私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第玖話 バッドニュース

 

――妖怪専用建物の大宴会場にて

 

部屋に戻った私は、案の定カナに襲われていた椿を救出して、今度こそ体力を使い果たしてヘトヘトになりながら、同じくフラフラな椿と共に夕飯の用意されている大宴会場へ到着した。

 

そこまで向かう間で、私と美弥子がピンポンをしている最中に、実は今日はカナの父親の命日であったという事を椿へ打ち明けた話を、カナ本人が直接話してくれた。なるほど、普段以上にテンションが高く見えていたのは、本当は憂鬱な姿を椿や私に見せたくなかった故の振る舞いだったのか。

 

そして、そんな事があったとは露知らず、いつも通りに振舞ってしまった事をカナへ謝ると

 

「大丈夫だよ、綾さん。それに綾さんも、両親が居ないって辛い過去を乗り越えて今を生きていけているんだから、私も過去に負けないよう頑張らないと!」

 

と、何故か逆に励まされてしまった感じになった。それでも、先程までと比べると彼女の表情は晴れやかなものになったと思う。

 

――閑話休題。

 

そういう訳で、大宴会場へ到着したのは良いのだが・・・

 

「これ・・・普通の人が見たら絶叫ものだよね、綾ちゃん」

 

「うん、まるでテレビのドッキリでも仕掛けられているんじゃないかって気になってくるわ」

 

まぁ、なんというか。

 

その大宴会場には椿の祖父の家に住んでいる妖怪達だけでなく、他の地域とか妖界とかから来たと思われる妖怪達もワンサカ居た。

 

烏天狗の人が鞍馬の大天狗である椿の祖父の所へ集まっていたり、ろくろ首の人達も各々首を伸ばしたりしており皆楽しそうだ。

 

とはいえ、流石にこんなお化け屋敷を凝縮したような光景に、私の隣に座っている美弥子と椿の祖父の隣に座っている夏美は恐怖で縮こまってしまっているらしい。そんな2人を見てか、椿が夏美の方へ向かったので、私は美弥子に心配の声をかける。

 

「えーと・・・大丈夫、美弥子ちゃん?いくら君が妖怪だからって、無理して同じ場所で食べる必要は無いと思うよ?別に私は人間なんだし、椿やカナ達も多分着いてきてくれるよ」

 

「み、美亜姉様が普通に出来ているんですから、私だってそれくらいには慣れておかないと。そ、そうじゃないと金華猫の一族としての・・・な、名前が泣きますから」

 

カチコチに身体が固まってしまいながらも、首を横に振って大丈夫だと示す美弥子に、私もつい苦笑いを浮かべる。

 

「いや・・・でも、なぁ・・・美弥子ちゃん。頑張っているのには素直に感心するけど、流石に妖怪に慣れた私でも、あれだけ沢山居るのは初めてだからね。パッと見ただけでも、多分50人くらいは普通に超えるかもだし・・・あまりキツいなら、私から何とかしておくよ」

 

「す、すいません・・・心配かけさせてしまって」

 

「だから、美弥子ちゃんが謝る事ないって。私はとにかく、美弥子ちゃんが気持ち良く旅館で過ごせるようにと思って言ってるだけなんだからさ」

 

更にオマケとして言うのならば、普通の人間である夏美以外は全員妖怪食なのだ。それも、地下の工場から作られた物が直接食卓に並んでいるので、勿論鮮度やら活きやらは最高だろう。

 

「ただまぁ、いつも食べてる奴と比べると、すごいビッチビッチ動くなぁ・・・」

 

「そうですね、綾さん・・・でも、ここまで良い食材は私の家でも滅多に見ないですよ」

 

「ふふ、やっぱり新鮮な物を使うと、全然違うわね〜!」

 

「あぁ、魚が多いのってそういう・・・」

 

美亜が海坊主から貰った――もとい貢いでもらった魚を料理に提供したのかと察しながら、私は美弥子と一緒に、一癖も二癖もある料理を食べていく。

 

焼き魚となったヒラメは何故かトゲが出入りしていたりするし、マグロの刺身はビチビチ動いて食べようとすれば頬を叩かれそうになった。

なんなんだ、この食べる事自体を拒否する食べ物・・・。

 

里子が私達の為に作ってくれていた事を考えると、何ともいえないが感謝の気持ちが湧いてきそうだ。

 

「あの、綾さん。わさび取ってもらえませんか?」

 

「え・・・美弥子ちゃん辛いのいけるの?」

 

「は、はい。これも修行の一環ですから・・・」

 

「ほーん。でも、料理は美味しく食べる事が1番作ってくれた人への感謝になるから、無理は絶対しないでね?」

 

「あっ、はい。勿論です!」

 

私はそう言って、向こうで悪戦苦闘しながら妖怪食を食べる椿を眺めた。

 

