私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾壱話 魔を殺す"モノ"

 

異様な光景を呈する奥の部屋へ吹き飛ばされてしまった椿を助けるべく動こうとするが、人形達が歌っている「かごめ歌」のせいでずっと頭痛が酷く這いつくばって進む事すらままならない。

 

椿も私と同じように頭を抱えてうずくまってしまい、それと同時に人形達の歌も変わったものへと変化していく。

 

【かーごめ、かごめ かーごのなーかのとーりーは いーついーつ出ーやーる 夜ー明けのばーんに つーるつーるつっぱいた なーべのなーべのそーこ抜け そーこー抜いてたーもれ】

 

私の知っている、幼い頃にオジサンと遊んでいた時のものとは違う歌詞だ。その部分が歌われ始めた瞬間に私の頭痛もより激しくなっていき、椿の表情もより苦しんでいるのが感じ取れる。

 

あの歌・・・知らないハズなのに・・・

何故ダロウ。聞いてイルと、何カ大切な事ヲ思い出せそうな気が――

 

【待ちなさい、椿!これ以上は駄目よ!この記憶は――この力は駄目!】

 

妲己サンのこえが聞こエルが、椿は彼女ノ言葉も耳に入ってイナイ様子で唸ッテいる。

 

ソシテ私の頭デハ、知ラナイはずの単語やら誰カの言葉やらが出テキてはグルグルのスープのようにかき混ぜられていくようだった。

 

更ニ、ソコへ椿の"想イ"も入ッテくる。

 

【――ロセ】

 

【金狐、銀狐の娘】

 

【――コロセ】

 

【平定の力】

 

【コロシテ、人ノ世ヲ守レ】

 

【妲己の身体の在処は――】

 

【ソノ為ノ、魔ヲ殺ス"モノ"ダ】

 

【椿があの力に目覚めれば、きっと妖怪と人間の両方に――】

 

【ああ、ごめんなさいアヤ。「魔を殺す"モノ"」でしかなかったあなたに、こんな・・・こんな残酷なものを教えてしまった私を、どうか許して――】

 

私が"よく知っている女性"の声を最後に、五感が全てプッツリと途切れて何もかもが分からなくなる。

 

――目の前が真っ黒に染まる。

 

そして、目が覚めた時には私の身体は、私"ではない何か"が勝手に動かそうとしていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

『椿、椿!!返事をせい!綾もしっかりしろ!おい、黒狐!2人と連絡は!?』

 

『さっきから呼びかけているが、どちらも全く反応がない!』

 

「ふふふふ・・・そんなに叫んでも無駄よ。2人とも気絶しているはずだからね。それにしても、まだあの子まだ戦闘は出来ないのね。それだったら、今の内に――って、何この妖気。あの部屋から、何か出て・・・いや、これは2つ?」

 

私の目の前には、殺すべき相手と直感で判断した"負なる魔"なる異質な力を持つ亜里砂が、少し驚いた様子で私と椿を見ている。

奥の部屋で苦しんでいた椿はというと、彼女もまた「かごめ歌」で何かを呼び起こされたのか、髪から尻尾の毛まで全て金色となって、私の知らない殺気と使命感に満ちた表情を亜里砂へ向けている。

 

彼女がやったのだろうか。

人形達に囚われていた先生は無傷でその場に倒れ込んでおり、部屋の辺りには首や手足をバラバラにされた人形の残骸と並べられていた鏡の破片がそこら中に転がっていた。

 

すぐに私は椿へ無事かどうかを尋ねようとしたが私の喉からは小さな声すら出ず、身体も私の意思とは全く無関係に足元へ転がっている鏡の破片を手に取る。

 

「なんだ〜椿ちゃんに綾ちゃん、あなた達か。意識、失ってなかったのね・・・って、えっ?ちょっと待って、何それ?椿ちゃんも綾ちゃんも、妖気どころか容姿まで変わっちゃって・・・さっきのあの子と、全く違っ――」

 

「攻撃、開始」

 

