俺は踏み台転生者   作:DECHIES

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IV

 帝都シュヴァールより少し離れた場所に位置するスラム街は今、地獄が発生していた。

 

「クソッ、逃げろ!」

 

 誰かの言葉によりその場にいたもの達は一斉に逃げ出した。それも当然の事だ。何せ今のスラムには夥しい量の魔物が流れ込んできているのだから。

 

 まるで怪物達の宴だ。喰らえ、喰らえと滾る獣欲を本能のままに解放して逃げ惑うスラムの民達に襲い掛かる。

 

「やめ、やめっ──うぎぃっ!?」

 

「ぎゃああああ!? 俺の腕がァ!」

 

「いや! 私はまだ死にたくな──」

 

 肉を喰い千切る音が鳴り響く。骨が噛み砕かれる音が聞こえる。様々な場所から悲鳴が上がり、それがより一層襲い掛かる魔物達の獣欲を昂らせる。逃げ惑う獲物の後ろ姿に狩りの本能が刺激されているのだ。

 

 スラムの地を赤く染め上げ、肉片がそこら中に散らばる。老人や子供、女性といった弱い者達から襲われては死骸を晒していく。

 

 ……あまりにも惨い光景だった。だと言うのに助けは来ない。本来国を守る騎士団は来る気配すら見せず、ただただ弱者であるスラムの民達は無意味に死んでいく。

 

 だが、それはこの国にとっては当たり前の事だ。あくまで騎士団が守るのは国だ。そしてこのスラム街は煌びやかな帝都の周囲に『勝手に作られた街』だ。故にこのスラム街は騎士団が守る国の括りには入っていないのだ。

 

 どれだけ騎士団がスラム街を守る為に動きたいと思っていようが皇帝が、貴族がそれを許さない。守られるべきは当然自分達だと思っているからだ。その為ならばスラム街に住む者達などいくら死のうがどうでもいいのだ。寧ろ、帝都周辺に存在する汚物を一掃するいい機会だとすら思っているのかもしれない。

 

 国からの助けは期待出来ない。

 

 それはスラムに住む者達ならば常日頃から知っている事実だ。それだけに今の状況がどれだけ絶望的なものか、身をもって体感していた。

 

「なんで……どうしてこんなに魔物が雪崩込んできてるの!」

 

 あまりにも惨い理不尽(現実)に嘆いたのはこのスラム街で暮らしているティアラ・ホライズンだった。彼女は己の操る魔法で必死に魔物達を倒し続けている。だが、まるで焼け石に水だ。魔物達の物量があまりにも多すぎるが故に倒した傍からわらわらと湧き続ける。

 

「直近まで魔物達の大暴走(スタンピード)の予兆はなかったはずだ! 少なくともこの街周辺にはこれほどの量の魔物はいなかった!」

 

 そう叫ぶのは彼女と同じコミュニティに属する家族の一人だ。彼はこの辺りの魔物達の様子を調べていた。そしてその結果、きちんと間引かれているためにこれほどまでの量の魔物がいないことを確認していた。

 

 だが、その事実とは相反してこの場にいる魔物達の量は数千からなる大暴走(スタンピード)と同じ数に匹敵していた。こんなものスラム街に住む高々住人程度ではどうにもならない。傭兵ギルドに所属し、名を挙げているものもこのスラム街にいるにはいるが、それでも多勢に無勢。あまりにも魔物達の数が多すぎる。

 

「てめェ等! 喋ってる暇あるなら手ェ動かして殺せ! この街が滅んだら俺たちはどちらにしろ死ぬんだぞ!?」

 

 身体中に傷を負った大男が血を撒き散らしながら吠える。そうだ、彼等が仮にここを逃げれば間違いなくこの街は滅びる。魔物達に蹂躙され、破壊され尽くしてしまえば最早住むことすらままならない。そうなってしまえばこのスラム街の住民達に行き場はない。行き場の無くなった弱い人間の末路など、火の目を見るより明らかだ。

 

 今魔物と戦って死ぬか、今逃げ出して後で魔物に殺されるかの違いしかない。故に少なくないもの達がどうせ死ぬかもしれないのならと魔物達と戦っていた。ほんの少しでも生き残る可能性があるのならばと戦い続ける。

