私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾玖話 怨念がおんねん・・・と?

 

とりあえず試行錯誤の結果、外で何かあった際に対応出来るよう黒狐さんを向こうに残して、白狐さんが周囲にバレないようぬいぐるみの姿で椿と行動を共にする事となった。

 

裏手に開けられた穴からは異様な空気が漂ってくる。

 

『ふん、ついでに妖気までプンプン漂っとるわ。人間が近づけんのを良い事に、悪霊や妖怪共が集まっとるようじゃな』

 

「うっへぇ・・・こんなのが任務だったら、かなり難易度は高くなってるかもな」

 

私と白狐さんの言葉に、つい椿はぬいぐるみが変化している白狐さんである事を忘れて強く抱きしめてしまう。ふと考えてみれば今椿は白狐さんに胸を押し付けてしまっている訳で、きっと嬉しいのでは――って、ぬいぐるみの姿で鼻血出しとる!

 

『ふ、ふふ・・・役得じゃ。ジャンケンに勝った者の特権じゃな』

 

「鼻血出しながら言われてもなぁ・・・」

 

「というか、絶対そうなる事を予想してぬいぐるみになりやがったなエロ狐め!」

 

そんな駄狐の様子を見ながら、椿に着いて行く方を決める際に彼ら2人のジャンケンの殺気立った両者が面白くて笑いを堪えていたのを思い出す。

 

「そして、何で2人も着いて来るんですか?」

 

椿は更に、後ろへ着いて来ているカナと雪にも声をかけた。彼女達には家の中が危険だから外にいて欲しいと頼んでいたはずなのだが、どういう訳か2人ともやる気満々な顔で着いて来ている。

 

「椿ちゃんと綾さんだけで、男子達を連れ出せると思ってるの?」

 

「何かあっても、守ってくれるんでしょ?」

 

雪からも、そんな信頼されるような言葉をかけられるとは思っていなかった私達は少し驚く。

 

「でも、如月さ――」

 

「雪、で良い。大丈夫、戦闘は出来るから」

 

「うん、分かったよ・・・えっと、雪ちゃん。戦闘が出来るって言っても、妖具は何処にあるの?」

 

「・・・これ」

 

そう言って雪が右手を見せると、中指に雪の結晶っぽい形をした指輪が付けられているのが分かった。指輪からは多少の妖気と冷気が放たれており、それが雪女の妖気を込められた特殊な物であると感じさせる。

 

「だから、邪魔にはならない」

 

「なるほどね、ちょっと安心したよ。全く、美亜にも2人の勇気を見習って欲しいもんだ・・・」

 

なんというか、こういう時に限って美亜はまた怖い場所だと認識して、この家に一歩も踏み入れる事が出来ずに外で待たされているのである。

「怖がってなんかいない」と仁王立ちして家の姿を見た瞬間に崩れ落ちる様は即落ち二コマか何かかと思ったくらいだ。

 

何はともあれ、ずっとこうしてのんびりしている訳にはいかない。亜里砂との会話で少し無駄な時間を使ってしまった事も考えていると、家の中から男子の悲鳴が聞こえてきた。ああ、やっぱりダメだったよ・・・。

 

「椿ちゃん!綾さん!早く行こう!」

 

「ああ!自業自得な事とはいえ、早く助けないと!」

 

「うん、カナちゃん!白狐さん、少しでも危なそうだったら言ってね」

 

『分かっとるが、お主ら自身も注意を払えよ』

 

「了解、とりあえずヤバいと思ったら近づかないようにするよ。ひとまず私が先に入って、2番目に椿って順番で」

 

そうして私は結構低い位置に開けられた穴を這いつくばる形で通り抜け、続けて椿も白狐さんを抱きしめたまま私の後に出てくる。

 

「ん、しょ・・・っと」

 

「大丈夫、椿?白狐さんの方は――また鼻血出してるだけだから放っとこう」

 

彼が再びそんな事になるとは、椿が穴を通る際に胸で押し潰されかけたからなのだろうか。

ふと、椿が自身の身体つきを見ながら白狐さんへ質問した。

 

「白狐さん。毎回思うんだけどね・・・僕のあんまり発達してない身体の、一体何処が良いの?」

 

『ぬぅ、何処がだと?分かっていないな、椿よ。成長途中の身体こそ、これから育っていく様を見られるのだぞ!完成しきったものに――』

 

「むぎゅっ」

 

『ぬぉっ!?』

 

「わーお、椿が珍しく白狐さんを黙らせた・・・」

 

椿の腕の中で、よりぎゅっと強く抱きしめられて悶絶した白狐さんの声に、つい私はポカンとした声をあげた。

 

白狐さんにツッコミのチョップを喰らわせようにも家の中があまりに暗く、繋いでいる椿の手を離したらはぐれてしまうのではないかと心配になる。

 

「カナちゃん、懐中電灯」

 

明かりが必要そうだと思っていた時、そういえば懐中電灯はカナが持っていた事を思い出した椿が彼女へ声をかけた。

 

しかし、呼んでも彼女が来る気配が無く、いよいよ不安になってきた私達が振り返ると、そこには穴から上半身だけ出してもがいている様子のカナが居た。

 

「ご、ごめん!2人とも、手伝って!お尻が引っかかって・・・う〜!」

 

「ええ・・・な、何やってんの」

 

「この、デカケツ。早くして」

 

