私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――翌朝
今回こそちゃんとショッピングモールに行ける事を確認して、私達は準備を済ませて玄関に集まっていた。ちなみに、昨日が昨日だったので格好は特に大きく変わっていない。
すると、そこへ夏美までやって来て昨日の事から椿も含めて皆気まずそうになる。少しの沈黙の後、夏美の方から椿へと声をかけてくる。
「翼、買い物に行くの?」
「う、うん。あっ、それとね・・・今は椿だよ。昨日話したよね、僕の事について」
「ん、ごめん・・・でも、ずっと"翼"って呼んでたから、そんな急には・・・」
まぁ、夏美の気持ちも分からなくはない。
私だって最初こそ椿と一緒に戸惑っていたものの、そこから椿の本当の名前も同じだった事を知ってからは"本当の意味で親友でありたい"と想い続けて、そのうちに自然と違和感も無くなっていったのだ。
だから夏美も、椿の事を真摯に受け入れてくれるのならばきっと大丈夫だと思っている。
「それで、夏美お姉ちゃん。僕に何か用?」
「あっ、ごめん。おじいちゃんがね、買い物に行くならついでに水着の方も買って来いってさ。来週辺り、海に行くんだって」
「「えっ!?」」
私と椿は海という単語についつい反応してしまう。幼い頃から山育ちだった私は勿論、どうやら椿も海に行くのは初めてのようだった。
「え〜良いなぁ〜2人とも」
「うんうん、羨ましい」
「あら〜?香苗ちゃんと雪ちゃんも、一緒に来て良いから大丈夫ですよ。だって、椿ちゃんと綾ちゃんの友達でしょ?」
2人が羨ましがっていると、夏美の後ろから里子がひょっこり顔を出しながらニコリと笑顔を浮かべた。
「マジで!?こりゃ楽しみになってきたね椿!!」
「うん、綾ちゃん!やったやった!友達と海に行けるなんて最高だよ〜!」
椿と手を取り合って喜びを分かち合う。
初めての海なのだ、しかも皆と一緒なんて嬉しくない訳が無い!
これだったら、狐2人にも――とも思っていたのだが、そういえばまだ彼らが帰って来ていないのを思い出す。椿の祖父も朝からセンターへ行くといった話をしていたので、きっと椿や私の事について話し合いが続いているのかもしれないが・・・少しばかり不安だ。
「あっ、2人とも!タクシーが来たよ!ほら、早く行こう!」
「あだだだ!腕もげる!もげちゃうから!」
「ちょっ・・・カナちゃん、腕引っ張らないで。それと、夏美お姉ちゃんも付いて来てるのはどうしてですか!?」
いつの間にやら私達と一緒に乗ろうとしてきた夏美は今朝の食事の時に着ていた給仕服ではなく、キャミソールとミニスカという簡単ながらもギャルっぽさを感じさせる格好をしていた。
「いや、その・・・服とか小物とか、色んな物が無いからね。本当に着の身着のままで来たからさ・・・流石にそれは不味いからって事で、おじいちゃんがあんたと一緒に何か見て来いって言われたのよ」
気まずそうに答える夏美に、椿は少し考えてからコクリと頷いて一緒に行く事をOKする。
「分かった。タクシーも何とか乗れそうだからね」
「はぁ・・・まあ良いけれど」
「椿ちゃん、大丈夫?昔のトラウマとか、まだ残ってるでしょ?」
椿の反応を見てカナは無理していないかといった様子で心配そうに問いかける。私もそれは少しだけ心配ではあったのだが、これまで一緒に暮らしてきた中で椿は確かに心も強くなってきている。
今更私が心配しても、きっと椿に逆に心配されてしまうだけだろう。
それを示すように椿は笑顔でカナに答えた。
「大丈夫だよ。もう昔の僕のままでいたら駄目だからね、だからトラウマとかそういうのは全部乗り越えないといけないって思うんだ」
その椿の言葉にカナや雪だけでなく、私までもが驚きで一瞬言葉を失ってしまった。
やっぱり、椿は私の思っていたより強い人だ。
かつて学校で私が守っていた頃には見せなかった、そんな明るい笑顔を浮かべているのを見ると何故か心がドキリとしてしまう。
私が少し呆けてしまっている内に、気づけば2人は椿の両隣りに移動して手を繋いでいた。慌てて私もカナの繋いでいる方の手の上に自分の手を重ねて置いた。
「あんまり逞しくなられると、お姉さん困っちゃうな〜」
