私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾壱話 胸糞悪いヒーロー気取り

 

――その後

 

インフォメーションに向かった人や犬吠崎さんが係の人へ連絡をしてくれた事で、警察の人が捜査零科の杉野さんを連れて現場へやって来た。

毎度毎度こういう妖怪絡みの事件で2人を見かけるような気もするが、実はけっこう捜査零科は人が少なかったりするのだろうか?

 

「やぁ、椿ちゃんに綾ちゃん。いつも何かと、事件に巻き込まれるね〜君達は」

 

「僕達、何も好きで巻き込まれてる訳じゃないです・・・」

 

「うんうん、椿の言う通りこっちだって出来る事なら勘弁したいんですけどね。はいこれ、証拠の妖具」

 

私達のその言葉に杉野さんは苦笑いしながら妖具を受け取り、そして再び真剣な顔に戻った。

 

「ありがとう、2人とも。よし、捕まえた奴にも事情を聞くとしようか。しかし、亰嗟に関係していたらどうしたものか・・・今は白狐さんも黒狐さんも動けないしな〜」

 

「えっ?白狐さん達がどうかしたんですか!?」

 

「落ち着いて、椿。杉野さんは別に何かやらかして2人が捕まったとか言ってないでしょ・・・多分」

 

心配そうな顔を浮かべた椿に、私は彼女を安心させるべく杉野さんの発言にフォローを入れる。

 

「あぁ、悪い悪い。そんな心配する必要はないから大丈夫だよ。綾ちゃんの言う通り捕まったとかではないから、その辺りは帰ってから白狐さんにでも――痛てててて!」

 

「全く杉野君ったら、そういう事柄には言い方ってものがあるでしょう?私達は警察の中でも特殊な部署に居る訳なんだし」

 

「す、すいませんって犬吠崎さん・・・」

 

杉野さんの頬を抓る犬吠崎さんに私達は苦笑いを浮かべていると、椿の隣から夏美が意外そうな表情をして話しかけてくる。

 

「はぁ・・・椿、あんたさ、私の知らない間に色々とやっていたのね〜」

 

そんな事を言いながらも、夏美の視線は何だか杉野さんの方へと向いているように見えた。

 

なんだろうか、妙に嫌な予感が・・・

 

「ねぇ、椿?あれも、あんたの彼氏だったり?」

 

「はい!?」

 

「ブッフォッ!!」

 

椿に向けられた夏美のトンデモ発言に椿は素っ頓狂な声を上げて、私はつい吹き出してしまう。

 

すぐに椿は夏美の発言を否定した。

 

「か、彼氏とか・・・そんなんじゃないよ!」

 

「だよねぇ〜、あんたはあの2人が彼氏なんだもんね」

 

「向こうの狐2人からしたら、彼氏というよりも夫な気もするけど・・・」

 

「綾ちゃんまで、変な事言わないでください!」

 

「はいはい、すいませんでしたよ〜」

 

すると夏美はキランと目光らせて、またとんでもない事を言った。

 

「・・・じゃあさ、あの人狙って良いよね?」

 

「「・・・え?」」

 

やっぱり、夏美が杉野さんをジッと見ていたのはそういう事だったようだ。しかも当の本人が犬吠崎さんに下着の件でしばかれているにも関わらず、夏美の目はハートマークになっていた。

 

なんというか・・・彼女、意外と惚れっぽいのだろうか?

 

「あの人カッコイイじゃん〜あんた、いい人と知り合ってるね」

 

「でも、あの人半妖だよ?大丈夫なの?」

 

「それ尚更カッコイイじゃん〜!私、普通の人じゃ駄目なのよねぇ〜」

 

「えぇ・・・」

 

これには狐2人でツッコミ慣れた私も苦笑いするしかなかった。一応、夏美には椿と一緒に改めて妖怪の事とか色々説明しているから、ちゃんと意味は理解していると思うけれど・・・本当に何で椿の周りには変な人が寄り付き易いんだか。頭を抱えたくなってくる。

 

そんな中、椿の両肩をカナと雪がポンと叩いた。

 

「椿ちゃん、修羅場になりそうね」

 

「うんうん、大丈夫。私達がフォローする」

 

「何で?」

 

「つ、椿・・・あれ見てよ・・・」

 

私はカナに便乗して、椿に杉野さんの方を見るように促した。そこには犬吠崎さんに尻を蹴られているというのに、杉野さんは椿へ爽やかな笑みを浮かべていたのであった。

そういえば、飲み屋でバイトしていた時に聞いた話でロリコン疑惑があったような・・・うん、確定ですわなコレは。

 

「あぁ・・・そっか。うん、逃げたいです・・・」

 

「さ、流石にあれは・・・ねぇ」

 

そう呟きながら椿とドン引きしていると、何とかかんとか犯人から聞き取りを終えた2人が此方へやって来た。

 

