ザバァ‼
「ふぅ・・・」
水面に顔を出すと太陽の眩しい光が私を照らす。身体を包み込むような優しい光。今日も最高のダイビング日和だった。
「そろそろ上がろう」
太陽の位置からしてお昼前ぐらいだろうか。今日は休日。午後からはみんなと練習だ。千歌と一緒にご飯を食べて、学校に行く準備をしなくては。
「おーい千歌―!」
海岸に近付くと千歌の姿を見つけたのでそう言いながら手を振る。
「あ‼果南・・・ちゃん・・・?」
彼女がなぜか、不思議そうな顔をしてきょろきょろ辺りを見渡している。
「どうしたの?何か探し物?」
目の前まで言って話しかける。
「・・・え?」
驚いた様子で私の顔をじっと見つめる千歌。
「なにー?私の顔に何かついてる?」
「ひやぁ‼」
彼女は悲鳴をあげて飛び上がった。
「失礼ねー‼人の顔見て悲鳴あげるなんてー‼」
「えーっ‼えーっ⁉ホントに果南ちゃん・・・なの?」
「当たり前じゃない‼」
ダッ‼
と、突然猛ダッシュでどこかに行く千歌。そしてまた猛ダッシュで戻って来た。
「はぁ・・・はぁ・・・。これ・・・」
そう言って彼女が私に向けたのは手鏡だった。
「どういう事?」
「いいから自分の顔よく見て‼」
「・・・わぁ‼可愛いイルカさん・・・あれ?」
「そう言う事だよ果南ちゃん‼」
「え・・・?えぇぇぇ⁉」
理由はよく分からいけど私、イルカになっちゃったみたい!
・・・
・・・・
・・・・・
「ねえ見て千歌‼」
ヒュー!クルクルクル‼ザバァン‼
水面から空に向かって勢いよく飛び出し、三回転、四回転してから着水。最高に気持ちいい‼
「ねぇ‼どうしてそんなに楽しそうなのぉ?」
「だって大好きなイルカになれたんだよー‼もう最高の気分だよ‼」
「でもその姿だと練習参加できないよ?」
「そう?」
ヒュー!クルクルクル‼ストッ!
陸地へと着地する。
ピョン!ピョン!
尾びれを使って砂浜を跳ね回る。
「ほらぁ!こうすれば普通に動き回れるよ!それから・・・」
クルクルクルクル‼
尾びれを軸にフィギュアスケート選手のように回転する。
「どう?」
「果南ちゃんたくましすぎるよぉー‼」
「ふふん!」
「じゃあこれから学校も練習もその姿で行くつもり?」
「ダメ?」
「ダーメ‼」
「・・・それはそうだね」
「そもそもどうしてイルカになっちゃったの?」
「気付いたら・・・みたいな?」
「どうやったら元に戻るんだろう?」
「うーん・・・」
「千歌ちゃーん!」
二人で悩んでいると梨子ちゃんがそう言いながらこちらにやって来た。
「千歌ちゃんこんな所で何を・・・って何そのイルカ?」
「私だよ梨子ちゃん!」
「ひぃぃぃぃ‼イルカが喋ったぁぁぁ‼」
梨子ちゃんが悲鳴をあげながら千歌の後ろに隠れる。
「あはは。梨子ちゃん落ち着いて」
「お、お、落ち着けるわけないでしょ‼な、何なのよその生き物は⁉」
「果南ちゃんだよ!」
「そんなわけないでしょ‼」
「私だよ!梨子ちゃん!」
「ひぃぃぃぃ‼また喋ったぁぁぁ‼しかも私の名前呼んだぁぁぁ‼」
「だから‼ホントに果南ちゃんなんだって‼」
「・・・」
梨子ちゃんが恐る恐る近付いてくる。
「千歌ちゃんの誕生日は?」
「八月一日」
「好きな食べ物は」
「みかん」
「スリーサイズは?」
「えっと・・・」
「ちょっとストーップ‼何言わせようとしてるの⁉」
「・・・どうやら本物の果南ちゃんみたいね」
「だから最初から言ってるじゃーん‼」
とにかく、梨子ちゃんは納得してくれたようだ。
「で、どうしてこうなっちゃったの?」
「分からない」
「元に戻る方法は?」
「それが分かれば苦労しないんだよぉ~・・・そうだ‼」
千歌が何かひらめいたように立ち上がる。
「梨子ちゃんてリトルデーモン・リリーなんだよね⁉元に戻す魔法とか‼」
「使えるわけないでしょ‼」
「はぁ~・・・そっかー・・・」
「何でそんなに落ち込んでるのよ!期待してたの⁉」
「いっそのこと、みんな私みたいにイルカになっちゃえばいいんじゃない?」
「いやいや、意味分かんないし!なんの解決にもなってないわよ!」
「うーん・・・」
「あらぁ?二人ともそんなところで何してるの?」
声の先には鞠莉がいた。
「鞠莉ちゃん‼」
「チャオ~‼」
「果南に用があってね。家に行ってみたら留守だったの。見なかった?」
「あーえーっと・・・」
「うん?」
鞠莉と目が合う。
「オー!プリティなイルカさんデース‼」
「えっとね!そのイルカ実は・・・」
「果南なんでしょ?」
「えっ‼分かるの⁉」
「私を誰だと思ってるのー?果南の事なら私、何でも分かるんだから!」
「す、凄い・・・さすが鞠莉ちゃん」
「当たり前デース‼」
「じゃあ元に戻す方法も分かる⁉」
「そこまではさすがにノン!ノン!」
「そりゃそうだよね・・・」
「でもこうしたらー、戻ったりして!」
ちゅっ!
