原作:ソードアート・オンライン
タグ:R-15 残酷な描写 ソードアート・オンライン キリト アスナ ロニエ ロニエ・アラベル 叶わない恋 最期 アリシゼーション 原作未読勢は注意 ある意味で残酷な描写
これは、描かれなかった命の終わり。
想い人に自らの想いを告げられなかった女性の最期の願い、言葉。
儚い恋と叶わない現実。
ならば。
ならば、せめて________
叶わないと知っても、この想いだけは。
彼女の想いは、最期に叶えられる。
例え、答えが。
『
⚠️注意⚠️
単発です。
低クオリティです。
決して、ハッピーエンドとは言えません。
原作未読勢は見ることをお勧めしません。
そして、ロニエ好きの皆さんにはかなり辛いものになると思います。(私自身もロニエ推しなのでメンタルボロボロで書きました)
それでも良い方は、どうぞ。
♦
___________ロニエ・アラベル殿が、危篤との事です。
そう知らせを受けた俺は直後、知らせてくれたアラベル家の使いの男に目もくれず、ありがとうと礼を言うことさえ忘れて、心意と風素術を組み合わせた飛行で、空を駆けていた。
飛行はほんの数分だった。
アラベル家に辿り着いた俺はアラベル家の邸宅の庭に着地し、アラベル家の執事の案内を受けてロニエがいる病室へと向かった。
質素な部屋にベッドが1つ。そして、周りにはアラベル家やロニエの友であったシュトリーネン家の者も見られた。
「キリト君…っ!」
アスナは既に来ていた。俺が来たことに気付くと大粒の涙を流しながら俺の名前を呼んだ。
「__________ 」
そこには、弱々しく横たわったロニエの姿があった。よぼよぼに年老いて元整合騎士とは思えない姿だった。
ロニエは御歳98歳。もう最期が来てもおかしくないとの話で、元々100年近くまで生きた人がアドミニストレータや整合騎士達のような天命を固定された人達程しかいなかった。ロニエの記録は天命を固定されていない人々の中でこのアンダーワールドでも初と言っていいだろう。
故に。
いつかは来ると分かっていた筈だった。
命とはいつ無くなるか分からない。それはアインクラッドで充分に学んだ。だが、このアンダーワールドはまた違う感覚を覚える。
あのアインクラッドはたった2年だったが、このアンダーワールドではもう何百年と歴史があり、そして、プレイヤーとNPCの違いもない世界がずっとここにあったのだ。
俺も100年もここで生きていないが、改めて思う。
このアンダーワールドにいる人々は、生きているのだと。
確かに俺たちリアルワールドの人間からすれば生きてるなんて言えないかもしれないが、この100年足らずを生きた俺には分かる。
あと100年後、俺たちが無事に現実世界で目覚めたら、直ぐに記憶を消去してもらうつもりでいる。だから、今までの約100年間の記憶は_____現実世界の俺には残らない。
俺たちはこの約100年間で、たくさんの別れを見てきた。
ガリッタの爺さん、テルルとテリン、サードレの親父さん、リーナ先輩、イスカーン、そして_______ティーゼ。
長く生きてしまう者の定め。
今、その心の痛みを強く痛感した。
同じく天命を固定されているアスナも、同じことを思い、考えているだろう。
ロニエとアスナは大戦が終わった後も交友関係は良くなり、良くアラベル家へ食事に誘われる程だった。
彼女からすれば、親友の1人がまた旅立つのだ。その悲しみは計り知れない。
それは、俺も同じ。
「__ロニエ」
「…キ……せん……い」
ロニエが俺を「キリト先輩」と呼んだことがわかった。だが、もうその声にも覇気はなく、掠れてほとんど聞き取れなかった。
「……アス………お願いが…」
「…どうしたの?ロニエちゃん」
今度はアスナに話しかけた。何かを頼んでいるのだろうか。
「___うん____________っ」
「…………最期の、お……です」
「_____ロニエちゃん…っ」
「お許し……い」
「……分かったわ。皆さんロニエさんがキリト君と2人にして欲しいそうです」
アスナは涙を流しながらロニエの頼みを受けいれたようだ。
『…分かりました、星王妃様』
『星王様、叔母を…叔母の最期を看取ってあげて下さい。よろしくお願い致します』
「………分かった」
ロニエの願いに従い皆、部屋から出ていく。
何か、俺と話したいことがあるのだろうか。
俺がロニエのそばに行こうと1歩踏み出した、その時。
「__________キリト君。私、ここで何をしても、知らないからね」
「__?」
「___何が起きても、私は______何も見ていない、から」
そう、アスナは最後に言い残して部屋を出ていった。
何を意味する言葉なのか分からないまま、俺はロニエの傍にあった椅子へと腰掛けた。
「聞こえるか、ロニエ」
「……はい。聞こえ、ます」
「無茶はしなくていい。お前ももう辛いだろう?」
「…大丈夫です。私なら、心意で声を出すことも可能です」
俺の心配をよそにロニエは心意を応用して俺に答えた。
心意は色んな使い方が出来る。その1つが声を出す事だ。
声を出す、というよりも声を再現すると言った方が正しい。
今ロニエは、自らの心意で自身の声を再現している。
「___もう、来ちゃったんだな」
「はい」
