私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾参話 "鉄烏"の得意分野

 

美亜から聞いた事は、実に単純で分かりやすいものだった。

 

簡単に言えば、先程閃空が10個同時にヨーヨーを操ってみせたのは私達に対する脅しの形でしかなく、その後からは一切ヨーヨーで攻撃しようとしてくる様子がない事から、一度に大量のヨーヨーを展開すればそれぞれの指で複雑な操作を強いられ隙だらけになると本人が理解しているかもしれないという話だ。

 

なので、私達で考えた策は「相手の余裕を削いで10個同時に使わざるを得ない状況へ追い込む」という事なのだ。

その為には美亜だけでなく、椿も攻撃が当たりにくいように姿を狐に変える必要がある。・・・しかし、椿はどうやらまだ狐変化に慣れていないらしく、服はそのままになってしまうのを気にしているようだった。

 

「今は恥ずかしがっている場合じゃないわよね?さっ、行くわよ!」

 

「うぅ・・・わ、分かりましたよ」

 

恥ずかしがる椿の隣で、私はふと思った事を小次郎に質問した。

 

「そういえば、小次郎も2人みたく何かに変化して〜って出来たりはしないの?」

 

「ふっふっふ・・・よくぞ聞いてくれた主殿よ!私の本分は"鉄烏"。先程まで剣を振るうのは元より、動物の化身と成って相手を撹乱するなど造作も無い――」

 

「ごめん小次郎、そういう前口上は今いらないから」

 

「ぬ、ぬぅ・・・そうか。しかし妖術の関係上、綾にもかなり負担がかかるぞ」

 

「それくらい、私は何とかするよ」

 

作戦を成功させるのに、今はどうこうリスクを考えている場合ではない。美亜や覚悟の決まった椿と共に私は小次郎の示したハンドジェスチャーを用いて変化妖術を発動した。

 

「「「妖異顕現!」」」

 

叫んだ途端に椿と美亜の身体は煙に包まれ、小次郎もロボットのような身体のあちこちが変形して、それぞれ姿を変えていく。

 

小次郎の上半身と下半身がそれぞれ分割される形に変形していき、上半身の方は両腕を翼に変えて下半身の方は背負っていた刀を脚の一部と連結して翼に変えた。

パッと見ればスラッとした鳥型ロボットとゴツい体をした鳥型ロボットになったように感じる。

 

椿達の方も変化を終えて、抜け殻のように地面へ落ちた服からひょっこりと這い出てきた。

 

「わぁ・・・本当に狐になっちゃった――って、ええ!?そ、それってもしかして・・・小次郎さん?」

 

「「ふふ、驚いたか狐の子よ!この姿こそが我が"鉄烏"の得意分野、情報収集や偵察に向いた形態よ!」」

 

閃空に負けず劣らず自慢げな小次郎"2体"がそれぞれシャキーン!と胸を張る。すると、椿は狐2人の変化の事について疑問を口にした。

 

「あれ?ところで、白狐さんと黒狐さんって服はどうして――」

 

「あいつらは正に、神業のようにして早着替えが出来るのよ。それに服も咄嗟に妖具の中に隠してるみたいなのよね」

 

「「ふむ、服を必要としない私からすれば何とも難儀な悩みよの・・・」」

 

そんな戦闘中とは思えない話題に私が苦笑いを浮かべていると、変身を終えるのを気にして見届けた閃空がガッカリした顔をする。

 

「何・・・その姿は。狩られる側として、身なりもそれなりにしてくれたの?この――化け物が!」

 

いや、一応気持ちは分からないでもないけど、別に椿達は巨大な狐になったりはしないからね?

