私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第玖話 妖怪のご飯ってアグレッシブ

 

部屋へいきなりドッと現れた大量の妖怪に私と椿は互いに震えながら抱き合う。突然現れた事にもビックリしてるけど、やっぱり普通じゃ見慣れない常識外の存在を目にするって実際体験するとかなり怖い!

 

「あ、あばばばばばば・・・」

 

「うぅぅぅぅ・・・」

 

すると、ろくろ首の妖怪さんがしょんぼりした様子でクニャリと長い首を曲げながら謝ってきた。

 

「あぁ、ごめんごめん椿ちゃん!久しぶりに人間の子が来ちゃったのもあったから張り切っちゃったけど、そんなに怖がるなんて・・・やっぱり昔の記憶が無いんだね」

 

『これこれ、首を引っ込めろ。2人とも怖がっとるじゃろ』

 

白狐さんに言われて私達の周りまで首を伸ばしていたろくろ首さんはガッカリしながら首を戻していった。

 

良かった、とりあえず落ち着――

 

「椿ちゃ〜ん!私の事も忘れたの?」

 

「ひっ!?」

 

「にょわあ!!」

 

安心しそうになった瞬間、今度は此方を覗き込むようにしてヌッと女の人が姿を現した!ビックリしたあ!!

 

一見普通な感じに見えるけど、よくよく見ると肌が人間にしてはやけに白くて髪も私以上に白い。そして何よりこの人が現れた瞬間からゾクゾクとした寒気を感じる。

 

『離れんか!寒いじゃろうが、雪女!』

 

「うぅ、椿ちゃん。昔は全然怖がらずに、一緒に遊んでくれたのに・・・」

 

「いや急に出てこられたら誰だってビックリすると思いますよ」

 

椿は申し訳なさそうに顔を項垂れさせた。昔の記憶が無いからってのもあるだろうけど、向こうがいきなりビックリさせてくるんだから謝る必要は無いと思うよ、うん。

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

「やれやれ、ショック療法で恐怖を薄れさせてやろうと思ったが・・・無理か」

 

「いやいや余計に怖いですけども!?」

 

本人に事前の許可すらなくそんな真似するんじゃありません!そして完全に驚かすまで私が居る事すら忘れてませんかね、皆さん!?

 

色々と我慢の限界になって怒ろうとするが、そこで私達はある事に気づいた。

 

「「お、お腹空いた・・・」」

 

そういえば、昨日の朝から多分寝たきりで何にも食べてないんですよね。突然の出来事だらけですっかり頭から抜けていたけれど。

 

「むっ?椿、まさか昨日も何も食っとらんのか?あやつら・・・やはり幽閉せねばならんか」

 

椿の為に怒ってくれるのは嬉しいけれど、今回のに関しては気絶してる間に遠くまで運んできた誘拐まがいですからね?

 

『翁よ。それよりも2人へ飯を用意してくれんかの?さっきから可愛らしい腹の音が鳴っとるわ。ずっと聴いておきたいが、流石に可哀想じゃからな』

 

白狐さんが私達の後ろへ回って優しく尻尾で抱きしめてくれた。なんというか、1日2日くらいしか差が無いハズなのに妙に安心する。

 

『白狐よ変われ』

 

とか尻尾の夢心地に浸っていたら、黒狐さんがなんかピリピリした様子でいらっしゃる。あ、椿を嫁にするとかどうたら言ってたから嫉妬か!嫉妬してるのかコイツ!

 

『嫌じゃ。黒狐よ、お主は優しさというものが足りんのじゃ。学校での不手際といい、もう少し女子への扱いを心得たらどうじゃ?』

 

『ぬぬぬぬ・・・』

 

白狐さんも煽んない、煽んない。2人からしたら険悪さに拍車かかるかもだけど、私はどうせなら黒狐さんにも尻尾でモフモフして欲しいと思ってるよ。さっきまでの怖さが薄れていくからね〜

 

「あ、あの・・・黒狐さんは悪い妖怪が現れた時に、すごく頼りになって安心するから、その時にお願いしていい?」

 

『なっ!?』

 

きゅる〜ん!とした椿の上目遣いを見て黒狐さんが顔を真っ赤にする。でもその中に嬉しそうな感じもあるから、長生きしてるにしては案外ウブな所があるんだね。恋愛モノ観てる感じしてニヤニヤしそう。

 

『フッ、フフ・・・白狐よ。やはり我が有利なようじゃ。上目遣いをされたぞぉぉぉぉ!!』

 

って喜ぶポイントそっちかい!確かに私も可愛い子の上目遣いとかでお願いされたら嬉しいけども!それでも頼られた事に対する反応であって欲しかったよ!!あー、あまりの嬉しさに鼻血出して気絶してらぁ。

 

『うぬぬぬ!椿よ、我にも上目遣いを!』

 

「えっ?・・・こ、こう?」

 

『うぉっ!?な、なんと・・・』

 

そして何の恥ずかしげもなく椿に上目遣いを頼んで、バキューン!って擬音が聴こえる感じに鼻血出してぶっ倒れやがりましたよ白狐さん!

