私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第陀話 とりあえず、魚を持ち帰るのは何とかなりそうかな

 

里子から友達が欲しい海坊主に協力して欲しいと頼まれたが、本人がこんな調子だとどうにも話が進みそうになくて厄介だ。

 

ひとまず海に潜られたままでは埒が明かないので出てきてもらったが、それでも顔半分だけ出している状態なので結構メンタルが傷ついていたのだろう。

 

「えっと・・・とりあえず、海坊主さん。この岩を作ったのは君ですよね?なんでしめ縄なんか付けたの?」

 

椿が何とか機嫌を直してもらおうと、海坊主へ別な話題を振ると彼は海から顔を全部出して相変わらずトンチンカンな方言混じりで答えた。

 

「んだ、人が沢山来てくれるようにと、ありがたい感じにしたんだが・・・何がいけなかったんだす?」

 

「あのね・・・何の逸話も無い場所でしめ縄の付いた岩だけあっても、誰もありがとう物って思わないし逆に何か悪い物が封印されているんじゃないかって思われちゃうよ」

 

その椿の返答に、海坊主は酷く肩を落として突風のようなため息をつく。それにしても普段は海の魚でも食べているのだろうか、息がちょっと生臭い。

 

「それじゃあ、どうすれば良かっただすか〜?おらから近づいても、妖怪も人間も皆逃げるんだす〜!」

 

「そのデカい図体じゃあなぁ・・・」

 

「確かに海坊主さんって人間には悪いイメージがあるから、人間と友達は諦めた方が・・・って、海に潜んないでください!」

 

参った事に、この海坊主は打たれ弱いせいで、今みたく少し凹んだだけでも海へ隠れようとする。友達が全然出来ないのは、そういう性格面の点も大きいのだろう。

 

「海坊主さんの悪いイメージ・・・あぁ、船を沈めるやつか〜」

 

「めっちゃアバウトなイメージだな里子――って、だから私達がサイズ差で危ないから、いきなり海から出てきたりするの止めろって!」

 

里子がそう言った途端に飛び出る感じで浮上してきたものだから、それで大きい波が発生して危うく私達が波に飲まれる所じゃなかったか!美亜もまだ体力を消耗してグッタリしているのに。

 

「それは違うだ!あれも、人間と友達になろうとして贈り物ばしてただけだ!」

 

「ちょ、ちょっと落ち着け。落ち着いてくださいって・・・耳がキンキンして聞き取れないぞ」

 

「あぁ、すまんだ。つ、つい大声を・・・」

 

「いや、別に良いよ。僕も綾ちゃんも、これくらい大丈夫だから」

 

なんというか、本当に困った奴だ。姉さん、姉さんと付きまとってくる楓とは別なベクトルで面倒臭い。しかも楓はまだ素直に話を聞いてくれるから良いものの、こちらは引っ込み思案な性格のせいで、ちゃんと聞いてくれるかも怪しいし。

 

なんとか椿が話を戻して、海坊主へ先程の事について尋ねる。

 

「それよりも、船を沈めるのが誤解って、それはどういう事なの?」

 

「あれは、おらなりの好意だす!その・・・獲れたての魚を、入れようとしてたんだ」

 

「「魚?」」

 

訳が分からなくて、私は椿と2人して頭を傾げた。

海坊主といえば"水で船を一杯にして沈める"という話からして、まーた嫌な予感がするんだが・・・

 

「でも、なんで船が沈むだ?魚は水が無かと生きていけんし、生きたまま持って帰った方が新鮮で良いだすのに」

 

「そこは魚だけにしとけアホォ!!」

 

やっぱり嫌な予感が的中したよ!そりゃ船も沈むわぁ!

 

「あのね・・・そもそも人間の船は積める量に限界があるし、ちゃんと海水の入った桶がありますからね。なんというか、余計な気遣いだと思いますよ?」

 

「流石に、そんなつもりが無くても結果的に沈んでりゃ、イメージの払底は難しいだろうな・・・」

 

「海坊主さん、人間の友達は諦めましょう」

 

「うぅ〜・・・た、確かに、大きさが違うだすよな」

 

椿にそう言われた海坊主も、やはり心では諦めがついていたようで割とあっさり納得した。

とはいえ、妖怪達ならまだ可能性が――とも思ったのだが、考えてみれば口の臭いやら変な方言やらでやはり此方も厳しそうだ。

 

「せめてね、翁の家に居る妖怪さん達とだけでも、お友達になれたらと思うんだけど、それを言う度に海坊主さんが緊張しちゃって何時も海に潜っちゃうんですよ〜」

 

ため息をつきながら、里子が私達へ愚痴をこぼした。だが、それでも海坊主について、何とかしようとしてくれている彼女は随分優しいと思うけれども。

 

それなら私達も出来る限り協力してあげるとしよう。

 

「――だったらさ、まずはそのメチャクチャな方言を直す所から始めようか。そんな話し方してたら、妖怪の人達も変な妖怪だなって思っちゃうからね。とりあえず、方言は1つに絞ろうよ」

 

「そ、そうだすか?あっ!じゃあ、語尾だけでも良いだすか?」

 

「別に良いけど、その"だす"って何処の方言なんだ?」

 

「忘れただす」

 

「はー・・・ま、今無理して直さなくても良いけどさ」

 

色んな方言を聞いていたから、普通に話すのがどうやるのか、もしくはどれが何処の方言なのか分からなくなってしまっているのだろう。こうなると、次はその人見知りな所を何とかしないといけないのだが。

 

