私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

125 / 390
第捌話 美弥子という人物

 

――それから旅館に戻って

 

私達は海で沢山遊び、それから旅館へ戻って今は夕飯までゆったりとしていた。

 

海坊主の一方的な恋路については、年1回くらいしか会えなかったりでまだまだ前途多難そうであったのだが・・・それ以上に私が驚いた事がある。

 

それは旅館に戻ってすぐ、なんと美亜を慕う妹である美弥子と偶然バッタリ出会ったのだ!

 

彼女とはショッピングモールでの件以降、その後は向こうの家系が厳しいから再会する事なんて無いと思っていたのだが、意外と世間ってものは狭く出来ているらしい。

 

「それにしても、美弥子ちゃんが受けた仕事の話が本当なら、亰嗟は此処をマークしてるって事だよね?それって結構不味くない?」

 

「その為に、相手の使っている妖術や妖具を妖気ごと自分の物に出来る"剥奪の力"の血を継いだ私が適任だと、センターから直々に推薦されたんです」

 

そして、美弥子から聞いた話では、最近亰嗟と思われる何者かがこの周辺を彷徨いているのだとか。それで、調査及び一時的な警備として彼女に声がかかったのだという。

 

なるほど、それなら確かに襲撃してきた相手を無力化するにはうってつけという訳だ。しかし、こんな幼い子を1人でそんな危険な任務につかせた彼女の家は美亜の時と同じく、やっぱり異常だとしか思えない。

普通、こういうのは何かあった時に備えて一緒に受ける人物が着いてくるべきだと思うぞ。

 

とはいえ、そんな事ばかり考えていても仕方ないので、私は美弥子に別な話題を持ちかける事にした。

 

「へぇ〜・・・ところで美弥子ちゃんのライセンスは何級なの?」

 

「あっそうだ、聞いてください!私試験が上手くいって六級なんですよ、綾さん!・・・でも、妖術の使い方とかは美亜姉様と比べたら、私なんかまだまだひよっこですし・・・ごめんなさい。美亜姉様の事は分かってるはずなのに、それでもあまりに嬉しかったものですから」

 

「あ、ああ・・・とりあえず落ち着いて、美弥子ちゃん。その、多分君のお姉さんも素直に喜んでくれるだろうから、そこまで落ち込まなくても大丈夫だよ」

 

「あ、ありがとうございます・・・綾さん」

 

参ったな、これは逆効果だっただろうか?

 

なんというか、美弥子は結構自分の事よりも他の人の事を強く意識してしまう子のようだ。

美弥子といい、海坊主といい、どうしてこう自分に自信が持てない人が多いのか・・・でも彼女の方は、それでもちゃんと頑張っているようだし今は余計な負担をかけないように優しく接しよう。

 

「それにしても・・・カナさんの方は大丈夫なんでしょうか?お風呂でのぼせたって聞きましたけれど・・・」

 

「あー・・・まぁ、ちょっとすれば復活すると思うよ」

 

ちなみに椿は今、話し合っていた私と美弥子の隣で雪と2人して鼻血を出しすぎてのぼせたカナの看病もとい団扇や能力を使って冷却をしている。

 

「う〜ん・・・」

 

「カナちゃ〜ん。なんで僕と綾ちゃんの胸を見ただけで、そんな事になっているの?こんな状態じゃ一緒にお風呂入れないじゃん」

 

「おふっ・・・!?」

 

「ま、また鼻血出てますよ!?本当に大丈夫なんですか、綾さん?」

 

「うん、あれが平常運転だから問題無い・・・と思う。うん、大丈夫大丈夫」

 

もうやだ、この人。

私と同じくらいに椿の事を心配してくれているのはよ〜く分かるのだが、その熱意が明後日の方向に動いてる時だけはどうにも苦手だ。

ぶっちゃけ、男の精神を必死で保とうとしている椿にとって、胸元がギリギリ見える格好をしている彼女のプロポーションは、かなりヤバいとすら感じている。というか、色々と無防備過ぎるんだよ、この子はもう・・・。

 

「ピラッ」

 

「カナの胸元めくろうとしないの、雪。それに椿だって、心は男の子なんだから気にしちゃうでしょ」

 

「椿ちゃんになら、別に見られても・・・それに、椿ちゃんのも全部見たんだから、私のも・・・み、見せないと」

 