「お待たせ2人とも、いや〜悪い予感的中だ。犯人は――」

 

「犯人は普通の人間で、「ネットの掲示板から抽選に当たって、あの不思議な道具が送られてきた」って言っていたわ。その道具を手に入れてから他にも不思議な物が見えるようになったとも言っていたから、ひょっとすると少しでも妖気に触れれば妖怪が見えるようになるのかしらね、椿ちゃん?」

 

「そうみたいですね、犬吠崎さん」

 

「ちょ、犬吠崎さん・・・俺の台詞横取りしないでくださいよ・・・」

 

「あ〜、ドンマイです杉野さん」

 

とにかく、どうやら普通の人でも"そこに何か存在する"と認識すれば、妖怪の存在はハッキリ見えるようになるのかもしれない。言われてみれば、確かにカナ達も椿や私と出会って色々知るまでは、そういった感じで妖怪をぼんやりとしか認識出来てなかったとも言っていたのを思い出す。

 

ちなみに、夏美が椿の腕をつついて杉野さんへ早く紹介しろと催促していたのは見ない事にする。

 

「それで案の定、その掲示板の主は"亰嗟"だ。でも、これも結局は尻尾切り要員なんだろうね。全く頭が痛いな・・・」

 

「いつも苦労をかけますけど、宜しくお願いします」

 

「私からも、これにめげずに捜査の方頑張ってくださいね!」

 

とりあえず、私と椿はこれからの付き合いも長いと思って丁寧な言葉で杉野さんと犬吠崎さんにお辞儀をした。すると、2人からは却ってそれが不思議に見えたのか、杉野さんが私達の額に手を当てて熱を計るような仕草をしてくる。

 

「な、何やってんですか・・・」

 

「杉野さん、僕達に熱は無いですよ・・・」

 

「いや、スマン。2人ともいつもと違う反応だったから、つい――って、そちらさんは?」

 

そこでようやく杉野さんは、先程から椿をつついていた夏美に気づいてくれたようだ。しかも自身に気づいたと分かるや否や、夏美もさっきの杉野さんの行動や犬吠崎さんが近くに居る事に対抗心が燃えたのか服の胸元を広げて猛アピールしていた。

 

もうやだ、この人・・・椿も流石に恥ずかしくて姉だと紹介しずらくなってるじゃんか。

 

オマケに他の3人もワクワクした様子で、なんか修羅場を今か今かと待っている感じだし。な、何故ただ見てるんですか、よりにもよってこんな時に裏切ったんですか〜!?

 

「あ、えっと・・・この人は、僕の姉の――」

 

「槻本夏美です!いつも、妹の椿がお世話になってます!」

 

「うわっ!・・・ガラッと態度変わるなぁ」

 

椿が紹介しようとした途端に、夏美は瞳を輝かせながら元気よく杉野さんへ挨拶した。

だが、この後に杉野さんは今日1番酷い言葉を言ってしまう。

 

「へぇ、君のお姉さんか。いやいや、此方の方こそお世話になっているよ。私は杉野純哉、妹さんの"下僕"として働かせてもらっている」

 

「ブフッ!?」

 

「ちょっ――!?」

 

「つ、椿・・・あんた・・・」

 

一瞬、場の空気が凍りつく。

そして犬吠崎さんはそんなぶっ飛びすぎた台詞を吐いた杉野さんの隣で「あーあ、またやったか」みたいな感じに額へ手を当てて項垂れていた。

 

あーっ、と・・・うん。これはひどい。

 

「違う、違います!違〜う!!杉野さん、なんて事言うんですか!?」

 

「や、やるわね・・・いいわ。それだったら、下僕の座は椿に譲るから、彼女の座は渡してよね」

 

「出来れば、その椿の下僕の座も返上してやりたい所なんだけど・・・」

 

「ん?君はもしかして・・・あ〜なるほどな。いいぞいいぞ、俺は高校生も範囲内だぞ!いつで――あいたっ!!」

 

「仕事中ですよ!!」

 

「余裕でアウトだ!この変態ロリコン刑事!!」

 

「何未成年に手を出そうとしてんの杉野君!!」

 

椿のチョップと犬吠崎さんのチョップが杉野さんの脳天に炸裂し、私のローキックが彼のふくらはぎに決まった。そんな私達の漫才染みた景色をカナ達3人はのほほんとした雰囲気で眺めている。

 

「あ〜良いわね〜予想以上の事になってるわ〜」

 

「面白くて、見てて飽きない」

 

「ホントよね〜」

 

「ちょっと!そこの3人、なんでホンワカしてるんですか!?見てないで少しは助けてくださいよ!」

 

「ま、漫才やってんじゃないんだけど、こっちは!」

 

