私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾話 ノーパン健康法って知ってるか?

 

妖具であるがま口財布を使って白昼堂々万引きをかましてくれた男はそそくさと足早に店から離れていこうとする。こういう時、普通は店員が気づいていそうなものなのだが、まさか音もなくガラスケースをすり抜けて物を盗られるなんて思いもしないから気づかないのも仕方ないかもしれない。

 

私達の横を走りながら美亜が男の持つ妖具について、ざっと分かった事を説明する。一応、美亜の姿は一般の人には全く見えていないのでコソコソとした話し合いとなる。

 

「あれはきっと、カエルの半妖である人が使う妖具ね。壁とか入れ物とか、そういう隔たりを無視して物を中から取る事が出来るの」

 

「はー・・・相変わらず、わっけわからん能力してるなぁ」

 

「感心しないで綾ちゃん。それじゃあ、あの人は半妖なの?でも、あの道具から妖気は感じるけど本人からは全く妖気を感じないし・・・」

 

「うーん、何なんだ?」

 

椿の発言にカナと雪が驚きの表情になる。確かに、私達が知っている妖具の事については殆ど半妖が使っているので、多少の妖気を感じるはずなのだ。

しかし、追いかけている相手の男からは何にも妖気を感じ取る事が出来ない。

 

そうして考え込む内にも、美亜が男の前へ回り込んで立ち塞がった。そして彼女の後を走っていた私達もようやく男へと追いつく。

 

「待ちなさいよ!あんた!」

 

「ひっ、な、何だ!?このコスプレイヤーは!」

 

「コス・・・ふくくっ、あで!」

 

「綾ちゃん、笑ってる場合じゃないよ。美亜ちゃんの姿が見えるなんて、妖怪を認識出来てるって事だよね。やっぱり普通の人じゃないよ」

 

「マジか。じゃああいつは一体・・・」

 

そして、美亜は男に詰め寄った。

 

「あんた。今さっき、そこのガラスケースから時計を盗んだでしょ?」

 

「な、何の話です?い、言いがかりは止めてくれませんか?」

 

・・・うっわぁ、バレッバレなレベルでめっちゃキョドってるやんけ。

 

しかし、男が周囲を見て私達しか取り囲んでいないと判った途端に態度を強気に変えてくる。

 

「はぁ・・・なんだ、ガキばかりか。いいか、ガキが刑事気取りで何の証拠も無しに大人を悪い奴扱いするんじゃない。親は何処だ?いや、インフォメーションへ突き出すか。とにかく、大人を舐めるなよ・・・」

 

こちらが弱そうだと判断した男はジリジリと美亜との距離を詰めようとすると、そこへ男性のバッグをグイと何者かが引っ張ってチャックを開いて中身を全開にさせた。

 

「わぁ!な、何だ!?か、鞄がぁ!!」

 

「へ〜え?あんたそれ、どうしたの?あんたみたいな奴が持つには不自然な物よね〜」

 

鞄からジャラジャラと出てきた沢山の貴金属な高級品を見て美亜がわざとらしく言い、男を取り押さえている人物に軽くお辞儀をして男を睨みつける。

 

その一瞬の出来事に私達も男も仰天したが、それをやった人物の姿を見て更に仰天した。

 

「あ、あなたは――犬吠崎さん!」

 

「あら?綾ちゃんに椿ちゃん、お久しぶりね。それにしても全く・・・非番の時に買い物に来て、つい怪しいから後を着けてみたら本当に泥棒だったなんてね。警察の方では、がま口の妖具は窃盗で良く使われているから、何処に何を隠したのかなんて分からないとでも思ったかしら?」

 

「あ、あぁぁ・・・」

 

まさか半妖刑事の犬吠崎さんまで来るとは思ってもみなかった男はみるみる内に青ざめていく。ついでと言わんばかりに鞄から零れ落ちた高級品の山を見た一般の人達も、ただ事ではないと何人かがインフォメーションへと走っていくのが見えた。

 

そして椿が男に諦めるよう助言すると同時に、妖具を持っていた男の正体を確かめようとする。

 

「大人しくした方が良いと思うよ。でも、その前に1つ聞かせて――あなたは半妖なのですか?」

 

「ふ、ふふふ・・・ちくしょう、ちくしょう!だったら、せめてこれだけでもぉ!!」

 

だが男は椿の質問に答える事なく、咄嗟に腰のポーチからあのがま口妖具を取り出してヒュンヒュンと妖怪である椿達の目でも追えない程のスピードで舌を伸ばしてきた。

 

「っ・・・!?」

 

「このっ・・・まだ何か盗むつもり、か・・・え?」

 

私達は慌てて財布などが入っている鞄とかを押さえたが、その瞬間にズボンから何かが無くなったようなスースーとした感覚に違和感を覚えた。

 

