私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾弐話 2人で駄目でも

 

私達は出来る限り周囲に被害を出さないようにと警戒していたが、閃空の方はそんな事は気にするつもりも無く更に先程と同じような武器を飛ばしてきた。

 

よくよく見れば、その物体は円形というだけでなく何か紐のような物を繋げて彼の手から放たれているようだった。

 

椿がそれを弾いたり避けたりしながら、その事について尋ねる。

 

「それって、まさか・・・」

 

「やっぱり見えてるのか、このヨーヨーが。おかしいなぁ・・・ちゃんと錬気で速度を上げて、目に見えないくらいのスピードにしてるのに。この閃空の名に相応しいように――ね!」

 

「はっ!たかだかヨーヨー程度で粋がるんじゃねえよ!」

 

「綾ちゃん、僕達とは向こうの武器のリーチが違い過ぎるから気をつけて!」

 

「それくらい分かってるよ!」

 

椿と同じく、私も閃空から放たれるヨーヨーを拳や腕、脚で払ったりしながら彼女へ返答した。そして更に椿は、閃空へ向けて少しでも気を逸らす為に話しかける。

 

「・・・そっか。君は"閃空"って呼ばれているんだね」

 

「ふん、覚えなくていいよ。そもそも、俺の事をちょっとだけでも覚えられていた時点で寒気もするし吐き気もする。あぁ・・・もう、鬱陶しいなぁ!!」

 

「おいおい!そんな感情任せな攻撃、こっちには見え見えだよ?」

 

椿の言葉で落ち着きが無くなってきた閃空の攻撃はもっと雑になる。しかもヨーヨーという道具の特性上、飛ばしてから手元に戻すまでの隙もかなり大きい。

 

そして、私達は次にヨーヨーを避けたと同時にそれぞれ強化された身体能力を用いて一気に閃空へ接近し、奴の頬をぶん殴った!

 

「ほっ!」

 

「隙あり!」

 

「ぁがっ!?」

 

見事に私と椿の拳がクリーンヒットした閃空の身体は、そのままさっき立っていた吹き抜けの板へ勢い良く激突する。例えるならば、ポーンと空中に放り投げられたボールを金属バットでかっ飛ばした時のように手応えがあった。

 

「くそっ・・・」

 

「あっ、そういえばヨーヨーってさ、こうすれば使えないよね?」

 

そこへ更に、閃空が吹っ飛ばされた事で制御を失い地面に落ちたヨーヨーの紐を椿があっさりぶっ切る。

 

「あっ!貴様!」

 

「だ〜ははは!これでお前のお得意なヨーヨーは――っあだぁ!?」

 

「あ、綾ちゃん!」

 

悔しそうにする閃空へ私は腹を抱えて笑おうとすると、突然顔面に2発殴られたような衝撃を食らってしまい皆の方へ飛ばされた。

 

「あっででで・・・い、今のはなんだ!?」

 

「綾ちゃん、アイツの手を見て!またヨーヨーが出てきてるよ!」

 

「ええ!?ヨーヨー残ってるの隠してるなんて、そんなのアリかよ!」

 

吹っ飛ばされながらも空中で体勢を整えて着地して閃空を見ると、確かに椿の言う通りに奴の手からは更なるヨーヨーが2つ出ており、得意げにクルクルとドヤ顔で回していた。

 

「ふん、この滅幻宗特性の俺専用ヨーヨーを甘く見るなよ。それに・・・2個だけなんて言ってね〜だろう」

 

「こっんの野郎・・・」

 

それにムカつきながら閃空を睨むも、奴が新たに出してきたヨーヨーは先程の物よりも重く作られているのかズッシリした感じに見えた。しかも私がヨーヨーで吹っ飛ばされた瞬間に、椿が目を離したのを見計らってなのか彼は先程のヨーヨーも回収していたようだ。

 

「さっきから余裕な態度を見せてくれて・・・ムカつくねぇ、この雑魚が!」

 

閃空はそう言って、今度は4つのヨーヨーをそれぞれ操って一度に私達へ飛ばしてきた。流石は妖怪を相手にしてきた滅幻宗というだけあって、こういうのはお手の物か・・・と言っている場合ではないね。

 

「やっべ・・・!」

 

今さっき吹っ飛ばされたダメージのせいでガードが遅れそうになったと思った瞬間、私の目の前まできていたヨーヨーが弾かれた。

 

「あっぶないわねぇ、大丈夫?」

 

「美亜!」

 

そのヨーヨーを弾いたのは、なんと戦闘が得意ではないはずの美亜だった。私に続いて椿も美亜の登場に声を上げる。

 

「美亜ちゃん!」

 

「ごめんなさいね、2人とも。ちょっとセンターの方に増援の連絡を入れていたからね」

 

「とにかく助かったよ。こいつら、どうやら亰嗟から買った道具を使ってくるみたいで、しかも扱いも上手いようなんだ」

 

なにせ私達とそう変わらないくらいの年齢な閃空でも、弾かれた4つのヨーヨーを器用に操り縦へ円を描く形に回している。

 

