私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾話 使い魔もどき

 

――それから少しして

 

「椿ちゃん。いつの間にか、お化けとかも平気になってきたね・・・」

 

「えっ?あぁ、そうだね。今回は割と平気かな」

 

「そりゃあ、普段から妖怪だらけの家に住んでりゃね・・・」

 

私と椿はあの後、髪の毛を絡ませてきた怨念で動く人形に対して、小次郎の燕払いと椿の黒焔狐火で一蹴したのを見たカナへそう答える。

 

出てきた瞬間こそ確かにビックリはするが、対処法が分からない相手ではないので本当にただビックリさせられるだけなのだ。

それに今回は綿密に作戦を立ててある上に、白狐さん達からのサポートもついているので怖く感じる要素は何一つ無い。

 

「・・・残念」

 

「「何が(ですか)?」」

 

椿の怖がる姿を見たかったのか、残念そうな顔でカナががっくりと肩を落とした。

 

「バカな事言ってないで、早く男子共をあそこから救出しないと」

 

和室から出た私は、男子の悲鳴が聞こえた奥の部屋の方へと目を向ける。

しかし、相変わらず幅の狭い廊下は薄暗く、更には天井から廊下に1列に並ぶようにして信じられない物が吊り下げられているのが見えた。

 

――それは、木で精巧に作られた立体的な人形だった。

 

「うわ、何これ・・・」

 

私達の後に続いて出てきたカナも訝しげにそれを懐中電灯で照らした。照らされた事ではっきり見えたのだが、その人形の列はどうやら玄関の方からずっと続いているらしい。

 

男子の悲鳴が聞こえてきたのは、その玄関から一直線に進んだ先にある広そうな部屋からであった。

 

「カナちゃん・・・此処に最後に住んだ人って、この家の異常さに気づかなかったの?」

 

「ううん。私が聞いた限りだと、この家の状態は最後に此処に住んだ、ある霊媒師の人がやったらしいのよ」

 

「霊媒師がこんな悪趣味なお化け屋敷に改造する程って・・・これも何か意味があったのかな?」

 

「う〜ん・・・その霊媒師の人もおかしくなっちゃってたみたいだから、この飾りも全く意味がないかもしれないわね」

 

「とにかく、奥の部屋に行こうよ」

 

カナが吊り下げられた人形の横にある奇っ怪な模様をした札を見ているのを、私も気になって眺めていると椿が呼びかけてきた。

 

ギィ、ギィと踏む度に軋む床に寒気を覚えながら進んでいくと、奥の部屋の方から男子共の必死で叫ぶ声が聞こえてきた。

 

「先生!しっかりしてください先生!!」

 

「おい、誰か人を――いや、槻本さんとゴリラ女呼んで来い!」

 

「あ、亜里砂ちゃん、き、君は何で・・・あんな事を」

 

なんかイラッとくるアダ名を呼ばれたような気もするが、そんな程度で諦めていたら話にならない。その叫び声から察するに、付き添って来ていた亜里砂のクラスの担任が、彼女に何かされたのかヤバい事をやらかしたようだ。

 

すると、部屋から男子の1人が飛び出して来て私達の姿に安堵した様子を見せてから、カナと雪を見て困惑した表情を浮かべる。

 

「あっ!槻本さんにゴリラ女!えっ、それにお前達まで・・・なん――ぐぇ!?」

 

「私の呼び方だけ訂正してもらおうか」

 

とりあえず、コイツにはゴリラ女と呼んだ事についてゲンコツで制裁させてもらう。そしてカナと雪が男子へ自分達が此処に居る事情を説明した。

 

「椿ちゃんと綾さんが、あんた達と危ない所に行くって言うから後で合流する約束をしていたのよ。そうしたら、悲鳴が聞こえてくるんだもん」

 

「だから、言ったのに・・・」

 

今のこの2人には全く同感だ。

 

どうして椿や私に対してここまでフレンドリーに接する事が出来る彼女達が、クラスでは距離を置いているのかも何となく理解出来る・・・というよりも、共感出来る。

 

私はこういう馬鹿な連中が馬鹿な事をやらかす、という学校では良くありげな光景に嫌悪感を感じているのだ。何の意味もなく無茶をして、何の意味もなく酷い目にあって・・・そうやって互いに笑い合える仲というものを信用出来ない。

特に今回は亜里砂に誑かされた奴ばかりなので酷く感じる。

 

――それでも、まさか亜里砂が妖狐であった事には意外過ぎたが。

 

「そんで、先生が一体どうしたんだよ?」

 

「あっ――そうだ!あ、亜里砂ちゃんが、先生を挑発して。部屋の中の、ある場所に――」

 

「あら、私がどうかしたの?」

 

男子がパニックを起こしつつ私達へ説明しようとした瞬間、その男子の後ろからニタニタとしたあの嫌らしい笑みを浮かべた亜里砂が姿を現し言葉を遮る。

 

「亜里砂ちゃん、先生に何を?」

 

「べ〜つに〜?あの鏡の中に私の探し物が無いかな〜って思ったから、先生に探ってもらっただけ〜」

 