 

「ふふ、あら余裕ね。それだったら、早く仕留めてみせなさいよ」

 

「言われなくても、一発で仕留めてやるよ!」

 

そして美亜の簡単な挑発にもアッサリ乗って攻撃してくる閃空に、私はやっぱり敵が人間との喧嘩すらロクにやった事のないアホだと再認識した。

 

彼は重い鉄っぽいヨーヨーを椿達へ猛スピードで飛ばしてくるが、美亜や小次郎は身軽な動きでヒョイと回避する。

ちなみに小次郎を呼び出している私は普段とは違って、2つのテレビリモコンを持たされているような感覚があるので意識があっちへいったりして何とも集中しずらい。

 

「わっ!よっ・・・!と――えっ?あぅ!?」

 

しかし狐の身体に慣れていない椿は攻撃こそ避けたものの、つい人間の姿の時と同じように動いてしまって体勢が崩れて吹き抜けの板へぶつかってしまった。

 

「何やってるのよ?しっかりと体の動かし方を確認しなさいよね」

 

「あっ、そっか・・・体の使い方が変わってるんだもんね」

 

何とか立ち上がって足踏みする椿へ閃空が嘲笑った。

 

「ははっ!なんだお前、その身体になった事が無いのかい?元々その姿だったろうが、狐の化け物が!」

 

それにしても、さっきから椿達の事を化け物と散々言って毛嫌いしているようだが、閃空の身には昔に一体何があったのだろうか?滅幻宗から吹き込まれたにしては、やけに強い恨みすら感じる気さえしてくる。

 

「「集中しろ、主殿。今ので奴は椿をマークするようになったぞ」」

 

「分かった、小次郎。椿、援護は――」

 

「よっ、と。よし、いけるから大丈夫だよ!」

 

「はは、あまり要らなさそうだね。とりあえず小次郎1号は椿が避けやすいようにしてあげて!2号は美亜と一緒に行動を!」

 

「「御意だ!」」

 

そうしてから、小次郎の読み通り閃空が椿を最優先に狙って攻撃してくるようになったが、少し身体を動かして慣れたのか椿は敵の攻撃をピョンピョン跳ねて避け、そのまま吹き抜けの周りの通路を走り始めた。

小次郎の形態維持に意識を集中させている私も、飛んで来た火を噴くヨーヨーの1つを身体に回転を付ける事でいなして裏拳で弾き飛ばす。

 

「ちっ!この野郎!」

 

中々攻撃が当たらない事に業を煮やした閃空は、今度は別な指からまた見た事の無いヨーヨーを飛ばしてくる。椿と小次郎1号が何かあると踏んで大きく避けると、そのヨーヨーの側面から手裏剣のように刃物が飛び出し、危なく2人を切り裂く所だった。

 

「うひゃっ!?」

 

「ぬぉっ!何とも危ない玩具だな!」

 

椿も小次郎1号も動きながら避けた事が幸いしたのか、避けられた方の刃物のヨーヨーはそのまま店頭へ突っ込んで店先の棚を唐竹割りの如く真っ二つにした。

 

もうコイツ、周囲の事なんか全く考えてないね!

 

「この・・・ちょこまかと――っ!?」

 

「はいは〜い。あんまり椿ばっかり見てたら、その喉元掻き切るわよ〜」

 

「相手がどれくらいいるのかを忘れるとは、妖怪退治をする人間として失格だな」

 

そんな中で椿を追いかけながら偶に私へヨーヨーを飛ばしていた閃空に、モールの3階から美亜と小次郎2号が上から突っ込んできて奴の手にあったヨーヨーの幾つかを叩き落とす。どうやら敵が私達に集中している間に上へ向かっていたようだ。

 

それから更に2人は私達の前へそれぞれ着地し、「その調子で、相手を挑発しながら走れ」と軽くジェスチャーして再び吹き抜けを通って3階へ登っていった。

 

猫と鳥というだけあってか、流石上下移動は得意とも言いたげな速さだ。

 

「ちっくしょ・・・あの化け猫とロボカラス〜」

 

閃空が片手首を押さえて呻くのを良く見ると、彼の手の甲には2人が攻撃したような6本の引っ掻き傷がそれぞれ格子のように重なっていた。

 

そのダメージで身動きがしずらくなっている閃空へ椿が離れた場所から問いかける。

 

「ねぇ、何で君は僕達をそんなにも毛嫌いするの?」

 

「お前達に話す事なんて何も無いね!妖怪なんてさ〜悪霊と同じで人の心につけ込み、そして悪さをするんだろう?最低だよな!!」

 