「きゃっ!待って雪!お尻は叩かないで〜!」

 

呆れる私の声に続いて、壁の向こうで雪が不機嫌声でカナの尻を叩いた。なんというか、緊張感が無くなるなぁ・・・。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――それからしばらくして

 

ようやくカナも穴を通過し、その後に雪も続いて入ってくる。どうやらカナの方はズボンが引っかかってしまっていただけなようだ。

 

「も〜お尻は関係なかったじゃん!」

 

そう不貞腐れながらカナが懐中電灯で辺りを照らすと、何かに気づいた椿がビックリした声を上げる。

 

「うわっ!何これ!?」

 

「えっ?一体――って、何じゃこりゃ」

 

懐中電灯の明かりで照らされた所を見てみると、なんと私達の居る和室全体に魔除けの札らしい紙が至る所に貼り付けられていたのだ。

 

更にカナが廊下へ続く扉の横にある布団入れの隙間に懐中電灯を向ける。黒い毛糸のようなものが垂れているようにも見えるが、あれは一体何なのだろう?

 

「ねぇ、椿ちゃんに綾さん・・・あそこの布団入れの隙間から、何か出てるよね?あれって・・・」

 

「あ・・・ひ、人の髪の毛?」

 

「いやいや、そんなの有り得ないでしょ。きっとこの扉を開ければ正体が分かるはず」

 

そう言って私は同じく怖がっている素振りのない雪と共に布団入れの前まで行って、バーン!と音が鳴る程に思いっきり扉を開け放った。

 

「少しは怖がってよ、綾ちゃんも雪ちゃんも!」

 

「こういうのは先手必勝が基本なんだって!」

 

「――あれ?これ、日本人形?髪長い・・・」

 

雪が布団入れの中にある物を見て不思議そうにしている。私も彼女の見ている方へ視線を向けると、確かに気持ち悪い気配のするボサボサに髪が伸びまくった日本人形がある。

 

「2人とも。お願いだから、もうちょっと警戒してよ」

 

「そう言われてもなぁ・・・」

 

「何で?何かあっても、あなた達2人が反応するでしょ?」

 

「ま、喧嘩なら私も居るから何とかなるっしょ」

 

何故注意されたのか分からない、といった顔をする雪に私もある程度のフォローを入れた。

 

『なるほど。綾並みの、中々に肝っ玉の据わった娘じゃな・・・』

 

「感心しないでください、白狐さん・・・こういうフリーダムな人は綾ちゃんだけで十分です」

 

「私、椿からそんな感じに思われてたの!?」

 

フリーダムと言われれば確かにフリーダムな気がするが、それでも喧嘩だって振りかかる火の粉を払うくらいの感覚で対処してるだけのつもりだ。

とはいえ、雪の私達に対する厚い信頼感は本当に白狐さんの言う通りだとも思う。

 

ついでといえば少しおかしいが、日本人形を見つけた布団入れからは妖気を感じ取れなかった代わりに、私達はある物を感じ取っていた。

 

「綾ちゃん、雪ちゃん。その人形には触らないでね、ちょっと・・・怨念が凄いから」

 

「分かった」

 

「了解、椿。怪しい人形だけに、怨念がおんねん・・・と?」

 

「綾ちゃん、それ寒いよ」

 

「私の冷気より寒い」

 

「うっそーん・・・雪女よりも寒いか、私のギャグ・・・」

 

少し余計な事を言って自爆してしまったが、とりあえずこれ以上は何もなさそうだと判断し扉を閉め――たはずなのだが、隙間に何かが挟まったのか上手く閉まらない。

 

よくよく挟まっているものをみると、それは人形の指だ。おかしい・・・さっきまで身動きをとる気配は感じられなかったと思うのだが。

 

「・・・頑丈に、閉めた方が良い?」

 

「そ、その方が良いかもしれません」

 

「いい加減扉を閉めさせろや、オラァ!!」

 

ほぼほぼ力ずくで私はその扉を完全に閉じた。

 

少しでも早く男子共や先生を助けに行かなければならないというのに、こんな変なのに時間を割いている訳にはいかない。

 

「椿ちゃん、綾さん・・・とりあえず行こう。男子が悲鳴を上げたのはこの奥の部屋みたいだから、割と早くに男子達を連れて脱出出来そうよ」

 

「変な気配ばっかりしてるけど、上手くいってくれるかなぁ」

 

それだけではなく、亜里砂の事もある。

とはいえ、彼女がヤバい奴の復活の為に何を探しに来ているかは知らないが、この家で起こっている怪奇現象とかに関わっている様子は見られない。

 

「考えてても仕方ない、なるべく早く助けに行かないとね!」

 

「うん!とにかく、最悪の事態にはならないようにしよう!」

 

「そうだね、2人とも――って、雪?さっきからどうしたの?」

 

「いや・・・髪の毛が」

 

椿が和室の扉を開こうとした時に雪が呟く。

私達がすぐに振り返ると、なんと布団入れから伸びてきた大量の髪の毛が私と椿の足を絡めとっていたのだ。

 

「あ〜駄目ですか・・・これを先に何とかしないといけないのかな」

 

「しつこい人形だな、もう!どうしてそこまで怨念を溜め込んでんのか知らないけど、私達の邪魔をするなら容赦しないよ!」

 

頭をかきながら私は布団入れの方を睨みつけた。

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