私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私達は学校周辺にある、人目に付きづらい公園で降ろしてもらった。
「おっしゃ!ほな俺は学校が終わるまで、その辺うろつい――」
『お前も来るんじゃ!』
「ぐへっ!」
早速自由になったからと、また盗撮しに行こうとした浮遊丸が白狐さんに紐で引き摺り降ろされる。いつの間に付けたんだろう?まるで風船のようにプカプカしている。
そして、そこから進んでいくと学校の校門が見えてきた。私は高い感知能力で普通に見えているが、椿の耳や尻尾は2人のくれた勾玉の効果で周囲から見えていない。白狐さんと黒狐さんは狐の姿で後ろを付いてきており、白狐さんは口で浮遊丸を繋ぐ紐を咥えていた。
・・・しかし。
「おほぉ!最近の女子中学生も育っとるやないかい〜!!」
「・・・やっぱり、置いてきた方が良かったんじゃない?」
「そうだね、綾ちゃん。白狐さん、その妖怪の目――何かで塞ぎませんか?」
『いや、全て潰すべきだ』
黒狐さんがニヤリと笑ったお陰で、浮遊丸は身の危険を感じて全部の目を閉じてくれた。バカに効く薬ならぬ、変態に効く目薬があれば良いのに。
ふと椿がソワソワしているように見えたので、あまり大きくならないように声を掛けた。
「椿、どうしたの?」
「う〜ん・・・皆がジロジロ見てくるけど、何で?て、Tシャツだけじゃ胸が見えちゃうのかな?」
『椿が可愛いからだろ?』
「黒狐さん、真面目に答えなよ。普通に考えて、椿が女子の制服着てるからだと思うけど」
すると私の言い方が悪かったか、椿が物憂げな顔で自嘲する。
「そっか・・・皆、男子なのに女子の制服を着ている、変態な僕を見て笑ってるんだ・・・」
「はぁ、なんでそうネガティブな方向に考えるの。実は女子だったって学校に伝わってる時点で、そんな事は有り得ないでしょ」
『そうじゃそうじゃ!』
「綾ちゃん、黒狐さん、心はまだ男の子なんです。」
椿は一体、何がそんなに気になるというのだろうか。今まで女子だった事を隠して男子として通っていた、という扱いになれば女子の下着とかイジメで押し付けてきた向こうが変態だった話になって済むと思うけれど。
「おい烏森に・・・お前、槻本だよな?何をしとるんだ、早く来なさい」
「はいはい、今行きま〜す!ほら、椿」
「あっ、えっ・・・?」
校門の前でずっと話していたので、朝の挨拶をしていた先生に声を掛けられる。気が付けば、近くに学年主任の先生も居てメガネ越しから心配そうな目を向けていた。
「さ、来なさい。そのまま教室に入ったら、色々と大変な事になるしな。それに此方でも話す事がある。」
「はぁ。分かりました」
「は、はい・・・」
学年主任に職員室のある方へ連れて行かれると思っていたが、そこを通り過ぎて真っ直ぐ校長室へと向かったのに私は困惑して。
校長室って、ちょっと・・・相当、私達は大きな事をやらかしてしまったのかな?