鞠莉が私の口にキスをした。
「え・・・?」
「ぶはぁ~‼」
鼻血を出して倒れる梨子ちゃん。
「えー‼ちょっと梨子ちゃん‼大丈夫⁉」
ピカー‼
突然、まばゆい光に包まれる私の体。
「戻った・・・」
「オー‼ミラクル‼」
「戻った・・・果南ちゃんが元に戻ったよ梨子ちゃん‼」
「キス・・・キス・・・ふふふ・・・ふふふ・・・」
「ちょっと梨子ちゃんしっかりしてよぉー‼」
「あららー、ちょっと刺激が強すぎたみたいねー」
「鞠莉、これが元に戻す方法だって知ってたの?」
「知らないわよ。でも昔話で良くあるじゃない。キスで目を覚ましたーっていうやつ」
「戻らなかったらどうするつもりだったの?」
「その時はー・・・私だけ得しちゃって終わりーみたいな?テヘペロ!」
舌を出しておどける鞠莉。
「もう・・・訴えるよ?」
「それはそうとしてー・・・こそこそ何やってるのダイヤ?」
鞠莉がそう言った方を見ると、慌てて物陰に隠れるダイヤの姿があった。
「もしかしてー・・・ダイヤもしたいの?私と・・・キス・・・」
「は、は、ハレンチですわぁぁぁぁ‼」
ですわあぁぁぁ‼
わあぁぁぁ
あぁぁぁ
・・・
・・・・
・・・・・
「ねぇ果南?」
「うん?」
練習終わり、鞠莉に話しかけられる。
「元に戻っちゃって残念?」
「うーん。ちょっとね。だってイルカだったらずっと泳いでいられるんだよー‼最高じゃない‼」
「でも・・・」
ぎゅっ‼
鞠莉の言葉を遮って体を抱きしめる。
「こう・・・できないもんね‼」
「うん・・・そうだよ!お帰り・・・果南!」
「ただいま・・・」
「ダイヤもさぁ、突っ立ってないで!ほら‼ハグ・・・しよ?」
しかし、ダイヤは下を向いたまま動かない。
「どうしたの?」
「私・・・何もできませんでしたわ・・・実は、最初の方からこっそり話を聞いていたんですの。何か元に戻す方法を!戻す方法を・・・いくら考えてもダメでしたわ・・・」
「そんなの別にいいよー!ほら!ハーグ!」
「ですが・・・」
「もう!じれったい‼」
ドン‼
鞠莉がダイヤの背中を押す。そうすると、私の胸にダイヤが飛び込んできた。
「ありがとうダイヤ。必死に私を助ける方法考えてくれたんだねー。よしよし!」
「ダーイブ‼」
鞠莉がダイヤに覆いかぶさるようにして私に抱き着いてくる。
「鞠莉!勢いつけすぎ‼」
「痛いですわ鞠莉さん‼」
「ソーリーソーリー‼」
三人でのハグ。なんて温かいんだろう。永遠にこうしていたいぐらいの幸せ。イルカもいいけどこの幸せには決して敵わない。かけがえのない時間、友達。それを改めて実感した私だった。
完
ここまで読んで頂いてありがとうございます。津地こうと申します。
今回は果南ちゃんに挑戦してみましたがいかがでしたでしょうか。
果南ちゃんと言えば、海、魚・・・というのが頭の中に浮かび、こうなりました。結局イルカになりましたが(笑)
後、彼女と言えばかかせないのが鞠莉とダイヤの存在ですね。ここは絶対外せない。カナマリをちょっと強く出しすぎたかなというのもありますが・・・
もうちょっとダイヤを活躍させたかったですねー。
まぁそんなこんなで今回も妄想全開小説となりましたー
また頑張りますので宜しくお願い致します。
二〇二〇年 六月十一日 津地こう