素直になれないけど、指揮官に甘えたいとは思っている雪風。
そんな雪風のちょっとした日常のお話。

1 / 1
素直になれば

「おーい、雪風。プリン買ってきたけど食うか?」

「プリン?そんなお子様みたいな食べ物、この雪風様には似合わないのだ」

「そうか。いらないのか。おーい、フィーゼ。プリン買ってきたから一緒に食べようか」

「だけどせっかく雪風様のために買ってきてくれたというなら――ま、待つのだ!いらないとは言っていないのだ!」

 

「おーい、雪風。一緒に遊園地行かないか?」

「遊園地?ふん、そんなとこ、大人な雪風様には相応しくないのだ」

「そうか……それじゃ、キュンネと行ってくるか。今回MVPは取ってないけど、最近頑張ってるもんな、アイツ」

「だが、そんなに雪風様と一緒に行きたいというなら――ま、待つのだ!行くのだ!行きたいのだー!」

 

 

 

「……という感じで、最近指揮官がいじわるしてくるのだ……」

「話聞く限り、指揮官は悪くないというか、雪風が一方的に問題だと思うんだけど」

 

 食堂。悔しそうな顔で愚痴をこぼす雪風と、彼女を呆れたような目で見る時雨。そして雪風達の話などお構いなしにご飯を貪っている夕立の姿があった。

 雪風と時雨。自称犬猿の仲の2人だが、こうして一緒にいることが多い。本人達は「仲は良くない!」と言っているが、互いに相談し合ったり、相手のアドバイスをしているのでとても仲が悪いようには見えない。ただの、互いに素直になれない友人といった感じだ。

 

「雪風がどんな女性像目指したのか知らないけど、傍から見れば面倒くさい奴にしか見えないと思うわよ。あのおバカさんがどう思ったかは知らないけど」

「うぐっ、わ、私だって指揮官と色々したいのだ!でも、簡単に誘いに乗ったらこの雪風様のありがたみが薄れる気がして……」

「そういうのを面倒くさいって言ってるのよ。指揮官に甘えたいなら、素直に甘えた方がいいわよ。あのお馬鹿さん、相当鈍いから遠回しな態度と言葉じゃ察してはくれないわよ」

「そういう時雨は素直に指揮官に甘えられているのか?」

「と、当然じゃない。おかげで指揮官はこの時雨様にメロメロなんだから」

「ん?でも時雨、この間指揮官に『ちょっとは察してくれてもいいじゃない!』って怒っモゴモゴ!」

「夕立、食べながらしゃべるのは行儀悪いわよ~」

「……素直に、か」

 

 ジタバタ暴れる夕立の口を塞ぐ時雨を見ながら、雪風はポツリと呟いた。

 

 

 

 翌日――

 

「指揮官、雪風様と遊ぶのだー!」

 

 執務室へ入るなり、雪風は一直線に指揮官に飛びついた。

 

「うおっ!?雪風、どうした?」

「どうしたって、何がなのだ?」

「いや、やけに素直に甘えてくるな、と思って」

「そ、そんなことはどうでもいいのだ!とにかく、雪風様と遊ぶのだ!」

 

 少し焦りを見せる雪風。

 指揮官はキョトンとしたが、すぐにプッと笑った。

 

「あぁ、分かった。それじゃ、とりあえず何をする?」

「まずはオヤツを一緒に食べるのだ。今日はダンケルクさんの新作が出る日なのだ!」

「お、そりゃ楽しみだ」

「ほら、早く行くのだー!」

 

 そう言って雪風は指揮官をグイグイ引っ張るのだった。

 

 

 

「ふぅ、楽しかったのだ!」

 

 雪風は自分の部屋に戻り、満足そうにそう言った。

 

「時雨のアドバイス通りというのが気に食わないが、たまには素直に甘えるのもいいものなのだ」

 

 雪風は今日のことを思い出した。

 

「素直に……」

 

 指揮官の膝の上に乗ってプリンを食べさせてもらったり、

 指揮官と手を繋ぎながら中庭を散歩したり、

 指揮官と一緒の布団でお昼寝をしたり。

 

「……」

 

 雪風はトコトコと布団まで歩き、ボフッと布団に倒れ込んだ。

 

「うわぁあああああああああああ!?わたしは、わたしは何をしていたのだぁ!」

 

 突如叫び声をあげ、雪風は布団の上をゴロゴロと転がり回る。

自分から指揮官に甘えに行き、指揮官にも思う存分甘やかされたことが今になって恥ずかしくなったようだ。甘えている最中も実は恥ずかしさはあったのだが、最初の勢いのまま突き進んだおかげで、指揮官といる間はそこまで気にならなくなっていた。部屋に戻って気が緩んだ今、一気にその恥ずかしさに襲われたのだろう。

 

「あ、あんなにくっついて……ち、違うのだぁ!違わなくはないけど違うのだぁ!」

『うるさいわよっ、雪風!』

 

 隣の部屋から時雨の怒鳴り声が聞こえてくる。どうやら、隣の部屋にも雪風の声が響いたようだ。

 

「うぅ、明日から指揮官にどんな顔をして会えばいいのだ……」

 

 今の状態で指揮官と顔を合わせれば、間違いなく普通ではいられなくなる。

 

「……これも……これも変なことを言った時雨のせいなのだぁ!」

『だからうるさいって!あと、なんで私のせいなのよ!』

 

 この日、重桜寮は、雪風の悲鳴と時雨の怒鳴り声で非常に賑やかであったという。

 

 

 

 1日だけ素直な雪風だったが、次の日からはいつもの雪風に戻ったことは言うまでもない。

 




誤字脱字・文章の誤りがありましたらご指摘お願いします。
コメントなどもいただけると、画面の向こうで悶えて喜びます。

よろしくお願いします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。