そう叫んでから閃空は、再び新たなヨーヨーを私と椿の方に向けて飛ばしてくる。次に何が出てくるのかと警戒しつつ、なるべくヨーヨーから距離をとって避けると今度はヨーヨーから激しい放電が発生した。

 

「さっきは刃物で次は電気って、えげつないチョイスするなぁ・・・」

 

「危ない危ない・・・」

 

椿の方も閃空から距離を離していたおかげで、静電気で身体の毛が逆立ったもののヨーヨーの放電範囲から何とか逃げられたようだ。

 

すると、彼女の傍を飛行する小次郎1号を通して椿が私に話しかけてきた。これも"使い魔"である小次郎の感覚や記憶の一部を共有出来るからこそ可能な一種の応用だ。

 

「綾ちゃん、今の僕の姿で妖術って発動出来るのかな?」

 

「私にも分からないよ。でも、あの狐2人がその姿の時に使ってる所を見た事無いし、無理かも・・・」

 

「う〜ん・・・でも、ちょっとだけ試してみるね。――妖異顕現、黒焔狐火!」

 

そうやって椿は妖術を普段のように名乗って発動するが・・・やはり何も起こらな――と思った矢先、椿の尻尾の先端が黒い炎で燃えているのに気づいた。

 

「えっ?ちょ、椿!尻尾が尻尾が!!」

 

「へっ?わぁ!?」

 

椿もそれを自分で見て一瞬慌てたが、すぐに炎の様子が椿の尻尾で燃えてるのではなく"椿の尻尾そのものが炎へ変化している"と分かった。

 

「てい!」

 

そして彼女は隙をついて攻撃してきた閃空のヨーヨーへ炎を投げつけた。その炎は簡単に奴のヨーヨーを焼き尽くし、そのまま今度は閃空自身へ向かって飛んでいく。

 

「くっ・・・!?」

 

閃空は飛んで来た黒い炎を回避するが、ずっと吹き抜けの板の上で戦っていたせいで大きくバランスを崩し下の階へ落ちそうになっていた。

 

「あんたね〜カッコつけてるからそうなるのよ。だから、私みたいな弱い妖怪にまで翻弄されちゃうのよ〜」

 

「ちっ・・・何とでも言えよ、猫の悪霊の塊が」

 

「ちょっと、私はそんな化け猫じゃないわよ。勘違いしないでくれるかしら?それに、妖怪と悪霊は似ているけれども根本的には違うものよ!」

 

何とか体勢を立て直した閃空は、上から覗き込んで小馬鹿そうに声をかけた美亜に舌打ちして反論する。それに美亜は少し声を荒らげて更にその反論へ正論を返してのけた。

 

そこへ椿も加わって閃空に話しかける。

 

「あのさ・・・妖怪って悪い者ばかりじゃないよ。それに悪霊には実体が無いし、そもそも死んでるでしょ?僕達はちゃんと実体もあるし、生きているんだからね」

 

「黙れ・・・そうじゃないのもいるだろうが」

 

「ふざけんなよ、お前。テメーの過去に何があったかなんざ知らないけど、少なくとも椿達は人に迷惑をかけないように平穏に暮らしていこうとしてるんだよ。それを勝手な判断で"悪"と決めつけて殺して良い権利なんて、お前らなんかには無い!!」

 

閃空の言葉にいよいよ堪忍袋の緒が切れた私も椿に続いてそう叫ぶと、奴は少し項垂れてブツブツと呟いてからポーチのヨーヨーを取り出して10個のヨーヨーを私達や美亜の方に向けて一斉に全て飛ばしてきた。

 

「黙れ黙れ!お前らを全滅させないと・・・また・・・またあの悲劇が起こるだろうが!!妖怪達によって、また街が滅ぼされるだろうが!!」

 

意味深そうな言葉を混じえて喚き散らす閃空からは、10個のヨーヨーを操るリスク以上に怒りの感情が溢れてくるのが見て取れた。

 

だが待ちに待ったこのチャンス、作戦の狙い目をここで逃す訳にはいかない!

 

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