私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――それから少しして
「翼・・・私、どうしたら良いの・・・」
結局、私達は不幸に塗れて痛々しい姿となってしまった椿の元義姉を放っておく事も出来ずに部屋へ連れて来たのであった。
部屋に着いた途端に元義姉・・・夏美はその場に泣き崩れる。確かに、あれから不幸が連鎖して親まで亡くなってしまったのだから無理もない話ではある。しかし元々はといえば椿を蔑ろにしてきた事へのツケが回ってきただけである上に、行動次第では不幸の連鎖だって止められていたはずなので此方は優しく接するなんてするつもりはない。
泣きじゃくる夏美から椿と共に目を逸らすと、そこに不安げな表情を浮かべているカナと雪が此方を見ている視線と合ってしまって気まずくなる。
「あっ、ごめん。この人は、前の家族の人だよ」
「あぁ・・・椿ちゃんに酷い事をしたっていう・・・」
「自業自得。椿にした事の罰なら、これで丁度良い」
そう言って、狐2人から色々と話を聞いていたカナと雪は夏美へ蔑むような眼差しを向けた。その視線からは、もっと酷い罰でもよかったのではないかと言いたそうに感じる。
それから2人は美亜に顔を向けた。そういえば確か、黒猫な妖怪である美亜が以前にも妖怪退治で不幸の上塗りというトンデモ芸当を披露した事もあったか。・・・本人は乗り気じゃなさそうだけれど。
「ちょっと!その人、もう十分不幸塗れじゃない。それ以上は無理だし、もっと言えば見る限り無一文で家無し。罰にしては十分過ぎると思うわよ」
「えっ?見ただけで分かるの?」
「へぇ〜呪術については本当に詳しいんだな、美亜は」
すると私達の会話に夏美は恐怖からか、泣きながら身を震わせて謝りだしてしまう。
「お願い、もう・・・もう許して、翼・・・私が悪かった・・・だから、もう、うっうぅぅぅ」
「わ、分かったんで少し落ち着いてくださいますか?」
「うーん・・・ごめん皆、ちょっと出発遅れるけど大丈夫かな?」
流石にこのままでは色々と面倒なので、一旦彼女を落ち着かせようとすると今度は下の1階から氷雨さんの慌てた声が聞こえてきた。
「皆〜!今タクシー会社から連絡があって、タイヤとして働いていた妖怪さんが全員ボイコットしちゃってタクシーが動かせなくなったって!どうする?別の所にするの!?」
「あっちゃぁ〜、マジですか。椿、こりゃ今日は無理そうかもね」
私が椿にそう言うと、彼女は苦笑いしながら頷いた。カナと雪もそんな椿を慰めるように優しくフォローの言葉をかけてくる。
「椿ちゃん、綾さん、大丈夫よ。私達、今日も泊まっていくから明日にしよ!」
「今度は早起きしてね」
「たは、は・・・め、面目ない」
とりあえず今は椿の元義姉である夏美に、あの後から一体何があったのかを聞いたりして落ち着かせてやらなくては。
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――しばらくして
椿と2人で夏美から詳しい事情を聞くと、どうやら元から彼女の母親が借金やら何やら抱え込んでいた為に、そこへ椿から不幸の罰を与えられてドッと一気に崩壊した感じのようだ。
初めは闇金融などの借金取りが連日で、かつて椿の暮らしていた家に取り立てに来ていたそうで、金を融通してくれていた父親に扮した妖怪"蟲喰い"も滅幻宗の襲撃で死んでしまった為にアテもなくなってしまったらしい。
「もう、その後は想像つくでしょ・・・」
「・・・」
その後は夏美もその母親も何とかして金を稼ごうと頑張っていたようなのだが、闇金融特有の"利子がバカみたいに増える"せいで気持ちの余裕も無くなっていき、ついには他の闇金融から大きく金を借りて返そうとまでしてしまったのだとか。
「それでも、あいつらから逃げる事なんか出来ないし、学校にも通える状態じゃなくなったし、家にはゴミが投げこまれるし・・・惨め過ぎたわよ」
「そんな・・・そんな状態で更に金なんか借りたらどうなるか、普通に考えたら――」
「ええ、その通りよ!お陰で借金は減らないどころか、増えていったのよ・・・。母さんがヤケになってしまって、浴びるようにお酒を飲み始めて・・・その酒代の為に次々と借金をしていたのよ!私、私・・・あんな事までしていたのに・・・」
「・・・」
きっと夏美は、犯罪に近い事までして金を工面して生きてきたのだろう。それでも、結局は母親の酒代にされてしまっていた事などで、もう限界だったという話をされた。
そうなると、まさか母親は夏美が・・・?
