私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――午後、海の浜辺にて
午前中に工場見学を終えた私達は、一度旅館で昼食を食べてから準備をして、待ちに待った海へとやって来た。
ちなみに私は椿と違って余りにワクワクし過ぎて車の中で眠れなかったが、それでも海で遊べるくらいは余裕で体力が残っている。こんな人生で数回しか無さそうな事、浜辺で寝て過ごす訳にはいかない!
・・・って、つもりだったんだけど。
「あ〜椿ちゃんと綾さんの水着姿、最高に可愛い〜!」
「私達が上に着てたシャツ脱ぐ瞬間から、いきなり写真撮り始めるなんてカナは相変わらずとんでもないな!」
「あっ、椿。隠れないで!」
「ゆ、雪までもかい・・・」
2人がパシャパシャと写真を撮ってくるのに辟易して苦笑いを浮かべていると、椿もまたぶっ飛んだ事を言い出す。
「僕の水着姿を撮るのは有料です!」
「え、ちょっ、椿!?」
「え?いくら?」
「「払うの!?」」
そして、それに乗っかるカナもカナで大丈夫かと思うよ!?何にしても、私達が彼女らのカメラから逃れる術は今のを見たら無さそうだな・・・はぁ。
「椿に綾、やっぱりその水着、似合ってる」
「雪ちゃん、ありがとう」
「まぁ、雪には水着選んでくれた恩もあるからね。一応は写真撮るのはOKするよ」
そんな理由もあって雪に撮影の許可を降ろしていると、それを見ていたカナが頬を膨らませて拗ねる。
「え〜ズルい〜!私だって、後で椿ちゃんの水着の写真あげるからもっと撮らせてよ〜!!」
「全く、カナも仕方ないな。私なんかので良ければ好きなだけどうぞ」
「綾ちゃんは本当もう・・・変な所でお人好しなんだから」
椿に「後々どうなっても知らないぞ」といった顔をされてしまうが、こうでもしないときっとカナは面倒臭い事になりそうなので仕方ないのだ。
決して、ハイビスカスの飾りが映えるミントのワンピース水着という、喧嘩で身体に傷が絶えない私には似合わないはずの姿をカナが大喜びで撮影してくれてる事が嬉しい訳ではない。うん、仕方ないんだ。
「姉さん達の水着、可愛くて良いっすね!」
「ありがとう、楓・・・といっても、まさか楓が紐系のビキニを着てくるなんて思ってもみなかったけど」
「そうっすか?くノ一たる者、こうやって己の身体で誘惑をする為に日々鍛錬を・・・って、何撮ってるんすか?」
私の姿を素直に褒めてくれる楓に、カナのカメラの魔の手が忍び寄ろうとしていた。ええい、椿がダメなのは勿論だが、楓みたいに幼い姿の子を撮ろうとするのは流石にマズいと思うぞ!
「良いね〜楓ちゃん!まさかそんな水着を選ぶなんて・・・良いよ良いよ!お姉さん分かってるよ、背伸びしたい年頃だもんね〜」
「ちょっ・・・ちがっ!って、なんで下から撮ってるんすか〜!!」
「やめろカナぁ!おねロリ案件でこれ以上は色々とヤバくなるって〜!!」
「むぅ、綾さんは他の子へのガードが固いなぁ〜」
私は顔を赤らめ海へ逃げてしまった楓をとりあえず追いかける。カナの方がスタイルも良いので、まぁ逃げたくなる気持ちも分からないでもないが。浜辺で何か狐2人が張り合っているようだが、今は下手に身体の小さい楓が溺れないようにする事が重要だ。
波打ち際に座り込む楓の隣に私も座ると、彼女が恥ずかしげに謝ってくる。
「うぅ〜・・・ごめんなさい綾姉さん、まさかこんな事になるなんて思ってもみなかったっす〜」
「き、気にしない気にしない!・・・それにしても、まさかカナが着痩せするタイプだったなんてなぁ。こりゃ今後、またマークし直さなきゃないか・・・」
「え?何の話っすか?」
「いや?単にカナがフレンドリーだな〜って思ったから、椿を取られないようにしなきゃいけないって感じてさ〜ははは・・・」
何とか楓から"胸のサイズによる嫉妬"を誤魔化しつつ、私は改めて楓の身体を見る。
まだまだ成長途中であるとはいえ、それでも自己流で鍛えていたからか彼女の身体は同い年くらいの子と比べても引き締まっていて健康的に感じられた。
・・・と、私は一体冷静に何をまじまじ見ているのだろうか。これでは私もカナみたいな変態みたく思われてしまうだろう!?
