私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
楓と美弥子に里子の3人を捕まえた後、上空からともなく烏天狗がやって来て、動けなくなった彼女達を脱落扱いとして回収していった。
「あ、く、ふふふ・・・わ、脇腹は弱いんで止めてくださいっす〜!」
「みゅう・・・かき氷、一緒に食べたかったなぁ・・・」
「負けちゃったけど、ありがとう綾ちゃ〜ん!!」
あ〜・・・うん、なんだこの虚無感は。
勝ったはずなのに負けた気がするというか、よく聞く「試合に勝って勝負に負けた」みたいな感じだろうか。とはいえ、さっき心理的動揺を起こさせたからか美弥子に奪われていた風の妖術も何とか戻ってきたようだ。
上を見てみると、どうやら沢山の烏天狗達が飛んでいて、あちこちで捕まった人の回収をしているようだった。
ちなみに、先程椿から小次郎を介した連絡が入り、彼女も私と同じようにして狐2人を捕まえた事を報告してくれた。その代わりとして里子にブラを持っていかれてしまったそうなのだが、あの強い狐2人を捕まえられた事だけでも大金星だと思う。
とりあえず、私はパンツを履き直してから、再び他の妖怪を捕まえつつ椿と合流するべく直感で旅館の方向を目指して進み始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━
――それからしばらくして
適当に進んだのが悪かったのか、いつの間にやら人気すら無い山奥まで入っていってしまったようだった。
「やっべ、これは迷ったか?しかも、なんか雨まで降ってきてるし・・・でも、この雨おかしいな。なんで雨から妖気を感じるんだ?」
その上、此処だけに雨が降っているという異様な状況に警戒しつつ、私は歩く速度を落とした。
何せ、雨そのものに妖気が含まれているせいで周囲の妖気が感じ取れず、他に妖怪が迫ってきていても何処から来るのかが全く分からないのだ。
そして、そんな雨を降らせる事が可能な妖怪は椿の祖父の家で暮らす妖怪達には居ない事を考えると・・・恐らくは旅館チームの妖怪が起こしているのだろう。
「しっかし、誰かが雨を振らせてるとしても、一体何の為に振らせてるんだ?自分の居場所がバレないようにするカモフラージュとかかな?」
気付けば、進むにつれて雨の降る量も増して全身がビッショリと濡れてしまっていた。
変身しているから、まだ水着が濡れた感覚程度でマシなものの、もし変身していない普段着だったらと考えるとちょっとめんどくさい。
そんな事を考えていると、足元にあった水溜まりから突然水が弾けて、その水滴が私の膝元までぶっかけられた。
「うおっ!ま、まさか・・・これは、カモフラージュだけじゃない!?」
それで直感したのは、間違いなくこの雨は今私が居る場所を知らせる為の仕掛けでもあったという事だ。その証拠として、雨の妖気で分かりづらくなっているものの、周囲に何人もの妖怪の妖気を感じている。
そして、近くにある建物の屋根から、和傘を頭に被った子供の妖怪が嬉しそうな声を上げてくる。
「えへへっ、また成功だ〜!そっちは、綾ちゃんだったかな?君も皆から逃げられるかな?」
「なんだって!?じゃあ、まさか椿も・・・」
「その通りだよ〜!僕は雨降り小僧。戦う事は出来ないけど、こうやって雨を振らせる事で、特別扱いの妖狐と人間の居場所を他の皆に教えてあげたのさ〜。住まわせてもらっている旅館の皆の為に奉公するのが、僕の仕事だからね」
「あっ、おい待て!・・・くそっ、逃げられたか」
私が雨降り小僧の元へ向かおうとすると、彼は素早く屋根から屋根へピョンピョン飛び移って何処かへ逃げていってしまった。
しかし、彼の能力は雨を降らせる事だけだったみたいだが・・・じゃあ、さっきの水の攻撃は誰が行ったのだろうか?
