私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾伍話 どうしてあんたが

 

――次の日の昼辺り

 

「ん、うぅん・・・ふあ。おはよ〜椿、起きてる?」

 

「う・・・く、ふぁあ。あ、おはよう綾ちゃん」

 

そんなこんなをしている内に気が付けば私達は眠ってしまっていたようで、もうすっかり寝過ごしてしまったようだった。

 

まぁ、考えてみれば昨晩はあれだけの事があって疲労していたのだろうし、何時ものように里子が起こしに来なかった理由も頷ける。

 

――と思っていたのだが、実際はそうではなかったらしい。なんか私と椿の間に赤いマーブルの模様が・・・って

 

「は?こ、これは一体どういう事なんですかね・・・?」

 

「なに・・・これ?」

 

その瞬間に私達の頭はサーッと寝起きから覚めていき、いやこれは"冷めて"いると言った方が正しいのかもしれない。何故なら――

 

「うわぁ!?ぱ、パジャマがはだけて・・・!」

 

「げっ!?私もドえらい格好になって――コイツらの仕業ですか、そうですか」

 

ええ、そうですよ!

原因は、私達をそれぞれ挟むようにして幸せそうに寝ているカナと雪のようですよ!カナに至ってはいつの間にか私と椿の間に入り込んで、正面から椿で後ろは私の胸を堪能している感じでしたよ!

 

幾ら私や椿との心の隔たりが無くなったからといって、これは少しスキンシップのレベルがヤバいのでは無いだろうか!?

なんか触られまくったり、キスされまくったりしたような気がするし!

 

「なんていうか・・・"我が生涯に一片の悔い無し!!"ってくらいに幸せそうだな〜カナは」

 

「はぁ・・・まぁ、カナちゃんが幸せなら良いけどね」

 

椿が呟きながら自身のパジャマを整えて、隣で寝ているカナの寝顔を見ている。

私もチラと見てみると、こうして寝ている分ならばカナも結構な美少女なのではないだろうか。

美人な氷雨さんの娘である雪も同様だ。

起きている時のクールさへ、眠っている時の無防備さが加わり椿までとはいかないにしろ、2人の方が私なんかよりよっぽど可愛らしいと思う。

 

それにしても、しかし・・・椿と一緒に散々と大きめな胸を2人して押し付けられたのを思い出すと、なんかイタズラしたくなってきた。

 

どうやら椿も私と同じだったらしく、ポツリと呟く。

 

「昨日の夜の仕返しをするなら、今かな・・・」

 

「椿もやっぱり、2人に仕返ししたくなるよね・・・」

 

【ほらほら、今の内よ〜♪2人とも、可愛い少女の唇を奪っちゃえ♪】

 

悪い考えが巡り始めた私達の頭に、更に悪魔のような囁き声まで――

 

「って!妲己さん何言っちゃってくれてんのぉ!?」

 

「もう、悪魔の囁きは妲己さんですか!?」

 

やだこの人・・・昨日からやけに大人しいと思ってたら、普通にいつも通りでしたよ!

 

【あっ、駄目だわ。ちょっと言葉を発しただけで凄く眠い・・・ギリギリの所で椿との精神の繋がりを断ち切って、心の奥底に潜んでいたから何とかセーフだったけど・・・それでも少し浄化の力にあてられちゃったわ・・・ふわぁ、おやすみ〜】

 

「私達をおちょくる為だけに出て来なくても良かったじゃん、そんなんだったらさ」

 

わざわざ自身の状況説明までしてくれるなんて、こうして見ると妲己さんは悪い奴というよりも悪ぶって人をからかうのが好きなだけに思えてくる。なんなんだアンタ・・・。

 

そんな事はさておき、いまだにカナと雪は随分と心地良さそうに眠っている。

うーむむ、イタズラをしようにも何をしようか全く思いつかないぞ。今までは夜歩きとか喧嘩ばっかりしてた為に、こうして他人に堂々とイタズラを仕掛ける立場になった事が無かったから新鮮ではあるけれども。

 

「なーんか良いイタズラ方法無いかな。椿、そっちは良いアイデアとかある?」

 

「う〜ん、僕も良いイタズラが思いつかないよ・・・やっぱり妲己さんの言う通り、今の内にキスでも――って、そうじゃないそうじゃない」

 

「うん、ちょっと落ち着こうね椿?」

 

椿が妲己さんのアイデアに流されそうになっていたのを苦笑いしながら止める。なんというか、やっぱり椿も元々精神が男だったから"そういう"のに興味があるんだろう。

私としては、まだ異性として見られる可能性があると分かって・・・じゃない!

もう、椿は恋愛感情とか無い、本当に仲が良いだけの親友だろうに・・・私は何を考えているんだか!

