私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 この気持ち、正しく愛だ!とか言わせねぇよ!?

 

――2時間後、目的地の旅館にて

 

踏むとキュッ、キュッと鳴る事で有名な「鳴り砂」がある琴引浜近くの旅館へ到着した私達は大きく欠伸をする。

 

道中で聞かされた話、実は椿の祖父は昔に此処の近くで住んでいたらしく、旅館の方も当時の友達が営業しているという。そして、その友達というのが例の妖怪食を作る職人なのだとか。

 

これは・・・なんでだろう、何故か嫌な予感がする。

 

「お〜!大っきな旅館〜」

 

「ここまでデカい旅館、私も初めて見るよ」

 

まぁ、きっと気のせいだろう。

 

とにかく車から降りた私は、先に降りて旅館の大きさに背伸びしながらビックリする椿と共にその大きさを共感する。

 

なんというか、3階建ての和風で横に大きな旅館だ。私の語彙力では表現しきれない程には、その別世界感が溢れている。例えるなら、そう・・・それこそ某アニメーション映画の神様の銭湯みたいな感じだ。周囲にどう見ても目立つ姿なのに話題になっていない様子からすると、多分こちらも妖怪専門の旅館なのだろうが。

 

同じ事を椿も思ったのか、ふと見ると不思議そうに旅館を見上げていた。そんな彼女に白狐さんが横から声をかける。

 

『ん?どうした椿。何を不思議そうな顔をしている?』

 

「いや・・・こんな所に、こんな旅館あったっけと思って・・・」

 

すると、その椿の疑問に答えようとした白狐さんを遮るように黒狐さんが答えた。

 

『椿。一応言っとくがな、後ろの建物は一般人には見えないからな』

 

「やっぱりね。私もそんな事じゃないかと思ってたよ。こんな人目に付きやすい所にあんな大きな旅館があるのに話題にならないのは普通有り得ないもん」

 

「あ〜・・・此処の旅館を経営している人が妖怪だもんね」

 

納得する椿が建物を見上げる視線の方を見ると、その建物の窓の幾つかから、首だけの人やら1つ目の提灯やらが通り過ぎるのが見えた。

 

皆が集まったのを確認して椿の祖父だけ人間の姿に変身して、受付けを行う為に旅館の出入口へ入っていく。

 

ちなみに後ろの建物には別々の入口があるらしく、そこから一般の人も"普通の方の旅館で"受付けを行っているホールに皆で待っているのはヤバいという事から、私達は駐車場で待ちぼうけの状態だ。

 

「うぅ・・・おじいちゃん、早く戻ってきてぇ」

 

「はぁ〜椿ちゃんの耳・・・フニフニしてて、相変わらず触り心地最高〜」

 

「同感。綾のポニーテールも、本人は余り手入れしてないって言ってる割にはサラサラしてて綺麗」

 

「ん〜椿の尻尾も、モフモフしてて最高よ〜」

 

「か、髪がボッサボサになるからあんまり触らないでもらえるかな・・・出来れば、椿の方も」

 

なんというか、牧場に居る牛や馬のようにカナ達からモフモフサワサワされるのは何時になっても不思議だ。元から可愛らしい椿はとにかく、本当にマトモな手入れをしてない私の髪なんか触って何が楽しいんだろう。

 

そう思いながらため息をついていると、旅館の方から見覚えのある子が私達を見つけた途端に凄い勢いでダッシュして来た。

 

・・・あの赤いポニーテールと狸の耳や尻尾は間違いない。っていうか、よくよく考えれば旅館の経営者が"妖怪食の職人"と聞いた時点で何故私も気づかなかったのか。

 

「椿姉さん!綾姉さん!お久しぶりです!!」

 

元気ハツラツに叫びながら私と椿の胴体にアメフト選手ばりの突進をかましたのは、やっぱりくノ一を目指す少しおっちょこちょいな子――楓であった。彼女の実家のある所とはいえ、相変わらずくノ一の格好をしている。

 

「あだぁ!?な、なんつ〜タックルだよ・・・嬉しいのは分かるけど少しは落ち着けって、楓」

 

