私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾陸話 知らない事が良い事もある

 

――それから少しして

 

私達はいい加減に杉野さんへ負担ばかりかけさせるのも悪いと思い、閃空が話していた事についてハッキリと伝える。

 

「――"妖怪が街を滅ぼした"?そして、それを憎しみを持って言っていた閃空は、その街の生き残り・・・と?」

 

「かも知れない、ってだけです。僕達の想像なんで、そいつがハッキリと言った訳ではないですけれど・・・それでも、必死に思い出そうとしていたりしたから、大きく外れている訳でも無いと思います」

 

「何か、警察の方とかでそれっぽい事件について聞いたりしたとかありませんか?」

 

私達がそう話すと、メモを取っていた杉野さんは手が止まり不思議そうな顔を浮かべる。

 

「そうだな、何かしら関係があるかもな。しかし、街が滅ぼされた?そんな事があったら、それこそもっと大騒動になるし記録にも残るはず。いや、待てよ・・・妖怪の仕業なら、今回の事件のように"情報操作をされて揉み消された"のか?」

 

「マジだったら、それ結構ヤバい話なんじゃ?何か手掛かりになる物とかあれば良いんだけど・・・」

 

「ねぇ、綾ちゃんに杉野さん。例え情報操作されても、事件ならセンターに情報が保管されてないかな?」

 

「あぁ、それは勿論だ。しっかりと残されているだろうさ」

 

「そっか!それなら帰ってから白狐さんと黒狐さんに――って、そういえば2人は動けないんだった・・・あちゃ〜」

 

ポンと手を打ったのも束の間、すぐに私は苦笑いして頭をかいた。ううむ、動けない原因が私と椿にあるとはいえ、困ったな・・・

 

「とにかく、帰ったらおじいちゃんにこっそり聞いてみるよ」

 

「あ、なるほど。椿のお爺さんも結構偉い立場なんだもんね」

 

「それは良いな。何か分かったら、この前渡した連絡先から伝えてくれ」

 

「うん、分かった・・・あっ」

 

すると、椿が「やってしまった」といった顔を浮かべると同時に、杉野さんの隣へ座っていた夏美が目の色を変えて椿に詰め寄ってきた。

 

うん、私もすっかり忘れかけてたよ・・・これは別の意味でヤバいや!

 

「椿・・・あんた、とっくに連絡先交換してたの!?お姉ちゃんにも教えなさい!」

 

「だわぁ!?な、なんか間違ってるから落ち着けぇ!」

 

「そうだよ、お姉ちゃん。直接本人に聞いたら?」

 

私達が杉野さんへ視線を移しつつ夏美に椿が言葉をかけると、どうしてか彼女は顔を赤らめて恥ずかしそうにする。

 

「いや、だって・・・私から男の人に連絡先を聞くなんて・・・そんな事、したことないから」

 

「初心か!そんな所だけ初心なんですかアンタは!?」

 

あ〜もう・・・なんというか色々めちゃめちゃだ、この人。

 

このまま俯かせてても仕方ないので、私は椿と共にチラッチラッと杉野さんへアイコンタクトして、連絡先を教えてもらっても良いかと確認する。意味を理解してくれた彼はニコリと笑ってから胸ポケットから名刺を出して夏美へ手渡した。

それを受け取った彼女は急いで裏に書いてある連絡先を確認し、それから喜んだ様子で杉野さんへ抱きついたのであった。

 

さっきまでの初心っぽさが嘘のように積極的だ・・・と思ったのだが、ふと椿と何か妙な事に気づいたので杉野さんの胸ポケットを確認しようとした。

 

「杉野さん、ちょっとごめん・・・」

 

「少ーし、気になる事があってね」

 

「えっ?あっ、ちょっと待て!」

 

杉野さんの尋常じゃない慌てように、ますます不審感を募らせた私達は頑張って彼の胸ポケットに同じような名刺が何枚も入っているのを見つけた。

 

すると、杉野さんは無言ですぐに私達の手を払ってくる。

 

これは・・・もしかすると、もしかするかもしれない。

 

「杉野さん、そのポケットの中の・・・見せて」

 

「い、いや・・・これは、君達には関係――」

 

「見せて」

 

「・・・ぐっ」

 

椿はそう言って「あ、これめっちゃ怒ってる奴やん」と寒気を感じさせる程の満面の笑みを杉野さんへ向けた。

彼は椿のそれを見てから非常に困惑した様子で冷や汗を流し、遂には観念して胸ポケットに入っていた大量の名刺を彼女へ手渡す。

 

私達は受け取った名刺の裏を確認すると、やはりと言うべきか全てに杉野さんの連絡先が書かれていた。

 

「ふ〜ん、なるほどね。これ良く見たら、個人で作った名刺だよね?警察官には名刺なんか要らないもんね〜・・・」

 

「ほ〜ん、そっか〜。こうやって情報収集しているんですね〜偉いですね〜・・・」

 

「つ、椿ちゃんに綾ちゃん・・・な、何か怒ってる、のか?」

 

「別に〜怒ってないですよ。ただ、名刺の裏にコッソリと書かれてたから「もしかして、僕達だけ特別に」なんて考えてた自分が凄く恥ずかしいだけですから」

 

「そうそう〜まさか、可愛い女の子なら誰彼構わず手渡してるなんて思ってもみなかったし〜」

 

「お、怒ってる?怒ってるよな?」

 

杉野さんがかなりビクビクしているようだが、まぁ頭にきてる事はきてるけども怒るくらいではないので安心して欲しい。――次からは多分距離を置くとは思うけれど。

 

「別に良いじゃん2人とも〜それだけ、女性を口説く事に慣れているって事でしょ?2人はもうちょっと、大人にならないとねぇ」

 