 

 けれど、現実は余りにも無情だ。魔物達の大暴走(スタンピード)の量はあまりにも多く、とてもではないがこの街を守りきる事などはっきり言って不可能に近い。

 

「クソッ! クソッ! クソォッ!」

 

 殺しても殺しても数を減らさない魔物の量にスラムの住民達は徐々に徐々に絶望していく。倒れたもの達から魔物の餌になっていくのを見て心が悲鳴をあげる。つい先程まで話していたやつも、殴り合いの喧嘩をしていたやつも等しく魔物の腹の中へ収まっていく。

 

 絶望と嘆きだけがこのスラム街を満たし、傷つき疲弊していくティアラ達とは反対にますます獣欲を昂らせ牙を剥く魔物達。

 

 今のスラムの現状を変えることができるのは凡そ御伽噺に出てくる無敵の英雄か、或いは勇者だけだ。けれどそんなものは御伽噺の中の存在だけ──だったはずだった。

 

 

「──何をしている」

 

 

 溢れる絶望を、零れる嘆きを、流れる涙を拭う無敵の英雄(ヒーロー)が姿を現した。

 

 その声を聞いた瞬間、人も魔物も皆動きが止まった。まるで時間が止まってしまったかのようにぴくりとも動かない。否、動かせないのだ。

 

 家屋の屋根に立ち、此方を睥睨する男の声には怒りが含まれていた。その怒りの強さは彼が発する魔力が如実に現していた。

 

 本能のままに暴れていた魔物達がその圧力で動けなくなり、今目の前に己の喉笛に噛み付こうとする魔物がいるというのにぴくりとも体を動かせない住民達。

 

 魔物も人間も等しく同じ状態に陥っているが、その胸に抱く感情は全くの逆だ。

 

「──ゲーネハルト、様」

 

 見上げたそこに希望の光(ゲーネハルト)は存在していた。

 

 赫怒の炎で燃える殲滅の光輝が魔物達の行く末を照らしていた。それ即ち──

 

「消え失せろ」

 

 ──死だ。

 

 金と紅の双眸が煌めいた瞬間、無数の斬撃が魔物達へ向けて放たれる。たったそれだけで魔物達は容易く両断され、数を大きく減らしていく。

 

 放たれた斬撃はまるで意思を持っているかのように縦横無尽に駆け抜けて魔物だけを食い散らかした。だが、それだけではない。次いで放たれたのは光すら逃さぬ黒き閃光だ。

 

 ゲーネハルトが空に描いた魔法陣から雨のように黒き閃光が魔物へ向けて降り注ぐ。黒き閃光に当たった魔物はその体を一瞬で分解され消滅していく。

 

 その魔法の正体は別世界にて反物質(アンチ・マター)と呼ばれる物だった。故に如何に堅牢な鱗や毛皮を持とうが関係がない。何せ当たった瞬間、対消滅を引き起こして問答無用で消滅させられるのだから。

 

 加えて対消滅の際に発生したエネルギーは膨大な魔力へと変換されてゲーネハルトへと、より正確に言うのならば彼に引っ付いている()()()()()()()()()()()()()

 

 凡そ国一つ簡単に消し飛ばせる程の膨大な魔力の渦はほんの少し足りとも残さず精霊が飲み干す。それが分からぬスラムの民はゲーネハルトから尋常ならざる魔力が渦巻いていると錯覚していた。ゲーネハルトはそれを横目に見ながらも殺戮を続行する。

 

「魔物風情が我が帝国に足を踏み入れた事を死して後悔するがいい」

 

 爆発的に高まる赫怒と殺意。時が止まっていたように停止していた魔物達はその波動に当てられて今になって動き出す。逃走を図るもの、目の前の人間を少しでも喰らおうとするもの。スラムの民は同じように動き出し、少しでも抵抗しようと武器を構えるが──

 

「断ち切る」

 

 煌めく斬撃が今まさにスラムの民に襲い掛かろうとしていた全ての魔物を細切れにする。もはやゲーネハルトの剣に距離や障害物はまるで関係がない。

 