「あとね、海坊主さん。やっぱり・・・息が臭いです〜」

 

「里子ちゃん!それ、そんなハッキリ言っちゃ駄目!あ〜ほら、海坊主さん潜っちゃったよ!」

 

「なんというか、やっぱりナイーブ過ぎるよなぁ・・・」

 

ううむ、しかしこの様子では何時までかかる事やら。そう思って悩んでいると、ようやく美亜が回復したのか大きな欠伸をする。

 

「ふみゃぁ・・・ちょっと、さっきから騒がしいわよ。おちおち寝てられないわ」

 

「おいおい、あんな状況で良く寝れてたな」

 

「・・・っ!!」

 

そして、海坊主がまた海からちょこっと目だけ出して美亜の姿を見た途端、なんと茹でダコのように赤くなってまたまた潜ってしまった。

 

「なに?今の」

 

「え〜と・・・」

 

「それはだな・・・」

 

美亜がキョトンとしてから訝しげに私達を見てきたので、とりあえず海坊主の事をかくかくしかじかと説明した。

 

それから海坊主も少し早めにまたまたまた海面へ浮上してくるが、その手で沢山の魚を掬ってきており、それを美亜に差し出した。

 

彼女は両手いっぱいの魚を満面の笑みで受け取る。

 

「あら?くれるの?ありがとう!」

 

「い、いや・・・こ、こここ、これくらい・・・あの、それと、お、おおお、おらと、友達になってくれますか?」

 

すると、海坊主は美亜の笑顔にやられてしまったのか、顔を先程以上に真っ赤にしてしどろもどろになりながらも自身の伝えたい事を伝えた。

 

でも、彼の様子を見るからに海坊主はひょっとして・・・

 

「ん?友達?えぇ、良いわよ。またお魚くれるならね」

 

「わ、わわわ、分かっただす!や、やっただす〜!」

 

嬉しそうに海へまた魚を捕りに戻っていった所からすると、やっぱり海坊主は美亜に一目惚れしたと見て間違いないようだ。

 

それにしても、今ですら持ち帰るのが大変そうなくらいに魚をもらったというのに、これ以上持って来られたら幾ら美亜でもキツいのではないだろうか?

 

「里子、ちょっと大きめのクーラーボックス持ってきてくれる?あっ、2人も手伝ってね〜ちょっとくらい分けてあげるからさ」

 

「はいは〜い、ちょっと待っててね〜」

 

「・・・とりあえず、魚を持ち帰るのは何とかなりそうかな」

 

まぁ、それはさておき、美亜自身は海坊主から一目惚れされた事について気付いているのだろうか?

 

先に椿が、その事で美亜に質問する。

 

「あの、美亜ちゃん。海坊主さんはきっと――」

 

「私に一目惚れしたんでしょ?分かってるわよ、それくらいは。あんな口臭くて不細工なのはごめんだけど、魚をくれるって言うなら下僕としてこき使っても良いわね」

 

「下僕って・・・お前なぁ、あんまり人の純情を弄ぶなよ?」

 

「美亜ちゃん、流石に好意を寄せられている相手を、自分の下僕にするなんて・・・」

 

「あら、あなた達にもいるじゃない?これであんた達とも並んだわよ、ふふん」

 

あーっと、これはまた美亜に変な誤解されたままかな?

 

「えっと・・・それって、もしかして杉野さんの事でしょうか?でも、杉野さんは勝手に・・・」

 

「あの子もそうでしょ?勝手に喜んで、私の為に働いてくれるじゃん」

 

「まぁ確かに、杉野さんも私達が聞いてもないのに捜査状況を教えてくれたりするけどさ・・・」

 

「いや、でも・・・海坊主さん、報われない恋の為に必死に――」

 

「あんた達も、好意持たれてるのに応える気ないでしょ?」

 

「そうだよ、別に私はタイプじゃないし。ね?椿・・・って、椿?」

 

「・・・」

 

そもそもの話、彼を狙っているのは椿の姉である夏美ぐらいで本人も案外乗り気だったので大して問題じゃないと思っていたのだが・・・まさか、椿まで杉野さんを意識してたりするのだろうか?

 

それはちょっと、なんか嫌だな。

 

「えっと、色々とあの人は問題があって、その・・・」

 

「まっ、下僕なんてそういうものよ。向こうが幸せなら、それで良いじゃない」

 

「それもそうだな〜・・・椿も、そこまで気にする必要は無いと思うよ?」

 

とはいえ、人前で下僕と化した杉野さんを晒すのは私と椿の評判的にはあまり良くないので、なんとかして彼をしつけないといけないのだが。

 

そんなおかしな方向に考えた自分に、馬鹿らしいと感じてため息をついていると、美亜が同じく悩み続けて俯いている椿を眺めながら面白そうな顔をしていた。

 

まーた嵌めてくれやがったな、コイツ・・・。

 

そう思った時には、既に里子がクーラーボックスを2つ頭に乗せて持って来た辺りであった。

 

「うぅ、下僕って・・・僕はそんなつもりじゃ・・・だけど、向こうがそのつもりだったらそうなるのかな、綾ちゃん?う〜ん・・・」

 

「私に聞かないでよ、そんな事・・・色々面倒臭くて、頭が痛くなりそうなんだから・・・」

 

「やっぱり、あんた達を弄るのは楽しいわ〜」

 

これから先、人との付き合いも少し考えていく必要がありそうだと考えると、本当に夏バテした時並みに怠くなってくる。色んな人がいるもんなんだなぁ・・・はぁ。

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