「ちょっとツッコミ良いかな、カナちゃん。僕達、同い年だからね?」
「でも、どちらかというと・・・椿と綾が妹」
「って、私もかよ!?う〜、そんな幼く見えるかな〜?」
2人の判断基準の意味不明さに私と椿がそれぞれ苦笑いをしていると、そんな様子を見ていた夏美がやはり気まずそうにしながら椿へ話しかける。
「つば・・・き、あんたは強くなったのね。あの・・・今更言うのもおかしいけれど、今までごめんなさい。本当はずっと言いたかったけど、私の性格じゃ、その・・・難しくて」
椿の名前を言い間違えそうになりながらも、確かに夏美からは"これからは本当に良い姉妹になりたい"という想いを感じ取れる事が出来た。
過去の過ちは決して無くなりはしない。しかし、それでも互いに歩み寄れるのが人間の良い所だとオジサンが教えてくれたのを思い出して、私は夏美の言葉に口を出しはしなかった。
――後は、椿次第なのだから。
「んっ、夏美お姉ちゃん。僕は大丈夫だから行こ。僕や綾ちゃんはブラの事とか分からないし、カナちゃん達と一緒に教えてよ」
「えっ、ちょ・・・椿?私一応ブラについては――」
私が椿の発言を訂正しようとすると、もう一度笑顔を浮かべて椿が私達から一旦離した手を差し出したのを見た夏美がポロポロと涙を流し出す。
「つ、翼〜!わ、私の事、許してくれるの〜!?」
「だから、僕は椿だってば!許すというか・・・過去の事を水に流す訳じゃないよ!ただ、これから僕との関係を直していきたいと思っているなら、それは拒否しないってだけだから!」
「うん、うん!分かった、ありがとう・・・翼。あっ、椿か。う〜ん・・・でも、縁起悪い名前ね」
「イイハナシダナーと思った途端に喧嘩売るような発言止めてくださいますか、椿のお姉さま」
夏美が涙をぬぐいながらトンデモな発言をしたのに私がツッコミを入れていると、椿が自身の名前の由来とかについて自己紹介を始める。
「実はこの名前は白狐さんと黒狐さんが付けたんだけど、生まれた時から僕は"椿"だったらしくて両親も同じ意味を込めて付けてくれたんだと思うんだよ。だから、今はこの名前を気に入ってるんだ・・・この名前の花の花言葉が"控えめな優しさ"と"誇り"だからね」
「そっか・・・今のあんたらしい、素敵な名前だね」
そう言って夏美は優しく椿の頭を撫でた。どうやら椿の方も満更でもない感じに見える。
「さっ、ほら!早く買い物に行くわよ。そうしないと、どんどん時間が過ぎちゃうでしょ!」
タクシーへ向かって歩く夏美を見ながら、私はカナと雪と顔を見合わせた。
「仲直り?」
「・・・かなぁ?」
「・・・ま、本人が良ければそれで良しって考えとこうよ」
そう言って私達は、呆然としながら頭と耳を交互に触る椿に微笑ましい眼差しを向けた。
なんというか、やっぱり椿は楓とは違う意味で妹っぽく感じてしまうね。
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――西大路五条にある大型ショッピングモールにて
とりあえず、私達は近場で探りやすい所にあるショッピングモールの方へと向かう事にした。
やはりというか、例の妖怪タクシーは街に出た時に人目のつかない場所へ移動してから一般のタクシー同様の姿へ変身して走っていた為に全くといって良い程目立っていない。
・・・とはいえ、"そういう乗り物"に慣れていなかった夏美には少々キツかったようだ。
「はぁ、はぁ・・・い、意外と高い所まで行ったわね。つば・・・きは、高い所が苦手じゃなかったっけ?」
「あぁ、僕はレイちゃんで慣れちゃったよ」
椿が肩に掛けているポーチに付いた、毛玉なキーホルダーサイズになったレイちゃんへ指を差すと、レイちゃんは顔の一部だけ変身を解いて夏美へと鳴き声で挨拶した。
「ムキュッ!」
「・・・あんた、色んな意味で変わったわね」
夏美は元気はつらつな椿を見てクスリと笑った。私も、まさか椿がここまで誰かれとも仲良く出来るようになるなんて思ってもみなかったから、親心的なものが喜びではち切れそうになるよ。
・・・私のブラや水着も探すって事を思い出したら嫌になってきたけれども。あぁ神様、どうして私にはバストサイズをくださらなかったのですか?