すると、そんな中で突如として殺気の込められた声が私達に向けられる。そして、その声はかつて私達が体育館で聞いた事のある奴の声だった。

 

「へぇ〜妙な妖気を感じるな〜と思ったら、こんな所で出会うなんて思わなかったよ。何してんの?悪い――よ・う・こ・さん、それと人・間さん」

 

そう、私達が悪寒を感じて振り返った先に居たのは――以前に体育館で湯口先輩と決別した際に姿を現した、強力な滅幻宗の4人の内の1人"閃空"と呼ばれていた少年だった。その時に湯口先輩と馴れ馴れしく話していた様子からして、きっと年齢は多分私達と同じかそれくらいなのだろう。

 

パーカーに半ズボンといった今どきな若者の格好をした彼は、ショッピングモールの吹き抜けの落下防止の板にヤンキーらしく座り、こちらへ声と同じくらいの殺気を込めた眼差しを向けている。

 

「き、君は・・・あの時の・・・」

 

「お前、滅幻宗の連中か!」

 

「おっ?俺の事、覚えててくれたんだ」

 

私と椿が異変を感じたのに気づいた皆は一斉にそちらへ顔を向け、そして殺気立った閃空の雰囲気に当然ながら全員は構える。

 

「全く、俺の事覚えるなんて・・・胸糞悪いからさ、止めてくれる?」

 

「へっ?」

 

「くっ、なんだこのプレッシャーは?」

 

しかし、私と椿が閃空の雰囲気が変わったと認識した瞬間――

 

「きゃぁっ!?」

 

「うぁっ・・・!?」

 

後ろからカナと雪の悲鳴が聞こえて振り向くと、さっきまで私達の近くへ居たはずの2人はショッピングモールの壁へ叩きつけられてしまっていたのだ。

 

「そんな・・・カナちゃん!雪ちゃん!」

 

「クソっ!大丈夫か2人とも!?」

 

すぐに杉野さんと犬吠崎さんが2人の様子を見に行ってくれて、とりあえず大丈夫だとジェスチャーを受け取り安心したが――私と椿は、それ以上に奴に対する怒りが湧いてきていた。

 

「2人へ何するの?」

 

「何って?悪い妖怪退治だけど」

 

「ふざけんな!2人は何にも悪い事なんてやってないだろうが!」

 

私が閃空に怒鳴るも、そいつは悪びれる事なく更にはゲームで遊んでいるかのように言葉を返してくる。

 

「湯口からは、お前らには手を出すなって言われてたけど・・・見つけた以上はしょうがないよねぇ。それにアイツがショック受けてる顔を見るのも悪くないし。どっちにしろ、半妖も妖怪も悪い奴なんだから懲らしめるのは当然だろ?」

 

やっぱり、こいつは椿達妖怪の事を完全に"悪"だと決めつけている。

 

だったら・・・もう話す必要なんてないな。

 

「だって俺達、滅幻宗は悪い奴を退治する正義のヒ――ろぁっ!?」

 

「なんか言ったか?この胸糞悪いヒーロー気取りのクソ野郎が」

 

「君みたいな自分勝手な奴は、正義のヒーローでも何でもないよ」

 

なんせ、先程カナ達が吹っ飛ばされた際に一般の人も巻き込んでいたのだ。そんな事すら考えないで自分達を正義と謳うなんて、正直言ってふざけているでは済まないレベルだ。

 

気づけば私は体育館の時に変身した姿で、白狐さんの力を解放した椿と共に閃空へと拳をぶち込んでいた。

 

そして偶然にも、それで私があの姿になれる方法がやっと理解出来た。

 

――それは、私の"守りたい"という強い"想い"だ。その"想い"が頂点に達した瞬間、私の身体の奥底から力が湧き出てくるのを感じる。

 

「てぇなぁ・・・この、中ボス共がぁ!!」

 

「誰が中ボスですか」

 

「随分と舐めた口きいてくれるじゃんかよ、ああ!?」

 

「てめぇらなんか、2つほどセリフ喋ったら即終了だろうが!」

 

そう言って、閃空は私達に殴られたのに怯む事なく怒鳴り散らして両手から丸い物体を飛ばしてくる。私と椿はそれが何なのかは分からなかったが、とりあえず弾いた。

 

「んなっ!?バカな!」

 

「あのね、珍しく怒っているんだよ・・・僕は。大切な友達を傷つけた、君にね」

 

「どんな小細工をするつもりだったかは知らないけど、ここからは私達の鉄拳制裁タイムだ!」

 

弾いた軽い感覚からして硬い物である事はなんとなく分かったが、受けた痛みは全くといっていい程無い。

 

しかし、だからといって私達は閃空のように手を抜く気なんてサラサラ無い。

正義とのたまって平気で人を巻き込むような奴は、遠慮なく殴らせてもらうぞ!!

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