すると、相変わらず飄々とした態度を向けてくる亜里砂へ向かって、"私の身体を動かしている何か"が手にした破片を手裏剣のようにして投げつけた。その時に出た声はもちろん私の意思で発せられたものではなく、"何か"が機械のように発したものだった。

 

そして、その私の行動に続けて椿も手から金色の刃を作り出して亜里砂へと飛ばす。今まで彼女があんな強い妖気の込められた妖術を使った事などあっただろうか?まるで、亜里砂を本気で殺そうとしているのではとすら感じ取れる。

 

「――っぶないなぁ!2人とも、いきなり攻撃してくるなんて、しかも容赦なし・・・」

 

「再度、攻撃開始」

 

「って、いやいや!待って待って!息つく暇も無しってやつ!?冗談じゃないわよ!?」

 

それらを辛うじて回避した亜里砂に、私の身体は余裕すら与えまいと再び破片を手にして今度は屈んだ低姿勢からイノシシのように突進し、彼女の背後に回っては背中から心臓の位置へ破片を突き立てようと繰り返し動く。

 

そこへ立て続けに椿が今度は強い妖気はそのままに小さなゴルフボール大の弾丸を大量に作り出しては亜里砂に撃ち出してきた。

 

そんな私と椿の豹変した様子にカナが狼狽える。

 

「つ、椿ちゃん・・・綾さん・・・待ってよ。何なの、その姿?椿ちゃんは髪の毛とか耳とかが金色ですっごく長くなったりしてるし。綾さんも体育館で見た時の姿より、とても黒い格好になってるし・・・それに、2人とも雰囲気が全然違うよ?何?一体何があったの、椿ちゃんと綾さん?」

 

「対象を認識・・・対象を当機の模造精神"烏森綾"と槻本椿の友人である、辻中香苗と判断する」

 

違うんだ、カナ。

 

あなたの目の前にいるそいつは私であって"私じゃない"。私の身体を勝手に動かして、"負なる魔"という力を持つ亜里砂を殺そうとしているだけなんだ。

 

私が意識で必死に訴えても、カナや雪、そして白狐さんにもその言葉は届かない。

 

「香苗、邪魔だから下がってて。こいつは、私が消すから」

 

そして椿も、そんなカナの様子を意にも介さず亜里砂を殺そうと目を鋭く尖らせていた。

すると、その隙を狙って亜里砂が私達に向かって一直線の突進を仕掛けてくる。

 

「あはは!隙あ――」

 

「魔点殺(まてんさつ)、上半月(かみはづき)」

 

「妖異顕現、"金火浄焔(きんかじょうえん)"」

 

しかし、そんな完全に不意をつかれた攻撃だったにも関わらず、私の身体は即座に真上へ飛び上がって、破片を亜里砂の右脇腹に振り抜いて大きく一文字の切り傷を負わせた。

 

それに怯んだ亜里砂の隙をついて、今度は椿が手のひらから太陽のように眩しい金色の炎を呼び出して彼女に向けて投げつける。

 

「ひっ、ちょっと・・・!これはマズ――あぁぁぁ!?」

 

それが亜里砂に命中した瞬間に彼女は激しく燃え上がって、バタリとその場へ倒れて動かなくなる。殺してしまったのか、と私が動揺しているとその亜里砂の死体は液体のようにして溶けさり、その黒い液体から姿を現す形で本物の亜里砂がスーッと出てきた。

 

「敵性反応の健在を認識。引き続き撃破に移る」

 

「はぁ、はぁ・・・危ない危ない。咄嗟に影の身代わりを使ったのよ。残念でした〜」

 

それでも結構な妖気を消耗したのか、息切れしかかっている亜里砂に、勝手に動く私の身体と椿はより強力な妖術を発動しようと各々身体に妖気を集中させていくのを感じた。

 

「異常を検知。腕部と脚部の凍結を認識。妖気から発動者は如月雪であると認識。対象、雪への問、何故行動の阻害をする?」

 

「妖異顕――っ!?これは・・・?何をするのですか、香苗?」

 

その途端に椿はカナの火車輪で身体を固定され、私の身体も雪の力によって手足を氷漬けにされて身動きをとれなくされる。

 

このままでは相手が相手とはいえ、おかしくなった椿に人殺しをさせてしまう。早い所、私と椿を何とかして元に戻してくれ!