「カナもカナで変に乗っかろうとすんな」

 

「全部見たんですね。そもそも、女の子同士で見せあって何が楽しいんですか?」

 

私は椿から団扇を借りて、ペシと縦にチョップのようにしてカナの額へツッコむ。

 

「きゃぅ!?いった〜い・・・」

 

「それだけ元気なら、晩御飯までには回復しますね。それに、そんなふざけた事を言う人にはもう団扇を扇いであげません」

 

「あ〜椿ちゃ〜ん・・・ごめんなさい〜」

 

「ふぅ、全くもう・・・それにさ、カナちゃん。旅行が始まる時から、何だか様子がおかしいよ?」

 

「んぇ?私はいつも通りだよ〜てぇ〜い!」

 

再び団扇を扇ぎ始めた椿に、カナは上半身を起こして彼女の胸に素早く手を伸ばしてタッチしてきた。

 

「はぁ・・・私、ちょっと美弥子ちゃんと外に出てくるね」

 

「は~い、椿ちゃんの方は任せてブイッ☆」

 

「変な事したら京都の沖に沈めるからね」

 

「綾ちゃんごめんなさい」

 

もうキリが無いと感じた私は、一旦美弥子を連れて部屋から出た。カナの事について心配じゃない訳では無いのだが、彼女の態度からして今は私よりも椿に任せていた方がきっと安心するかもしれないと、一応そう思っての行動でもある。

 

とりあえず今は、何か適当に時間を潰すとしよう。

 

「さて、旅館にピンポンとかあったっけかな・・・美弥子ちゃんはピンポンやった事ある?」

 

「は、はい。美亜姉様や他の人達と2回くらいはやった事がありますけど・・・カナさん、何だか無理をしているように見えました」

 

「う〜ん、まぁ本人も言いづらい事だろうし、あまり邪魔する訳にはいかないからね。それに好きな人と、より沢山話せるようにしてあげた方が気分も落ち着くはずだし」

 

「そう・・・ですね、綾さん。そうしたら、カナさんの事は椿さんと雪さんに任せて、私達は私達でピンポンをやって楽しみましょうよ!」

 

「おっ、やる気出てきたみたいじゃん。実はこう見えても私、ピンポンには結構自信があるんだよ」

 

そんな会話をしながら、私と美弥子はピンポンのある旅館の遊技場へ向かったのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――遊技場にて

 

「ぜ、ぜぇ、はぁ・・・ぜぇ・・・強いなぁ、美弥子ちゃん・・・」

 

「えっ?こ、これでもまだ全力じゃないんですけれど・・・」

 

「うっそ、マジで?」

 

卓球台にへたり込む私を、美弥子は心配そうに覗き込んでくる。

 

美弥子と試合をした結果はというと――私が見事惨敗した。

どうやら、見た目こそ人間に近くてもやっぱり美弥子も美亜と同じ猫の妖怪で、ずば抜けた身体能力を持っているようだ。

とはいえ、私が変身しないハンデ付きでの試合だからなのもあったと思うが。

 

「でも、これでもう3回目ですよ?少し休憩しませんか?」

 

「う、うん・・・そ、そうしよっか」

 

確かに美弥子の言う通り、そこそこ体力も消費してきたのでとりあえず休憩を挟む事にした。

そして遊技場内にある自販機で缶ジュースを選んでいると、その隣にあるベンチに座っていた美弥子がどこか落ち着かない様子で話しかけてくる。

 

「綾さん、1つ質問したいんですけど・・・あなたはどうして、あんなに椿さんと仲が良いんですか?」

 

「あ〜・・・そこまで大した理由とか無いよ、美弥子ちゃん。単に私が、偶然いじめられてた椿を見て助けようって気持ちになったからってだけ。それから、なんで彼女だけが学校の人達からいじめられるのかって不思議になったから、いじめる連中を撃退しながら色々と相談に乗ってる内に、気付いたら仲良くなってた感じだよ」

 

私達に不思議な力が目覚めたりした今となってみれば、これも少し苦い思い出だ。あの時の私は本当に椿を守る事ばかり集中していて、自分の事なんかどうでも良いとも思っていた。

なんで喧嘩に明け暮れて不良扱いされている私なんかより、こんなにも優しくて他人の事を優先出来る、良く出来た人を酷い目に合わせられるのかとすら考えた事もある。

 