 

「・・・」

 

なんて思って、1人で勝手に煩悩退散をしているとカナがキスを待つかのように唇を尖らせているのに気がついた。これは、どう見ても起きてるんじゃないだろうか?

 

「カナちゃん、起きてる?」

 

椿もそんなカナの様子を知って、念の為に質問すると彼女は首を振って否定した。

すぐに私達はツッコミを入れた。

 

「「起きてるじゃん!!」」

 

「あっ、しまった!」

 

「"あっ、しまった"じゃないよ全く!絶対イタズラの話してた段階で起きてたよね!?」

 

しかも気づくと私の後ろにいる雪まで起きていて、いつの間にやら椿の尻尾を片手に私の残念ぺったんな胸をまさぐっているし!

 

「ぬっ、尻尾振らないで椿。綾も、触らせて」

 

「これ以上は、ダ・メ・です!」

 

「2人とも勘弁してよ・・・」

 

なんで寝起きなのに、この2人は普通に元気に私達へイチャつこうと出来るのか。これでは起きたばっかりだというのに疲れてしまいそうだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――それからしばらくして

 

「さっ、椿ちゃん!綾さん!行くよ〜!」

 

あれから、とりあえず私達は簡単に食事を済ませて、ショッピングモールに行く為の準備を終えて玄関から出発しようとしていた。

 

ところで、カナと雪の食事が妖怪食は1品だけで他が普通の食事だった事について、半妖だから少ない妖気補充で十分だというのは分かるが・・・それでも私と椿も最初はそういうのから妖怪食に慣れさせてもらいたいと思った。ま、まぁきっと他に理由があったからって事で納得しておこう、うん。

 

今回の私達の服装は、椿がショートパンツとTシャツの上から薄手のブラウスを羽織っており、カナや雪も彼女に似たような格好である。サイズの合わない中で里子が用意してくれた物だから安っぽく見えるのは仕方ないのだが。

 

そして私はというと先日まで色々着回してしまったせいで、今日は黒いポロシャツにチノパンとヤバいくらいに暑い。

黒は熱を吸収するから云々とは聞いていたが、こんな夏の猛暑だと割とシャレにならない。そんな感じなので保冷剤を入れるポケットが付いたタオルを持って来ているのだが、首に掛けているのも手伝って完全に男にしか見えなくなってしまった。・・・ま、ナンパされないだけマシと考えよう。

 

――閑話休題。

 

少し気落ちした様子で椿がため息をつく。

 

「やっぱり、着けるべきですか・・・」

 

「そうだよ、椿ちゃん。だって大きくなっているんでしょ?妖気が増えれば、その分身体も成長していくんだからね」

 

「マジでか、妖怪が羨ましく感じるな〜」

 

カナの言う通り、妖怪は妖気が増えていくにつれて身体もより大人の姿へと成長する事を思い出す。ちなみに60年と長生きしている椿がどうして男に変化させていた妖術が解けた途端にいきなり大人の姿にならなかったのかというと、どうやら妖気が一気に戻って身体が壊れないようにと防衛反応としてゆっくり成長しているかららしい。

 

そういえば、カナや雪がいるとはいえ昨日あれだけの事があったのに狐2人や達磨百足に椿の祖父の姿が見えない。

すると、そこへ丁度よく何故か鼻にティッシュを詰めた里子が来て、椿がその事について質問する。

 

「ねぇ、里子ちゃん。白狐さん達が何処に行ったのか知りませんか?」

 

「ん?う〜ん・・・口止めはされてないから、良いのかな?えっとね、今後の椿ちゃんの事について緊急の会議をするからって今は妖怪センターに行ってるよ。昨日は夜遅くまで話し合っていたけれど、結局決まらなかったみたいだからね」

 

「なんか厄介そうな事になりそうだね・・・」

 

申し訳無さげに里子からそんな大事に発展しそうな話をされてため息をつく私と椿に、カナと雪が励ましの言葉をかけてくれた。

 

「大丈夫、2人とも。何があっても私達が一緒にいるから」

 

「そうそう!それにね、こういうのは心配しててもしょうがないんだよ!だから気晴らしにさ、今は買い物を楽しもうよ!私も椿ちゃん達の用事以外で買いたい物があるからね〜」

 

「なんていうか本当にカナと雪のポジティブさには、椿と付き合いの長い私でも脱帽するよ・・・ありがとう」

 

2人の前向きさに感謝していると、そこへ更に美亜までもが現れて私達へ話しかけてくる。

 

「あら、あんた達。ひょっとして買物に行くの?それなら私も着いて行って良いかしら?ちょうど、新しい服を見たかったのよね〜」

 