 

「椿ちゃんお願い、元に戻って!そんなの、椿ちゃんらしくないから!椿ちゃんは真面目で優しくて、弄りがいのある・・・とても可愛い子なんだよ!今の椿ちゃんは全然可愛くない!」

 

「綾も頭、冷やして。あなただって、本当はぶっきらぼうで暴力的だけど、椿と同じくらいに優しくて正直な人なんでしょ?今のあなたはまるで、ただのロボットみたいに見える」

 

分かっているんだ、そういう事は。けれども、何をどうしたら良いのか、私の身体が言う事を効いてくれないんだ。

そこへ亜里砂があんなに消耗させられたというのに、それでも私達を殺そうと妖術を発動させているのを感じ取った。あれは、さっき小次郎と白狐さんを吹っ飛ばした爆発する針の妖術だ。

 

「ふ、ふふ・・・辻中さん、如月さん。その化け物共を止めてくれて、どうもありがとう。ついでに――あなた達も一緒に死になさい!」

 

『いかん、椿!綾!』

 

白狐さんが叫び、私もマズいと思った瞬間――椿が火車輪に捕まった状態で妖術を発動する。

 

「妖異顕現、"神風の薙(かみかぜのてい)"」

 

そして彼女が起こした妖術のそよ風が、飛んできた亜里砂の針の妖術をいとも簡単に霧散させた。

ここまでとんでもない妖術を発動出来るなんて、今の椿は私のよく知っている椿とは全くの別人のように思えた。

 

「なっ!?あぁ・・・う、嘘でしょう。何その力・・・」

 

「肩で息をしていますね、そろそろ限界ですか?それならば・・・もう消えてください、負なる者」

 

椿が亜里砂に向け手を突き出す。

 

私は彼女を何としてでも止めようと、全力で身体を動かそうと強く意識し続ける。

 

そして――

 

「――っかは!・・・はぁ、はぁ、う、動けるようになったのか?」

 

「綾さん!元に戻ったんだね!でも、椿ちゃんが・・・」

 

ずっと身体を動かす意識をしていた事でバツン!と縛られていたものが切れるようにして私の身体を操っていた"何か"の気配が消えさり、身体を自由に動かせるようになった。

 

私はカナに心配されながらも椿に目をやる。

すると彼女が妖術を発動しようとしているのは確かに分かるのだが、その身体からは全く妖気が感じ取れなくなりつつあったのだ。

 

『椿、これ以上はよせ。妖気が急激に減っておる。まだお主には、その力は早すぎるようじゃ!』

 

「ふむ・・・」

 

『だから――元に戻れ、椿!』

 

「何を・・・んむっ!?」

 

白狐さんはそう言った瞬間に、なんと椿に熱いキスをした!普通だったら私も何やってんだと怒りたくなる所なのだが、確かに椿の白狐さんを想う気持ちを呼び起こせれば元に戻れるかもしれない。

 

しかし、そこから椿は意外な反撃をしたのだ。

 

『ん?むぅっ!?むぐ、うむむむ・・・!!うっ・・・』

 

「ぷはっ、まだまだ甘いですね」

 

『ぐぅ・・・はぁ、はぁ。ば、馬鹿な、わ、我が・・・負け、た・・・!?』

 

その場に跪く白狐さんに目を見開く。

ありえない・・・あれほどキスに耐性が無かった椿が、こうして彼を積極的に責め立てて行動不能にしてしまうなんて。

 

「な、なんてこった・・・どうしたら良いんだ、こんなの」

 

「白狐さんが、キス対決で負けた・・・」

 

「あんなの、椿じゃない」

 

――私は、そんな椿の姿に戦慄を覚えていた。

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