 スラムの民や家屋には一切の傷なく魔物だけを細切れにしていく様はまるで御伽噺の英雄だ。一騎当千という言葉すら当てはまらない。

 

 迫る魔物を斬殺し、逃げる魔物を閃光で消滅させていく。先程までとは何もかもが逆転させていく。ゲーネハルト一人で地獄を塗り替え、戦局をひっくり返した。

 

 それだけではない。

 

「戦えるものは戦え。己が住居を、親しき友を、愛しき者を守りたいのであればな」

 

 ゲーネハルトがそう言うと共に指を鳴らす。それだけで奇跡が引き起こされた。先程膨大な魔力を取り込んだ精霊がぶるりと震えると光を放つ。それに当てられたスラムの民達の傷が忽ち癒えていく。

 

 欠損していた部位も致命傷を負っていたものでさえ関係なく瞬く間に完治させる。それだけではない。再度精霊が煌めいた。すると──

 

「何だこりゃあ……」

 

「すげぇ、力が湧き出てきやがる」

 

「これならいける!」

 

 狂った光輝が民の瞳を焼き尽くし、盲目に(高揚)させる。

 

 己の体の底から力が無尽蔵に湧き出てきているのではないかと思ってしまうほどの力の奔流にスラムの民は酔いしれる。元より暴力に満ちていたスラム街だ。ともすればそんな莫大な力を認識し全能感から高揚するのは当然の結果とも言える。

 

 先程までとは逃げ惑っていた者も老人や子供、弱者であった者すら立ち止まり、そして魔物へと反撃し始める。その場に転がっていた角材などとてもではないが魔物を相手にするには心持たない武器でスラムの民達はその強固な絆から生まれる連携でもって倒し始める。

 

「グギッ!?」

 

「ゴァァアッ!?」

 

 本来ならそれでも力の差によって倒せないからこそ魔物は恐れられている。だが、それはゲーネハルトが埋めた。埋めてしまった。

 

 そして何よりも──

 

「全てを討滅する」

 

 ──ゲーネハルトが今此処にいるという事実が民に何よりも活力を与える。

 

 数による暴力はあっさりと逆転し、力の差による暴力もひっくり返った。ゲーネハルトの剣戟が魔物達を斬滅し、命からがらその剣戟から逃れたものも狂った光輝に当てられたスラムの民達の暴力によって狩られていく。

 

 状況は完全に逆転した。狩るものは狩られるものに変わり、狩られるものは狩るものへとなった。こうなってしまえば後は簡単だ。

 

 逃げる魔物を殺すだけの鴨撃ち(ダックハント)だ。

 

 迫る斬撃と閃光の嵐が魔物の群れを喰らい尽くし、逃れたものも民の尽力によってあっさりと倒される。逆転に次ぐ逆転劇。こうして魔物達による蹂躙劇はゲーネハルトによって粉砕され、終わる──かと思われた。

 

 ズゥンと地響きが鳴り響き、スラム街に巨大な影が落ちる。

 

「サイクロプスだと?」

 

 無敵の英雄が僅かに舌打ちを鳴らす。

 

 現れたのは単眼の巨人だった。スラムの家屋を軽く越すほどの巨躯に強酸性の涎を口からポタポタと零しながらどれから喰らおうかと品定めをしている。

 

 ゲーネハルトにとってサイクロプスなど敵ではない。その気になれば縦に一刀両断できる。だが、問題は場所だ。此処はスラム街だ。仮にここで真っ二つに両断しようものならその死体によって多くの民の住居が倒壊するだろう。

 

 閃光によって消滅させようにもあのデカさだ。まず間違いなく巻き込んでしまう。それはゲーネハルトとしても望む所ではない。

 

 それに少々気がかりなところもある。

 

「サイクロプス如きが転移出来るはずがないのだが……」

 

 サイクロプス程の巨体ならばどこに隠れていようが簡単に気がつける。だが、今の今まで気づきもしなかった。唐突に現れてサイクロプス自身も辺りを見回している様子だった。その上、どうやら腹も空かせているようだ。

 

 それにそもそも今回の魔物の襲撃も不可解だ。あれほどの大量の魔物、加えて生息地すら関係なく一堂に会する所を見るにあればかき集められていたものだとゲーネハルトは予測していた。