「ぐはっ!?ちょ・・・楓ちゃん。久しぶりって、あれから何週間しか経っていないよ?」

 

あまりの威力に尻餅をつきつつも、なんとか宙に浮いた楓をキャッチする私達。その言葉に楓は目をキラキラ輝かせて此方を見ている。

 

「何週間は、自分にとっては久しぶりなのです!」

 

「はぁ・・・で?私達のお腹に頭をグリグリしてくるのはなんで?」

 

「それに、自分気付いたんです。何週間も姉さん達に会えない間に、積もり積もっていくこの想いに――この恋心に!」

 

いきなりぶっ飛んだ事を言い出した楓に私と椿は目を丸くする。そしてカナと雪もキョトンとした眼差しで彼女を見ている。

 

「はい!?ちょっと楓ちゃん、今なんて言いました!?」

 

「待てぇええ!楓ぇええ!?そういうのはまず軽い付き合いから・・・とかじゃなくて!この気持ち、正しく愛だ!とか言わせねぇよ!?」

 

「あの・・・2人とも?この子何?」

 

「椿、綾。説明を・・・」

 

しかもカナと雪の顔がなんか怖い。

別に椿も私も2人に好かれてはいるけれども、恋人同士になった覚えは無いはずなんだが?

 

『ほぉ・・・舎弟ならまだしも、そう来たか』

 

『つまりそれだけ、椿が魅力的という事だ。それは良いのだが、逆にライバルが多くなって困るな。俺達を邪魔する綾も居る事だし』

 

「絶対そういうのじゃないからね!?それに私だって、これ以上増えられたら流石に死にかねないから!」

 

もうヤダ、この人達。私と椿の頭上で勝手に視線で火花散らしてるし・・・。

 

「椿。あんたいつの間に、こんなにも・・・お姉ちゃん、ちょっとだけ見直したわ」

 

「は、はは・・・私も、まさかこんなに他に友達が出来るなんて思ってもみませんでしたよ」

 

「本当にね。最初こそあなたしか椿の近くにいなかったのにね・・・私ったら、駄目なお姉ちゃんね」

 

頭上で火花合戦が繰り広げられる中で、私が椿の尻尾を握ったままな夏美の言葉に同意する。

 

「でもさ、椿がそんな風にどっちつかずでハッキリしないから、皆が我先にって椿を狙うんじゃないかと思うのよね」

 

「あ〜・・・確かにそんな感じするかもしれないです・・・」

 

すると、夏美は少し真剣そうな声で椿へ声をかけた。

 

「椿、あんたは優しいし"誰も傷つけたくない"っていうその気持ち、分からなくもないけどさ。人との付き合いの中で、そういう接し方は程々にした方が良いわよ」

 

そう言って、夏美はまだ受付けをしている椿の祖父の方へと歩いていった。

さっきまでの飄々とした雰囲気が嘘のように真面目な言葉で、曲がりなりにも彼女が椿の姉であろうと気遣っているのは何となく理解出来た・・・気がする。

 

そこへ美亜が私達の隣にやって来て不思議そうな目を向けてくる。

 

「椿?あんたのお姉さん、昔何かあったの?」

 

「わかんないよ。お姉ちゃんと一緒に暮らし始めた時から、お姉ちゃんはギャルだったし・・・」

 

「それでも、あの言葉は真に迫ってたわね。椿、周りの人との付き合い方について、今のままで良いなんて思ってないわよね?綾も、いつまでも椿の事を気にかけていくつもりかしら?」

 

美亜がそう言って、楓に引っ付かれている私達を何か気にかける様子で見下ろしてくる。

今更言われるまでもないとばかりに私達は楓を降ろして立ち上がり、美亜の視線に真っ直ぐ向かって首を縦に降った。

 

「そんな事、言われなくても大丈夫さ。椿には椿の、私には私の生き方がちゃんとあるんだ。だから、椿が独り立ちするようになったら笑って見送るつもりでいるよ」

 