「この、クソ女・・・!」

 

「さっ・・・1階はこれで全部だし、次は2階に行くわよ。着いて来なさい」

 

「えっ、で、でも・・・先生は?」

 

「ほっときなさいよ」

 

椿の言葉に悪びれる様子すらなく、無関係な人を自身の欲望の為に使い捨てた亜里砂に、私は睨みつけるように怒りの眼差しを向ける。

すると、奥の部屋から男子共がぞろぞろと現れて亜里砂の後ろへと着いて歩いていく。

 

「皆!おい、どうしたんだよ!?」

 

どうやら先程亜里砂が何かしたらしく、私達に助けを求めてきた男子が必死に他の男子共へ呼びかけても反応1つ見せない。

 

私達はこれ以上亜里砂に好き勝手をさせまいと思い、すぐに彼女を捕まえるべく行動を起こした。

 

「妖異顕現、"影の操"!綾ちゃん、白狐さん、今の内に!」

 

「分かった!力を貸して、小次郎!」

 

『うむ・・・!しかし、相手は九尾の狐。我でも勝てるかどうか・・・』

 

「勝てなくても、此処から追い出すだけでも良いんです!」

 

「呼び出されて来てみれば・・・"綾"、危険ですので私の後ろに下がっていてください」

 

「え、うん・・・」

 

普段とは全く違う様子の小次郎と共に、白狐さんも私達の前に立って構える。椿が自身の影を操って亜里砂の動きを封じようとするが――

 

「ふふ、やる気なの?・・・分かってるの?私はね、そこの"使い魔もどき"やあなたの中にいる弱った九尾の狐じゃないわよ――力を持った九尾の狐よ」

 

なんと亜里砂は椿の妖術を意にも介さず、ゆっくりと此方に向かって歩いてくる。

 

「ひとまず、私は其方の狐のお嬢さんの言う通りに踏ん張ってみるとしよう」

 

『そうだな、綾の使い魔よ。とにかく何があっても、此奴の思い通りにさせる訳にはいかんな!よし、何とかセンターの応援が来るまで、我らで持ちこたえ――』

 

「――妖異顕現、"千針爆"」

 

白狐さんがぬいぐるみの変化を解いて小次郎と亜里砂を迎え撃とうとした瞬間、私の身体に大量の針が刺さった感覚と共に、そこからかんしゃく玉を爆発させたような衝撃と痛みが発生する。

 

気がついた時には私は椿に抱きとめられ、白狐さんと小次郎も大きく後ろへ吹っ飛ばされてしまっていた。

 

「綾ちゃん!!白狐さん!!」

 

「げ、ほ・・・な、何だ今の!小次郎、生きてる!?」

 

「と、とりあえずはな。なんと恐ろしいまでの妖術の速度だ・・・」

 

『ぬぅ・・・くっ、我も大丈夫じゃ椿。我は体術に優れておるし、治癒妖術もある。これくらいではやられん!』

 

吹き飛ばされつつも2人は踏みとどまって啖呵を切る。しかし、次に私が前を見たのと同時にカナが叫んだ。

 

「椿ちゃん!前見て!アイツが居ないよ!」

 

「っ!しまった、見失った!」

 

「ーーっ!?」

 

だが次の瞬間には、椿が吹っ飛んでおり続けて私の腹部にも鋭い痛みと激しい衝撃が走る。いつの間に私達の不意をつける場所まで移動したのだろうか。

 

「ぐっ・・・あ、ぎ・・・」

 

「い、つつつ・・・うぅ、本気で殴られた・・・というか、いつの間にか僕達の後ろにいたの?」

 

「白狐さんや小次郎の心配してる場合じゃなかったな、こりゃ・・・いって、ぇな」

 

その攻撃で椿は奥の部屋まで飛ばされ、私もその扉近くまで蹴り飛ばされてしまう。

考えてみれば、これまでは妖気が弱かったり狐2人がいたからこそ何とかなっていただけで、今回の狐2人にも匹敵するかもしれない亜里砂には文字通り手も足も出ない状況だ。

 

「あっ、しまった!椿、すぐにここから逃げて!」

 

ふと椿が吹き飛ばされた場所が、先程男子共の悲鳴の聞こえてきた現場であった事を思い出し、すぐに彼女へ向けて叫んだ。椿も部屋の異常に気がつき、近くにある円を描くように並べられた鏡と様々な種類の人形――そして、それに囲まれるようにして顔を手で隠して屈む付き添いの先生の姿を見た。

 

「えっ、先生?な、何して――」

 

すると、今度は先生を取り囲んでいた人形達から歌声が聞こえ始める。

 

【かーごめ、かごめ・・・】

 

「椿!早く――っぐ!?」

 

私は椿に必死に呼びかけようとするが歌が聞こえた、その途端に激しい頭痛が襲い立ち上がろうとした足が崩れてしまう。そのせいで集中力も切れて、小次郎も姿が霧のように消えてしまった。

 

な、なんとかして椿だけでも助けないと・・・!

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