 

「よし!儂の事も含め、話は食事の席でする事にしよう。里子!」

 

「あっ、は〜い!翁、私が椿ちゃんの給仕係をすればいいんですね?」

 

「うむ、相変わらず話が早くて助かるわ。お前はまだ人に近い姿をしておるしな、頼んだぞ」

 

そこで伸びてる駄狐2人を華麗にスルーして、いっぱいいる妖怪の中から1人の女の子が顔を出した。

 

くりくりとした瞳に茶色のくせっ毛なセミロングで可愛らしい顔だ。だけど、妖怪達の中から出てきたって事は・・・この子もまさか、ね?もう騙されませんよ、例え身体がキリンさんやゾウさんだったとしてもビビらないよう心を構えておくよ!

 

――と思っていたら、実際に出てきた姿は顔に似つかわしくこれまた可愛らしいもので、昭和時代のオカンが身につけてそうな給仕服・・・割烹着を着てその上からエプロンを付けていて普通だった。

 

唯一妖怪らしいって思える部分は、椿と同じように頭から白い犬みたいな耳がピョコリと生え、お尻からも白い尻尾がフリフリと覗いている所だけだろうか。

 

「か、可愛い・・・」

 

「あっ、其方の人間さんはとにかく椿ちゃんは忘れちゃってるよね?私は狛犬見習いの里子だよ、よろしくね!」

 

「あ、よ、よろしくね。里子ちゃん」

 

「私は烏森綾だよ。これからは綾で十分だから、よろしくね〜」

 

あぁ良かった、とっても良い子そうだ。まだ他の妖怪さんに慣れていないので、彼女みたいな見た目なら安心出来るよ。そして案の定というか、里子も椿の事をよく知っているようだ。

 

でも、椿はそれを思い出せない。

 

私にはなんとなくだけど・・・忘れてしまった方の悲しみも忘れられてしまった方の悲しみも、まるで自身の事みたく思ってしまって他人事のようには感じられなかった。

 

「あ、いけない!オジサンに遅くなるって連絡しとかないと!」

 

「何じゃ綾、そういう事なら既に儂から伝えておいたぞ。あやつも儂の古い知り合いじゃからな。」

 

「えっ?オジサンの事を知っているの?」

 

意外な人物との関係がある事に私は目を丸くした。そんな事、オジサンは今まで一度も教えてくれなかった。

 

「さっ、とりあえず飯にするか。里子、用意は?」

 

「とっくに出来てますよ〜翁!皆お寝坊さんだからね〜」

 

里子が元気良く尻尾を振りながら答えた。

どうやらオジサンに負けず劣らず、早起きが得意なんだろう。どうしてか里子のその姿は、通学路で見かける可愛らしいシーズーのそれを思い出させた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「は〜い!こちらで〜す!」

 

里子に案内されて通された部屋は、旅館の宴会場みたいな広さがある和室で、既に白狐さんや黒狐さん、そして椿と私の分の料理が用意されていた。私と椿の料理は普通なのに、白狐さんと黒狐さんの所はいなり寿司ばかり置いてあったのが気になるけれど。妖怪にも栄養バランスというのがあるならアレは良くなさそうだ。

 

ご飯や味噌汁は食べる直前に里子がよそってくれ、正しく出来たてな雰囲気がある朝ご飯が並ぶ。料理も焼き魚におひたしと和そのものを感じさせられ食欲がそそられた。

 

「こ、こんなしっかりとしたご飯。ひ、久しぶり・・・」

 

「ご飯が柔らかくって甘い〜!」

 

「おいおい、これでも質素な方じゃぞ。全く、椿に奴らは重ね重ねけしからん事をしとったのか」

 

椿の言葉に過剰な反応を示す彼女のおじいちゃん。すぐにやばいと気づいたのか、椿が別な話題を持ち出す。

 

「あ、そういえば。おじいちゃんって、どんな天狗なの?」

 

「確か天狗って一言で言っても色々な種類がいるんだっけ?えっと、鴉天狗とか木の葉天狗とか」

 

「翁は、鞍馬山にいる大天狗なのよ」

 

すると里子が椿にご飯の入った茶碗を手渡しながら代わりに答えてくれた。

 

「へぇ〜鞍馬山ね〜・・・鞍馬山!?山の天狗のトップって事!?」

 

『そうじゃ、天狗の大本締めじゃ』

 

やばいよ私!椿と一緒だったからとはいえ、初対面で気絶しちゃったりとかやらかしてたよ!