 

「人為的なものか」

 

 ゲーネハルトはそう結論付けた。何者かがこのスラム街を滅ぼそうとしている。だが一体何の為に? 言っては悪いが、こんな掃き溜めのような場所などあれほどの魔物を用意して滅ぼす必要は無いはずだ。

 

 得られる結果に対して掛かる手間が割に合わない。

 

「考えるのは後か」

 

 まずはこの巨大な人喰いから始末するべきだと頭を切り替えて殺意のみを滾らせる。その殺意にサイクロプスは本能的に反応し、殺すべくその手に持った大木を雑に成形した棍棒をゲーネハルトに向けて振り下ろす。

 

 本来なら回避してそのまま首を跳ね飛ばすが、此処はスラム街。避ければ家屋や民が傷付いてしまう。故にゲーネハルトが取った手段は真っ向から迎え撃つ事だった。

 

 振り下ろされた大木に向けてゲーネハルトはあろう事か剣を鞘に戻して素手で構えた。

 

「ゲーネハルト様!?」

 

 その姿を見て誰かが叫んだ。

 

 スゥッと深く息を吸い、迫り来る棍棒を見定める。そして棍棒がゲーネハルトを叩き潰すその瞬間。パンッと短い破裂音が聞こえると共に彼を叩き潰すはずだった棍棒はぐるりと軌道を変えてそのままの勢いでサイクロプスの側頭部に激突する。

 

 意識外からの攻撃によって脳を揺さぶられたサイクロプスの意識が揺らぎ、巨大な単眼が一瞬白目を剥く。そして倒れ落ちようとぐらりと体が傾いた瞬間、サイクロプスは強制的に意識を取り戻す羽目になる。

 

 内臓が爆発したのかと錯覚する程の強烈な激痛。その正体はゲーネハルトの拳がサイクロプスの巨体を空に飛ばすほどの威力で鳩尾にめり込んでいた。

 

 ベキベキと筋肉も骨も内臓も殴り潰す感覚を感じながらもゲーネハルトは拳を振り抜いてサイクロプスを空高く飛ばす。

 

 そして凡人にすら視認できる程の膨大な魔力がゲーネハルトの眼前に収束していく。構築されていく魔法陣からは漏れ出た魔力が黒き雷へと変換されバチバチと空気が弾ける音を鳴らす。

 

「死に絶えろ」

 

 放たれるは反物質によって構成された絶滅光。サイクロプスを構成している全ての物質と対消滅を引き起こし、抵抗すら許さず肉体が崩れ去り、塵すら残らず消滅させる。

 

 それはサイクロプスを消滅させるだけでは足りず、直線上にあった雲すら消滅させていき空の彼方へと消えていく。

 

 そうして残されたのはほんの少しの静寂と、そして──爆発的な歓喜の声だった。

 

「魔物は全て殲滅したか。お前もご苦労だったな」

 

 ゲーネハルトは民が喜んでいる姿を横目に見ながら褒めて褒めてと言わんばかりに彼の目の前をふよふよと浮いている精霊を指先で軽く撫でる。

 

 そうして精霊を軽く労ると魔物が此処にいた理由を探るべく未だに騒いでいる民を他所に立ち去ろうとする。が、その直前で聞き覚えのある声に引き止められた。

 

「あっ、あのゲーネハルト様!」

 

「ティアラ・ホライズンか。何の用だ」

 

 金と紅の双眸がティアラを貫く。先程まで戦闘していたせいか物理的な圧を感じるほどの圧力をゲーネハルトから感じる。その圧力に思わず足が竦んでしまいそうになるが、それでも彼女はその圧に屈さずに深く頭を下げた。

 

「私達を助けてくださってありがとうございます」

 

「……俺にそんなつもりなどない」

 

 深々と頭を下げるティアラに面食らった様に目を開くゲーネハルト。

 

「いいか、あくまで俺は帝国の敷地内で好き勝手暴れる魔物共が気に食わんから一掃しただけのこと。お前達を治したのも魔物共の足止めをさせる体のいい駒にするためだけに過ぎん。誰もお前達を助けるつもりできた訳では無いと知れ」

 

