部屋へ戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──という訳で、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者(パイロット)の全身を特殊なエネルギーバリアーで包んでいます。また、生体機能も──」

 

本日の授業二時限目。副担任の山田先生が立体映像を用いた授業を聞きながら、私……篠ノ之箒は今朝の食堂でのことを思い出していた。

 

(ボルン兄弟、か……)

 

一夏に遅れて、IS適合を持つことが発覚した兄のクロム。そして特別枠で入学を果たした弟のジャック。

 

異性の存在ではあったが、彼らと初めて話しては打ち解けるのが早い気がした。多分だが、兄弟のコミュニケーション能力が高いのだろう。昨日も彼らの周りの女子は仲良くなれていたようだった。

 

『ほお、箒はケンドーの優勝者か。スゴいじゃないか』

 

『ねえ、箒さんの好きな和菓子ってある?食堂で和菓子が売ってあるらしいから、参考にしたいんだよ』

 

私も、まあ名前を許すほど仲良くなれたようだ。

 

だけど、私がボルン兄弟を見て感じたのは──

 

(仲が良かったな……)

 

──小さな嫉妬だった。

 

私にも家族はいる。だけど姉さんの開発したISが、私を……家族を引き裂いた結果、私が中学の頃には一人で暮らしていた。

 

そして頻繁に現れる政府の人間やIS委員会の役員による尋問。心が荒んでいくのを感じた。剣道も相手を八つ当たりにすることが多くなっていた。

 

だから、こんなことになった原因のISが嫌いだった。

 

でも、ニュースで一夏が初めてISを動かした男だと発覚した時、私の中の何かが薄れては決断した。

 

一夏に会いたい。その思いが強くて、元々入学予定した高校をIS学園に変更した。手続きは政府が行ったようだったが、その頃にクロムが第二の男性IS適合者とニュースで騒がれていた。

 

その時は一夏のことで頭が一杯で、そこまで詳しく見ていなかった。姉さんがISを発表する前から、様々な分野の発明をした天才科学者の孫と、ニュースや特番で知ったくらいだ。

 

そして昨日のボルンたちの行動で、何か既視感を感じた。小学生の頃、一夏と千冬さんのような、姉弟の繋がり。

 

(飢えているのだろうか?)

 

家族愛に……。兄弟愛に……。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「あ」

 

授業が終わってしまった。まあ、内容は中学で習った復習みたいであったし、そこそこ理解すればいいか。

 

一夏と出会えて、さらに同じ部屋で暮らしているんだ。ISよりも一夏との生活が優先だ。うむ。

 

しかし、後に一夏が専用機を持つことになるのを、今の私は知らなかった。これではISをもう少し学ばないといけないではないか……。

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