な、なんか嫌な予感が・・・

 

「ふ、ふふ!ぐふふふふ・・・女子中学生と婦警の生パンツ、ゲット〜!!」

 

「ぎゃぁああ!?な、なんて事しやがんだこのブタ野郎!!」

 

「わぁぁあ!?下着だけ盗られたぁ!」

 

「わ、私もぉ!」

 

「ちょっ・・・最低!」

 

「フーッ、フーッ!あ、あんたぁ・・・返しなさいよぉ!!」

 

「キャッ!?このぉ、窃盗罪に上乗せして強制わいせつ罪も付けるわよ!!」

 

もうやだコイツ、私やカナ達だけじゃなくて椿の下着まで盗むなんて・・・半殺しで勘弁してやろうと思ったけど、やっぱり全殺しだぁ!まんじゅうの餡子みたくこし餡にしてやる!!

 

「ぐ、ぐふふふ・・・す、素敵な戦利品だぁ!ヒャッホ〜!お宝にしちゃうもんねぇ!!」

 

「「「「「ふざけるなぁ!返せぇ!!」」」」」

 

「私のは良いとしても、椿とか他の人のは絶対許さねぇ!!」

 

「「「「「・・・えっ?」」」」」

 

いや、ちょっと待って。

なんで今皆で男に怒り心頭してたのに私の言葉で全員ポカンとして見てくるの?そんな事やっている内にも男はそのスキをついて私達の囲いを突破してめっちゃ走っていっちゃったよ!

 

あ〜もう!とりあえずはあのブタ野郎をとっ捕まえないと〜!

 

男の後を追って私が走り出し、それで皆もハッとして男を追いかけ始めた。そして椿が白狐さんの力で身体能力を強化し、ほぼ一瞬にして男へ追いつく。

 

「このロリコン変態犯罪者!牢屋に入れるだけじゃ済まさないです!」

 

「ひ、ひぃぃい!な、なんだお前!り、陸上でもやっているのか!?」

 

椿が一瞬で追いついた事に恐れ慄く変態男。

そこへ私も男を取り押さえるべく、小次郎を呼び出して彼に"ある事"を指示した。

 

「そこの変態男!ノーパン健康法って知ってるか?・・・小次郎――そのまま私を投げろぉぉぉおお!!」

 

「よし、分かった!鳥になってこい綾!!」

 

「げふぅっ!?」

 

そして恥も外聞も投げ捨てた私の"文字通りな"飛び蹴りと椿のタックルで男を服屋のワゴンごととっ捕まえる事に成功した。

 

ドンガラガッシャーン!といった音が鳴ったけど多分大丈夫・・・だろう。うん、大丈夫大丈夫。

 

「あでで・・・ち、ちょっとやり過ぎた」

 

「い、いたた・・・や、やっちゃったよ綾ちゃん。あっ、でも僕達の下着!」

 

「別に今のはノーパンだから恥ずかしくないもん!」

 

「何言ってんの、もう!・・・うわっ!な、何これ!?」

 

男がダブルアタックを喰らって伸びている内に私と椿はすぐさま男の鞄から下着を探す。不自然に膨らんだポケットを見つけ、そこからはなんと小学生や中学生のものと思われる下着が沢山出てくる。その中から2つ程、大人っぽいタイプのも見つけたが・・・1つは犬吠崎さんのだとして、もう1つは誰の物なのだろうか?

 

「はぁ、はぁ・・・やっと追いついた――って、あんた達もう捕まえたの?全く、2人とも羨ましい力ね」

 

美亜やカナ達も息を切らして追いつき、とりあえず取り返す物は取り返したので下着を履く前に一撃くらい拳だけでも入れておこうとすると美亜に手を掴まれて止められた。

ちなみに、彼女がその際に近くへ置いていたもう1つの大人っぽい下着を回収していたのを見たのは内緒だ。

 

「おいおい、どうして止めるんだよ美亜?」

 

「綾も椿も、あんた達何するつもりなの?」

 

「ちょっとね・・・他にも大量に女の子の下着を盗んでいたようなので、牢屋に入れるだけじゃ許せないよ。だから――」

 

「はぁ、2人とも止めときなさい。勝手に人間に罰を与えるのは妖怪の法律で禁止されているの。椿の姉の時とは違うんだから、今回は勝手な事をして違反したら妖界の牢獄に閉じ込められてしまうわよ」

 

「えっ?」

 

「マジかよ・・・でも、おかげで少し頭は冷えたかな」

 

美亜の説明で私達は済んでの所でヤバい事になりそうだったのを避けられた。

 

・・・やっぱり、そういう犯人に対して暴力振るったりしちゃいけないのはどっちの世界でも変わらないのね。

でも、妖怪の力は人間にとってはかなり危ない物になるだろうし状況によっては"甘い"と思われてしまうかもしれないよ。

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