狐2人がここぞとばかりに椿の両脇に座っているので、今回はどう頑張っても椿の隣に移動は出来なさそうだ。

でも、椿の方は向かいに座っているカナや雪と楽しくやっているらしいので、とりあえず安心した。

 

・・・とはいえ、私は彼女達から少し離れているだけなのに、何故か仲間はずれにされている感じがして羨ましい。

 

「ありゃ?杉野さんから電話だ。美弥子ちゃん、ちょっと席外してくるね――って、何じゃこりゃあ!」

 

そんな時に、ズボンのポケットに入れていたスマホが着信で振動したので画面を確認すると、なんと登録していたはずの杉野さんの名前が《杉野さん(下僕)》に変わってしまっていたのだ。

 

まだ知り合って間もない美弥子がこんな事をするとは思えないし、心当たりがあるとすれば私のもう片方隣に座っている1人しか思い当たらない。

 

「なぁ、美亜・・・さっき私がポケットにスマホ入れてたの見てたよね。抜き取って勝手に弄らないでもらえませんかね?」

 

「ま〜良いじゃない。弄ったのは電話帳のそれだけなんだし。ところで、早く電話に出た方が良いんじゃないの?」

 

「・・・後で覚えとけよ、はぁ」

 

私はため息をついてから、ひとまず電話へ出る為に1度大宴会場の外に出た。杉野さんの残念さがあって本当はあまり出たくないが、あれでも捜査零課の人なので、ひょっとしたら何かあったのではと無視する訳にもいかない。

 

「えっと、もしもし?」

 

『やぁ、旅行中にすまないね。君と椿ちゃんの下僕の杉野だ』

 

「あんまりふざけてると切りますよ。それで、用件は何なんです?」

 

やっぱりか、と心の中で呆れつつも、一々ツッコミを入れるのも面倒なので、すぐさま私は本題に入った。

 

『いや、実はな・・・君達がこの前捕まえてくれた、滅幻宗の幹部が居ただろう?』

 

「あぁはい、確か閃空とか名乗ってた人ですよね・・・彼がどうかしたんです?」

 

あの酷く好戦的で、妖怪を退治する事をゲームのように楽しんでいる顔が脳裏に浮かぶだけで、私は少し嫌な気持ちになる。

 

『すまない、そいつが昼頃に――脱獄をした』

 

「はぁ?一体それどういう事ですか!?」

 

その杉野さんの言葉に、私はつい語気を荒らげてしまった。途端に彼からシーッと電話越しでも分かる程の音で、大きな声を出さないようにと伝えられる。

 

「すいません、ちょっと取り乱しました。それで脱獄をしたって、一体何がどうなってるんです?」

 

『いいかい、綾ちゃん?この件はまだ、センターに報告をしていない。後で椿ちゃんにも電話するが、これは俺の上司である三間坂さんの指示でな、彼が確実に脱獄したと分かってからにすると聞いているんだ。』

 

「・・・なんだって?」

 

いまいち状況が掴めない私に、杉野さんも困惑した様子の声で説明を始めた。

 

『俺も信じ難いんだが、閃空と名乗っていた少年なんだが・・・留置場で溶けるようにして消えたのさ』

 

「えっ?それって、まさか用済みになったから組織に殺されたとか・・・!?」

 

『いや、それは有り得ない。何せ監視カメラで24時間監視しているし、同じ牢屋には半妖の犯罪者だって居た。カメラの映像と、そいつらの証言から、何もされずにいきなり溶けるようにして消えたのはまず間違いないんだ』

 

そして、その説明に私は訝しげに眉をひそめる。

 

「じゃあ、そうなると――」

 

『だから、脱獄したとは言いきれない。だが、状況からして俺は脱獄したと見ている。先輩の犬吠崎さんも同様の考えだ。それで、もしかしたら君達の所に復讐しに行くかもしれないと思ってね、こうやって電話をしたのさ』

 

「なるほど、それはバッドニュースですね。でもありがとうございます、杉野さん」

 

こんな状況でも椿や私の身を案じてくれる杉野さんの言葉に、私は素直に感謝の言葉を述べた。

 

『とにかく、君達には警戒して欲しいという事を伝えたかったんだ。後で鞍馬天狗の翁にも連絡しておくよ』

 

「助かります。あっ、それと今センターの仕事を受けて美弥子ちゃんが来ているんですけど、彼女によると亰嗟が此処の旅館の周辺を彷徨いているらしいです。一応ですが、何時でも現場に来れるようにってお願い出来ますか?」

 

『それなら、お易い御用さ。なんたって、そりゃ愛しのご主人様だ――』

 

「すいません、忙しいんで切りますね」

 

こうして、ちゃんと分かりやすく話をしてくれたり、こちらの情報も信じてくれるから頼りになるのだが、杉野さんのそういう変態で残念な所には本当にガッカリしてしまう。

 

ちなみに、この後に杉野さんは椿にも全く同じ対応をしていた。やだもうこの人・・・

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