「俺、多分……ロニエの事、死なないんじゃないかって、変なこと考えてたんだ。死は、避けられないのに」
「_はい」
「でも、いざ目の前にすると、怖くなってさ。また明日には、寝坊ですよって俺の部屋まで起こしに来てくれるんじゃないかって、都合のいい事考えてた」
「____はい」
「……ロニエはなにか俺に話したいことがあるんだろう?周りに、聞かれたくないような」
「そう、ですね。そうなります」
「なんでも言ってくれ。今からでも心意でロニエの体を若返らせたり、天命を固定したり、なんでもする!だから_______」
「__先輩」
「______っ」
「先輩は私がそんなこと、望むとお思いですか?」
「……」
「__なら、答えはもう出てるじゃないですか。私は、ここで死ぬんです。だから、そんな事しなくても、いいんです。これが、私の最期。それくらい、私にだって分かります」
「__でも、でもっ____!!」
「私、楽しかったです」
「_____」
「貴方と出会えて、短い間だったけど、傍付きとして貴方に仕えられて。貴方と共に戦えて良かった、一緒に食事が出来て、良かった」
「一緒に笑い会えてよかった_____そして、何より」
「___________貴方と出会えて、嬉しかった」
「_____ぁ」
「この思い出は私の永遠の宝物。誰にも汚されることのない、宝石のような綺麗で、儚い日々」
「人は死を迎え、別れがあるからこそ輝ける。そして、だからこそ、眩しい」
「_____キリト先輩。最期に、伝えたいことがあるんです」
「……なんだ」
「今の今まで、言えなかった事___私は_____私は____っ」
「貴方の事が、ずっと、好きでした」
「___________」
「あなたと一緒にいるだけで幸せで、嬉しくて、楽しくて____貴方と一緒にいると、すぐに時間が過ぎて、ずっと一緒にいたい、貴方の傍であなたの笑顔をもっと見たかった」
「_____気持ち悪いと、思うかもしれませんが___貴方の声が好きです。優しく、そして、私を想ってくれるその声が」
「その笑顔が好きです。いつも私を暖かく受け入れてくれた」
「貴方の手が好きです。大きくて、でも華奢で、何者にも穢されない、その手が私の手を包み込んでくれた」
「貴方の背中が好きです。いつも私を守ってくれた。私の、憧れ」
「ここじゃ、言いきれないほどあります。これはほんの一部です」
「私は、貴方と出会って、傍付きになって貴方に仕えたあの時、私はあなたを好きになりました」
「________ロニエ、俺は……っ」
「_____貴方の答えはもう分かっています。それに、貴方にはもう、アスナ様がいた」
「だから、言えなかった」
「こんな時に言えるようになるなんて______愚図ですね、私って」
「____言えて、良かった。多分ここで言えなかったら、言えずじまいだった」
「____ごめん」
「…謝らないで」
「___俺は…俺は、アスナが____」
「泣かないで」
「________」
俺は、泣いていた。
ロニエの告白に。
女々しく、ボロボロと。
止まらない。
「____貴方に、最期にお願いがあるんです」
「____何を……」
「今だけでいいんです」
「私を、私だけを愛してくれませんか?」
「え_______」
「この一時だけでいい。私がステイシア神に召されるまで___どうか」
そこで、全てを悟った。
『__________キリト君。私、ここで何をしても、知らないからね』
アスナの、あの言葉の意味を。
アスナは気付いていたのだ。ロニエの想いに。
そして、2人きりになって、こうなることを勘づいていた。
だから______
最期だから…
「________ロニエ」
「はい」
「ちょっと、いいか」
「__ぇ?」
ロニエの弱った体を優しく抱き寄せる。
「_________ぁぁ」
手に取ってわかる、その体の軽さ。そして、薄くなった肉付き。
ああ、彼女は、死ぬのだ。
だから、せめて。
その想いに気付けなかった、その後悔と懺悔を、この抱擁に。
「____ごめん、こんなことしか、してやれない」
「_____こんな、だなんて。私は、これだけで十分」
「嗚呼、私は__________ここで、生きたんですね」
「ああ」
「_____キリト先輩、いえ……キリト」
「___あぁ」
「私は____ずっと貴方を______________」
愛しています
享年98歳。
ロニエ・アラベルは、
最期の顔は____まるで、恋人と一緒に木陰で眠るような。
死んだとは思えないほどに、幸せそうな、笑みを浮かべて_________
先日、改めて24巻を読破致しました。
その中で200年後のアンダーワールドに戻ったキリト達はロニエやティーゼ、リーナ先輩達が居ない世界に来たことを痛感していました。
それを見て、私はロニエ推しとしてこれを書かなければならないと、そう思ったのです。
描かれることの無いであろう、彼女の最期。
それは、キリトの記憶にも無く、誰も知る者はいない。
ならば。
せめて。
私が書きたかった。
その想いだけです。
命とは必ず終わるもの。だから美しいと、そうとも思いました。
そして、私は彼女に聞きたかった。
『君の人生は、幸せでしたか?』
と。
でも私は確信しています。
彼女は笑顔で、
「幸せでした」
そう言ってくれることを。