「おいおい、美亜も来るつもりですか・・・あれ?でも、お前その尻尾とか耳とかどうするんだ?椿みたく意識阻害の妖術とか使えるとか聞いてないけど」

 

「本当に単純バカなのね、綾は。そんなの隠せる訳ないでしょ?だから、ちゃんと有るのよ――妖怪御用達の服屋がね」

 

「えっ!?そんな所が存在するとか初めて聞いたぞ、私!」

 

その意外過ぎる事実に、私だけでなく椿も目を丸くして驚いている。そんな所があるんなら、少しはどんな服があるか覗いてみたいと思う。

 

「あんた達も下着とかはそこで買ったら?特に椿は、その勾玉の結界があるとはいえ何があるか分からないでしょ?」

 

「う〜ん、でも綾ちゃんとか2人が居るから・・・」

 

「そっか、人間が出入りしたら不味いよねそりゃ」

 

「別に大丈夫よ。そこは半妖も入れるし、人間の綾だって例外的だけど妖怪ライセンスを持っているじゃないの。それに、そこの2人も行きたそうにしているしね」

 

「へぇ〜、なら安心って所だな」

 

美亜から言われて椿と振り返ってみれば、確かにカナと雪はそれぞれ早く行きたそうな顔をしているのが見て分かる。・・・雪の方はどちらかといえば、あの構いたがりな氷雨さんから少しでも逃げたそうな感じもするが。まぁ、そちらは椿が予め氷雨さんに軽く注意をしておいてくれたので多分大丈夫だと思う。

 

そして、数分後に美亜も準備を終えて見慣れた黒ドレスの姿で私達の元に戻ってきた・・・って、おい!

美亜、それは結構暑いから真面目に思い直した方が良いと思うのですがそれは。喧嘩で百戦錬磨な私だって保冷剤入りタオルを用意しなきゃ外に出れないくらいに暑いんだから、もう少し気を遣うべきなのでは・・・と思ったが、椿へのイタズラの事も考えて本人がヤバくなったら勝手に何とかするだろうという事でここは口をつぐもう。普段の行いのツケをたっぷりと払うが良い、うへへ。

 

「よ〜し、準備出来たわね!それじゃあ出発〜って、どうやって街まで行くの?」

 

「ふっふっふ・・・そう言うだろうと思って、私達は既に"妖怪タクシー"を呼んでいたのさ!」

 

初めて知った時は私だってビックリしましたよそりゃあ!普段は椿と学校に行くのにレイちゃんに乗って行ってたから、椿からそういう存在があると知らされるまでは勾玉以外の他の移動手段なんて知りませんでしたし!

もちろん妖怪が使用する前提なので、移動やら何やらは一般人には見えなかったり普通のタクシーに見えていたりと便利この上ないものだ。ちなみに妖怪はこういった交通手段を介して人の社会に紛れ込んでいるのだとか。

 

椿がかつて私にしたのと同じ話を2人にすると、カナが目をキラキラさせて玄関の外に出て行ってしまった。

 

相変わらずテンション高いなぁ・・・そう思いながら私達も外に出ると、そこには意外過ぎる人物が玄関先に立っていてカナが驚いた様子を浮かべていた。

 

「翼・・・」

 

「えっ?」

 

椿の「男だった時の名前」を呼んだ見た感じ高校生ほどの、その女性は汚れだらけの格好で髪もボサボサとしていたが、声と薄ら見覚えのある顔つきに私と椿はそれが誰であるのかが分かった。

 

「まさか・・・どうしてあんたが?」

 

「な、夏海お姉ちゃん?」

 

椿の言葉にそいつは黙って縦に首を振る。

 

かつて椿の事を蔑ろにしていた頃のギャルっぽさは何処に行ったのか、座敷わらしのわら子による罰を受けたとはいえ誰がここまで酷い姿になると想像出来るだろうか。

それにわら子がかけた不幸も実際は一度だけしか機能しないようなもので、その後に不幸が連鎖していくかどうかは本人次第という事なのだそうだ。

 

つまる所、椿の元義姉と元義母の辿ったと思われるのは・・・最早言うまでもない。

 

「何の用ですか?」

 

椿が睨みつけるようにして義姉に問いかけた。そして私も問い詰めようとしていたのを察したのか、彼女は後ろ手で前に出ようとした私を止める。

 

義姉はポツリと椿の質問に答えた。

 

「母さんが――死んだ」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

かつての私であったならば無言の椿に代わって"あっ、そう"と素っ気なく返していたのかもしれないが、今はどうしてかそんな痛々しい姿となった椿の元義姉に返す言葉が見つからなかった。

 

もう・・・椿にも私にも関係のない話だというのに。

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