 矢継ぎ早にそう捲したてるゲーネハルトにティアラは柔らかい笑みを零す。

 

 ──口は悪いけれどあの時と全く変わってないなぁ。

 

 脳裏に浮かぶ彼がまだ英雄と称される前の事だ。ティアラにとっての大切な思い出であり、自分だけが知っている英雄となる前の彼。

 

「……ふん、俺は去る。精々下民らしくそこらで死んでいる小汚い魔物を剥ぎ取って小金稼ぎでもするがいい」

 

 ゲーネハルトはそれだけ言うとティアラや他のスラムの住民達が何かを言う前に何処かへ走り去っていった。その背中をスラムの住民達は見ながら互いに顔を見合わせて笑う。

 

「相変わらず素直じゃねえよなぁ」

 

「ククッ、違ぇねぇ。けど、それが何よりもゲーネハルト様らしいもんよ」

 

「全くだ。そら、てめェ等ゲーネハルト様が倒してくれた魔物から素材を剥ぎ取って金にするぞ。こんだけありゃ家屋の建て直しどころか食料を買ってもまだ余るくらいの金にはなるだろうよ。そしたらまあ、今回の件で死んじまった奴らに何か弔いでもしてやろうや」

 

 リーダーであろう大男の言葉に残ったスラムの民はおー! と声を上げる。

 

 少なくない犠牲を払った。それでも英雄がこんな掃き溜めに住んでいる俺達を見捨てずに手を差し伸べてくれたからこそ、こうして死んじまった者達への弔いが出来る。

 

 それに感謝をする事はあれど決して何故来るのが遅かったのかと責めるものはこのスラムには誰一人としていないだろう。

 

 本来ならこの街は魔物によって滅んでいたと誰もが分かっていたが故に。そして後に彼らは知ることになる。今回の件で裏に潜むものの思惑を。そしてその時こそ始まるのだ。かの英雄と共に革命の道を歩むことを。

 

 

 

 一方その頃英雄はというと──

 

 これはもしや魔王が活性化している合図では? けどそれを知らないスラムの民達には上手く行けば今回の件で帝国への不信感を抱かせて反乱を引き起こす事が出来るかもしれん。

 

 見えたぜっ、俺の革命へのサクセスストーリーが! 流石の勇者くんも革命が引き起こされたら否が応にも出て来ざるえないっ! 

 

 そうなってしまえば心優しいはずの勇者くんなら帝国の現状を見過ごすことは出来ようか。否、出来るはずがない。

 

 帝国の現状を知った勇者くんを後は帝国側に引き摺り込むだけの事。そうすれば帝国は勇者くんとその精霊の力によって救われる。

 

 加えて俺が死んだとしても勇者という強力な軍事力を持った帝国には何の揺らぎも生じない。それどころか俺より強いはずの勇者くんが帝国に所属することでより帝国の地位は強固なものになる! 

 

 この勝負、俺の勝ちだァッッッ!! 

 

 それはそうとスラム街に魔物を放った奴は本当に許せんからその命刈り取ってくれる……! 

 

 ──とまあ、割と壮大な勘違いと絶妙に真実に辿り着いていた。

 

 何せそもそも魔王は活性化していないし、というか何なら過去に彼自身が魔王に該当する魔物をボコボコにぶちのめしたせいで封印の中で引きこもっているのだから。少なくとも魔王は心の傷が癒えるまでは当分は表に出てくることは無いだろう。

 

 そんなことを知らない彼は上機嫌な様子で今回の件についての調査を進めていた。そして今回の件が魔王の活性化によるものでは無いことを知るのは革命が始まってしばらくしてからの事だ。

 

 その時の彼の様子は──まあ、語ることでも無いだろう。

 




実を言うと今回の事件が主人公達革命軍が復讐心から革命を決意することになる大事な場面です。まあ、何処ぞの英雄がフラグを丸ごとへし折って別のフラグおっ立てたんですけどね。

混沌魔法改め反物質ビーム。原作(架空)では着弾地点が大爆発する割と極悪な魔法だった。それを改良して爆発に回るエネルギーを精霊を介して全て魔力に変換してその魔力を精霊に吸わせてまた放つという永久機関になってる。極悪なことに変わりはない。
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