「うん。綾ちゃんの言う通り、それは分かってるよ。いつまでも皆に甘える訳にはいかないって事は」

 

「・・・それなら良いわ」

 

美亜は私達のその言葉を聞いて安心したのか、雰囲気が少し明るくなって夏美の後を追うように受付けの方へと向かっていった。

 

ずっと傍でやり取りを見ていた楓が首を傾げる。

 

「う〜ん・・・自分からしたら、椿姉さんが甘えているようには見えないっす」

 

「楓、それは人によるって事だよ。ところでさ、楓の気持ちは嬉しいっちゃ嬉しいんだけど・・・私や椿に対してのその気持ちは、多分恋心じゃないと思うんだよな〜」

 

とりあえず、変な誤解を解く為に私達は少し屈んで楓と同じ目線で説得を試みる。

下手にこれ以上、場の空気がピリピリし続けるのはツッコミ慣れた私でもいい加減お腹が痛くなってくるからだ。

 

「むっ・・・恋心じゃないっすか」

 

「おじいちゃんが言っていたけれど、人間と同じように幼体の妖怪にも、憧れを恋心と勘違いしちゃう子が居るんだってさ。楓ちゃんのも多分それだよ?」

 

すると椿の話に、楓は"姉さん達の言葉なら間違いない"といった様子で真面目に話を聞き始める。

 

「とにかくさ、"恋"ってものはそんな簡単じゃないよ。もっとドキドキするし、その人に会えないとソワソワして落ち着かなくて、その人の事を考えると"今どうしているんだろう?"とか"他の人と仲良くしているのかな?"とか・・・考えてもしょうがない事ばかり考えちゃうものだよ」

 

だが、私はその話を聞いて「あぁ、何となく自分と合致するな」と感じてしまい、ちょっぴりだけ心の奥が熱くなる。

 

「た、確かに・・・自分のは違いますね。ただ、姉さん達に会いたかっただけです」

 

そんな私とは裏腹に、楓の方はキチンと理解してくれたようだ。

 

おかげでカナや雪の緊張も解け、狐2人も「最初から分かっていた」と言いたげな表情になった。

・・・後者は本当にそうだろうか?という気になるが。さっきの火花の散らし方からして、多分半分本気にしていたのではないだろうか。

 

「――でも、それだけ具体的に言えるって事は・・・もしかして椿姉さん、恋してるんですか?」

 

「んえっ!?」

 

「ん、んぬぅ!?」

 

な〜んて事を少し考えていたら、楓が突拍子もない返事をしてくれて私と椿は変な声が上がってしまう。

 

あ、いや待て。ま、まだ私も恋してるって事は楓に気付かれてる訳じゃ・・・

 

「綾姉さんも何か顔赤いっすけど、椿姉さんと同じくやっぱり恋を!?」

 

「な、無いからね!?そういう"誰かの事が心にこびり付いて離れない〜"って、そんなベタベタな恋とかしてないからね!?」

 

案の定勘づかれてたよチクショウ!

 

椿も椿で一瞬狐2人に視線を向けちゃって顔を赤らめてしまっているし・・・誰かなんとかして〜!

 

「椿ちゃん、綾ちゃん、ご馳走様」

 

「「何が(ですか)、カナ(ちゃん)!?」」

 

追い討ちするようにカナも、そんなホッコリした顔をしないでくれ!そんな想いを椿と視線で訴えてみるが、まぁ多分聞き入れてくれないでしょうね!

 

「あ〜なるほど、それが恋っすね。良く分かったっす!」

 

「いや、違っ――わないけれど、いや・・・そうじゃなくてさ・・・あ〜もう!それ以上は言わないでぇ!」

 

「うっわ、めっちゃ恥ずい!うん、私も――分かんね〜!ちょっくら頭冷やして来る〜!!」

 

色々と頭の中が大パニックになってしまった私達は、ほぼほぼヤケクソで旅館の反対側にある海へ向かって猛ダッシュするのであった。

 

駄目だ、この気持ち!1度沸騰してしまうと自然に冷めたりなんかしなさそうだ!!

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