そう言いつつ夏美は杉野さんに密着してくっついた。

 

う〜む・・・夏美みたいな、こういう考えについてはサッパリ分からない・・・まぁ、私には椿が隣に居ればどうでも良いし。っていうか、それで思い出したが椿は狐2人から恋愛の過程をすっ飛ばして求婚されていたんだった。本当、これからどうなっていくんだろ・・・。

 

そんな事を考えてため息をついていると、先程の様子を面白そうに眺めていたカナ達から声を掛けられる。

 

「2人とも、良いの?」

 

「カナ、何が良いって?」

 

「杉野さん、取られちゃうよ?」

 

「「別に彼氏じゃないです」」

 

椿と2人して同時に答えた。正直、杉野さんの事は以前に犬吠崎さんと共に助けてもらった時、少しだけカッコイイと感じただけだ。

・・・今では、休暇中でも私達を手伝ってくれた犬吠崎さんの方がカッコ良く感じるのだが。

 

「なら、年上のお友達だったり・・・」

 

「「しませんよ、美弥子ちゃん」」

 

「それじゃあ、下僕?」

 

「「そうです」」

 

美弥子や雪の問いにも一緒に答えたが・・・たった今、何かイヤ〜な言葉が出てこなかっただろうか?アイスを食べる事に集中していたので良く聞こえなかったが、確か"下僕"とか聞こえた気がするんだが?

 

「そうかそうか、それは良かった!それなら、下僕らしくしっかりと働かないとな!」

 

すると杉野さんは嬉しそうな様子で立ち上がってから、夏美の頭を撫でてスキップしながら去っていってしまった。

 

そして、その言葉で私達は呆然としてしまう。

 

「「・・・」」

 

「良かったわね、良い下僕が出来て」

 

・・・やぁぁっちまっったぁぁアアア!!!

 

すぐにでも叫びたい気分ではあったが、一般の人に怪しまれるのは不味いので私は心で叫びつつガックリと頭を抱えてうずくまる。

 

何せ、零課の人達が頑張ってくれたお陰で、ショッピングモールはさっきまでの事が何にも無かったように普通な賑やかさを取り戻していたからだ。

 

「椿ちゃんも綾ちゃんも、アイスが溶けて落ちるわよ」

 

「・・・」

 

「悪い、カナ。今私達それどころじゃないんだわ・・・」

 

「大丈夫。私の妖具を使えば、アイスは溶けない」

 

そう言って雪も私達を励まそうとアイスを冷やしてくれたが、同時に私と椿の頭も冷えて落ち着いてきた。

 

「あ、助かるわ〜・・・じゃねえよ!?」

 

「本当だよ!雪ちゃん、なんて事言うの!?」

 

「2人とも別に良いじゃない。下僕の1人や2人、私も欲しいわよ」

 

「美亜ちゃんの価値観で言ってこないで〜僕は困るの!」

 

「えっと・・・"下僕"って、一体何なんですか美亜姉様?」

 

「ふふ、良い心掛けね美弥子。下僕っていうのは――」

 

「やめろォォオ!純真な子になんてモン教えようとしてやがんだ美亜ァァァ!!?」

 

本当に勘弁してくれ美亜!見た目9歳な、こんな幼い子が変な知識付けちゃったりしたらどうするつもりだよ!高笑いしながら鞭打つ小さい女の子とか、色んな意味でイヤだよ私は!

 

「――そして、下着だけにした杉野さんの口にボールみたいな物を付けてさ、四つん這いにさせて僕が馬乗りになって、お尻を鞭で叩いて「この下僕が!醜いブタが!」なんて言うんだよね・・・そ、そういうのは困るというか、出来ないよぉ!」

 

「椿も椿で何か心の声出ちゃってるぅぅぅ!?っていうか、そういうのはペットとか奴隷とかな奴だから!多分違うから止めてぇぇぇ!!」

 

しかも何故か椿も心の声が口に出まくってしまっており、必死で私は美弥子にヤバいものが聞こえないよう騒ぎ立てる。そして、それで我に返った椿は周囲を見渡し、彼女と私の様子にニヤニヤとしている3人に気付いた。

 

「綾は美弥子に聞こえないようにワーワーやってたし、椿も途中から声出てた。2人とも可愛い」

 

「うっ!?」

 

「じゃかあしいわ!」

 

色々と聞かれたのが恥ずかしかったのか、椿は顔を手で隠してその場にうずくまってしまった。

すると、先程から気になっていた美弥子が遂に3人へと質問してしまった。

 

「あの、椿さんの言っている事が違うなら・・・ご主人様と下僕って、どういう事を言うんですか?」

 

「あっ!止めて美弥子ちゃん、世の中には知らない事が良い事もある――」

 

そんな私の訴えも虚しく、夏美を含めた4人は美弥子の質問へ答えた。

 

「えっと・・・それは、椿ちゃんが露出の多い服を着て――」

 

「豪華な椅子に座って、ふんぞり返る」

 

「そして、地べたに座らせた杉野さんに――」

 

「履いている靴を口元に持っていって――」

 

「「「「靴を舐めろ」」」」

 

「アウトだ皆のバカァァァ!!!」

 

「しかもそれ、殆ど僕のイメージ通りじゃん〜!!」

 

更に付け足せば、4人とも絶対分かっていたような流れで順番に言っていき最後に声まで合わせる鬼畜ぶりである!

 

「な、なるほど・・・勉強になります皆さん!」

 

うわぁ納得しちゃったよ!

 

こ、これでもし美弥子ちゃんが変な方向に育ったら容赦せんぞ〜・・・!

 

こういうアブない性嗜好は小さい子ほど多分えげつない事になると思うんだ、私。・・・例えば、あの変態生徒会長とか。

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