「さ、入りなさい」
促されて中に入ると、校長先生が書類の手を止めて私達へ挨拶してきた。
「おぉ、来たか槻本君に烏森君。おはよう、まぁ此方に座りたまえ」
「し、失礼しま〜す・・・」
「あっ・・・は、はい」
ローテーブルへ案内された私達は来賓用のソファみたいに酷く上質そうな椅子へゆっくりと腰掛ける。ふかふかで座りやすさは抜群だが、今の私はそれどころじゃないくらいに緊張していた。
校長先生はキッチリとした身なりの格好をしていて堅苦しく見えるが、意外とおちゃらけたような性格もしているらしく人気は結構高い。
しかし私からして見れば、その掴みどころの無さが何処か此方に底知れない緊張感を感じさせるのだ。ハッキリ言って、苦手である。
「緊張はしないで良い。槻本君が女の子であった事実を隠していた件を責めるつもりで呼んだのではないからね。家庭の事情の為に、致し方無く男の子として生活をしていたのでしょう?」
椿へ確認するかのようにジッと見つめる。
「・・・それにどちらかというと、私は責められる方が好きなので」
「すいません校長先生、その話長くなります?」
「あぁ悪いね!それで、どんな話だったかな?」
すぐ話が脱線しかけた事に私がツッコミを入れると、それに被せるように椿が校長先生へ質問した。
「あの・・・僕をここに呼んだのは、何故ですか?」
「そうそう、君達を呼んだのは・・・槻本君へのイジメに対しての事です」
すると、それを聞いた椿の顔がみるみるうちに青くなっていくのが分かった。きっと妖怪に操られていたとはいえ、自身をいじめていた連中からの報復だと思ったに違いない。・・・私の経験則からの話だけども。
『大丈夫だ椿、奴らは操られていただけだ。それに、まだいじめてくるようならば俺達が守ってやるからな』
黒狐さんが椿を安心させようと、頬をペロペロ舐める。うん、気持ちは嬉しいけれど傍から見たら見えない存在なんだから自重しようか。
そんな事に気をとられていると、校長先生が頭を下げて謝ってきた。
「君には、非常に申し訳ない事をしてしまいました。私が・・・全ての生徒や先生達を代表して、謝らせてもらいたい。――申し訳ない」
「あ、あのっ!えっと・・・」
「・・・」
私は何ともいえない気分になる。この人が悪い訳じゃないのに、ここまで謝れるなんて普段の様子からは想像すらつかなかったからだ。
――やっぱり学校を背負っている人なんだ、と改めて認識させられる。
「しかも、君は親御さんにも酷い仕打ちを受け、今は家族全員が君を置いて出かけているようだね?」
「いつの間に知ってたんですか!?」
「えっ?あ、な・・・なんで?ま、まさか・・・お、おじいちゃんが!?」
更に校長先生が椿の家庭の事情についてズバリ言い当て、私達が頷いたのを確認すると――ソファからバッと立ち上がり、両手を広げて空を仰ぐようにして叫んだ。
「あぁ、なんて悲劇だ!こんなにもか弱い娘1人育てられんとは・・・なんて親だ!!そして君がいじめられていた事が、私の耳に届かなかったこの怠慢!!烏森君にまで背負わせてしまった責任!!」
「え、あの〜・・・校長先生?」
「君にはせめて、この学校という場所が癒しの場にならなければいけなかったのに・・・なんて様だ!!かくなる上は、切腹して詫びを〜!」
校長先生が暴走して、何処から取り出したのか脇差しを握ったので私達はすぐさま止めにかかる。もうやだ、何この校長先生・・・私のイメージ以上にヤバい。
「ちょちょ、ストップストップ!Don't切腹プリ〜ズ!!」
「わ〜っ!待ってください!!そこまでしなくても良いですよ!」
『面白い奴じゃの〜』
白狐さんも笑ってないで何とかして!・・・と、やっと落ち着いた校長先生は息を切らしながら椿と私の肩をしっかりと掴んで深呼吸した。
「す、すまない・・・取り乱してしまった。とにかく、この事態を隠していた担任は半年の謹慎処分に。そしてイジメの主犯である子には、1ヶ月の停学処分を下した。」
複雑な気持ちになる。別に彼らは妖怪に操られていたというだけなのに・・・そんな非現実的な話をしようとした私を、椿が膝に手を置いて抑えた。
「それでも、もしまたイジメが起こりそうなら、すぐに私か湯口君に言うんだぞ!――今回それを告発してくれたのも、あの湯口君だからな」
「なんだって、湯口先輩が!?・・・今度会った時には、私達からお礼を言っておきます。」
意外な助け舟があった事に私達は嬉し泣きしそうになったが、校長先生の驚いている顔を見て私と椿は思い出して顔を見合わせた。
「「あっ・・・」」
なんてこったい、椿の姿モロバレしてるじゃん。
「えっと槻本君、その姿は何かね?」
ここまで来て、こんなアクシデントに見舞われるとかあんまりに不幸だァ〜!