「えっ・・・と。綾姉さん?じ、自分の身体に何か付いているっすか?」
「あ、いや!?ごめん、とりあえずちょっと海に浸かって頭冷やして来るわ〜!」
「自分も、ご一緒するっすよ〜!」
なーんというか、ここまでテコテコ私に着いてくる楓を見ていると放っておけなくなるというやら、愛おしく思えてしまうとやらで、椿の時とは別な意味で頭が混乱してしまいそうだ。
はー・・・全く、本当に楓は世話を焼きたくなる子だ。
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――それからしばらくして
そういえばここだけの話、この旅館から少し離れた場所にある浜辺は妖術による結界的な物が張られている為、地元の人からは「幽霊の出る浜辺」と恐れられて旅行客ですら近寄らない程なのだとか。具体的には"近づいた瞬間に巨大な生首が降ってきた"とか、"砂の中から沢山の手に足を掴まれた"とかである。・・・うん、怖いわそりゃ。
とまぁ、そういう訳なので一緒に来た椿の祖父の家に住む妖怪達も殆どが楽しく浜辺で遊んでいる。・・・その"殆ど"の枠に入れない、雪女である氷雨さんは暑過ぎて流石にパラソルの陰でグッタリしてしまっているのだが。
「雪ちゃん、氷雨さんは旅館に居てもらった方が良かったんじゃ・・・」
海でプカプカと浮かびながら椿が隣で一緒に泳いでいる雪へ声をかけると、彼女は呆れた表情を返してきた。私も楓と一緒にチョコドーナツ型の浮き輪で浮かびながら、その話を椿と共に聞いている。
「さっき"娘と一緒に泳ぐんだ"って、唸っていたし。別に大丈夫だと思う」
「えぇ・・・根性有り過ぎだろ、氷雨さん〜」
「す、凄い母ちゃんっすね・・・」
これはもう親子仲が悪い状況を何とかするには、雪の方がもうちょい寛大になるしかないんじゃないだろうか?
「お〜い!椿ちゃ〜ん!綾さ〜ん!」
雪の母親事情に苦笑いをしていると、里子と美亜が此方に泳いで来ながら手を振ってくるのが見えた。どうやら呼ばれていると感じた私達は彼女達の方に向かって泳いで近づいた。
里子が着ている水着は、椿に似たスカート付きのビキニでフリルが無いタイプと普通に可愛いのだが、一方で美亜の方は――まさかのスクール水着!?
「なぁ、美亜・・・ジョークでそれ着てる?」
「美亜ちゃん、それ狙ってるの?」
「何よ?なんだか知らないけれど、カナがね"実はこの水着の方が人気がある"って、そう言っていたのよ」
うん、これカナ確信犯ですわ!