椿は目を丸くしながら美亜へ顔を向けた。

 

「でも美亜ちゃん、さっきのよく弾けたね。普通は見えないってアイツが言ってたよ?」

 

「ふん、あんなの猫じゃらしの延長よ!」

 

「なるほど、猫だから反射神経がずば抜けてるって訳ね!」

 

「でも悪いけど、私は攻撃の妖術が使えないわ。だから椿と綾、あんた達は攻撃妖術で攻撃しなさい!ヨーヨーは私が囮になって弾くから!」

 

相手に立ち向かう形で立つ美亜が、顔だけを私達に向けてそう言った。確かに、私達2人で駄目でも美亜と3人ならば閃空のヨーヨーも何とか出来そうだ。とはいえ――

 

「ありがとう美亜ちゃん。でも、油断はしないで。アイツ、ヨーヨーを"全部出した"とは言ってないんだよ」

 

「まだあるって言うの?もしそうだとしたら、それこそ化け物よ。・・・でも、あいつらはそういう集団だったわね。分かった、油断はしないわ」

 

美亜が私達へ頷いたのを確認し、私は小次郎を呼び出し椿は黒狐さんの力を解放する。

 

「僕もちょうどね、新しい妖術を試したかったんだ。杉野さん達が人払いをしてくれたようだし、ちょっとだけ派手に行くね」

 

「この姿で呼び出すのは初めてだけど、いつも以上に力が湧いてくるからこっちは任せて。・・・いけるよね、小次郎?」

 

「ふっ、今の主殿の力ならそんな事は"あたり前田のクラッカー"というやつだ」

 

「「「・・・はい?」」」

 

「・・・失礼、忘れてくれ」

 

小次郎の妙に古臭いギャグを3人で適当に流しながら、私達は改めて閃空へ向き直り気合いを入れた。

 

「行くよ!綾ちゃん!美亜ちゃん!」

 

「おうともさ!」

 

「分かってるわよ!」

 

こうして3人で肩を並べて戦えるようになるなんて、なんというか・・・場にそぐわないものであるとは分かっているが少し嬉しく感じる。

 

そして夏美やカナ、雪達に一般の人も杉野さんと犬吠崎さんに誘導されてショッピングモールの入り口まで避難したのを確認した私達はいよいよ本気を出せるようになった。

 

さて、こんな人が多い所で暴れてくれたツケ、五臓六腑に染み渡るまで反省させてやるとするか。

 

「作戦タイムは終了か〜い?たかだか雑魚が1匹2匹増えた所で、何も変わりは――」

 

「・・・飛剣、燕払い!!」

 

「妖異顕現、黒焔狐火!!」

 

「――っ!?無駄だ!」

 

小次郎のヨーヨー以上に早い2連撃と椿の黒炎が閃空へ飛んだが、それでも奴は1つヨーヨーを回して盾を作りそれらを弾いた。

 

しかし、これはまだ想定内だ。だから、私は椿と相談して"ある作戦"を実行に移す。

 

「妖異顕――」

 

椿が更に妖術を発動しようとすると、その隙を狙って閃空は彼女の死角から2つヨーヨーを飛ばしてきた。流石に小次郎でも剣以外の速さでは奴のヨーヨーには追いつけない・・・でも。

 

「あのねぇ〜!お前らは妖術を使う時に隙があり過ぎるんだよぉ!」

 

「だから、それを私と綾で補うんでしょうが!!」

 

「はん!私達はそれくらい読み読みだって言ったの、もう忘れたかよ!」

 

私と美亜でそのヨーヨーを弾き、椿の前に立って閃空を睨みつけた。そして、奴が小次郎の剣撃を捌いているのを見計らって椿が今度こそ妖術を発動した!

 

「ありがとう、美亜ちゃんに小次郎さん!いくよ、妖異顕現!黒焔狐火――」

 

「何?またそれ?無駄だって――」

 

「からの、黒羽の矢!!」

 

「――なっ!?」

 

そう、椿と考えていた"ある作戦"とは、椿の妖術を二重に発動して実体の無い物を貫ける"黒羽の矢"に実体がある物を燃やし尽くす"黒焔狐火"の炎を纏わせて閃空の不意を突こうという作戦だ。

 

「だから・・・甘く見るなって言っただろう!」

 

すると閃空はそう叫んでから、4つの他に更なるヨーヨーを2つ取り出して椿の矢へ向けて飛ばしてくる。そして、投げられたそのヨーヨーに空いた細かな穴から激しく炎が吹き出してきた。

 

これは、南国の炎ジャグリングを彷彿とさせるな。

 

「ははっ!このヨーヨーの中には、錬気を使い炎を噴き出す札を入れているんだ!これで、お前の炎と相殺――えっ!?」

 

「残念だったな、椿の矢は炎とかそういうのだって射抜けるんだよ!」

 

私達の作戦は見事に上手くいき、今閃空が放ったヨーヨーが出していた炎は"黒羽の矢"で取り除かれ、ヨーヨー本体も矢に纏わせてきた"黒焔狐火"によって燃やされた。

 