 

「や、やっぱり。そんなすごい天狗だったんだ・・・」

 

そう噛み締める椿だったけど、すぐに白狐さんの発言に違和感を感じてそれを口に出した。

 

「あれ?そうなると、おじいちゃんは僕のおじいちゃんでは・・・」

 

「うむ、違うぞ。すまんの、記憶の無いお前を不安がらせないようにと・・・咄嗟にそう言ったんじゃ」

 

椿のおじいちゃん――鞍馬の天狗は申し訳ない様子で椿に謝った。けれど椿をいじめていたあの家族と比べたら、彼女を想っての事だから私は何も怒りは感じなかった。私だって、オジサンが本当に自分の血縁者なのかすら分からないけど、それなり以上に肉親のように感じている。

 

そんな事を考えていると、里子が味噌汁を私達に手渡してくれた。角が欠ける事なく綺麗な形で浮かんでいる木綿豆腐は可愛らしい口もあってとても・・・ん?口?

 

「ねぇ、里子ちゃん。お豆腐さんに口が付いているのは気のせい?」

 

「結構可愛い豆腐っぽいけど、どうやって――」

 

「あっ!早く食べないと齧られますよ」

 

里子が慌ててそう言った途端、ガブリ☆という音と共にその口元をつついていた私の人差し指へ噛み付いてきた!

 

「いだだだだだぁ!か、噛み付いてきたんだけどぉ!?」

 

『ピィギィイイイ!』

 

「あ〜・・・だから言ったのに〜!闘夫(とうふ)さんは気性が荒いんですよ。身体の悪いものをやっつけてくれる良い「妖怪食」なんですけどね〜」

 

なんか今「とうふ」の発音が変だった気がしますけど!?っていうか「妖怪食」って何!?

 

「これ、里子!普通の豆腐にしろと言ったろうが。ほれ、椿も綾も慣れてないんじゃ、察してやれ」

 

「は〜い・・・」

 

鞍馬の天狗に叱られた里子はショボンとして味噌汁を片付けていく。あ、私の指にかぶりついた豆腐はいつまでも離してくれなかったのでそのまま口に突っ込んで食べてやりました。おかげでなんかネズミに噛まれたみたいな傷が出来たけどね・・・

 

なんというか、人間と妖怪ではあらゆる所にギャップを感じる気がする。

 

「さて、椿よ。もう察しておるだろうが、お主の本当の父と母は別におる。2人とも悪い妖怪を退治するエキスパートでな、よくお前さんをここに預けていたのじゃ。だから、妖怪の皆がお前さんを知っとるのも此処で生活していたからじゃよ」

 

これまた意外過ぎる事実が出てきたよ。椿の本当の父や母が、この間やったような妖怪退治を生業としているなんて私には想像すらつかなかった。

少なくとも妖怪を知るまでは、椿は実の親を何らかの理由で失って養子として引き取られていたと考えていた。

 

「それよりも、此処ってそもそも何なの?沢山妖怪が住んでるみたいだけれど」

 

「うむ・・・此処はの、人間界での妖怪の住まいとなっとる。妖怪達にも厳しい法律や規則があってな、無闇に人間界には住めんのじゃ」

 

「なるほど、要は賃貸住宅みたいな感じですか」

 

妖怪の世界というのも、人間の世界と一緒でなかなか生きるのに苦労してそうだ。

 

「此処はその厳しい基準をクリアした所でな、儂はその管理を任されておる。中には、人間界で仕事をしたりしとる奴もおる」

 

はぁ。なんかこうやって聞いてみると、違うのは超能力があるか無いかと姿くらいで、実際は外国の人達と似たり寄ったりなんだね。

 

そして椿、トゲトゲしたりしてる里子のご飯が気になるのは分かるけど、もうちょっと話をちゃんと聞こうね?君の話をしてるんだよ?

 

「それでの、お前の父と母も此処でしばらく暮らしとった。それだけの話じゃ」

 

「ふ〜ん・・・ほうなんだ」

 

椿はあまり実感が湧かないまま、魚を頬張りながら答える。

 

「まぁ、記憶の事は深く考えるな。本当はお主しか知らない、ある場所の情報が欲しかったのじゃが・・・しょうがなかろう。あいつ等の意志じゃからな」

 

「わかった・・・でも、本当のお父さんとお母さんがどんな人だったのかは知りたかったな」

 

椿の言葉に鞍馬の天狗は顔を一瞬しかめてから、再び椿へ「おじいちゃん」としての顔を向けた。

 

「いや、あいつ等は思い出して欲しくはないだろう。辛いだろうが、気にするなとしか言いようがない」

 

「なんだって?それはどういう意味なの?」

 

「そ、そんな・・・」

 

訳が分からない。それほどまでになる何かが昔に起こったというのだろうか、そしてそれは椿にすら知らせられないくらいに重い出来事なのだろうか。

 

「まだ、何とか抑えとるからの・・・」

 

鞍馬の天狗が最後に小さく呟いたが、私はあまりそれ以上を聞かないようにした。

 

彼だって、本当は辛いんだって思ったから。

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