それを考えている内にも、再び近くの水溜まりから今度は大波のように水が噴き出して私に覆いかぶさろうとしてきた。
「あっぶね!妖異顕現、稲妻雷霆蹴!」
私は咄嗟に妖術を発動して、雷を纏った右足で回し蹴りを放って水の塊を蒸発させた。この雷の妖術、どうやら今みたくカウンターとしても使えるようで助かった。失敗していたらと思うと少しゾッとする。
「そんな!今のを!?」
すると前方にある電柱の陰から、その私の妖術に驚いたような少女の声が聞こえてきた。だが、その方向から感じる妖気からして、今の少女が妖怪であるのは間違いないだろう。
「おい、そこの。すぐに隠れたって、今の声でバレバレだから大人しく出てきなよ」
「す、すいません。コッソリと狙うような事をして・・・」
そして、私が声をかけると少女は観念したのか恐る恐る電柱の陰から姿を現した。
ウェーブがかかった群青色の髪で二重にパッチリした蒼い目と、良いスタイルの身体に臍が良く見えるタイプでスリット入りのロングスカートの服装をしている彼女は、見た目こそ人間であるが持っている妖気の強さからして半妖ではない事が分かる。
それにしても、本当に綺麗な子だな・・・椿や美弥子並みに、ジッと見ているだけで心がドキドキしてくる。
「んで、そっちの名前は?私は霊能力者で烏森綾って言うんだけど」
「あの・・・私、人魚の海音(あまね)と言います」
とりあえず、向こうから攻撃してくる気配が無かったので色々と事情を聞く為に挨拶をした。でも、海音は既に知っているといった笑顔を此方に返してきたので少し気恥しい。
「あのね・・・私は見ての通り水を扱うのは得意ですし、人の姿に変化も出来ます。それなのに、中々ライセンスが取れなくて・・・しかも、父の居ない貧乏な家で、病弱な母もいるんです。だから、早く稼げるようになりたいんです!綾ちゃん、お願いします。私を助けると思って、捕まってください!」
「えぇ・・・マジか」
海音の必死な訴えに、私はついビクッと身動ぎをしてしまう。そんな辛い家庭事情があったとは・・・でも、彼女の為だからといって此処で捕まるというのも――
「はぁ、また"そんな事"をやって人を騙そうとしてるのかい?でも、今回は運が悪かったな」
「へっ?きゃあっ!?」
「あ、海音!?」
そうこうして悩んでいると、その言葉と共に突如として海音の真上から手錠が投げつけられ、その場で彼女が捕まってしまった。
そして、彼女と私の間に割って入る形で目の前に降りてきたのは、薄い桜色の髪に紅い2本の角を生やし、白いパーカーと紺色の太腿程の長さのスカートを着た、黄色いショルダーバッグにブーツという今どきの格好をした謎の妖怪の少女だった。
見た感じは私や椿より2つ程年上にも見える。
「お前、あの子には病弱なお母さんがいるんだぞ!なんだって、そんな――」
「だから、その話自体が嘘だと言っているんだよ。全く、海音君も海音君で相変わらずストーリーも演技も下手だな。だから、さっきの妖狐の時みたく失敗するんだ」
「えっ、海音・・・ま、マジで?」
私が困惑しながら尋ねると、海音は少し悔しそうな顔をして無言で頷いた。そして、彼女が烏天狗に連れていかれた後に、その謎の妖怪少女は私に向かってニッと口角を上げてくる。
彼女から感じる妖気は海音のものよりもずっと強く、雨の妖気の中でもハッキリと感じ取れた。
これだけ強い妖気、一体どうやってあの雨の中に隠していたのだろう?
正直、不意打ちをしたとしても勝てる自信が無い。
「や、やるつもりか・・・!?」
「いや、僕は今の君には興味が無くてね。良ければ、ちょうど昼飯時だし一緒に食べないかい?」
「はぁ?」
なんというか、私は目の前で起こりまくる展開についていけなくなってきていた。
家族の為と嘘をついて私を騙し討ちしようとした子がいるかと思えば、今度は隠れていた謎の妖怪のお出ましときたもんだ。
そして、そいつから昼食を一緒に食べようってくるなんて・・・もはや訳が分からんわ!