強いてこの作戦に問題があるとするならば、2つも妖術を使うので椿の妖気の減り方が心配だという事だろうか。

 

しかし、それで簡単に終わらせてくれるはずもなく閃空は腰のポーチからまたヨーヨーを取り出してきた。

 

「ちっ!予備を持ってきていて正解だったか」

 

そう言いつつ、閃空はヨーヨーを準備しながら口に札を咥えて私達の攻撃に備える。迂闊に手を出せば手痛い反撃をもらうかもしれないと踏んだ美亜は、とりあえず相手の準備が終える間に私達へ話しかけてきた。

 

「また厄介な物を・・・あれはね、さっき盗みをした奴が持っていた物の逆バージョンみたいな物よ。別の鞄や入れ物に保管された物をあれから取り出せるタイプね」

 

「マジでか。そりゃ面倒くさそうだな〜」

 

「それにしても・・・ただの人間が何であんな大量の妖具を持っているの?」

 

不思議そうに首を傾げる美亜に椿が答えた。

 

「あっ、そっか。美亜ちゃんは聞いてないんだっけ。滅幻宗の持つ妖具とか、あの変なお札は全部亰嗟が売りつけているかもしれないんだって」

 

「あ〜ら、それは何だかキナ臭いわね・・・巨悪が潜んでいそう。良いわね〜、そういうのを解決出来れば皆に一目置かれるわよね〜?」

 

「今の私達のライセンスじゃ、そういう任務の許可は降りないと思うけどね」

 

「とにかく今は緊急事態だからコイツと戦っているけれど、任務レベルとしたら確実にこれはもうSランクよね。椿!綾!絶対勝つわよ!」

 

「分かってるから、敵に集中してください!」

 

「くっ!次のヨーヨーが来るぞ!」

 

私が叫んだのと同時にヨーヨーが飛来し、それを美亜と咄嗟に何とか拳で弾く。

 

「痛いわねぇ、何このヨーヨー。よく普通に飛ばせるわね」

 

「流石に、あの鉄っぽいヨーヨーだと手が少し痺れるな・・・小次郎!もうちょい頑張って!」

 

「御意!とはいえ、私でも奴を捉えるのは中々骨が折れるぞ!」

 

私と美亜がヨーヨーを弾きながら、小次郎が閃空へ攻撃を続ける途中で椿が声をあげた。

 

「ひとまず綾ちゃんと美亜ちゃんは、そうやってヨーヨーを防いでいて!何とか隙を見つけて、新しく頭に浮かんだ妖術でコイツを倒してみせる!」

 

「OK、椿!なるべく飛んでくるヨーヨーがそっちに行かないようにするから!」

 

「分かったけれど、私も綾もあんまり大量には防げないからね!」

 

一旦攻撃の波が引いたのを見て、私達は横一列に並んで閃空を睨みつける。向こうの方も、再びカッコつけてか吹き抜けのアクリル板へ飛び上がり、自身が優位に立っている気で私達を見下ろした。

 

「仕方ないなぁ・・・雑魚相手に、ここまでの事はしたくないが――見せてやるか、俺の実力をな!!」

 

閃空がそう叫んで、腰のポーチから今度は更に多い5つのヨーヨーを空中に投げて、それらが手元に落ちてくると同時にそれぞれ1本1本の指へ紐を通してヨーヨーを引き寄せた。

 

まさか・・・全ての指で1つずつヨーヨーを操るつもりなのか!?

 

私達が仰天するよりも速く、閃空はそのまま両手全ての指を器用に動かして計10個ものヨーヨーをグルグルと自身の周囲へ回しだした。

 

「わ〜スゴいスゴ〜い」

 

「美亜ちゃん!拍手なんかしない!」

 

「いくら敵のヨーヨーの扱いがずば抜けてるからって、本当に拍手してどうすんだよ!?」

 

「あんた達ね、落ち着きなさいよ。私はコイツのあまりの馬鹿らしさに拍手をしていただけよ。ちょっと耳貸しなさい」

 

そう言って美亜は私達の耳を寄せさせて、ヒソヒソと彼女の立てた作戦を伝えてくる。それを聞いて私達は「あ〜なるほど」と納得し、それなら閃空に対して勝機があると感じてやる気が出てきた。

 

「いい?相手はただの自慢したがりなガキよ。多けりゃ良いってもんじゃないの、それを分からせてやるわよ!」

 

「うん、分かった!」

 

「よっし!じゃあ一丁前に張り切りますか!」

 

なんというか分からないが・・・私には美亜の作戦はきっと上手くいくという謎の自信があった。

 

それに今まで椿と2人だけで戦ってきたのもあってか、こうして美亜も含めて3人で協力して戦うという状況に心が踊ってくる。

 

そして、それで私もようやく気づいた。

 

嬉しかったのは今の私達が狐2人のような関係になってきた事に加えて、いつの間にか美亜と互いにそれぞれ信頼し合える程に仲が良くなっていたのだという事に。

 

そうか――これがきっと"仲間"という関係なんだ。

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