「そして先週、母さんが大量の血を吐いて台所で倒れたの」
「それで、病院に連絡して・・・って事か」
母親を手にかけるという事をしなかった夏美に私は内心ホッとする。しかし、私の言葉に頷いてすぐに彼女の顔は酷く暗いものになった。
「ええ。でも、もう遅かった・・・母さんは前々からお酒を沢山飲んでいたから既に重度の肝硬変になっていて、それがとっくに癌になってた。しかも相当症状が進んでいて、良く普通に生活していたねって医者から首を傾げられたわ」
なるほど・・・ここまでの経緯を聞いていると、今の話話がわら子のもたらした不幸なのかもしれない。なにせそれまでに夏美へ起こっていた出来事は借金から発生した"なるべくしてなった"不幸のように感じられるのだから。
「それで、その翌日にはもう・・・」
その後、夏美は更に悲惨な生活を強いられたそうで、借金を返す為にあちこちを転々としながら働く傍ら母親の葬式をするのにも借金をしなくてはならず、汚い手段で借金をどんどん増やしてくる闇金融の人間から金を搾り取られ続けていたという。
いくら以前に椿を虐めていた人物であったとはいえ、ここまで酷い事になるなんて・・・不幸云々以上に、そんな状態の人から金をむしり取ろうとする連中が存在する事に吐き気がしそうだった。
・・・というより、大切な人を痛めつけてきた人間に対してそこまで心配出来るようになるとは、いつの間にか私も丸くなったのかな。
しかし、夏美は運が良かった事にそこで児童相談所や市の職員などが気が付いて、迅速な対応をしてくれたそうだ。そして借りていた金もその殆どが既に返済されていた形なので、法に則って闇金融の魔の手からようやく抜け出せたらしい。
しかし家は差し押さえられ、しかも母親が死んだ時に金を遺していかなかったり、親戚との繋がりも無く、ついには学校にすら通えなくなってしまったのだという。
更に泣きっ面に蜂というべきか、椿との関係も彼女の祖父が椿を養っていた妖怪が死んだ後に、妖怪の力で操作していた戸籍を元の「妖狐の時の戸籍」に戻してしまったので完全に赤の他人状態なのである。
「だからもう、頼る人が居ないのよぉ・・・お願いよ、もう・・・許して」
「・・・どうするの?椿ちゃん」
夏美の話が終わって、カナと雪が椿に視線を向ける。美亜はというと、まだ夏美を信用出来ている様子ではなく腕を組んで訝しげに睨んでいるようだった。
「椿、もう十分に反省してるみたいだし・・・って言ってもどうしようか?」
「う〜ん・・・確かに、もう十分かなって思うよ。だけど、助けるにしても此処に住む事になるだろうね。そればっかりは流石におじいちゃんの許可が要るし・・・」
「何じゃ、誰が来ておるのかと思えば・・・お前さんか」
私が少し唸っている所に、私達の後ろから威厳があって怖い雰囲気のある椿の祖父の声が聞こえてきた。狐2人が一緒でない事から、どうやら昨晩の内に彼だけが帰って来ていたらしい。
「ひっ・・・」
そんな彼の威嚇するような姿に、夏美も恐怖の声を上げて縮こまってしまう。何の心配をするつもりもなく見下ろしている所から、まだ彼女の事情について把握してないようなので私達は椿の祖父へ先程聞いた話を伝えて"反省をしているので罰も十分なのでは"と聞いた。
「ふぅ・・・なるほどな。それなら致し方あるまい、次の住み家が決まるまでは此処に居ても良かろう。じゃが、それは住み込みで働くという事だ。良いな?」
「あっ、ありがとう・・・おじいちゃ・・・うっ、ひぐっ、うぅぅ・・・ぁぁああ・・・」
椿の祖父からそんな言葉をかけられて、夏美は感謝を言いながら泣き崩れる。とりあえずはこれで不幸の連鎖も止まってくれると思うのだが、こういう不幸というのは結局本人の気の持ちようからくるだろうし。
「まぁ、ほっといて死なれて、妖怪とかに化けて出られても困るから一先ずは安心かな」
「「綾(ちゃん)!!」」
「ぐぇ!す、すいませんでした・・・」
うっかり余計な事をボヤいてしまって、椿と彼女の祖父からゲンコツをもらってしまった。やれやれ・・・椿も昔と比べて強くなってきている訳なんだし、例え何かあっても夏美についてはきっと大丈夫だろう。