それ程までに、あの頃の私は椿に入れ込んでいた。

 

今でもそれは変わらないはずなのだが、その彼女自身が自ら強くなろうとしているのを見ていると、きっと私の"想い"は椿の妨げになるのではと感じてきてしまっている。

 

「す、すごいですね・・・綾さんは」

 

「まぁ、喧嘩慣れしてるからね〜。そういう美弥子ちゃんも、美亜と仲が良い理由について聞かせてもらっても大丈夫かな?」

 

ひとまず感傷に浸るのはここまでにしておいて、今度は私が気になる"美弥子という人物"について聞いてみる。

 

彼女がなんとなく椿に似ているからというのもあるが、それ以上に私は美弥子に興味を抱いてきていた。美弥子の家族とは全く違う姿でありながら、それでも姉である美亜を慕う理由が気になるのだ。

 

きっと、美亜にあんな事を言う家族の事もあって、美弥子も相当厳しい育て方をされてきたに違いない。

 

「だ、大丈夫ですよ、綾さん。――いきなりですけど実は私、正式な家系の子じゃないんです」

 

「・・・なんだって?それって、どういう事?」

 

「金華猫の家系は代々、呪術に特化した1つの血筋だけで成り立ってきた優秀な妖怪の一族だったんです。でも、代が替わっていくにつれて、徐々に呪術の力も弱まっていって、世間からは"時代遅れ"とすら噂された事もありました。そこで、私や美亜姉様より前の代・・・私達の父様は特異な力を持つ様々な猫の妖怪の情報を探しては、その間に子供を設けるようにしていたんです。その中で産まれた、妖怪の世界でも珍しい"剥奪の力"を持ったのが私なんです。ごめんなさい・・・こんな汚らしい家庭の話なんてして、気持ち悪く思いましたよね?」

 

「・・・美弥子ちゃんは、何にも悪くないよ」

 

少し泣きそうになっていた美弥子の頭を、私はベンチに座って彼女が落ち着くように優しくそっと撫でた。

 

美弥子の抱えていた想像以上の家庭のドス黒さに、私は椿がいじめられていた時と同じくらいの憤りを覚える。

 

――率直に言うならば、あの家の考え方は狂っている。

 

「あの・・・もし良ければ、綾さんの連絡先を教えてもらっても良いでしょうか?」

 

「別に良いけど、どうして急に?」

 

「私も、綾さんが普段椿さん達と接している時みたいに、誰かから特別に扱われたいって・・・そう思ったんです。こんなにも話してて落ち着くのは、美亜姉様以外で初めてでしたから・・・」

 

「そっか。じゃあ美亜と仲が良いのも、美亜にとって美弥子ちゃんが"特別"に感じたからなんだろうね」

 

「はい、大体そんな感じです。美亜姉様の方から、本家に来て右も左も分からない私の事を優しく扱ってくれました」

 

なんというか、美亜が何故家を追い出された後でさえ、美弥子の事を気にかけるのかが理解出来た気がする。

 

あの2人は、きっと私と椿と同じなのだ。

 

周りが助けてくれるでもない孤独の中、互いが互いを慰めあっている内に依存してしまった。

そして私自身も、オジサンという親のような存在が居るにも関わらず、常に何故か「自分に本当の意味で優しくしてくれる人物なんて居ないんじゃないか」という孤独感を感じ続けていた。

 

だから、椿が自分から強くなろうとしている事は、本当はあまり考えたくなかった。

 

「・・・綾さん?顔色が悪いですけれど、大丈夫ですか?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。それよりも、そろそろ夕飯の時間も近くなってきたみたいだし、部屋に戻って支度しないとね」

 

私がそう言ってベンチから立ち上がり、美弥子もそれに続いて立ち上がった。

 

「そうですね。あっ、それと最後に――いえ、何でもありません」

 

「えっ?なんだよ、胸の話題以外だったら別に怒らないから言ってみてって〜」

 

「絶対に教えません。だって、まだ今は早いですから〜」

 

「ぶ〜美弥子ちゃんのケチ〜」

 

「ふふ、これからもよろしくお願いしますね、綾さん」

 

美弥子が何としても内緒にしたがる話に頬を膨らませながら、私は先へ出ていった美弥子の後を追いかけるのであった。

 

そこまで隠そうとするなんて、美弥子は一体私に何を言おうとしていたのだろうか?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。