しかも猫の妖怪な美亜が着ているもんだから、今の美亜の姿はもう・・・おぅ、それこそ一部で大喝采を浴びそうですわ。
「似合ってるよ〜、美亜ちゃん!うんうん、良い着こなしね〜しかも、胸もちょうどペッタ――」
「それより里子ちゃん、僕達に何か用かな?」
そう考えていたら、いつの間にやら後ろに居たカナ本人の発言を遮るようにして椿が里子に話しかける。何かちょっと私が暴走しそうな発言が聞こえそうになったのは、きっと気のせいだろう。胸の話題が聞こえたかもしれないけどアーアー聞こえなーいよー。
椿の質問に里子はウキウキした様子で答える。
「うん!ちょうど彼処に、良い感じの岩があるでしょ?そこまで皆で競走しよ?」
彼女が指を差している方向に目を向けると、確かに海から突き出たちょうどいい感じの岩がある。パッと見は灯台のようにも見え、別な観光スポットではあるものの"夕陽の景色が映える岩"によく似ているような気がした。
「う〜ん・・・でも僕そんなに泳ぐの早くないし、綾ちゃんとかカナちゃん、里子ちゃんの方が泳ぐのがとても速そうだよ?」
「でも、私だって水泳はあまり上手くないんだけどなぁ・・・平泳ぎで泳げる距離だけなら1番になれる自信はあるけども」
そんな感じに私達が「あまりやりたくない」といった顔を浮かべていると、突如として私と椿の水着の上が取られてしまい、胸が丸出しになってしまった。
「ぎゃぁぁあっ!?水着取ったのだれぇ!?」
「ふっふ〜ん、返して欲しければ2人も競走しなさいよね〜」
「ちょ・・・おま、美亜ぁ!」
美亜が私達の水着を手にしたまま、里子が指し示していた向こうの岩へ逃げるように泳ぎだす。
勿論、丸出しは恥ずかしいから私はすぐに追いかけましたよ!
「ほらほら!椿ちゃんも〜早くしないと、白狐さんと黒狐さんに見られちゃうよ〜」
「そ、それは嫌〜!美亜ちゃん、返してぇ!!」
里子に言われた椿も、顔を真っ赤に染め慌てて私に続けて美亜の後を追い始める。でも彼女が叫んだ事で浜辺でくつろいでいた狐2人も反応してしまい、何事かといった様子でこっちを見始めてきた!これはヤバい!
あ、ちなみに楓とカナは私達の後ろで鼻血を出しながらうつ伏せでプカ〜と浮かんでいた。ど、どれだけ私と椿のラッキースケベに興奮したんだよ・・・。
兎にも角にも、椿と私の胸の名誉を守る為に早い所水着を美亜から返してもらわなくてはいけないので、私は戦闘服姿に変身し椿は白狐さんの力を解放する。
「お〜椿ちゃんも綾ちゃんも速いね〜」
あ、あれ?
私も椿も、身体能力をめちゃくちゃ強化して泳いでいるはずなのに、どうして里子は平気な顔で私達に追いつけているんだ?
し、しかもよく見ると里子は犬かきの姿勢で泳いでいるし・・・。
「おっ先〜!ハッハッハッ・・・!」
「「は、速い・・・!」」
なんというか、人は見かけによらないという事だろうか。いやまぁ、里子は妖怪なんだけど。
そんな事に気を取られていたからか、私達は前を泳いでいたはずの美亜がいない事に気が付く。
まさかウッカリ足をつって溺れたのでは――そう思って椿と心配しだすと、左の方から美亜が高らかな笑い声を上げながら浮上してきた。
「あははは!どうかしら?私のこの圧倒的なスピードと、華麗な泳ぎは!」
そう叫んで自信満々な美亜は、そのまま90°身体の向きを変えてクロール泳ぎで岩から離れて・・・ん!?離れて!?
「おいおい美亜!そっちにゴールの岩は無いぞ〜!!」
「美亜ちゃん!僕達の水着持ったまま何処行くのぉ!」
こ、これだと美亜が本気で泳ぐのが速いのかどうか全く分からない・・・だって真っ直ぐ泳げてねぇんだもん!
このままだと埒が明かないので、もう競走よりも私達は美亜を捕まえる事に必死になるのであった。
多分、胸丸出しでこんなに泳いだのは人生で初めてかもしれない。やだもう・・・海ってヤベェ。